この世界では異世界から召喚獣と契約してバトロワするらしいのだが、女神に騙されて異世界で奴隷の様に働かされている主人公は優勝候補のSSSランク召喚獣としてヒロインに逆位召喚されている。『召喚戦争』 作:三流木青二斎
2022年2月22日22時22分22秒―――経過。
小さな島国・日本の土地、双ツ次市郊外の山奥の地にて静謐と共に荘厳に聳える巨大な屋敷が建てられていた。
数日前までは二人、その屋敷に棲んでいたが……現在では一人だけしかいない。
この屋敷の中で彼女は一人惰眠を貪っていた。
純白に等しい部屋の中、その中心には一人の少女が横たわっている。
肉付きの良いモデル体型の、銀髪の少女だ。
何時もならば屋敷から帰って来た祖母が彼女を起こしにやってくるのだが、その日、祖母が帰ってくる事はなく。
同時に彼女の肉体に異変が感じ取られた為に、違和感を覚えた彼女……ルリアンヌ=シュヴァルテは、眼を擦りながら起床する。
「あう、……?」
そして、寝惚けたままの彼女、ルリアンヌは自らの隣に置かれていた携帯端末を指先で摘まみながら持ち上げると共に液晶画面に視線を向ける。
それは彼女の所有物では無い、この部屋には円を描く様な丸いベッドと、巨大なシーツだけであり、当の本人には、寝間着はおろか、下着すら装着されていない完全な無防備な姿であった。
「こえ、なぁに?」
口元のヨダレを手で拭いながら、携帯端末をじっくり見回すと同時、液晶画面がひとりでに起動したかと思えば、紫色の波紋が画面に広がり出し、中心部にある黒い点が彼女の視界を釘付けにしていた。
脳内に流れ出す召喚戦争のルール、それを拒む事無く、ルリアンヌは情報を脳髄へ強制的にインストールされた後に、粗く呼吸を行う。
「あうぅ……あたま、痛い、ぃ?」
頭痛の様な感覚を訴えるルリアンヌだったが、次第に召喚戦争の情報が脳内に溢れ出すと、この携帯端末こそが、召喚戦争に使役する重要な力の要を担っている事を察した。
しかし、だからと言って、彼女がそれを扱い、何か事を成すと言う事は無かった。
ただ、携帯端末を両手で強く握り締めながら、ルリアンヌは困惑した表情で周囲を見回す。
「あう、ぁ、お、ばあちゃっ、ど、どこぉ?」
いつもは傍にいる祖母の姿が、この日に限ってどこにもいない。
段々と心細くなってくるルリアンヌは、涙目を浮かべながら祖母の顔を思い浮かべている。
「あぅ……うぅ」
一人で居る事は寂しい、怖い、辛い、恐ろしい。
だから、己を支えてくれる繋がりを、ルリアンヌは求めていた。
その様な生き方へと変えられたのは、他でも無い、祖母による教育であったのだが、皮肉にも甘えん坊に育ったルリアンヌは孤独を埋める為に行動をおこした。
「しょ、召喚せんそう……召喚獣、?テスタメントさん、出てくる?おともだち、なれる?」
あろうことか、戦争に使われる道具を、ルリアンヌは孤独を紛らわせる道具として使用する事にしていた。
脳内に流れ込んだ召喚戦争のルールを把握してもなお、勝つ為に呼び寄せるのではなく、孤独を紛らわせる為に召喚獣を召喚する、という前代未聞の選択をしたのだ。
「っ、けてう・こくまう・びなあ・けせどぉ・げぶらあ」
「て、ていふぁれっと・ねつあく・ほど・いえそど・まるくと、えんそふ」
何度も何度も詠唱を噛みながらも必死になって紡ぎ続けるルリアンヌ。
自らの肉体が携帯端末に接続され、更に別の感覚が天上へと押し上げられる気分に見舞われる。
「こんげんっ、の、しんえんより、ぶっしつ、かいっに、へと、つむぐっ、われは、にじゅーに、の、ぱすをつなぐもの、えと、われは、むげんにして、いち、そのもの」
はあ、と息を吐く。
空間に刻まれる召喚陣は、ルリアンヌが詠唱と共に同時に展開している。
予め用意をする事で召喚陣を展開するのだが、ルリアンヌは召喚術を行使して召喚した複数の茨の蔦を召喚陣代わりに展開し、門の形成を行っている。
「まるくと・いぇそど・ほど・ねつあく・てぃふぁれと」
「げぶらぁ・けせど・びなあ・こくまう・けてる、あいん・そふおう」
ウィザードの血筋を持つ彼女は、祖母と同様の潜在能力に秘めた天才児であるのだが、唯一の欠点があるとすれば、祖母以外の人間と真面に会話した事が無い為に、対人コミュニケーションが欠如している、事くらいだろう。
詠唱を終えると同時、ルリアンヌが形成した召喚陣が光が発した。
目を覆いたくなる程の眩い閃光が部屋中を包み込んだ際……ルリアンヌは強く目を瞑りながらも、ゆっくりと目を開いた。
「―――あぅ」
目の前に立つ、異性の人物が出現する。
召喚戦争に置いて戦局を左右する重要な存在、召喚獣の上位種『
黒色のコートに漆黒の軽装甲冑を身に纏う、灰色の髪を靡かせる青年の姿。
肩を項垂れる様に直立不動する彼は、静かに目を見開いて周囲を見回す。
「……ここ、は、戻ってこれた、のか?」
懐かしさを感じ入る彼の言葉、虚ろな瞳にほんのりと色が染まる。
両手を広げて何か確認しようとしていた時、その際にルリアンヌの顔を認識すると、乾いた唇を動かして声を漏らす。
「あぁ、そうか―――あんたが、オレを召喚したのか?」
それが始まりだった。
ルリアンヌは茫然と彼の顔を見つめる最中。
「……あう、る、ルリアンヌは、ルリアンヌ、ですっ」
異性に対して名乗りを上げる彼女に、青年は同様に答える。
「オレは、……『愚者の契約者』だ、名前は……」
テスタメントは名乗り上げる寸前、意識を果てに逸らして警戒を高めた。
割れ砕く音が聞こえ、その音に反応していると、同じ様にルリアンヌも音に感付いた様子だった。
「ぁう……?」
首を傾げるルリアンヌに、テスタメントはゆっくりと振り返る。
何かが迫る―――そう認識したと同時に、テスタメントはルリアンヌの体を抱き上げた。
唐突なお姫様抱っこに驚きを隠せないルリアンヌは目を大きく開かせる。
そして、部屋の外で疾走する音が響くと共に、部屋の外から扉を強く叩く音が激しく打ち付け、木製の扉が一瞬で破壊された。
「ゴルシャラヴァギャアア!!」
「ギヒャッ!!ヒャギャブッ!!」
屋敷の中に侵入して来たのは、大小のサイズが違う緑色の肌に頭部から角を生やす化け物……俗に言うゴブリンと呼ばれるモンスターである。
現実世界に存在し得ない化け物の存在に、ルリアンヌは驚愕する。
しかしテスタメントと彼女は、そのモンスターの登場に対して、それが何であるのかを即座に察する事が出来た。
それは脳内に刻まれた召喚戦争のルール。
その内容の一部に記載されている『ローディングシステム』。
『召喚戦争開催時に召喚されるモンスターを討伐する事でデータを回収出来る』
テスタメントと同じ様に召喚されたモンスターを倒す事でデータが経験値の様に取得され、テスタメントを強化する事が出来るというもの。
だが、何故、この屋敷の中にピンポイントでモンスターが出現したのか。
その疑問を解消するかの様に、廊下の奥から一陣の風と共に出現する無数の紙。
べたり、と廊下や壁に張り巡らされる質量に、テスタメントは眉をしかめる。
「紙か?」
壁に貼り付けた紙幣サイズの紙に視線を向けるのだが。
その背後にいたルリアンヌは、静かに口を開き始めた。
「―――情報解析、照合確認、結果報告、『
召喚陣が刻み込まれたそれは、一部のウィザードが使役する『霊符』であるとルリアンヌは告げる。
「一枚一枚に知能の低いモンスターの意識を誘導する『ハッキング系統』のリチュアルコードが使われています」
(なんだ急に、雰囲気が変わったぞ……?)
おどおどとした口調とは違う彼女の言葉は機械めいた何かを感じる。
が、瞳孔を開かせチカチカと三原色の光を発していたルリアンヌは、先程の冷静さが嘘の様に表情を強張らせる。
「え、ぅぅ……あの人、きてる?こ、こわい……」
恐怖を覚えるルリアンヌに、テスタメントは指を空に向けて払う。
「とりあえず……モンスターは全部、倒して良いんだな?」
彼の簡単に告げる言葉にルリアンヌは「えう?」と疑問符を浮かべた。
「ギャヴォァッ!!」
斧や棍棒、大剣を担うゴブリンたちは、テスタメントに向けて疾走する。
武器を振り回してテスタメントを殺そうとした瞬間。
「インベントリ・オン」
その言葉を口遊むと同時。
疾走するゴブリンの上空に召喚陣が展開。
そこから無数の斬撃が飛び出ると、大量の刀剣類がゴブリンを串刺しにする。
「ギャアアッ!!」
「ギッ、シィイイ!!」
肉体に突き刺さる刃に視線を合わせるルリアンヌ。
視界に入る情報が検索されると、脳内に溢れる情報が口からこぼれだす。
「情報、認証―――『聖ルリエッタの剣』『魔凱大剣』『オールランドの雷槍』『カリアルメのレイピア』『八咫烏の翼刀』、こ、これ、色んな世界の、異なる武器?、み、見た事ない、こんなのっ」
驚嘆しつつあるルリアンヌに対して冷静を極めるテスタメントは敵を見据える。
「ギャアアブガッ!!」
斬撃の雨から逃れたゴブリンがテスタメントに向かい接近していて、武器を大きく振り上げている。
「こい」
そう静かに言うと、テスタメントは手を構えて召喚陣を形成。
無数の剣を指の股に挟みながら、それをゴブリンにむけて振るう。
鉤爪の様に扱う剣術により、ゴブリンの肉体は一撃で切り裂かれてしまう。
「グゥゥゥガァア!!」
テスタメントの攻撃から逃れる個体もいた、距離を取って改めて攻めようとしているのだろうが、テスタメントは刀剣類を思い切り、ゴブリンに向けて投げた。
無造作に描く刀剣類の軌跡は、圧倒的質量と膂力から発生する威力によって、あまりにも強引に、ゴブリン達の肉体を弾き飛ばす。
「ガァヴァッ!?」
短い断末魔を荒げながら、無数の刀剣類が壁に突き刺さる。
片手を軽く振るいながら、テスタメントは小さく息を漏らした。
「?……力が、出てないのか?」
自らの能力に制限がかかっているかの様な感覚に疑問を覚えるテスタメント。
深々と突き刺さる剣をみながら、ルリアンヌは驚いていた。
「て、テスタメントさん、すごい、つよい……よ?」
彼女はテスタメントの方に視線を向ける。
テスタメントは周囲を警戒していたが。
『戦闘が終了しました』
『ダウンロード率が上昇します』
『ダウンロード率:25%→28.736%』
『30%を超えると新たな能力開放します』
脳内に響く声にテスタメントは目を細める。
「ダウンロード率……?この世界の基準か?いや、今はいいか……」
そのアナウンスの発生により、一先ず、新手はやってこない事を悟る。
「えっと、オーナー、って呼べば良いのか……ケガはないか?」
彼女の心配をするテスタメントに、ルリアンヌは首を左右に振った。
「ん、ううん、ルリアンヌ、平気、えぇと……」
視線を凝らし、テスタメントのオーナーとして、彼の実力を確かめる様にステータスを確認するのだった。
『
『アルカナ:〈愚者〉』
『真名:アルミヤカナト』
『ダウンロード率:28.736%』
『ステータス』
『アルカナスキル』
〈愚行する道化師〉
ランク:E 種別:常時発動型
愚者として運命を定められた者に与えられるスキル。
翻弄される運命に対し足掻き続けたかどうか。
ランクEの為、定められた運命の一部のみ改変出来る。
『生得スキル』
〈神審眼〉
ランク:C 種別:任意発動型。
召喚者に与えられる情報収集能力。
自身のステータスの確認を行う事が出来る。
対象物に接触する事である程度の情報を取得出来る。
〈インベントリ〉
ランク:E~A+ 種別:任意発動型。
召喚者が使用してきた道具を収納する異空間倉庫。
無尽蔵に道具を収納する事ができ、座標設定で道具を遠隔で出す事が出来る。