「おは健太。」
「おはー。」
俺らももう四年生。
朝、いつも通りマンションの入り口で美咲と合流し、話をしながら学校へ向かう。
「じゃあ、また帰りな。」
「うん。」
教室の扉を空け、自分の席につくといつも通り隣の奴が話しかけてくる。
「健太おはー。今日も彼女と一緒だったな。」
「だから彼女じゃねえって。」
美咲と来てると、よく彼女とか好き合ってるとかいわれるが、少なくとも付き合ってはいない。両想いかは…知らね。向こう次第。つまり、俺は美咲が好きだ。こんなこと絶対言えないが。
「そうだった。お前の彼女は優希さんだったな。」
「それはがちでやめろ。違うし、まじで優希のこと好きなやつ多いからな。」
「だから小声で言ってんだろ。」
「実はお前も優希のこと好きだからな。」
「は?好きじゃねーし。」
「はいはい。わかってるから。」
「うっざ…」
「おはよーみんな。」
大きくはないが、よく響く聞きなれた声が聞こえる。
「おはよ!優希ちゃん。」
「今日もかわいいね。」
「ありがと…ってそれ、ちいかわのキーホルダーじゃん。しかもめっちゃかわいい!」
「気づいた?これ、新しく買ってもらったんだよね。」
「いいな~。私もちいかわグッズ欲しいぃ!」
優希の周りに女子たちが集まる。数人の男子は何とか話しかけようとしているが、そんな隙はない。
「健太おはよ。高橋くんも。」
「おっす。」
「おはよー。」
学校に来てしばらくすると、優希は必ず俺たちに話しかけてくる。前に理由を聞いたところ、ずっと女子に囲まれて話すのは疲れるとのこと。その時は意外に思ったが、今考えれば優希ってそういうところあるよなって納得できた。なんというか、陽キャ達から一歩引いてる感じがする。あの顔なのに。
「そういえばさ、僕もフォートナイト始めたんだよね。」
「ほんと!?今度一緒にやろ!」
「うん。始めたばっかだからいろいろ教えてほしい。」
やっぱ高橋、優希のこと好きやん。
◇
昼休み
「おらぁぁぁ!」
うわっ。
投げられたボールをギリギリでかわす。
「ナイス!」 「キャッチしろキャッチ!」
ドッチボール、こっちは残り一人で相手は五人ほど。しかも相手ボール。
俺がキャッチするか、相手がミスってこっちの外野にボールが渡るかしないと始まらないが…
「「がんばれ、健太~!」」
その時、上から声がした。
教室の窓に、美咲と優希の顔が見えた。
相手は一瞬ぽかんとした後、こっちに恨みのこもった視線を向けてくる。…なぜか味方も数人。
怒りに任せて投げられたボールが、まっすぐこちらに飛んでくる。これならキャッチは簡単だ。
ぶい!
試合は、俺がボールを外野に渡してから味方があて続け、そのまま勝った。この後めちゃくちゃダルがらみされた。
◇
「だぁー、死んだぁ!きもすぎこいつ!」
「きもいのはあんたよ。てかうるさい。」
「まぁ私に任せときなって。1対3でも勝ってやるから。」
カチャカチャと、コントローラーを操作する音だけが響く。
「っしゃあ、あと一人…あ。」
建築がバラバラと壊れていく。どうやら敵の一人が味方ごと落としたようだ。
「あと一人だったのにぃい!」
「優希もうるさい。」
「ごめん。」
「いいよ。」
「ありがと。」
なんだこれ。
「そういやさ、ちょっと買いたい物があるんだけど一緒に行かない?」
「何?」
「ちいかわのキーホルダー。」
「あー、朝女子達と話してたあれか。」
「健太盗み聞きしてたの?いい趣味してんねぇ。」
「あんな教室の真ん中で話されると勝手に耳に入ってくんだよ。」
「え、私そんな目立ってる?可愛いからしょうがないけどさぁ。」
「なんだこいつ。」
まあかわいいのは認めるが。
「で、何だっけ。ちいかわ?」
「あ、そうそう。今から行きたいなって。」
「ちょっと親に聞いてみるわ。」
「私も。」
「よろー。」
◇
「…」
優希が真剣な目でグッズ達を見つめている。多分脳内で小遣いと相談しているのだろう。それにしても、目がガチだ。
「お、健太と美咲さん。今日はデート?」
げ。なんでいるし。
話しかけてきたのは三人の男子。親友1人、そこそこ仲いいやつ2人だが、今会いたくはなかった。
「いやちげーから。てか優希もいるし。」
「まじ?…何してんの?これ。」
「ちいかわグッズ選んでるらしい。」
「へー…」
「「…」」
「そこ、見惚れてないで話しかけたら?」
「えっあっはっゆっ優希さん…」
「うーん。これにしようかなぁ…あれ、こんにちは?」
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。三人もちいかわ見に来たの?」
「いや、俺らは暇だから歩いてたら、たまたま健太と美咲さんを見かけて…」
「へー…じゃあさ、皆で周る?」
え、それはやだ。
俺は親友に目線を送る。こいつは俺が美咲のことが好きだって知っている。
気づけぇぇ
「いや、いいよ。3人で来てんだから邪魔したくないし。」
浩平ぃ(泣)