Cyberpunk: After Glow — Short Stories 作:AfterGlow
冷却ケースを固定していた電子ロックが解除される。温度管理・密閉状態ともに正常の表示。
「よし、盗った!」
ノヴァの明朗な声が響く。
ワトソン地区、カブキ。今回のギグは、冷却管理が必要な特殊データシャードをケースごと盗み出すこと。300kgはあろうかという巨大なケースをSTELLAに乗せた。あとは脱出し、依頼者に引き渡せば仕事は終わりだ。
アレックスは扉の前に立つと、二人へ視線を向けた。
「よし、早く逃げよう。極力見つからないように……」
その時、出し抜けに保管庫のドアが開いた。そこには、物流拠点の警備員が立っている。
「……」
「……」
一瞬の沈黙。
「侵入者……」
言い終わる前にアレックスはOmahaを発砲した。弾丸は警備員の右目と喉に吸い込まれ、その場に倒れ伏した。
鳴り響くサイレンの中、アレックスは振り返った。
「……極力見つからないようにいこう」
「もうバレてんのよっ!」
ノヴァが怒鳴ると、リリィは大きく息を吐きながら首を横に振った。
ノヴァの眼が橙に輝く。ホロ画面に、施設内の監視カメラ映像が次々と開いた。
「……敵は右から6、左から4。奥からもまだ来てるよ」
「出口は?」
リリィが短く問いかける。
「正面搬入口だけ。けど、ぶあつ~い防弾シャッターで閉じられてるよ」
「そこでいいよ」
アレックスが口を開いた。
「……話聞いてた?」
「出口は作るもん……だろ?」
口の端を持ち上げると、搬入口に向かって走り出した。
「ぶっ壊す気満々じゃん……」
ノヴァは軽く息を吐き、リリィと共に後を追った。
◇
「ふんぬっ!」
搬入口に到着するや否や、案の定閉じていた防弾シャッターを、アレックスは思い切り殴りつけた。一撃でシャッターの中央が陥没する。
「もう一発!」
再び渾身の力を込めて拳をふるうと、シャッターは大きな音を立てて吹き飛んだ。重い鋼鉄の塊が宙を舞い、
「ぎゃっ!」
搬入口付近で待ち伏せしていた警備員を数名、まとめて押しつぶした。
「今だ!」
アレックスが叫ぶ。
「やっぱりね」
ノヴァは小さく肩をすくめた。
「急いで!」
リリィが檄を飛ばす。
三人は遠隔で呼び寄せたチームの愛車━━マッキノーに乗り込もうと駆けだした。背後からは鳴りやまない銃声。ロケットランチャーでも撃たれたのだろうか、何やら飛来物の甲高い音も聞こえる。
「来た!」
三人の眼前にマッキノーが現れた。
━━その時だった。
ドォォォン!
マッキノーの上に、先ほど撃たれたのであろうロケット弾が着弾した。外装が弾け、窓が吹き飛び、車体の一部が大きくひしゃげる。車体はそのまま炎に包まれた。
「く、くる……車……」
普段からマッキノーの整備を一手に引き受けているリリィは、その場で呆然としていた。右目には涙が溜まっている。
「車が……」
よろよろと頼りない足取りで振り返る。ロケットランチャーを撃ったのであろう者を囲んで、敵がハイタッチしている。リリィの中で、何かが切れた。
「きっさまらぁぁぁぁ!!!」
腰に差した赤熱刀━━ERATTAを抜き放ち、猛然と斬りかかる。……斬りかかろうとしたところを、アレックスとノヴァが必死に止めた。
「今はヤバいって!!」
「死んじゃう! 死んじゃうから!」
そうこうしているうちに、またもや銃弾の雨が降り注ぐ。
「ノヴァ!」
リリィを羽交い絞めにし、なんとか制止しながらノヴァの名を呼ぶ。
「ちょっと待って! えーと、えーと……」
橙に光るノヴァの眼が、何かを捉えた。
「こっち!」
搬入口に並ぶ配送車へ向けてSTELLAを滑らせる。アレックスも、リリィを羽交い絞めにしたまま後を追う。その中の一台を大急ぎでハックすると、ロックを開けた。
「乗って乗って!」
「乗ってって……」
アレックスが車を見上げる。白い大型食品配送トラック。側面には陽気な食品会社のマスコットが描かれている。どう見ても戦闘用ではない。
「早く!」
ノヴァが運転席を後ろにスライドさせると、STELLAごと乗り込んだ。
「離してください坊ちゃん! あいつら殺します!」
そう言って暴れまわるリリィを、アレックスは強引に助手席に押し込んだ。
「あいたっ!」
Gorilla Armsの力で押されたリリィが、助手席へ頭から滑り込んだ。
「ごめん!」
助手席のドアを閉める。アレックスはSTELLAに載せられていた冷却ケースを持ち上げると、そのまま開いていた荷台へ運び込んだ。
「ケースは俺が見る!」
300kg近いケースを床へ降ろし、自分も荷台へ飛び乗る。
「捕まってな! とばすよ」
ノヴァはSTELLAからコードを伸ばすと、車両側のローカルポートへ接続する。助手席では、ようやく身体を起こしたリリィがシートベルトへ手を伸ばした。
「ちょっと待って下さい! シートベルト……わっ!」
言い終わらないうちに、三人を乗せた配送車は脱兎の勢いで飛び出した。
◇
配送車の内部は、外観よりも広く見えた。運転席と助手席の背後は荷台と繋がっており、車内からそのまま前後を行き来できる構造になっている。
ノヴァはアクセルを全開にした。時速150km程度まで一気に加速する。
「うわっ!」
荷台では乱雑に積み込まれた食品、備品が滑り始め、冷却ケースがアレックスに迫った。後部ドアと冷却ケースの間に自分の身体を挟み込み、なんとか激突を防ぐ。
「ノヴァ!気ィつけろよ!安全運転!」
後部ドアと冷却ケースの間で人間つっぱり棒になりながらアレックスが叫ぶ。
「わーかってるって!」
「坊ちゃん!ご無事ですか!?」
リリィが荷台へ声を飛ばす。
「何とか!リリィこそ大丈夫!?」
その声を聴くと、リリィは顔を赤らめた。
「……すみません。先ほどは取り乱しました……」
「別にいーけどー!」
その時、リリィが何かに気付く。
「追手です!」
背後の物流拠点から、黒い装甲SUVが五台飛び出した。さらにバイクが四台。追手が迫ってきている。
「え?なに?見えないんだけど?」
アレックスが荷台からわめく。
「あれはまさか……」
ノヴァは目を細めた。敵の車両それぞれに、カラスが荷物を運ぶアイコンが刻み付けられている。
「RAVENHAUL!」
「知ってるのですか、ノヴァ!?」
リリィは右目を見開いた。
「いんや、今検索しただけ」
アレックスとリリィの力が抜ける。
「なんだよそれ!」
「えーと……荷物奪還専門の傭兵だってさ!」
ノヴァは器用に運転しながらデータを検索する。
その時だった。何かを発射するような、胃の底に響く重低音が聞こえた。
「なん……」
その時、アレックスが両足を突っ張っていた後部ドアを、巨大な鋼鉄製の杭が突き破った。
「うぉ!?」
後部ドアがべきべきと嫌な音を立ててひしゃげていく。
「……まさか……」
アレックスは慌てて冷却ケースを車両前方へ押した。
次の瞬間、後部ドアが吹き飛んだ。荷台が野ざらしになり、急に視界が開ける。ネオンの明かりが目を刺した。
追跡車両から伸びたワイヤーの先で、引き剥がされた後部ドアが大きく揺れていた。敵が大型ハープーンを後部ドアに撃ち込み、ワイヤーを巻き取って強引に引っ剥がしたようだった。
「野郎……」
追撃車両の無線が開いた通信帯へ流れ込んだ。
『目標車両を確認。ケースの損傷は禁止』
『乗員は全員殺して構わない』
「聞いた!?」
ノヴァが後方へ叫ぶ。
「戦争がご所望らしいよ!」
「……OK!」
アレックスはOmahaを抜いた。
◇
最初のバイクが荷台へ並んだ。運転手の後ろに乗った兵士が、ワイヤーランチャーを構える。
「右!」
リリィの声が響き、アレックスがOmahaを撃つ。弾丸が運転手の側頭部ごと、ヘルメットを貫いた。バランスを崩したバイクは後続車の下へ滑り込み、車体ごと爆発した。
「一ポイント!」
「ポイント?」
「競争だよ」
アレックスはOmahaへ新しい弾倉を挿入する。
「乗った、負けたらチェン爺のラーメン奢りね」
「仕事中ですよ」
リリィは助手席の窓を開くと、愛銃Nueを二発撃ち込んだ。左側のバイクに乗っていた兵士の胸と首が弾ける。車体がガードレールへぶつかり、乗員ごと下層道路へ落ちていく。
「私も1ポイントです」
アレックスが運転席の方へ目をやる。
「参加してんじゃん!」
「負けませんからね」
追撃SUVが距離を詰める。車体前部のラムバーが荷台へ激突した。衝撃で、荷台奥の業務用冷蔵庫を留めていた固定具が、嫌な音を立てて外れた。アレックスが冷却ケースを抱えたまま跳ねる。
「ノヴァ!」
「わかってる!」
SUVの屋根から兵士が二人飛び移った。一人目が荷台へ着地し、アサルトライフルを向けてくる。
アレックスが冷却ケースを盾にしようとして、直前で止まった。
「これ壊しちゃダメなんだよな」
「当たり前です!」
ケースを固定具へ押し込み、そのまま敵へ突っ込む。銃弾がGorilla Armsの装甲を叩く。アレックスは構わず拳を振り抜いた。
敵兵の頭部がヘルメットごと潰れ、身体だけが荷台の外へ消える。
二人目が背後からナイフを振るう。リリィが助手席から荷台へ転がり込んだ。その勢いのまま蹴りを浴びせる。兵士の膝が逆方向へ折れる。倒れた首へNueを一発。
「二ポイント目です」
「俺も!」
リリィはそのまま助手席へ戻った。
「坊ちゃん、後ろ!」
アレックスが振り返る。業務用冷蔵庫が荷台を滑ってきていた。
「うぉっ!?」
「アレックス、大丈夫ー?」
「あぶねーな、固定しとけよ!」
「急いでたから!」
アレックスが両手で受け止める。冷蔵庫の扉が開き、中から袋詰めの合成鶏肉が大量に飛び出した。
「最悪!」
後方のSUVが再び接近する。Omahaを向ける……が。
カチッ。
「……?」
カチッ。カチッ。
「チッ」
ポケットを弄る。予備の弾倉はもうなかった。
「弾切れだ……」
SUVに乗る敵は、今にも突入しようと息巻いている。
「くそっ……何かないか!なにか……」
ふと、先ほどの冷蔵庫が目に止まった。アレックスは冷蔵庫を見る。SUVを見る。持ち上げる。
「クリスマスプレゼントだ!」
投げた。
「なぁっ!?」
敵の表情が驚愕と恐怖に染まり、冷蔵庫がSUVのフロントガラスへ直撃した。車体が大きく横を向き、隣の追撃車を巻き込んで中央分離帯へ突っ込む。二台が炎に包まれた。
「はっはぁー!二ポイント追加!」
「いや、今のは冷蔵庫の点」
アレックスは運転席のノヴァへ顔を向けた。
「そんなのアリ?」
◇
『前方車両、封鎖位置へ移動』
敵の無線が流れる。高速道路の先で、大型トレーラーが横向きに停車した。その手前へ装甲車が二台、屋根には機関銃手。
「道塞がれた!」
ノヴァはハンドルを握ったまま叫んだ。
「止まれる?」
アレックスが尋ねる。
「止まったら後ろから囲まれる!」
「じゃあ突っ込む?」
「突っ込んだらケースが壊れる!」
「どうすんだよ!」
リリィが前方へ視線を送る。
「左側に、工事中の昇降路があります」
「でもあれ……」
アレックスも左へ目をやった。幅はなんとかなりそうだが、高さはどうにも厳しそうだ。
「上部の標識を破壊すれば通れます」
リリィはアレックスをじっと見つめた。
「俺?」
「坊ちゃんにしかできないことです」
「……俺にしかできない?」
リリィはアレックスの肩に手を置くと、にっこりと微笑んだ。
「カッコいいところを見せてくださいませ」
「ったく、仕方ねえな!」
——ちょろいなこいつ。
ノヴァは心の中で思った。
アレックスが屋根へ上がると、風圧で長い黒髪が激しく揺れた。リリィは助手席の窓からNueを構え、工事用標識を支えるワイヤーへと狙いを定めて発砲した。
ワイヤーが切れる。だが標識は落ちず、道路の上で傾いただけだった。
「まだ残ってる!」
ノヴァが叫ぶ。
「運転に集中しろ!」
アレックスが走る。トラックの先端から跳んだ。Gorilla Armsが標識の支柱へ叩き込まれる。金属が折れる。
巨大な標識が前方へ倒れ、封鎖していた装甲車の上へ落下した。機関銃手ごと車体が押し潰される。
「開いた!」
「坊ちゃんは!?」
空中に取り残されたアレックスが叫ぶ。
「ここ!」
トラックが昇降路へ突っ込む。リリィが助手席から身を乗り出した。アレックスへ手を伸ばす。
「坊ちゃん!」
「届かない!」
「まかせろぉおおおおおお!」
ノヴァが急ハンドルを切った。
「今!」
アレックスがリリィの手首を掴んだ。そのまま車体側面へぶつかる。
「痛ッ!」
「離さないでください」
「絶対離さない!」
リリィがアレックスの腕を引き、車体へ足を掛けた彼を助手席へ引き上げる。助手席へ転がり込んだアレックスを、リリィが抱き留める。顔を上げると、リリィと目が合った。
「重いですね」
「成長した証だよ」
「……はい、本当に」
ノヴァが前を向いたまま口を挟む。
「いちゃつくのは後ね」
「いちゃついてない!」
「運転に集中してください」
リリィの右目が冷えた。
「あたしを誰だと思ってんの!?」
ノヴァは不服そうにスピードを上げた。
「危険運転スピードジャンキー」
「ナイトシティのスピードクイーンとはあたしのことよ!」
「聞いていませんね」
背後では、倒れた標識と押し潰された装甲車が昇降路の入口を塞ぎ、追ってきたSUVとバイクが次々と急停止していた。
◇
アレックスは助手席からウォークスルーを抜け、再び荷台へ戻った。別の進入路から回り込んだRAVENHAULの指揮車は、それでも追跡をやめなかった。
黒い高速車両。助手席の狙撃手が、冷却ケースの固定具を狙う。
「ケースを奪う気だ」
アレックスがケースを庇うように前に立った。
「壊れてもいいっての?」
「壊さない自信があるのでしょう」
リリィはNueを構えた。だが指揮車は死角へ入り、射線を切る。
『こちらRAVENHAUL。逃走者に告ぐ、荷物を渡せ』
外部スピーカーから声が響く。
「渡すわけねーだろ。バカじゃないの?」
リリィは指揮車の動きを目で追っていた。
「前へ出ます」
「どうやって?」
指揮車が速度を上げ、トラックの横へ並ぶ。窓が開き、狙撃手の銃口が黒く光る。
リリィは機先を制して発砲した。初弾が狙撃手の肩を砕き、次弾が運転手の側頭部を貫いた。指揮車が蛇行する。
後部座席から指揮官が運転席へ手を伸ばし、車体を立て直した。
「しぶといな」
アレックスが荷台の積み荷へ目をやる。かなり大きなサイズの冷媒ボンベが二本転がっていた。さらに後方へ視線を向ける。後方のドアはなくなり、依然としてナイトシティの街並みが高速で吹き飛んでいた。
「ノヴァ」
「何?」
「……いいこと思いついた」
アレックスが冷媒ボンベを二本抱えた。
「リリィ」
短く呼びかける。アレックスの紅い眼を見た瞬間、リリィはその意図を察して小さく息を吐いた。
「危ないことばかり覚えて」
「いいから!」
アレックスがボンベを投げる。二本が指揮車の前方へ落ちる。リリィがNueを撃つ。着弾。
圧縮冷媒が路面へ爆発的に広がった。道路が白く凍結する。指揮車のタイヤが滑る。車体が横を向き、ガードレールへ激突した。
指揮官は窓から這い出す。まだ銃を握っていた。リリィは銃口を上げた。
「これで終わりです」
弾丸は指揮官の額を正確に捉え、小さな穴を作った。指揮官は数歩よろめき、そのまま高架下へ落ちていった。
後方に、動く車両はもうなかった。
「終わったぁ」
ノヴァが大きく息を吐いた。
「撃破数は?」
アレックスが聞く。
「あっ、忘れてた!……でも」
「でも?」
「MVPは冷蔵庫だね」
ノヴァは歯を見せて笑った。
◇
受け渡し地点は、廃業した自動車整備工場だった。依頼人の女が、トラックの到着を目にして眉を上げる。
「その車は?」
「借りた」
アレックスが短く答えると、女はそれ以上聞かなかった。冷却ケースを荷台から下ろす。
「復号鍵。温度も中身も問題なし」
依頼人はケースを確認し、安堵したように息を吐いた。
「マーリンの言った通りね。いい仕事するわ」
アレックスは誇らしげに口の端を持ち上げた。報酬の振り込み通知が三人へ届く。
「お仕事完了!」
ノヴァが両腕を上げた。
依頼人は冷却ケースを奥へ運ばせながら、ふとトラックの荷台へ目をやった。
「ところで……積み荷は?」
アレックスも振り返る。荷台には、破れた合成肉の袋と、転がった清掃用品しか残っていない。
「途中で使った」
「使った?」
「ああ。すごい威力だったよ」
依頼人が黙る。ノヴァが指を一本立てた。
「冷蔵庫が追跡車を二台」
「一台は冷媒です」
リリィが訂正する。
「じゃあ冷蔵庫一台、冷媒一台」
「どっちでもいいよ」
依頼人は三人を見比べた。
「食品配送車だったのよね?」
「うん」
依頼人は額を押さえた。
「依頼に無関係な車両と積み荷の損害は、経費として認められない可能性があるわ」
「「「えっ」」」
三人が固まった。三人の視界UIへ、マーリンから経費控除の通知が届いた。リリィが金額を確認する。
「……赤字ですね」
その時、アレックスが何かを思い出したような顔をした。
「リリィ!車!」
「あっ……」
ノヴァがマッキノーの車載システムへ接続する。
「……一応、生きてる」
そのまま遠隔で呼び寄せた。依頼人は冷却ケースを回収すると、三人を残してさっさと整備工場を後にした。
一時間ほど待つと、ほぼ骨組みのみになった愛車が三人の前に現れた。
「……よく動いたね、これ」
ノヴァとアレックスの視線に、リリィは反応しない。
「……先ほどの発言は訂正します」
リリィはがくりと肩を落とした。
「……めちゃくちゃ赤字ですね」
三人の目の前には今回の収支が計算されたホロ画面が、痛々しく瞬いていた。