「ルディーーっ!」
大きく手を振り、無邪気な満面の笑顔を向けて走ってくる一人の少年。
風に揺れる灰銀色の髪と、こちらを真っ直ぐに見つめる瞳。その表情には、俺と会えることが嬉しくてたまらないという気持ちが、これでもかというほど表れていた。
グレイ・カーティス。
俺──ルーデウス・グレイラットが、この世界に転生して初めてできた『友達』だ。
出会いのきっかけはパウロだった。
5歳になったら俺に剣術の稽古をつける予定らしく、「歳が近くて切磋琢磨できる仲間がいた方がいい」という理由で、剣を習いたがっていたグレイを連れてきたのだ。
正直、最初に会った時は生きた心地がしなかった。
前世が引きこもりニートだった俺にとって、家族とロキシー以外の『見知らぬ他人』と対面するのは、前世のトラウマが蘇るレベルの試練だったのだ。
……だが、いざ蓋を開けてみれば、このグレイという少年、驚くほど人懐っこい。
最初は彼なりに人見知りしてモジモジしていたようだが、一度打ち解けて『ルディ』と呼ぶようになってからは、一気に距離を詰めてくる。
「ねえルディ! 今日の素振り、すごくいい感覚だったんだ!」
ほら見ろ、今もニコニコと輝くような笑顔で、今日掴んだという剣の感覚を熱弁してくれている。
うーむ、実に微笑ましく、可愛らしい。前世の薄汚れたおじさん心が洗われるようだ。
……ただ、唯一にして最大の惜しい点を挙げるとすれば。
このグレイ・カーティス君が、『生粋の男の子』であるという点だ。
これがもし、儚げな美少女か天真爛漫な幼女であったなら──!
俺の『幼馴染ヒロインルート』が爆速で開通し、将来の婚約者候補として甘酸っぱい青春を謳歌できたかもしれないというのに。神様はなんとも意地悪な配役をしてくれたものである。
まあ、冗談はさておき。
初対面の相手に抵抗感をまだ抱えてる俺にとって、この世界で最初にできた友達が彼のような素直で真っ直ぐな奴で、本当によかったと思っている。
「へえ、すごいじゃないかグレイ。どれ、後で僕にも見せてよ」
「うん! 任せて!」
俺は、元気に胸を張る小さな友達の頭を、そっと撫でてやった。
グレイは嬉しそうに目を細め、まるで尻尾を振る子犬のように笑った。
……本当に、裏表のない奴だ。
前世の俺は、人との関わりを恐れ、誰かと親しくなることから逃げ続けていた。だからこそ、こうして何の打算もなく自分に懐いてくれる存在が、どれほど貴重なのかが分かる。
グレイと出会えてよかった。
俺は心から、そう思った。