ワタシが生まれたのはいつなんだろう。昨日?今日?気づいたらここにいた。
「(ここは…どこ?)」
ワタシがいたのはどこかの部屋。仄暗く、不気味さを感じた。でも、なぜか安心するような場所だった。
『本日もシーシュポス百貨店へお越しくださいましたお客様を、心より歓迎いたします。』
どこからか声が聞こえる。わかったことが一つ、ここはシーシュポス百貨店という場所らしい。
「(とりあえず、この場所から出よう。)」
外にはたくさんの人がいた。一部は狼狽えていて、多くは虚の目で何かを探していた。
この場所を聞こうと人に近づくとすり抜けてしまった。
「(この人のような手が…ない?)」
手だけでなく足や声までもがワタシにはなかった。そして人々の視線は私に向けられなかった。
「(ついて行かなきゃ。)」
なぜかそう考えてしまった。なぜか助けてあげなきゃと思った。
人々について行き、たどり着いた部屋に不思議な感覚がよぎる。ワタシのようでワタシじゃない感覚だった。
「なんだ、このバケモノ共は…!?」
人々が恐れている"ソレら"。
「(アレはなんだろう?)」
"あの子たちは自分の信じる道を行ったんだよ。きっと救われてるの"
どこからか声が聞こえた。救われたかったの?こんな姿になってまで。
ソレらは流行を、服や靴などというものを追い求めていた。目まぐるしく変わるシーズンに翻弄され続けて、目玉というものを硬貨として使っている。
「あんたらは…生地として使えそうだ。」
一部の人は何かを剥がれ、赤いものを削ぎ落とされ、赤い汁を吹き出して、服や靴の一部となっていった。叫んで、助けを求めている。
それを見たワタシは驚いた。でも、ただそれだけだった。それが普通なんだと感じた。だけど…。
「クソッ…!あいつら狂ってやがる!」
「(…これが普通じゃないんだ。じゃあ、あなたたちが言う普通ってどんなものなの?)」
ふと。興味が湧いた。ここを出てみたらどんな世界があるのか。
「(でも、まずはこの場所を見てみなくちゃ。)」
様々な部屋があった。人が言うには"お店"と言うものらしい。黒い部屋、赤い部屋でそれぞれ流行が違うらしい。
お店のソレらの機嫌を損ねて動かなくなる人もいた。服や靴を手に入れようと目玉を手に入れるように躍起になる人もいた。
赤い部屋のモノを着飾る人と黒い部屋のモノを着飾る人で別れ、争った。動く人も動かない人もいた。
狂ってると言ってた人も動き続けるために必死に目玉を集めて、着飾っていった。
「もっと目玉を、流行に乗らないと、俺は…。」
人は恐れている。自分の存在がわからなくなっている。死にたくないと心から叫んでいる。可哀想だ。思考が埋め尽くされる。
"助けよう。自分の道を教えてあげなくちゃ。"
どこからか聞こえる声に倣うように、人の近くに寄って、ワタシは"声"をかける。
「"大丈夫?"」
その人はワタシを見た。…いや違う。人はこっちを向いているけど、目はワタシに向けていなかった。
「(ねえ…あれ?)」
また声が出せなくなった。人はワタシが話さなくても人だけで話していた。そして人の体は変わっていく。何かが突き破り、縮み、溶け合う。
「ああ…これで、もっと流行に…。」
人は人ではないソレらに変わっていった。
どうして?ワタシが話しかけたから?
"その子は自分の道を見つけることができたんだよ。"
こんなことをしようとした訳じゃない。ただ話を聞こうとしただけなのに。
難解すぎませんかね、今回のストーリー