転生スタンド使いの日常。 作:匿名の読む専
転生スタンド使いの日常プロットその2。
ナンパ(無関係の一般人は介入しづらい)。
高校入学後。
夏。
登場人物。
主人公。
日野森雫(ここが主人公との初対面。)。
ナンパ男A&B。
花里みのり。
警備員さん。
子供の頃から良く足を運ぶショッピングモール、俺は今日、フィギュア漁りとKAITOの痛バッグを完成させる為に足りない缶バッチの残り7枚を探しに来ていた。
主人公「ここで買えたのは6枚…あと…後1枚…後1枚で全VOCALOIDの痛バッグ完成するのに…割とマイナーな弱音ハクとかのも完成してるのに…なぜKAITOだけ…?」
俺は妖怪1足りないを滅ぼす虫よけスプレー的な物を探す事を真面目に検討しながら店を出た。
そしてふとショッピングモールの真ん中を見ると、昔見たことがある何か凄いAPP高い人が困った顔をしていた。
主人公「ふむ…周囲には男二人…事案ですかねぇ…しかーし、この考調はショッピングモール超常連、こういうトラブルを見たのも一度や二度じゃあ無い…!」
そう、昔から迷子や対人トラブルが稀に良く起きるショッピングモールに通っていた考調はその対処方を良く知っていた!
主人公「始めてトラブルを目撃した時もこの対処方法を使った物だ…さっさと行くか」
そうして俺は、推定ナンパを受けているAPP高い空色の髪をした女性の元へ………
は向かわずに4階にあるショッピングモールの警備員室に直行した。
主人公「フッ昔から良くトラブルを見る度に駆け込んでるからな、最早警備員さんとは顔見知りよ…!」
主人公(とは言え早めに解決した方が良さそうだな…男の方がヒートアップしたら変な前科付いちまうかもだし…女性の方も危ないかもしれん…まぁ別に男の方を気にかけてやる必要は無いけどよ。)
主人公(AXIOM!act1!AXIOMは俺の動作の補助を完璧にこなせると証明する!)
ドゥギャァーン!!!(※効果音は適当)
証明成功(Q.E.D.)
スタンドを重ねた足で階段を駆け上がる。
主人公(エスカレーターを駆け上がるのは危険行為だしスタンド使うならエレベーターより階段のが早い!)
主人公「警備員さーん!一回の通路、3番の店の前でトラブル!何かしつこいナンパにあってる女性が居る!」
警備員さん「なんですって?わかったわ考調くん!いつもありがとうね?さて…ドゥラァァァァ!!!店と女に迷惑掛ける輩は壺漬けにスッゾゴルァ!!?」
主人公「…やっぱキャラ濃いんだよな…」
(※警備員さんとはテキーラ娘見たいなムキムキのカマである、筋肉質なのに顔が中性的だからガタイの良さを収める服を着たら大きい女性と見紛われる程度には整っているが声にドスが効きすぎているので全てを帳消しにしている。)
主人公「…一応見に行くか…警備員さんにナンパ男達が血祭りに上げられてるのは見たくないけど…」
そうして一階に到着した時、俺の目に映ったのは…階段下で頭打ったとしか思えない体制で気絶しているおカマの不審者だった。
主人公(いやなにやってんのォォォ!?お前が倒れたら意味無いだろうが!?見てるよ?女性の方もナンパ男の方もスッゴイ唖然とした顔で見てるよ!?お前普段は自分…合金で出来てますんで、見たいな顔面と筋肉して階段でコケて気を失ってんじゃねぇぞ!?!?エッホントに階段でコケて気絶したのコイツ!?)
主人公「警備員さーん!?なに!?階段でコケたの!?嘘だろアンタ!だから毎回もうちょっと落ち着けって!?」
その時、主人公の視界に見知った顔が映る。
主人公(うん?…( ゚д゚)ハッ!アレはみのりちゃん!?なぜそこに…仮説1、あの女性と知り合い。
仮説2、持ち前の不幸体質で巻き込まれた。
みのりちゃんは俺の前世と今世合わせても見たこと無いレベルのいい子だ!あんな奴らに迷惑掛けられてるとかマジ許せんのだが?ナンパ男どもはサモちゃんに噛まれて死ね!)
…落ち着いた。
主人公(とりあえず推定ナンパ男どもは確定と見て良いな、ここで普通の転生物だったら颯爽とお待たせとか言って連れ去るかナンパ男共を拳で解決するがそれをやったら普通に暴行犯として捕まる…みのりちゃんが居るなら行ける作はあるけど)
この間約5秒。
作戦を思いついていた。
主人公「よ!みのりちゃん、何で此処に?その人らは知り合い?」
みのり「あ、考調くん!ううん、知り合いじゃ無いんだけど…この人が私の学校の先輩でお友達で…ええっと、とにかく大切な人なんです!その人達に絡まれて困ってたみたいで間に入ったんだけど…」
主人公(ンーみのりちゃんもナンパの対象になっちゃったんやろなぁ…君はアイドル目指すだけあって容姿の手入れを怠ってないんだから可愛い事を自覚しなさい…。)
日野森雫「あら?その人はみのりちゃんの知り合い?」
みのり「あ、はい、雫ちゃん先輩は初対面ですよね、この人は大城考調さん、家の犬の散歩中によく会うんです」
そうやってひそひそと話している3人。
ナンパ男達はそろそろ復活しそうだ。
主人公「復活される前に逃げてしまおう」
みのり「考調くん、どうやって逃げるの?」
主人公「走る」
みのり「む、無理だよぉ…さっきまでランニングしててその帰りだから…私ヘトヘトで…」
主人公(おっとぉ…不幸体質がこんな所で作用していらしたか…!しかたねぇ…攫うか)
何いってんだコイツ。by作者。
主人公「アナタは自分で走れますか?」
顔の良い人に声を掛ける主人公。
雫「え、ええ、走れるわ」
主人公「よし、みのりちゃん、通報は勘弁してくれ」
みのり「へ?」
(AXIOMの自己証明はまだ続いている!)
考調はAXIOMに補助させてみのりを荷物を脇に担ぐ様に抱えた。
雫「あら?」
主人公「うし、アナタも走ってください、逃げますよ!」
雫「わ、わかったわ!」
そうして、三人(二人)はダッシュでその場を後にした。
主人公が介入してからの要所時間、約25秒。
ナンパ男A「んな、ちょっと!?」
ナンパ男達が再起動した時には、目的の女の姿は無く、謎の警備員のカッコをした不審なオカマの凄まじい剣幕を思い出し、目を覚まされたらヤバいと思って彼らは退散した。
その後、みのりちゃんに通報は勘弁してくれと頭下げた主人公。
みのりちゃんは慌てて頭を上げさせた。
そして日野森雫には礼を言われて軽く自己紹介をして解散した。
…………………………………………………………………
因みに、改めてモモジャンメンバーとの中学生時点での関係。
現在は高校入学後なのでここから接点が増えるとは思う。
moremoreJMP。
花里みのり。
サモちゃん(花里家の飼い犬、サモエド)の散歩中に主人公の体質(?)に引き寄せられて主人公に突撃、主人公はモフッとした感触のそこそこの質量がいきなり腰に突撃してきて凄く驚く、そこから接点が産まれ、偶にサモちゃんの散歩中に主人公と出会う、時たま花里みのりの不幸に巻き込まれ掛けて主人公が回避、ついでに花里みのりの不幸(風で帽子が飛ばされる、や車に泥掛けられる、など)を打ち消す(花里みのりはスタンド見えないのでイマイチ気づかない、疑問には思う)。
桐谷遥。
接点無し、日中や午後も基本アイドルとしてストイックに励んでいるだろうから出会う時間が無い、主人公の場合朝早起きしてランニングとかしないから、もし接点があるとしたら桐谷遥のチートデイで隣の席に居る人くらいの接点だろう、日野森志歩と同じ感じで独特なスタイリッシュさが目に付き、印象に残る、何分人に魅せる仕事だから主人公の動作が洗練されている事に気づき何者だこの人…?ってなる。
桃井愛莉&日野森雫
恐らく接点無し、そもそも日常的に外に出てふらふら歩いてる主人公との接点を考えると町中で偶然出会う、くらい、そもそも主人公15の時点で宮女に通っている+主人公がその付近まで行く事があまり無いので接点が生まれることが無い、桃井愛莉は服のショッピング中に偶然すれ違うとかはあるかもしれないが主人公はそんなにアイドル詳しく無いので桃井愛莉さんですか!?とはならないしなったとしてもファンとしての行動を弁えるのでリア凸とかはしない、見なかった事にする、日野森雫は町中ですれ違って何かすげぇAPP高い人居る…!って一瞬目を奪われるくらい、その後良いもん見たなって気分上機嫌になりながらゲーセン直行する。
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警備員さんの概要。
見た目、口調共にオカマだけど心は普通に男。
見た目のオカマっぽさは大体キッチリ着こなした警備員服と自分の肌や身だしなみの手入れに本人の元の中性的な顔が悪さしてる、ガタイもしっかり鍛えてるので良いのがなおさら。
体格を隠せる服を着れば普通に女性と思われる事もある。
幼い頃に父を亡くして母より女手一つで育て上げられ、愛情を目一杯注がれて育ったが、その影響もあってか口調が自然と女口調になってしまった、本人は昔は気にしていたが現在勤めているショッピングモールのオーナーやそれぞれの店の人間、ショッピングモールの常連さんに良く親しまれて受け入れられてからは気にしなくなり、それをキッカケにこのショッピングモールの警備員になる事を志願する。
以上の理由からショッピングモールで問題起こす奴を許さず、必ず取り締まると気合が入りすぎる事も多々ある。
主人公はそういう事情も知っているので今回の警備員の惨状も昔からいつかはこうなるかもと予想していた。
1月1日、午前六時。
新年早々、俺は父さんと母さんに連れられて明治神宮までやって来ていた。
目的は初日の出を見ること、ついでに初詣も済ませてしまおうという計画である。
家から近い神社なら宮益御嶽神社があるのだが、せっかく初日の出を見るのなら、よく見える場所が良いという話になり、少々遠出して明治神宮を選んだのだ。
「いやぁ、今年も人が多いな」
「まだ六時なのにねぇ」
「初日の出を見に来る人もいるからな、そりゃあ多くなるだろ」
周囲を見渡せば、参拝客だけでなく神社の従業員さんたちも忙しなく動いている。
新年早々ご苦労なことだが、正月の神社というのはそういうものなのだろう。
そもそも神社は大晦日から元日にかけて午前零時には開いているところも多いし、初詣に来る人間だって深夜からいるのだから、働く側も大変だ。
とはいえ、午前零時からずっと人が多いというわけでもないらしい。
深夜に来る人もいるにはいるが、参拝客がちらほら増え始めるのは午前四時くらいからで、初日の出を見に来る人も加わるため、午前七時前後にはかなりの人数になる。
「考調、今年もおみくじを引くのか?」
「もちろん、毎年恒例だからな」
「大吉が出ると良いわね」
「毎年大吉だからなぁ、そろそろ別の結果も見てみたい気はする」
「そういうことを言っていると凶が出るんじゃないかしら?」
「それはそれで話の種になるから良いんじゃね?」
中学生になってからというもの、正月には父さんと母さんから五千円ほど貰い、あとは近場を好き勝手にふらつくのが俺の恒例行事になっている。
来年からは一人で来るか、友人と一緒に来るかのどちらかだろう。
高校生になれば行動範囲も広がるし、わざわざ家族全員で初詣に来る必要もなくなるかもしれない。
もっとも、家族で出掛けること自体が嫌なわけではないので、その辺りは来年になってから考えれば良い話だ。
今はまず、毎年恒例のおみくじである。
列に並びながら前の様子を眺めていると、少し離れた場所にいるおっさんが手元のおみくじを見て固まっていた。
「……大凶?」
その隣にいた推定友人のおっさんが、そいつのおみくじを覗き込んだ途端に大爆笑している。
「おいおい、マジかよ!新年早々に大凶って、お前すげぇな!」
「うるせぇ!お前だってどうせ大したことねぇだろ!」
「いやいや、俺は大丈夫だって!」
ずいぶんと楽しそうな二人である。
新年早々に大凶を引いた友人を笑い飛ばすのもどうかと思うが、まあ、本人たちが楽しそうなら別に良いだろう。
そんなことを考えているうちに、先におみくじを引き終えたはずのおっさんが、なぜかもう一度手元のおみくじを見直していた。
そして。
「ウワァァァ!オレモダイキョウダ!?」
「ダッハッハッハwwwダメじゃ~んwww」
「何でだよぉぉぉ!?」
……あ、前のおっさんも大凶引いてる。
しかも、二人そろって大凶というのはなかなか珍しいのではないだろうか。
片方が大凶を引いた時点で笑っていたのに、まさか自分まで同じ結果になるとは思わなかったのだろう。
周囲の視線など気にする様子もなく騒いでいる二人を見て、俺は思わず口元を緩めた。
「父さん、あの二人すげぇな」
「何がだ?」
「いや、片方が大凶を引いて大笑いしてたら、もう片方も大凶だったんだよ」
「それは……確かにすごいな」
「運が悪いのか、ある意味で運が良いのか分からんねぇ」
母さんまで面白そうに笑っている。
正月の神社には、こういう愉快な人たちも稀によくいるのだ。
俺は二人のことをそれ以上気にせず、順番が来たのでおみくじを引いた。
結果は大吉。
「……うん、知ってた」
「今年も大吉か!」
「おめでとう、考調」
「ありがとう、まあ毎年のことだけどな」
嬉しくないわけではないが、毎年のように大吉を引いていると、さすがに驚きも薄れてくる。
今年こそは別の結果が出るかもしれないと思っていたのだが、どうやら俺の正月のおみくじ運は相変わらずらしい。
そんなわけで、さっそく中身を確認してみることにした。
願い事。
首尾よく叶う、己を信ずるべし。
待人。
来る、居なくても出会う。
失物。
見つかる、見えぬ手を表すが吉。
旅行。
カス、良識と分別を守れば障りなし。
商売。
損なし、口が災いを退ける。
学問。
良く学ぶならば己を信ずるべし、近道は卑怯では無い。
相場。
待て、買わずとも手に入る。
争事。
既に天下無双、大人しくするが良し。
恋愛。
積極的になるべし、機会も人も周りに居る。
転居。
障りなし、しかし動く必要もなし。
出産。
……ペッ……歳月を重ねよ、法と時を待つべし。
病気。
治る、朝食は摂り損ねるべからず。
縁談。
思くうに任す、他の持ち込む物より己に殉ずるべし。
「…………」
俺はしばらく、おみくじを手にしたまま黙り込んだ。
いや、待て。
何だこれ。
大吉という結果そのものは良いのだが、内容があまりにもおかしい。
「……母さん、これって普通なのか?」
「どれどれ?」
母さんが横から覗き込んできたので、おみくじを見せる。
父さんも気になったらしく、反対側から顔を寄せてきた。
「旅行、カス……?」
「出産のところ、何か吐き捨てたような跡がないか?」
「……ペッ……って書いてあるな」
「だろ?」
俺も見間違いかと思ったのだが、どう見てもそうとしか読めない。
しかも、旅行の欄に至っては堂々とカスと書かれている。
おみくじというのは、神様からのありがたいお言葉を受け取るものではなかったのだろうか。
少なくとも、俺が今まで引いてきたおみくじは、こんなに喧嘩腰ではなかったはずだ。
「今年のおみくじを書いた人、疲れてたのかしらねぇ」
「それか神様が面倒くさくなってきてるんじゃないのか、これ」
「神様も忙しいだろうからな」
「いや、忙しいからって旅行をカス呼ばわりするのはどうなんだよ」*1
思わず突っ込んでしまったが、気持ちは分からなくもない。
正月の神社は大勢の人で賑わっているし、願い事だって山ほど寄せられるのだろう。
それでも、神様の言葉としてこれはどうなんだ。
ところどころ妙に辛辣だし、何なら唾を吐いたような痕跡まである。
俺は改めておみくじを見下ろした。
願い事と学問の欄には、そろって「己を信ずるべし」と書かれている。
失物には「見えぬ手を表すが吉」、争事には「既に天下無双」とある。
……見えぬ手に天下無双、己を信ずるべし。
これ、もしかしてAXIOMのことを言っているのだろうか。
単なる偶然かもしれないし、そもそもおみくじの文章に深い意味を求めたところで仕方がない。
しかし、俺が持っているスタンドの能力を連想させる言葉が、こうも揃っていると少しばかり気になってしまう。
「考調、どうしたの?」
「いや、何でもない」
考え始めるときりがない。
おみくじの内容が妙に変なのも、AXIOMを思わせる文言があるのも、今ここで考えたところで答えが出るわけではないのだ。
それに、せっかくの正月である。
神様が面倒くさがっているのか、書いた人が疲れていたのか、あるいは本当に何か意味があるのか。
そんなことは一旦忘れて、次の用事を済ませることにしよう。
毎年買っているお守りを買いに行くのだ。
今年も無病息災と交通安全、それで良いだろう。
お守りを売っている場所へ向かい、人の流れに沿って歩いていると、見覚えのある人物が目に入った。
あれは……ショッピングモールの警備員さんじゃないか。
普段はショッピングモールで見掛ける人なのだが、今日は神社のお守り売り場で働いているらしい。
「……何やってるんだ、あの人」
思わず呟いていると、向こうもこちらに気づいたようで、ぱっと表情を明るくして声を掛けてきた。
「あら?考調くんじゃない、初詣かしら?」
「はい、警備員さんはバイトか何かですか?」
「そうなのよ、実は町内会の人達にお守りを売るお手伝いを頼まれちゃってね、何でも元々ここで働いてた従業員が新年早々に風邪引いたらしくって」
「ソイツは災難ですね、従業員が早く治る事を祈っときますよ」
「そうね、さて!考調くんはどのお守りを買うのかしら?」
「えっと……コレとコレで」
売り場に並んだお守りを眺めてから、無病息災と交通安全のお守りを指差す。
毎年買っている二つなので、今年も特に迷うことはない。
「無病息災と交通安全のお守りね?合計1400円よ」
「丁度で」
「はい丁度、じゃあ、初詣楽しんでね〜」
「はい、そっちも店番頑張って」
代金を渡してお守りを受け取ると、俺たちは互いに軽く挨拶を交わした。
警備員さんはそのまま次の客に声を掛けており、俺も邪魔にならないように売り場を離れる。
……初詣に楽しむとかあるのだろうか。
参拝しておみくじを引いてお守りを買う、という毎年の行事を楽しんでいるかと聞かれれば、別に嫌いではないが、特別に楽しいというほどでもない。
それにしても、やっぱりあの人はキャラが濃いんだよなぁ。
見た目も口調も独特だが、話してみれば気のいい人だし、ショッピングモールで働いているときも常連客と楽しそうに話しているのをよく見掛ける。
ただし、モールで騒ぎを起こすような人間が相手になると、普段の親しみやすさが嘘みたいに厳しくなるのだが。
あれはあれで、仕事に真剣ということなのだろう。
そんなことを考えながら家族のところへ戻ると、ちょうど初日の出を見る時間が近づいていた。
午前七時。
父さんと母さんが早めに場所を確保してくれていたおかげで、俺たちは大勢の人々が集まる中でも最前列から初日の出を眺めることができた。
「おお、今年もよく見えそうだな」
「早起きした甲斐があったわね」
「二人とも場所取りありがとうな」
「どういたしまして、せっかく来たんだから良い場所で見たいものね」
周囲には日の出を待ちわびる人たちが大勢いて、あちらこちらから話し声が聞こえてくる。
やがて空の向こうが明るくなり、初日の出が姿を現した。
「……うん、今年も朝日だな」
「考調、もうちょっと感動とかないのか?」
「いや、毎年見てるからなぁ」
「綺麗なのは綺麗でしょう?」
「そりゃあそうだけど、毎年恒例だからな」
初日の出を見て感動するかと聞かれれば、正直なところ、そこまで大きな感情は湧いてこない。
それでも、見られれば悪い気はしないし、新年の始まりを感じる行事としては悪くないと思う。
これが日本の伝統的な文化だからなのか、それとも毎年家族と一緒に見ているからなのかは分からないが、わざわざ早起きして見に来たことを後悔するような気持ちはなかった。
初日の出を見終えた俺たちは、そのまま神社へ参拝に向かうことにした。
日の出を見る前に参拝を済ませる人も多いらしく、今の時間帯なら少しは空いているのだ。
人の流れに従って歩き、順番を待っていると、やがて俺の番が回ってきた。
賽銭箱に五円玉を入れ、手を合わせる。
そして、毎年恒例の願い事を心の中で唱えた。
(いつか生まれ変わる前に俺の服朽ちさせて推定世界滅ぼした奴を殴れます様に……!!)
……今年もこれである。
毎年同じ願い事をしているのに、一向に叶う気配がない。
そもそも俺が前世で経験した出来事を考えれば、神様に願うより自分でどうにかするべきなのかもしれないが、願い事くらい自由にさせてほしい。
神様なんて……いや、別に信じていないわけではないのだが、こうも何年も成果がないと疑いたくもなる。
そんなことを考えながら参拝を終え、俺は普通に帰ろうとした。
その途中、何気なく後ろを振り返ったときのことだった。
見覚えのある金髪の男が、賽銭箱の前に立っている。
ご近所さんであり、今年の四月から俺が通う神山高校の先輩になる男、天馬司だった。
(……あ、司じゃん)
別に声を掛ける必要もないので、そのまま帰ろうと思ったのだが、ふと司の手元が目に入った。
彼は財布から取り出した紙幣を、迷うことなく賽銭箱へ入れていた。
……いや、ちょっと待て。
(お賽銭で5000円札入れてる……!?)
俺は思わず足を止めた。
五円玉を入れて願い事をしたばかりの自分が、急にとんでもなく小さな人間に思えてきたのだ。
いや、別にお賽銭の金額で願いが叶うかどうか決まるわけではないだろうし、五千円を入れること自体が悪いわけでもない。
しかし、五千円である。
お守りを二つ買って千四百円だったのに、司はその何倍もの金額を賽銭箱に突っ込んでいる。
(……あの人、何を願ってるんだ?)
高校生活の成功でも願っているのだろうか。
それとも、もっと壮大な願い事があるのかもしれない。
いずれにせよ、俺には真似できそうにない金額だった。
司に声を掛けることもなく、そのまま帰路につく。
今年も大吉を引いたし、お守りも買ったし、初日の出も見られた。
新年の行事としては十分だろう。
……ただし、お賽銭に五千円札を入れる天馬司という存在は、俺の中でしばらく忘れられそうになかった。
…………………………………………………………………
帰宅後。
冬休みはまだしばらく続くので割と暇していた。
初詣も初日の出も終わったし、外出する予定も特にないので、今日は家で何をしようかと考える。
ゲームをするのも良いし、適当に動画を見ながら過ごすのも悪くない。
しかし、新年初日から何もせずに終わるのも少々もったいない気がした。
「……よし、歌ってみたを撮るか」
そう決めたら、あとは行動するだけである。
新年最初の投稿なのだから、どうせなら気合を入れて作りたい。
機材を用意して録音環境を整え、歌う曲を決めてから収録を始めた。
最初のテイクを確認し、気になったところを修正して録り直す。
もう一度聴き直しては歌い方を変え、納得できなければ再び録音する。
そんな作業を繰り返しているうちに、気づけばかなりの時間が経っていた。
「……今のは良かったな」
自分で聴いてみても、これまで投稿した歌より明らかに出来が良い。
もちろん、完璧だと言い切れるわけではないが、以前なら気づかなかった細かな部分まで意識して歌えるようになっている。
たった一日でここまで変わるとは、自分でも少々驚きだった。
もっとも、今まで積み重ねてきた練習が無駄だったわけではないのだろう。
普段から歌ってきたからこそ、今回の録り直しで気づけたこともあるはずだ。
「よし、これでいこう」
編集も済ませて動画を投稿し、ひとまず新年最初の歌ってみたは完成となった。
これで一仕事終わりである。
投稿を終えたところで、現在のチャンネル登録者数も確認してみる。
およそ一万九千人。
「……趣味で始めたチャンネルの数字じゃねぇな」
思わずそんな感想が出てくる。
動画投稿を始めてから、まだ三ヶ月も経っていないのだ。
それなのに、これだけの人数が自分の歌を聴きたいと思って登録してくれているのだから、ありがたい話である。
父さんも数字を見て笑っていた。
「半年どころか三ヶ月も経たずに大人気だな、考調」
「大人気って言われると妙な感じがするけどな」
「実際にそれだけの人が聴いてくれているんだろう?」
「まあ、そうなんだけどさ」
自分の好きなことをやっているだけなのに、いつの間にかこんなことになっている。
始めた当初は、両親に見てもらって終わるくらいの規模を想像していたのだから、今の状況は予想外もいいところだった。
しかも、最近は動画を投稿するだけではなく、別の話まで舞い込んでくるようになっていた。*2
「そういえば、また歌の依頼が来てたんだよな」
「作曲している人からの依頼か?」
「そうそう、自分で作った曲を歌ってほしいってさ」
最初は自分の好きな曲を歌って投稿するだけだったのだが、最近は作曲している人たちから、自作の曲を歌ってほしいという依頼が届くようになった。
もちろん、すべて引き受けているわけではない。
こちらにも予定はあるし、依頼された曲を歌う以上は、ある程度きちんと仕上げたい。
そのため、都合の良い日程で引き受けられるものを選び、何件か実際に歌わせてもらっている。
「お金も発生するんだろう?」
「そうだな、だから母さんとも相談した」
「それで、どうだったんだ?」
「すぐにオッケーしてくれた」
「だろうな」
依頼を引き受けるにあたって、報酬が発生する以上は自分だけで決めるわけにもいかない。
まだ中学生なのだから、契約や金銭の扱いについて両親に相談するのは当然だろう。
ところが、いざ話してみると、驚くほど話が早かった。
どうやら両親は両親で、こうした依頼が来た場合にどう対応するべきか、事前に調べていたらしい。
「母さんも父さんも何でそんなに準備が良いんだよ」
「いや、これだけ登録者が増えているんだ、そういう話が来る可能性もあるだろう?」
「可能性はあるけどさ……」
「先に調べておけば、いざというときに困らないからな」
父さんは何でもないことのように言っている。
確かに、実際に依頼が来てから慌てて調べるよりは、事前に調べておいた方が良いに決まっている。
理屈は分かるのだが、まだ始めて三ヶ月も経っていない息子に、そこまで期待していたのだろうか。
(気が早いと言うか、期待がデカいと言うか……)
ありがたいことではある。
両親が俺のやりたいことを応援してくれているのも分かるし、金銭が絡む話を軽く考えていないのも助かる。
俺一人では判断に困るようなこともあるので、こうして相談できる相手がいるのは大きい。
そんなわけで、歌ってみたの活動も順調に続いていた。
特別な事件が毎日のように起こるわけでもなく、学校のない冬休みを普通に過ごしながら、歌を録って動画を投稿し、友人と遊ぶ。
新年を迎えたからといって、生活そのものが劇的に変わることはなかった。
……ただし。
(いや、やっぱり五千円札を賽銭箱に突っ込む司は日常とは思えないな……)
あの光景だけは、どうにも頭から離れなかった。
…………………………………………………………………
初詣から二週間ほど経った頃、俺は冬のグルメフェアの会場に来ていた。
駅と直結しているマークシティの中では、毎年冬になると日本各地の豪雪地帯から届いた特産品やグルメを集めた催しが開かれている。*3
開催時期はだいたい十一月から三月のどこかで、その年によって細かな日程は変わるものの、冬になると楽しみにしているイベントの一つだ。
東京では普段あまり見掛けない商品も多く、弁当やスイーツはもちろん、飲み物や地域限定の食品なども並んでいる。
店を眺めているだけでも結構面白いし、気に入ったものがあれば買って帰ることもできる。
「さて、今年は何があるかな」
会場を歩きながら、並んでいる商品を順番に見ていく。
こういう催しではスタンプラリーも実施されており、参加店舗で買い物をしてスタンプを集めると、いろいろな店で使える二十パーセントオフのクーポンが貰えるのだ。
せっかく来たのだから、そちらも忘れずに集めておきたい。
冬休みも残り一週間ほどなので、休みの最後まで楽しみ尽くすつもりだった。
「……あれ?」
そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのある人物が目に入った。
白石杏である。
まさかこんなところで会うとは思っていなかったが、向こうも俺に気づいたらしく、気軽に声を掛けてきた。
「あれ、考調じゃん!何してんの?」
「冬のグルメフェアを見に来たんだよ、杏は?」
「私も似たような感じ!せっかくだし一緒に回らない?」
「良いぞ、ちょうど一人だったしな」
こうして、俺たちは一緒に会場を回ることになった。
……とはいえ、最初から最後まで熱心に商品を見て回ったわけではない。
結局のところ、スターバックスで持ち帰りの飲み物を買って、飲みながら適当に歩き回って駄弁る時間の方が長かった。
「なんかさ〜、グルメフェアに来たは良いけどこう……友達と一緒に来てるなら店巡るより適当に美味しい飲み物買ってふらつく方が楽しいって思っちゃうんだよね〜」
杏が中々身も蓋もないことを言い出した。
ただ、言いたいことは分かる。
「気持ちは分かるぞ?そもそもあちこち行っても安いもの買ってスタンプ集めてクーポンもらう程度だしな」
「それはそれでどうなの?」
「いや、全部の店でガッツリ食ってたら腹がはち切れるっての」
「あ〜確かに、そう考えると私もお菓子とか買って別の店に行っちゃうかも」
実際、こういう催しで販売されているものは、一つひとつが手頃な値段でも何店舗も回ればそれなりの量になる。
せっかくのグルメフェアだからといって、見掛けたものを片っ端から食べていたら、途中で何も食べられなくなってしまうだろう。
それなら気になったものを少し買い、あとは飲み物を片手に友人と話しながら歩くくらいが丁度良い。
「まあ、こういうのは雰囲気も込みで楽しむものだろ」
「そうそう!それに、友達と話してると時間が経つのも早いしね」
「それは否定できないな」
杏とは特に気負うこともなく、普段どおりに会話ができる。
話題もグルメフェアのことから最近あったことまで様々で、何か特別な目的がなくても話は続いた。
気がつけば外も夕方になっており、俺たちはその辺りで解散することにした。
「じゃあ、またね考調!」
「おう、またな」
そんな調子で杏と別れ、俺も普通に帰宅した。
冬休みの残りも、こんなふうに楽しんでいこう。
そう思っていたのだが、気づけば二月も終わりに差し掛かっていた。
時間が経つのは本当に早い。
特に大きな事件が起きたわけでもないのに、毎日の予定をこなしているうちに一日が終わり、気づけば一週間が過ぎている。
そんな日々を繰り返していたら、もう二月二十八日である。
「二月があっという間過ぎる……」
学校生活も残りわずかになり、三年生として過ごす日々も終わりが近づいている。
ここまで来ると、卒業まで本当にすぐなのだろう。
せっかくなので、二月にあった出来事を少し振り返ってみることにした。
まず節分。
今年は代々木公園のイベント広場で豆まきをした覚えがある。
鳳財閥がイベントに協力しており、巨大な鬼のロボットまで用意されていた。
宣伝文句もなかなか大げさで、子供たちに向けて「豆を投げまくらないと追い払えないぞ!」といった具合に煽っていたのだから、もはや普通の節分とは別物である。
さらに、ビビッドストリートでよく見掛けるパフォーマーたちまで参加しており、全力でイベントを盛り上げていた。
豆まきというより、節分を題材にした祭りと言った方が近かったかもしれない。
それはそれで面白かったし、子供たちも楽しそうだったので別に文句はない。
ちなみに、鮮やかなオレンジ髪の男とツートンカラーの男の二人組は見掛けなかった。
まあ、二人がどこで何をしていようと、俺が知ることではないのだが、少し期待したのでやや残念だと思っていたり…。
…………………………………………………………………
二月といえばもう一つ大きなイベントがある。
バレンタインデーだ。
「……いや、あれは大きなイベントと言って良いのか?」
思い返してみれば、今年のバレンタインは中々に酷かった。
クラスメイトの女子たちが友チョコという名目で、クラス全員を巻き込んだロシアンチョコレートを開催したのである。
しかも、女子全員で協力して用意したチョコレートの数は二百六十個。
クオリティ自体はかなり高く、普通に美味しそうなチョコレートが大量に並んでいた。
男子たちはロシアンチョコを除いても一人あたり十個ほど貰える計算になり、女子たち自身もロシアンチョコに参加するということで、教室は大いに盛り上がっていた。
そりゃあ、チョコレートを十個も貰えるとなれば、男子たちが狂喜乱舞するのも無理はない。
……問題は、その中に紛れ込んでいるハズレ枠である。
友人Aはササミ入りチョコ。
友人Cは定番のタバスコ入りチョコ。
友人Eは七割ハッカ油チョコ。
友人Hはミートソース入りチョコ。
友人Iはタコ入りチョコ。
友人Lはワサビ練りチョコ。
……入りじゃない、練りだ。
友人Oは抹茶の粉を直接ぶち込んだチョコ。
これは組み合わせだけなら、意外と美味しい可能性もある。
友人Pはこんにゃく入りチョコ。
友人Uはニンニクマシマシチョコ。
友人Zに至っては、食べられるリップクリームのチョコ味だった。
それはもうチョコレートですらないだろう。
「……Z、お前は何を食わせられてんだ」
そして、担任には市販の食べられる虫を入れたチョコレートが用意されていた。
女子たちによれば、材料費だけで合計一万円近く掛かったらしい。
……うちの女子共は一体どこに金をかけているんだ。
普通に作れば十分美味しいチョコレートができるだろうに、何故そこまでして人を驚かせようとするのか。
被害に遭わなかったのは、俺と他五名だけだった。
つまり、クラスの大半は何かしらのハズレを引いたのである。
それでも、チョコレート自体は大量に貰えたわけだし、イベントとしては盛り上がっていた。
……本人たちが楽しんでいたかどうかは別の話だが。
ちなみに、帰りにWEEKEND GARAGEへ寄ったところ、杏からもチョコレートを貰った。
これで今年のチョコレートは合計十二個。
クラスメイトからのロシアンチョコレートが十個、親からのチョコレートが一個、杏からのチョコレートが一個である。
数だけ見れば十分に多い。
ただし、そのうち何個かは思い出したくもない代物だった。*4
それでも、杏から貰ったチョコレートは普通に嬉しかったので、そこは素直に喜んでおこう。
そんなわけで、二月のめぼしい出来事は大体こんなところだ。
「あ、そういえば歌ってみたの登録者数も二万五千人を超えたんだったな」
新年最初の投稿からも順調に伸び続けており、趣味で始めたチャンネルとしては相変わらず凄い数字になっている。
……まあ、二月を振り返るうえで一番印象に残っているのは、やっぱりロシアンチョコレートの方なのだが。
登録者数の話は、また別の機会に考えることにしよう。
…………………………………………………………………
3月30日。
とうとう中学も卒業式を終えて後2日で4月に入る。
いつの間にか過ぎてたとしか言えないな……コレは。
ひな祭りが一番印象的ではあったな。
男の俺にはあまり関係なく、何年か前に祖母から雛人形の雛飾りを母さんがもらっていたので、毎年それを飾るくらいの物だ。
雛人形に白酒や菱餅、桃の花などを飾り付けて、一度写真を撮ってそれで終わり、ひな祭りはそれ以上の事は無い……はずだったのだが、今年は違った。
というのも実は、ご近所さん……天馬司の妹こと天馬咲希の病気がかなり良くなってきており、経過観察として一時退院して天馬家で過ごす事になったのだとか。
俺はそもそも司に妹がいた事自体知らなかったが、会ってみればなんと言うか……凄く良い子と言うかハツラツとした明るい子と言うか、みのりちゃんと同等の守りたさを感じさせる……笑顔で居て欲しいと思える子だった。
何でも、去年の12月頃に俺と司が話してから、司も意外と話せる相手だと思ったらしく、その日そ咲希ちゃんのお見舞いに行った司は咲希ちゃんに俺の事を話したらしい。
今まであまり話さなかったご近所さんと仲良くなったと聞いて、咲希ちゃんも私も話してみたい!となり、退院したら一緒に挨拶しに来ようと話していたのだとか。
そして迎えた3月3日、天馬兄妹が俺の家にやって来た。
「始めまして!私、天馬咲希って言います!」
「オレの妹だ!仲良くしてやって欲しい」
咲希ちゃんが元気よく自己紹介を終えた後、司が仲良くしてやってくれとペコっと頭を下げた。
母さん曰く、この兄妹はあざとさが無い可愛さがある……!とのことですぐに気に入り、家に上げてお茶菓子をご馳走していた。
俺も俺で咲希ちゃんを気に入ったし、司も良い友人として好ましく思っているので母さんの気持ちは分かる。
咲希ちゃんはその時、ひな祭りだから着飾っていたらしく、お雛様の着物を綺麗に着飾っていたので母さんに可愛い!とモテモテだった。
それを後方から微笑ましく見ながらお茶菓子を食べる父さんと司は、年齢差があるのに何故か同じくらいの保護者同士に見えた。
高校生と三十路後半のおっさんなのに……司は別に老けて見えるわけでもないんだけどな……?
俺はそれを横目にポリポリチップスというポテチの亜種みたいな物を持って、咲希ちゃんに話しかけた。
「天馬さんは今年からは病院を退院して高校に通うんだって?」
「うん!そうなんだ〜楽しみだなぁ……あ、そうだ!考調くんは同い年だしせっかくなら名前呼びが良いな」
「え、マジ?」
流石にいきなり女の子を名前呼びはハードル高い気がするのだが……。
そう考調が考えて悩んでいると、咲希ちゃんが少し悲しそうな顔で目を伏せた。
「マジなのです!……嫌だった?」
「考調」
……まずい……大魔王こと母さんに凄まじい圧を掛けられている……ココで無理ですとか言おうものなら山姥よろしく包丁で捌かれかねん……。
「嫌じゃ無ぇさ、ただちょっと男子中学生にはいきなり女の子を名前呼びは大体ハードル高いだけ、咲希ちゃんとは仲良くなりたいし名前呼びでいいなら喜んでそうさせてもらうぞ?」
母さんの圧に身の危険を感じたのもあるが、普通に咲希ちゃんとは仲良くしたいと思えるので早速名前呼びをしてみた。
咲希ちゃんは嬉しそうに目を輝かせた。
「やったぁ!考調くんありがと!これで退院後のお友達第1号ゲット!」
「そうなのか?」
「うん!私、幼馴染は居るけれど新しい友達は居なかったから考調くんがお友達第1号なんだ〜」
「そりゃ光栄だな、これからも宜しく頼むよ」
「こちらこそ!」
咲希ちゃんとは話がよく弾む。
聞き上手で話し上手って中々居ないし、人に好かれるタイプの子だな。
そう思いながらも咲希ちゃんと色んな話で盛り上がっていると、司も話に入ってきた。
「うむ、早速仲良くなった様だな、二人とも!」
「ふっふ〜ん!私にかかればお友達と仲良くなるなんて朝飯前だよ!」
「咲希ちゃんは聞き上手だし話し上手だからつい話が弾んでな、司とは別のベクトルで人を惹きつけるタイプかもな」
「ええ〜大げさだよー考調くん」
咲希は照れくさそうにそう言うが、司は自信満々な顔でそれを肯定している。
「そうだろうそうだろう!咲希はこのオレの妹だからな!」
「もう……恥ずかしいよお兄ちゃん!」
咲希はくすぐったい様な笑顔で言う。
兄妹仲良いんだな〜。
そう思いながら二人のやりとりを見ている。
母さんもなんだか凄く暖かい目で司と咲希ちゃんを見てる……いや、アレは暖かいと言うか生温い目だな……クラスメイトの推し同士の絡みを観る時の目と同じだ。
「母さん?」
「なにかしら?アナタ?」
「……何でも無い」
父さんも母さんの目に気づいたのか、躊躇いがちに母さんに声を掛けるも黙殺された。
この日は結構長い間、司と咲希ちゃんと家で話してた。
司がそろそろ悪いと御暇しようとすると、母さんがタイミングよくお茶菓子を出す物だから中々言い出せてなかったのが少し申し訳無い気がした……。
咲希ちゃんは何一つ気づいて無かったし、司も偶然としか思ってなかったので気づいていた俺と父さんはなんか申し訳なくなった……母さんは策士だな……。
結局二人は夕方まで家に居た。
まぁ、二人も楽しんでくれてたし、咲希ちゃんもまた来て良いかと聞く位には気に入ってくれたのでまぁ良かった。
母さんはもう何時でも来てくれと天馬兄妹にメロメロだったな。
…………………………………………………………………
ホワイトデーはクラスメイトの男子達と全力でお返し、一部仕返しに精を出していた。
ハズレ枠を作った一部の女子を強制参加として、自分達も交えたロシアンホワイトチョコを開催した。
参加はハズレ枠を仕込んだ男子と、バレンタインでハズレ枠を提案した女子以外は任意参加だったが、全員参加した。
なんなら放課後だったから担任も参加した。
なんで野郎も参加してんだ……?女子からのチョコでは無いが友チョコは需要あるらしい。
結果は全員被弾した。
チョコの合計数は女子達と同じく260個用意したのだが、ロシアンチョコ用のチョコ一口目にして奇跡的な確率を引き当て、俺含めて全員がハズレ枠を引いて死屍累々だった。
カルピス原液とコーヒーを注入したチョコ作ったやつマジ許さん……。
友人K「せ、先生ー!?」
友人B「し……死んでるな……」
友人N「何食ったんだ……?」
友人X「なんか凄く臭うわね……なにこれ?」
友人Z「あ、コレ俺が入れたシュールストレミングだ」
友人O「なんてことを……!?」
考調「お前鬼畜過ぎないか?」
担任「俺に……何の恨みが……?ウッ!?」
皆「せ、先生ー!?」
まぁそんな感じでいつも通り賑やかなクラスだった。
…………………………………………………………………
天馬咲希視点。
3月30日。
中学校の卒業式が終わり、4月まであと二日。
時間が経つのは本当に早いなぁ、なんて思いながら、私はベッドの上でスマホを眺めていた。
今年のひな祭りは楽しかったなぁ……!
3月の始めの方に私の病気の様子がかなり良くなったらしく、経過観察で一時退院が認められてからは家で過ごせる様になった。
家についた日はひな祭りだったので、パパとママはせっかくなら、とお雛様の着物を持ってきてくれた。
この歳で?とも思ったけれど素敵な着物を着るのは少し憧れるから喜んで着た。
お雛様の着物を着て、お兄ちゃんと一緒にご近所さんのお家へ遊びに行って、初めて会う人と仲良くなって。
思い返すだけでも、なんだか頬が緩んでしまう。
だって、考調くんってすっごく話しやすい人だったんだもん!
そもそも、私はお兄ちゃんから考調くんの話を聞いていた。
お兄ちゃんが近所の人と長い時間お話ししたなんて、ちょっと珍しいことだったから。
もちろん、お兄ちゃんは人と話すのが好きだし、学校でも色んな人と交流しているけれど、近所に住んでいる同年代の人と改めて仲良くなる機会は、今まであまりなかったらしい。
それが去年の十二月頃に話したことをきっかけに、考調くんとは意外と話が合うと感じたみたい。
しかも、その時のお兄ちゃんはすっごく楽しそうに話していた。
普段から明るいお兄ちゃんだけど、自分が話していて楽しいと思った相手のことを話す時って、ちょっと違うんだよね。
だから私も気になっちゃったんだ。
どんな人なんだろう?
お兄ちゃんと話が合うって、どんなお話をするんだろう?
私も仲良くなれるかな?
そんなことを考えていたから、退院してお家に帰ったら一緒に挨拶しに行こうって、お兄ちゃんと約束した時は本当に嬉しかった。
そして、実際に会ってみたら……。
「考調くん、面白い人だったなぁ!」
思わず独り言が出てしまった。
最初に会った時は、少し落ち着いた雰囲気の人だと思った。
お兄ちゃんが自己紹介してくれた後、私も元気よく挨拶したけれど、考調くんは変に気取ったりせず普通に応じてくれた。
始めてお話する人と、すぐに仲良くなれるとは限らない。
相手がどんな人なのかも分からないし、こちらのことをどう思っているのかも分からないから、最初は少し緊張するものだ。
でも、考調くんは私の話をちゃんと聞いてくれた。
それだけじゃなくて、自分の考えもきちんと話してくれたし、私が質問すると色々なことを教えてくれた。
だから、気づいたらすっかり打ち解けていたんだよね!
同い年だから名前で呼びたいってお願いした時は、ちょっと困らせちゃったけど……。
あの時の考調くん、ものすごく悩んでいたなぁ。
女の子をいきなり名前で呼ぶのは男子中学生にはハードルが高い、って言っていたけれど、私としては同い年なんだし、せっかく仲良くなるなら名前で呼んでほしかったんだ。
それに、私も考調くんと仲良くなりたかったから。
「嫌じゃないなら良かったぁ……!」
あの時、名前呼びを断られたらどうしようって、少しだけ不安だった。
だから、喜んでそうさせてもらうって言ってくれた時は本当に嬉しかった。
おかげで、考調くんは私が退院してから初めてできた新しいお友達になった。
幼馴染のみんなとは仲良しだったけれど、入院していた間は新しい出会いが少なかったから、こうして新しくお友達ができたことが嬉しくて仕方ない。
しかも、考調くんは私の話を聞いてくれるだけじゃなく、自分の話もたくさんしてくれる。
最初はお互いに少しずつ話題を出していたのに、途中からはどんどん話が広がっていったんだ。
学校での出来事。
家族とのやり取り。
友達と遊んだ時の話。
旅行に行った時の話。
どれも特別な事件というわけではないのに、聞いているとすごく楽しかった。
特に家族との普段の話は、考調くんのお家が仲良しなのが伝わってきて、聞いているこっちまで楽しくなっちゃった。
お父さんやお母さんとのやり取りも、なんだか面白いんだよね。
考調くん自身も、ご家族も、ちょっとしたことで冗談を言い合ったりするみたい。
もちろん、いつもふざけているわけじゃないだろうけど、そういう何気ない日常を気軽に話せるところも、考調くんらしい気がする。
特に学校のお友達の話が面白かったなぁ。
考調くんのクラスには愉快な人が多いらしくて、話を聞いているだけでも賑やかな雰囲気が伝わってきた。
一緒に遊んだり、行事に参加したり、みんなで何かをしたり。
中学校生活の思い出を聞いていると、私もその場にいたような気分になってくる。
そんなお友達と全力で遊んだり学校生活を楽しめたら、なんて考える事もある。
まぁ、私には私の幼馴染もいるのでそんなに寂しい!とか妬ましい!とかは無い。
みんなと一緒に過ごした時間は大切だし、しばらくはいっちゃん以外会えてないけれども…これからだって仲良くしていきたい。
でも、考調くんのお友達の話を聞いていると、私の知らない学校生活や人間関係がたくさんあるんだなぁって思う。
同い年でも、過ごしてきた時間や経験はそれぞれ違う。
だからこそ、こうしてお互いの話をするのは面白いんだ。
「もっと聞きたいなぁ……」
まだまだ聞いてみたいことがたくさんある。
考調くんは普段どんなゲームをしているんだろう?
お友達とはどんな遊びをするんだろう?
旅行先ではどんな場所に行ったのかな?
それに、あの話も気になる!
考え始めると、次から次へと質問したいことが浮かんでくる。
けれど、考調くんばかりに話してもらうのも悪いから、私も自分のことを話すようにしている。
幼馴染のみんなの話をした時も、考調くんは興味深そうに聞いてくれた。
[いっちゃん][ほなちゃん]、[しほちゃん]とのこと。*5
昔の思い出や、みんなで過ごしてきた時間のこと。
私にとって大切な人たちの話だから、聞いてもらえると嬉しい。
「今度、みんなにも会ってほしいなぁ」
そうすれば、きっと楽しいと思う。
もちろん、考調くんと私の幼馴染たちが必ず気が合うとは限らないけれど、少なくとも私が大切に思っている人たちのことを知ってもらえるのは嬉しいし、考調くんがどんな反応をするのかも気になる。
それに、私だって考調くんのお友達のことをもっと知りたい。
いつかみんなで遊べたら、どんな感じになるんだろう?
考調くんが普段話してくれるクラスメイトの人たちと、私の幼馴染たち。
想像するだけでも、なんだか楽しそうだった。
でも、実はもう一つ、考調くんと仲良くなれたことで嬉しかったことがある。
それは、考調くんが歌ってみたの動画を投稿していること!
……というより、実は私、前からそのチャンネルを知っていたんだよね。
最初に見つけた時は、歌が上手な人だなぁって思った。
歌い方も素敵だし、曲の雰囲気に合わせた歌声になっていて、何度も聴きたくなる感じがする。
それで、気に入ったからチャンネル登録もしていた。
新しい動画が投稿されると、時間がある時に聴いている。
だから、ひな祭りの日に考調くん本人から歌ってみたの話を聞いた時は、本当にびっくりした!
「えっ!?あのチャンネルの人なの!?」
思わず大きな声が出ちゃったくらい。
考調くんは私の反応に少し驚いていたけれど、こっちはそれどころじゃなかった。
まさか、自分が前から聴いていた歌い手さんが、近所に住んでいる同い年の男の子だったなんて!
しかも、今まで普通に話していた相手が、あの歌声の持ち主だったなんて!
嬉しいやら驚くやらで、頭の中が大変なことになっちゃった。
それからは歌ってみたの話もたくさん聞いた。
どうして始めたのか。
どんな曲を歌っているのか。
動画を投稿する時に気をつけていることは何か。
私が前から気になっていたことを聞いてみたら、考調くんは普通に答えてくれた。
もちろん、全部を聞き出したわけじゃないけれど、趣味で始めたことがきっかけで、今では色々な人に聴いてもらえるようになっているらしい。
登録者数もどんどん増えているみたいだし、作曲している人から歌ってほしいと依頼されることもあるんだって。
すごいなぁ……!
自分の好きなことを続けて、それを聴いてくれる人がいて、さらに一緒に何かを作りたいと思ってくれる人までいる。
それって、簡単にできることじゃないと思う。
考調くんは特別なことをしたつもりはないみたいに話していたけれど、私にとっては十分すごいことだった。
「次の動画も楽しみだなぁ!」
そう呟きながら、スマホの画面を見つめる。
もちろん、本人に会えたからといって、これまで聴いていた動画が別物になるわけじゃない。
でも、歌っている人がどんな人なのかを少し知ることができたから、これからはまた違った気持ちで聴けそうだ。
それに、考調くん本人と話せば、動画だけでは分からないことも知ることができる。
普段はどんな曲を聴いているのかとか、どうしてその曲を歌おうと思ったのかとか。
そういう話も、今度ぜひ聞いてみたい。
……あれ?
考えてみると、私って考調くんに聞きたいことが多すぎないかな?
「うーん……まぁ、いっか!」
気になるものは気になるんだから仕方ない!
もちろん、相手が困るほどしつこく聞くつもりはないけれど、また会った時に少しずつ聞いていけばいいよね。
それに、考調くんだって私の話を聞いてくれたんだし、今度は私から色々話してみるのもいいと思う。
幼馴染のみんなと過ごした思い出も、退院してから楽しみにしていることも、これから始まる高校生活のことも。
話したいことはたくさんある。
入学式は行けないけれども4月からは私も高校生になる。
入院していた時間が長かったから、新しい学校生活には少し不安もあるけれど、それ以上に楽しみな気持ちが大きい。
久しぶりに学校へ通えること。
また幼馴染の皆と一緒に過ごせること。
これから新しい出会いがあるかもしれないこと。
そして、考調くんとも今まで以上に仲良くなれたら嬉しい。
私は宮女に通うから考調くんとは別の学校だけど、近所に住んでいるんだから会おうと思えば会える。
これからもお互いの学校の話をしたり、休日に遊んだり、色んなことを話したりできたらいいな。
「考調くんとまたお話したいな〜」
今度会ったら、何を話そうかな。
そんなことを考えながら、私はスマホを置いて、これから始まる新しい生活に思いを馳せていた。
全く関係ないけどBLEACHMirrorsHigh配信スタートワッショイ!!
これからもう少しで高校生になる、プロセカ本編に入るであろうこの先の展開でどのくらい主人公とプロセカキャラ達を絡ませる?一応今までの接点よりは深く関わらせる予定。締め切りは高校入学時。
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滅茶苦茶いっぱい絡ませる(作者が大変)
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凄くいっぱい絡ませる(まぁ行ける)
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普通に絡ませる(今と少し変わる位)