ACE COMBAT -νTRANSNATION- 作:陽遮影
初めて空に興味を持ったのは遠い故郷で名も知らぬ雲を見た時だった。
生家は古くから漁師の家系であったが、先の戦争により海は汚染され漁にでられずにいた。生活の糧を稼ぐため父は遥か彼方のオーシア大陸に出稼ぎに出かけて行くことになった。泣いている母と慰める父、それを何も分からず見つめる私と妹。かつてあった生活はいとも簡単に崩れる、幼い私にも微かにその事が分かった。
幸いなことに母は地元で手に職を付ける事ができ、父の仕送りと母の稼ぎにより残った家族3人は不自由なく暮らすことができていた。かつて母は家のことを一挙に引き受けていた。しかし、働きに出た結果家事は私の仕事になりつつあった。さらに言えば、幼い妹は未就学児でありひとりで留守番などできるはずもない。必然的に面倒を主に見るのは自分となった。
実家の周りの若者は職を求め都会へと流出していた。そのため、年寄りだけは豊富にいた。彼らの無聊を慰める為に妹と一緒にによく構って貰えた。今となっては感謝しかないが、当時は友人と遊ぶことができずよく拗ねていた事を覚えている。
そんな中に彼はいた。寂れた漁村の煤けた人間ばかりの中で彼だけは違った。使い込まれた服装だったが手入れはしっかりとされており、垢抜けて違う空気を纏っていた。孤立することはないが少しだけ浮いていたと思う。そんな彼に少しづつ興味を惹かれていくのは必然だった。
ある夏の日、妹の手を引き海岸沿いを散歩していた日のことだ。なんとなしに海へと目を向けると見慣れぬ雲があった。真っ青なキャンパスに掠れながら描かれた白い直線。波間の間を縫う白波のようなそれ。知識の中にないそれに目を奪われていた。
「やあ、何をみてるんだい」
知らぬ間に彼が声をかけてきた。先程まで手を繋いでいた妹は彼に肩車されていた。少しグズり私を睨みつけている。随分と長い間呆けていたらしい。
アレを見ていたと指さす。私と同じ物に視線を向けた彼は拍子抜けしたように言葉を漏らす。
「なんだ、ただの飛行機雲じゃないか。見た事ないのか?」
「飛行機」、「雲」。どちらも知っている。飛行機は携帯端末で動画を見たし、父がそれに乗り出稼ぎに出かけた事も知っていた。雲については言わずもがなである。だが、そのふたつが合わさった物は初めて聞いたし、何故それに心を奪われたのかもわからなかった。遥か悠久を往くそれをずっと眺めていたい、その時はそれだけが心を支配していた。
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2040年ユージア大陸においてゼネラルリソースとニューコムの紛争があった。当初の見立てではいつも通りの小競り合いだと思われていたが、時を経るに激化。泥沼の消耗戦へと陥っていた。
これを重く見たUPEOは仲裁を開始したが効果はなく、逆に、争いを煽る結果となった。その最中テロリストグループ声明を発表し混乱はさらに深まる。敵対的な企業、介入する平和機関、仲間だと思っていた人間のテロリズム。事態は混迷を極めていた。
結果として紛争は収まったが犠牲は被害は大きかった。2大企業は疲弊しかつての威光は衰えた。後釜を巡る権力闘争を開始し粛清が横行、これを避けるため独立志向が興隆した。結果、かつての国家の名前を名乗る勢力が多々見受けられた。
UPEOは事実上壊滅、今では残党が後継を名乗ってはいるが元々少なかった影響力は減少し、十把一絡げとされる程になった。
テロリストグループは本拠地を破壊され首魁も討伐された。しかし、多くの情報は本拠地と共に爆散。その背景も構成員も判明せず、世界に不発弾を残す結果となる。
この紛争による経済的な被害は100兆クレジットともされ、被害人数は現時点で1000万人とも言われている。
そんな折、大国ユークトバニアでは懐古趣味を掲げる右翼的な新首相が就任しようとしていた。
Mission 1 ハリボテ飛行隊
Operation Take a work
Bertha lighthouse
07/16/2041
...、
《なあ、お前結局あの娘口説いたのかよ》
「あの娘にとっちゃ俺も結局都合のいい鴨なんだよ」
《かぁッー、夢も希望もないね》
ゼネラルの台頭と繁栄、さほど長い時間でもない中で国家はその勢力を急速に瓦解させていった。行政サービスの低下に始まり、警察、医療、教育など近代国家として必要な能力を喪失していった。
《ところでよ、そろそろ近いだろ》
「ツケの支払日か? それともFCの試合?」
《バカ、ちげーよ。あとツケはもうちょい待ってくれ》
より安価で高度なサービスを恒久的に提供すると嘯く企業に大衆は靡き、依存を始める。やがて人々は支配を日常と錯覚する。それが、企業の狙いとも知らずに。
《選挙だよ、選挙。ユークの新首相》
「このご時世にそんなこと気にしてんのか。マジメなのか、暇なのか」
《こんなご時世だからだよ、情報弱者は搾取されるだけだぜ》
だが、永遠など存在するはずもない。リソースが限られている限りその配分を巡り人は争う。紛争、侵略、防衛、内紛、そして粛清。かつての国家のように企業は衰退し、コストの削減を迫られた。皮肉にもそれは栄養として吸収した国家の末期に酷似していた。
「まあ、それはいいとしてところで、・・・・・・、待て、3時の方向レーダーに感あり!」
《なんだ? 民間船か? GPSが故障したか、それとも亡命か? 俺が対処する》
「おい!勝手に動くな、指示を待て。たくッ、管制塔、こちらルアー隊2番機シェル。クルーズプランにない船舶を発見、1番機ダイバーが誰何を行っている。繰り返す...」
コスト削減のため企業は方向転換を余儀なくされた。肥大した身体を切り落とし軽量化を果たすためイノベーションの名のもとに粛清が横行した。結果、危機を察した人々は独立、更なる勢力の弱体化を招くこととなる。その中に、国家への回帰を掲げたナショナリストがいたことは避けようがなかった。
《何だこの船、何かおかしい。何処の所属だ。いい加減動きを、マズイ! ミサイルを撃ってきた! チクショウ、避けられ》
「管制塔、緊急! 不明船舶がミサイルを発射! ダイバーが、クソ!チャフフレア使用! うぉぉおおお!」
偽りの平穏は終わりを告げ、混乱の時代へと移り変わる。多くの勢力が生まれ独自路線へと舵を切る。戦乱の影は少しずつその昏さを深めて行った。
《こちら管制塔。ルアー2、不明船舶を撃沈せよ。繰り返す。...、なんだ、爆発? ハンガーが燃えてやがる! ルアー2、その船を沈めろ!》
「言われ、無くても! FOX1!・・・・・・、着弾確認。派手に爆発したな」
《こちらからも海上の爆炎を確認した。ハンガーの消化が終わり次第帰投させる。それまで空中で待機していてくれ。・・・・・・、ダイバーは、ミルズはどうなった》
「爆発して、バラバラだ。これ以上言う必要あるか」
《すまない。だが、気を強く持っておけ。そう遠くない内にまた飛ぶことになるだろう》
...。
―――
「すまない、待たせたな」
「気にすんなよ、そっちも疲れてんだろ」
「まあ、お互い様ってとこだな。早速だが現在の情勢について説明する」
「ウチが不明勢力に襲われた以外になんかあるのか」
「ああ、最悪と言ってもいい事態だ。襲撃されたのはウチだけじゃない、大陸中で似たようなことが起きている」
「まじかよ、何処のバカが仕出かしたんだよ」
「現在調査中、まあ答えは出ることは無いとおもう」
「そいつはどういう」
「簡単に言うと僕らは勢力として孤立してしまったってこと。それに、ユークの首相候補が暗殺にあって、その後釜を狙う勢力がワンサカ沸いちゃったからね」
「何が起きてんだよ、説明してくれんだろうな」
「そりゃもちろん。 だが、今は休んでくれ。 8時間後ブリーフィング予定だ。 医務室に薬を出すように言ってある。 なるべく体を休めてくれ」
「・・・・・・、リョーカイ」