PERSONA5 The Phantom M 作:ロストビーフ
「・・・!たッ・・・助けてッ!」
「おいアンタ。この女性嫌がってるだろ」
「なんだこのガキ、、、訴えてやる!」
「・・・はっ!」
どうやら夢を見ていたらしい。
またあの時の夢だ。
あの時からずっと思い出す。もう嫌になる。
「えー?暴走?人間が?」
「そうだよ!それまで何ともなかった人がいきなり暴走しちゃうんだって!」
「本当かなあ。オカルトにハマりすぎたんじゃない?」
向かいの席で制服を着た女子が談笑している。
『次はー、終点、渋谷、渋谷になります。お出口は右側です。』
そうだ。俺は4月9日(土)、電車に揺られて東京まではるばるやってきたのだった。
この大都会で、俺の華々しい第二の学生生活が、今、幕を開けるッッ!!
「・・・とかだったら、よかったんだけどなぁ。」
乗り換えのために電車を降りて、次の駅を探す。
梅田駅はダンジョンとはよく言われているが、東京の駅だって立派な迷宮である。
俺もこうしてスマートフォンの地図アプリを片手に駅を探している。
「・・・すげえ人だな」
目の前に広がるスクランブル交差点。そこでは多くの人が行き交っていた。
仕事をする者、買い物をする者、どこかへ遊びにいく者様々だろう。
そんな人達を尻目に四軒茶屋に行ける駅を探して再び地図アプリに目を落とすと、
「・・・ん?なんだこれ」
スマホには赤い背景に黒い集中線、黒い星が瞳となった目が描かれたアプリが入っていた。
入れた覚えは微塵も無い。
気になって触れてみると、
自分の周りでせかせかと歩き続ける人達の動きが、ゆっくりになっていく。
スクランブル交差点の中央に、蒼い炎が見える。
しかし誰の目にも留まらない。気づいてすらいない。
その轟々と燃える炎の中で不敵な笑みを浮かべていたのは、
「・・・俺?」
「はッ!」
瞬きをした時にはもう蒼い炎は無くなり、人々も普通に歩いている。
疲れているのだろうか。きっとそうだろう。
何にしろ、薄気味悪いアプリをそっとゴミ箱まで持っていき、消し去った。
電車に乗り込み、四軒茶屋に着いた。
それはいいが、どうしたものか。
記しておいたメモによると、俺は今日から
だが、その人の細かい住所なぞ調べても分かるわけがない。
少し気は引けるが、地元住民に話を聞くこととしよう。
そう思い顔を上げると、目の前には無愛想な顔をした警察官がいた。
警察は嫌だ。もう二度と関わり合いたくない。
少し辺りを見渡すと、白衣を着た紫髪の女性がこちらの方に来るのが見えた。
俺は意を決して話しかける。
「すみません。」
「・・・何?」
見た目に違わぬかのように気怠げで、こちらとのコミュニケーションを取りたくないというような態度だ。
しかし臆さず、俺は続ける。
「佐倉惣治郎さんのお宅を探しているのですが、ご存知ないですか?」
「あーーー、佐倉さんね?それならもう少し奥に行ったところを右に曲がると表札が見えてくると思うよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
俺が会話を終えて向かおうとすると、その女性が呼び止める。
「待って。佐倉さんに会おうって話なら今いないよ。彼ならルブランにいるから。」
「ルブラン?」
「そこに見える赤い扉の喫茶店よ。この時間彼はマスターをしているわね。」
「そうでしたが。わざわざありがとうございます」
「私、そこの行きつけなんだ。コーヒーが絶品だから、飲んでみるといいわ。」
そう言い残し、女性は歩いて行ってしまった。
俺はその女性の言った通りルブランと言われた喫茶店の前に来た。
レンガが使われた洒落たなデザイン。裏路地にあることからも隠れた名店かのように見える。
俺は一呼吸置き、ルブランの中へと足を踏み入れた。
店の中には、マスターと思しき壮年の男性と老夫婦の客が座っていた。
このマスターが佐倉さんなのだろう。クロスワードの雑誌を睨んでいる。
推定佐倉さんと客の会話が聞こえてくる。俺はまだ気づかれていない。
「バスが逆走なんてねえ・・・怖い世の中だわ。この前もこんなことあったじゃない?」
「えーと、タテのカギが、真珠の養殖に使う貝の名前、ねえ。」
全然会話してなかった。
考えるために下を向いていたマスターの顔が上がり、俺を見つめる。
「そうか。今日からって言ってたっけか。」
タイミングを測ったかのように老夫婦が立ち上がる。
「ごちそうさま。お代、ここに置いとくよ。」
「まいど。」
「この店は裏路地だし、車が突っ込んできたりはしなさそうで安心だよ。最近変な事故続いてるだろ?気をつけなよ。」
「興味ねえな。」
そんな会話をし、老夫婦は店を後にした。そっと避ける俺。
扉の開閉を告げるベルが鳴り、扉が閉まるとマスターが一人ごちた。
「はァあ。コーヒー1杯で4時間かよ。」
「そんで、お前がか?」
彼に言われ、俺は少し背筋が伸びる。
「はい。
「そうだ。1年間、お前を預かることになっている。保護司ってやつだな。」
俺は自分の紹介をする佐倉さんをじっと観察する。
クリーム色のズボンに桃色のシャツ。その上に茶色のエプロンを着ている。まさに喫茶店のマスターといった服装だ。
眼光は鋭く、丸眼鏡では隠しきれないガラの悪さが出ている。顔の皺と後退した生え際は今までの苦労の証だろうか。
「にしても、お前の親御さんから聞いた時はどんな悪ガキが来るかと思ったら、お前みたいな一見真面目そうなやつがねえ。」
「いえ、違うんです、俺は」
「いいや、言うんじゃねえ。聞きたくねえ。巻き込まれたくもねえ。」
そう言うと、佐倉さんは背を向けた。
「こっちだ。着いて来い。」
佐倉さんに着いていき2階への階段を登ると、そこは。
「ここがお前の部屋だ。
・・・何だ?何か言いたそうだな。」
「・・・物がたくさんあるな」
どう見ても物置だった。
「寝床のシーツくらいはくれてやるよ。後は自分で片付けな。夜中に騒いだら追い出すからな。」
まだ動けない俺に、佐倉さんは再び話しかける。
「一応話は聞いてるよ。お前の親御さんとは古い付き合いなんでな。確か、『男に言い寄られてる女を庇ったら、男が怪我して訴えられた』、だっけか?」
俺は頷く。
「怪我させたことは事実だろう?大人相手に余計なことするからだ。
で、前歴のついたお前は晴れて元いた高校を退学処分。裁判所の指導で転校、転居を勧められ両親も承諾した。要は厄介払いされたってこったな。
とにかく、1年大人しくしてりゃあ保護観察期間も解ける。少年院に入りたくなけりゃあ問題を起こさないこった。
明日はシュージンに行く。早く寝ろよ。」
「シュージンって・・・何だっけ」
「あのなあ・・・。秀尽学園高校だよ。お前がこれから通う高校だ。
お前みたいな札付きが編入出来るとこなんてそうねえからな。感謝しておけよ。」
そう言って佐倉さんは下に降りていった。
さて、どうしたものか。
埃の被ったベッド。よごれたソファ。色々積まれた棚。
「・・・掃除でもするか。」
掃除を終わらせると疲れたのでベッドに横になる。
少しは綺麗になっただろうかと考える間もなく、まどろみの中へ落ちていった。
目が覚めると、知らない天井だった。
いや、マジで。昨日から来たはずの喫茶店の古い木の屋根だったとかではなく。
石で出来た天井の薄暗い部屋だ。青い光が差し込んでいる。
頭を起こすと、カツ、カツ、とこちらに向かって歩く音が聞こえてくる。
音の方を向くと、光の差す方に鉄格子があった。
違和感を覚え寝ていた場所から身体を下ろすと、歩いてきた人達の影がくっきり見えた。
双子かのように似た顔に青い衣服に白い髪、違うのは眼帯をつけている目と髪型くらいか。
俺は檻を持ち扉を外そうと手をかける。
その時自分の服が全身白黒のボーダーになっていることに気づいた。ボーダーというより囚人服だろう。
二人の女の子が部屋の奥を向く。
そこには、鼻が長く目力の強い老人が座っていた。
その男は、ニヤリと笑みを浮かべ俺に告げた。
「ようこそ、私のベルベットルームへ。」
両脇に逸れた女の子達が話しかけてくる。
「目が覚めたようだな、囚人!」
「現実のあなたは、現在睡眠中。夢の中の体験として、この場所を訪れています。」
「主の御前だ、耳の穴をかっぽじってよく聞け!」
主と呼ばれた男は、笑みを浮かべたまま語りかける。
「クク・・・ようこそ。お初にお目にかかる。ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所。何かの形で契約を結んだ者のみが訪れる部屋。
私は、ここの主を務めているイゴールだ。覚えておいてくれたまえ。」
イゴールか・・・。とりあえず覚えておこう。
「お前をここに呼び出したのは他でもない。お前の命にも関わる、重大な話をするためだ。」
「俺の命・・・だあ?」
「しかし、これは驚いたな。この部屋の有り様はお前自身の心の有り様。よもや牢獄となるとはな。
お前はまさしく『運命の囚われ』。近い将来、その身には破滅が待ち受けているだろう。」
「破滅?そんなの御免だ」
「そう焦らんでいい。抗う術はある。
『更生』するのだ。自由への更生。世界の歪みに挑む軌跡を拝見させてもらうとしよう。」
「そして紹介が遅れたが、お前の側にいるのが看守を務め、協力者となる者だ。右がカロリーヌ、左がジュスティーヌ。」
つまり気が強そうな方がカロリーヌ、大人しそうな方がジュスティーヌだろう。
「さて、お前も目覚める時だ。この部屋の持つ力についてはまた説明しよう。ここについては少しずつ理解してくれればいい。また出会うことになるだろうかららね・・・。」
そうイゴールが言った途端に目の前が暗くなっていく・・・
・・・変な夢を見た。
ベルベットルーム、どんな場所なのだろうか。
そんなことを寝ぼけた頭でぼんやり考えていると、下から佐倉さんの声が聞こえてくる。
「おーい、起きてるか?今から秀尽学園行くぞ。準備して降りてこい。」
「ったく、俺の車に男を乗せる席はねえんだがなぁ。」
俺はベッドから降りて制服に着替え、佐倉さんの車に乗り込む。
ちなみに佐倉さんは外行き用の服を着ていた。小洒落ているなと思って見ていたらなんだよと言われた。
こうして佐倉さんの運転で秀尽学園についた。最寄り駅は青山一丁目。明日からは電車通学になる。
そのまま校長室に挨拶に行った。
佐倉さんが頭を下げて色々な書類にサインしているのを横目に校長を観察する。
ハゲた頭にでっぷりした図体、図々しそうな顔とどうにも第一印象は良くない。
しかし見た目で判断してはダメだ。人は見かけによらないとよく言うが、
「改めて伝えておくが、問題を起こしたら即退学だからな。正直君みたいな人間を受け入れるか非常〜に、迷ったんだが、色々事情があってな。
ウチから追い出されたら行く場所は無いぞ。肝に命じておくんだな。」
前言撤回。やはり外面しか考えていない男なのだろう。
校長の話は続く。
「こちら、担任となる高野先生だ。」
「2-D担任の高野です。学生証を渡しておきますね。」
そう言って学生証を置いた高野先生をチラッと見る。身長が高く肌が薄黒い。何かスポーツでもしているのだろうか。
そんなことを思いながら学生証を手に取った。
「・・・?」
学生証の下に何か広告チラシのようなものが置かれていたが、じっくり見ようとしたら高野先生が回収してしまった。
「佐倉さん、外で問題を起こさないようしっかり見張っていてくださいね。」
「分かっていますよ。こいつがどんな立場なのかきつく言い聞かせておきます。」
この校長の話し方、どうにも耳に障る。言い回しがねっとりしているとでも言うべきか。
「熊白君、君は明日登校したら職員室に来てください。教室まで案内します。」
それに比べてこっちは声色こそ低いし声も低いが優しさが滲み出ている。まあ自分から害をかけては来なさそうだ。
帰りの車の中、助手席から佐倉さんの話を聞く。
「完全に厄介者扱いだったな、あれ。隠そうともしねえ。ま、前科がつくってのはそういうこったな。
ちなみにお前、また退学になりにでもしたらうちも追い出すからな?」
「分かってる。気を付ける」
「ふうん。ま、いいがな。しっかしまあ、学校ってのは今も昔も変わりゃしねえな・・・。」
佐倉さんが再び前を向く。
「いやあー、にしてもまんまと渋滞に捕まっちまったな。明日も送り迎えとか出来ないから、ちゃんと電車で学校行けよ?」
「分かった」
「しっかし、一度退学食らっといて他に入り直すとはな。どうせ誰も親身に構っちゃくれねえってのによ。
学校であの様子じゃ、俺も何言われるか分かったもんじゃねえぜ。あーあ、めんどくせえモン預かって来ちまったかねえ。」
「・・・じゃあ、何故俺なんかを引き取ってくれたんですか?」
「頼まれてよ・・・なんとなく、引き受けちまったんだ。なんでだろうなあ。」
遠くを向く佐倉さん。しかしその先には車のランプと曇り空しか見えなかった。
ついていたラジオの音声が聞こえてくる。
「繰り返しお知らせします。地下鉄ホームにて起きた大規模な脱線事故の影響により多数のダイヤに遅れが出ており交通機関への・・・」
「また事故かよ。最近多いな・・・。この渋滞もそれのせいってか。」
佐倉さんは何かを思い出したかのような表情を浮かべる。
「そういや先月も大きな事故があったんだよな。亡くなった子、こいつと同い年かそこらだったっけな。最近本当に参っちまうぜ。」
「・・・事故に伴い、渋谷駅周辺に交通規制が敷かれ・・・」
俺達がルブランに帰ってきたのは、夜も遅くなってからだった。
「やれやれ、ひどい目に遭ったぜ。こんなに渋滞にかかるなんてな。店は・・・もういいか。」
そう言うと佐倉さんは何かを俺に投げてきた。
「これは・・・メモ帳?」
「日記帳だよ。つけとけ。俺には報告の義務ってモンがあるんでな。」
そう言い終わると、佐倉さんの携帯電話が鳴り始めた。3コールもしない内に出る。
「よう、どうした。」
「・・・今から出るよ。大丈夫だって。すぐ行くからさ。」
電話を切ると、俺に向き直る。
「俺は帰る。鍵は閉めとくから、あとは好きにしとけ。だが、店ン中荒らすなよ。何か無かったら突き出してやるからな。
明日は学校なんだ。早く寝るんだな。」
そう言って佐倉さんは階段を降りていった。
言いつけには従っておこう。
そう思い明日への身支度を済ませてベッドで横になる。
そういえばあの赤いアプリ、昨日消したはずなのにまだ残ってたな。
そんなことを考えながらまどろんでいると、突然ジリリリリリ!と大きな音が聞こえてきた。
俺の携帯では無いし1階から聞こえてくる。
向かってみると、カウンターに置かれた黄色い公衆電話が鳴っていた。俺は受話器を取る。
「おう、俺だよ俺。」
「なんだ、オレオレ詐欺か。最近母さん助けて詐欺に変わったんだっけ?」
「あのなあ、さっき話した声をもう忘れたのか?佐倉だよ。店の扉の表札をCLOSEにするのを忘れててな。お前がやっといてくれ。」
「それはいいんだが、携帯電話の番号は教えなかったか?」
「俺は自分の携帯電話に男の番号を登録しない主義なんだよ。じゃあ、よろしくな」
そう言って佐倉さんは電話を切ってしまった。
表札を裏返しながら思い出す。
さっき佐倉さんは電話の相手と仲良さそうに話していた。しかも親交も深そうである。そしてさっきの言葉。
・・・もしかして、ここの店主は中々の女好きではなかろうか?と思ってしまった。
今度こそ初投稿になります。
ペルソナ5のアニメを見て書きたくなったため作りました。
最初なので説明が多く掛け合いも少なかったですが、次回からはキャラクターもガンガン登場させる予定ですので、どうかよろしくお願いします。
なお投稿は気ままにやっていきますので。