ホグワーツの聖女――アスペンの杖は灰色の秩序を刻む   作:神切優羽

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第11話も来てくださりありがとうございます!!

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感想もありがとうございます!!とても嬉しいです!!

誤字報告に今日気が付きました!
全然気が付かなくて申し訳ありません。
教えていただきありがとうございました!

引き続き誤字脱字がありましたら教えてくれると幸いです!
キャラの性格や言動も一貫していないと感じたら教えてください!!

では、11話もどうぞ!!


第11話:白の杖と断絶の理

螺旋階段を登りきると、そこには重厚な木製の扉が静かに佇んでいた。

セラフィナが合言葉を告げると、扉は滑らかな音を立てて開いた。

 

「おや、ミス・ヴァレンティス。このような夜遅くにどうしたのかね?」

 

半月形の眼鏡の奥から、アルバス・ダンブルドア校長が穏やかな眼差しを向けた。

セラフィナは背筋をピンと伸ばし、気品あふれる美しいお辞儀を捧げた。

 

「夜分遅くの非礼をお許しくださいませ、校長先生。ですが、学校の安全と規範に関わる重大な事態が発生いたしましたので、ご報告ならびに進言に上がりました」

 

「ふむ……重大な事態かね。聞き届けるよ。掛けなさい」

 

勧められた椅子には座らず、セラフィナは立ったまま、澄んだ声で事実と分析を順序立てて述べ始めた。

 

「第一に、番人のハグリッドがその小屋にて、1692年ドラゴン飼育禁止令に触れるノルウェー・リッジバック種の卵を不法に所持しております。そして酒場にて見知らぬ男からその卵を譲り受けた際、3頭犬の宥め方――音楽を聴かせることで無力化できるという最重要機密を、外部の者に漏洩いたしました」

 

淡々と述べられる報告を聞き、ダンブルドアの半月形の眼鏡の奥で、静かに瞳が細められた。

 

「……ハグリッドがその男に、フラッフィーの秘密を漏らしてしまっていたとは。ヴァレンティス君、君の報告がなければ見過ごすところであったよ。……ハグリッドの軽率さは時に周囲を困惑させるが、君は彼をアズカバンへ送るべきだと考えるかね?」

 

「いいえ。私が求めているのは過ちなき『処置』と『安全の確保』であり、私情による処罰ではございません」

 

セラフィナのアイスブルーの瞳は、一切の揺らぎなく校長を見つめ返した。

 

「ハグリッドに悪意がなかったとしても、違法生物の持ち込みと機密漏洩という事実は、確率論的にいつか必ず犠牲者を生み出しますわ。情で罪を覆い隠すことは、秩序の破滅を意味いたします。……そして校長先生、城内の教育環境に関しても、私からお伝えすべき懸念が三点ございます」

 

「ほう、懸念かね? 聞かせてくれたまえ」

 

「ええ。第二に、スネイプ教授による不公平かつ理不尽な減点が横行しており、生徒の著しい反発と信頼失墜を招いていること。第三に、クィレル教授のおどおどした態度により闇の魔術に対する防衛術の授業が成り立っていないこと。第四に、ビンス教授の単なる教科書の音読に終始する講義など、教育の質と指導の不備が放置されていることですわ」

 

隠すことなく冷静に4つの問題を提示するセラフィナの視座と理知に、ダンブルドアは深く頷き、感心したように温かな微笑みを浮かべた。

 

「見事な観察眼と分析だ、ヴァレンティス君。教授陣の授業環境への指摘も真摯に受け止めよう。君の言う通り、安全と法令を軽視することは許されない。ハグリッドの件は手遅れになる前に処置しよう。ドラゴンの卵は専門の研究施設へ内々に移送するよう手配し、機密漏洩にも防衛措置を講じる」

 

「感謝いたします、校長先生。正当な統治者の下で適切な判断が下されたこと、心より安堵いたしました」

 

セラフィナは丁寧なお辞儀を残し、静かに校長室を後にした。

 

◇ ◇ ◇

 

翌日、回廊の静けさの中で、セラフィナは険しい表情で歩いていたハリー、ロン、ハーマイオニーの3人にそっと歩み寄った。

 

「……少しよろしいかしら?」

 

セラフィナが呼びかけると、ハリーとロンは一瞬で表情を硬くし、隠そうともしない強い拒絶と怒りの眼差しを向けた。

 

「ドラゴンの卵の事はダンブルドア校長にお伝えして、正しい手順を踏んで解決する事になりましたわ」

 

セラフィナが穏やかに事実を告げると、ハリーとロンの顔が激昂に染まった。

 

「やっぱり言いつけやがったな!!」

 

ロンの吐き捨てるような言葉に、セラフィナは胸を痛めつつも、まっすぐな瞳で静かに首を振った。

 

「言いつけたわけではありません。城の安全を守り、ハグリッドがこれ以上重い罪に問われないための正当な報告です。手遅れになる前に守られたのですよ」

 

「守られただって!? ハグリッドがどれだけ悲しんでるか、君には分からないのかよ! 冷血漢め!」

 

ロンが顔を真っ赤にして叫ぶ声を聞き、セラフィナは心の底から戸惑いを覚えた。

 

(……なぜかしら。なぜ正しくルールを守り、危険を防ぐための行動をした私が、どうしてこれほど激しい怒りを向けられなければならないのでしょう……?)

 

セラフィナは胸の上にそっと手を当て、胸の痛みを押し殺しながら穏やかに問いかけた。

 

「……分からないのです、ハリー。ハグリッドの優しさは存じております。けれど、法律を破り、周囲を危険に晒す行為を庇い立てすることが、なぜ『優しさ』になるのですか? 秩序を破る人を守ろうとすることが、どうして正義になるのでしょう……?」

 

「そんなの……ハグリッドは僕たちの友達だからに決まってるだろ!」

 

感情を露わにする二人の姿に、セラフィナは切ない想いを抱きつつ、静かに息を吐いた。

 

「私情のためにルールを歪めれば、いつか必ず大切な人を滅ぼすことになりますわ……。それに、友達が間違った事をした時は正しい道へ導く事が本当の友達なのではないでしょうか?」

 

「君には僕たちの気持ちなんて分からないよ!」

 

言い返す言葉を持たないハリーたちは、背を向けて走り去っていった。

去っていく彼らの背中を、セラフィナはただ哀しげに見送ることしかできなかった。

 

(正しいことを伝えることが、これほど人を傷つけ、遠ざけてしまうものなのですか……?)

 

自分の信じる秩序と、ハリーたちの友情という感情の衝突に、セラフィナの胸には冷たく切ない疑問が残された。

 

◇ ◇ ◇

 

そしてその夜――ハリーたちの無謀さはセラフィナの想像を超えていた。

セラフィナが静寂に包まれた寮の自室で整然と読書に耽っていた頃、城の裏側で波乱が起きた。

 

ドラゴンの処分にショックを受けたハグリッドを気遣い、彼を慰めるために、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は密かに寮を抜け出してハグリッドの小屋へと向かったのだ。

透明マントを被り、闇に紛れて渡り廊下を渡る彼らの行動は、純粋な友情ゆえのものだった。

 

しかし、彼らを告発しようと暗がりで待ち構えていたドラコ・マルフォイの存在や、夜間見回りを行っていたマクゴナガル教授の目をかいくぐることはできなかった。

危険な夜の境内で捉えられた4人は、その場で厳しく追究され、摘発されることとなったのだ。

 

翌朝、大広間の重厚な扉をくぐった生徒たちは、一様に足を止め、言葉を失った。

 

壁際に備え付けられた巨大な寮点数計――グリフィンドールの砂時計から、一晩にして圧倒的な数のルビーが消え失せていたのだ。

かつて首位を争っていた赤い砂時計は今や底をついていた。

 

「……嘘でしょう? 一夜にして150点も引かれるなんて、そんなことあり得るの!?」

 

「グリフィンドールが最下位に転落したぞ……! 一ったい誰がこんな真似を!」

 

大広間は瞬く間に動揺と怒号の渦に包まれた。

事態の全貌が知れ渡るのに、そう時間はかからなかった。

ハリー・ポッターとロン・ウィーズリー、そしてハーマイオニー・グレンジャーの3人が、昨夜密かに寮を抜け出し、夜間徘徊の末にマクゴナガル教授に捕まったという噂は、疾風のごとく四寮全体へ駆け巡ったのだ。

 

「あのポッターが、たった一晩で僕たちの1年間の努力を台無しにしたんだ……!」

 

「英雄気取りも大概にしろよ! 僕たちまで笑いものだ!」

 

グリフィンドールのテーブルからは、隠そうともしない強烈な怨嗟と怒声がハリーたちに浴びせられていた。

昨日まで「生き残った男の子」として羨望の眼差しを向けられていたハリーは、今や寮全体の裏切り者として絶絶たる冷視に晒されている。

 

ハリーとロンは肩をすぼめ、逃げ場のない惨めさに顔を蒼白にして俯いていた。

ハーマイオニーに至っては、溢れ出そうになる涙を必死にこらえながら、震える手で皿の上のトーストを見つめ続けることしかできないでいた。

かつて彼らを包んでいた温かな仲間意識は一瞬にして雲散霧消し、突き刺さるような冷たい沈黙とヒソヒソ声だけが彼らを痛々しく叩きのめしていた。

 

ハッフルパフのテーブルで静かに朝食をとっていたセラフィナは、騒然とする大広間を見渡しながら、そっと胸の前で白い指先を組んだ。

 

(情理を優先し、目先の友情のために規範を破り捨てた結果が……これほどまでに惨烈な代償となって自分に返ってくるのですわ……)

 

全校生徒からの非難の的にされ、小さく身を縮めるハリーたちの姿を見つめるセラフィナのアイスブルーの瞳には、厳格な理知と、同時に深い慈愛が宿っていた。

 

セラフィナは彼らを嘲笑う気など毛頭なかった。

正しさを軽んじた彼らの浅慮さに対する『厳しさ』と同時に、己の未熟さゆえに孤立し、深く傷ついている幼い魂に対する『哀憐と慈愛』が、彼女の胸を痛ませていたのだ。

 

(友達を想う優しさそのものは、決して悪ではございません。ですが……理を欠いた感情は無秩序を生み、最後にはご自身だけではなく、大切な人すらも傷つけて滅ぼしてしまう……。どうかこの過酷な痛みが、あなた方にとって真の理知を学ぶ糧となりますように……)

 

大広間の片隅で、全校生徒からの冷ややかな視線と絶望に打ちひしがれているハリーたちの姿を、セラフィナは悲しみを湛えた澄んだ眼差しで見つめていた。




最後までお読みいただきありがとうございました!

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※唯一の休みの木曜日が急遽仕事になり、書き留めができなくなりました。何とか1話作りましたが、次回の更新が明日できるかわかりません。
なるべく頑張りますが、次回以降の更新が不定期になるかもしれません。
ご了承ください。
よろしくお願いします。
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