ホグワーツの聖女――アスペンの杖は灰色の秩序を刻む 作:神切優羽
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今回も時間をかけて考える事ができなかったので設定やら何やらがおかしいかもしれないです…。
違和感があれば教えてください。
では、13話もどうぞ!!
昨夜の静寂が嘘であったかのように、翌朝のホグワーツは尋常ではない動揺と噂話の渦に包まれていた。
「ポッターたちが昨夜、3階の立ち入り禁止区域に侵入したらしいわ……!」
「地下で『名前を呼んではいけないあの人』の陰謀を阻止したんだって!」
「クィレル教授が亡くなったらしいぞ。ポッターも大怪我を負って、医務室で眠り続けているとか……」
飛び交う上級生たちの噂話を聞きながら、中庭の回廊を歩くエマは、目を輝かせて隣のセラフィナを見つめた。
「ねえセラフィナちゃん、聞いた!? ハリーたちが『名前を呼んではいけないあの人』をやっつけたなんて本当にすごいと思わない!?」
「……ええ、驚くべき事態ですわ」
無邪気に感心するエマに合わせつつも、セラフィナは静かにアイスブルーの瞳を伏せた。
(マクゴナガル教授へ完璧な通報を行い、直接の厳重注意までなされたというのに……。なぜ彼らの暴挙を未然に防ぐことができなかったのですか……)
教員陣の管理体制の杜撰さに深い疑問と不信を覚えつつも、セラフィナの胸を占めたのは、何よりも未熟な同級生たちの身を案じる思いであった。
(何はともあれ、まずは彼らの無事を確かめなければ……)
セラフィナは一人、静かな足取りで医務室へと向かった。
◇ ◇ ◇
消毒液と薬草の匂いが漂う医務室の扉を静かに開けると、白いベッドの横で、疲れ果てた様子のロンとハーマイオニーが腰掛けていた。
ベッドの上では、ハリーが固く目を閉じたまま、規則正しい寝息を立てて眠り続けている。
「……セラフィナ」
姿を現したセラフィナに気づき、ハーマイオニーが気まずそうに視線を落とした。
「……ご無事で、本当によかったですわ」
セラフィナは二人の前に立ち、そっと胸を撫で下ろした。命に別条がないことを確認し、その瞳に静かな安堵の光が宿る。
「ハリーも……命を落とさずに済んで、何よりでした」
「うん……マダム・ポンフリーが、命に別条はないって言っていたわ。でも、まだ目を覚まさないの……」
ハーマイオニーの言葉に頷いたセラフィナは、表情を引き締め、まっすぐに二人を見つめた。
「安堵いたしました。ですが……お二人に苦言を呈さざるを得ません」
「え……?」
「昨夜、マクゴナガル教授から直接厳重に警告されたはずです。それにもかかわらず、規範を破り、人目を忍んで危険な地下へ足を踏み入れるなど……言語道断の愚行ですわ。一歩間違えれば、全員命を落としていたのですよ」
セラフィナの澄んだ声による指摘に、ロンは悔しそうに顔を歪め、言い返した。
「だけどセラフィナ! 僕たちが動かなきゃ石が奪われていたんだぞ! ……それに、大人だって頼りにならなかったじゃないか!」
「ッ……」
ロンの投げかけた言葉が、セラフィナの胸を鋭く貫いた。
(大人だって頼りにならなかった――)
それは、まさにセラフィナ自身が今朝から痛感していた、動かしようのない事実であった。
自分がどれほど完璧に通報し、正当な手続きを踏もうとも、教員方は彼らを止めることも、仕掛けを守ることもできなかったのだ。
「それは……」
客観的な論理と事実を何よりも重んじるセラフィナだからこそ、その正論に対して反論の言葉を見つけることができなかった。
唇をかみしめ、ただ静かに言葉を詰まらせるセラフィナの様子を見て、ロンもまたそれ以上は何も言わず、気まずそうに視線を逸らした。
「……失礼いたします。どうか、お大事になさってください」
セラフィナは静かに一礼すると、それ以上言葉を重ねることなく医務室を後にした。
自室へ戻り、一人窓辺に立ったセラフィナは、夕闇に包まれゆくホグワーツの敷地を見下ろした。
(私は完璧な手順を踏み、教授へ危機を報告いたしました。ですが……先生方は彼らを止めることもできず、生徒に『頼りにならない』と言わせる失態を演じた……)
教員方の無能さと、約束されたはずの安全管理の崩壊。
正義や規則を信じて行動した自分が愚かであったかのような敗北感と徒労感が、セラフィナの胸を冷たく満たしていった。
◇ ◇◇
ハリーが眠り続けてから3日が経過した翌日、城では1年を締めくくる終業パーティーが開かれた。
大広間は、年間を通して規律を守り、最多の寮得点を積み上げてきたスリザリンの勝利を祝う、緑と銀の装飾で彩られていた。
奇跡的に意識を取り戻し、医務室から駆けつけたハリーが姿を見せると、大広間には大きな歓声が上がった。
セラフィナがハッフルパフのテーブルで静かに料理に手を付けていると、教員席の中央でダンブルドア校長が立ち上がった。
「さて、みなさん。素晴らしき1年に乾杯する前に、表彰を行わねばならん。まずは寮得点だ。4位、グリフィンドール。312点。3位、ハッフルパフ。352点。2位、レイブンコー。426点。そして1位は、472点でスリザリンじゃ!」
スリザリンのテーブルから怒号のような歓声が上がり、銀の食器が打ち鳴らされた。地道に得点を重ねてきたレイブンクローの生徒たちからも、誇らしげな拍手が送られる。
だが、ダンブルドア校長は手を挙げ、広間を制した。
「うむ、見事じゃ、スリザリン。……しかしながら、最近の出来事も計算に入れねばならん」
広間の空気が一変した。ダンブルドア校長は穏やかな微笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「土壇場での特別点を授与したい。……まずは、ロナルド・ウィーズリー。ホグワーツがここ数年見たこともないような、見事なチェスの試合を見せてくれた。これに対し、グリフィンドールへ50点」
大広間にどよめきが広がった。ロンが顔を赤らめる中、校長は爽やかに続ける。
「次に、ハーマイオニー・グレンジャー。火に包まれても動じぬ冷徹な論理と知恵に対し、50点」
「さらに、ハリー・ポッター。その卓抜なる純粋な気概と、並外れた勇気に対し、60点」
砂時計の中で、真っ赤なグリフィンドールの宝石が大量に激流となって落ちていく。
隣に座るエマが、目を輝かせて歓声を上げた。
「わあ、すごい! 一気に追いついちゃった! 凄すぎるよ、グリフィンドール!」
天真爛漫に拍手を送るエマの横で、ルーカスは信じられないものを見たように目を丸くし、低く呟いた。
「……年間を通して積み上げた努力や規則は、一体何だったんだ……?」
そして校長の特別加点は、それだけに留まらなかった。
「そして最後に……敵に立ち向かうのは大変な勇気が要るが、友達に立ち向かうのにも同じくらいの勇気が要る。ネビル・ロングボトムに、10点」
その瞬間、グリフィンドールの得点がスリザリンを突き抜け、1位へと躍り出た。
「これより、飾りの変更を行おう!」
ダンブルドア校長が手を叩くと、天井の緑と銀のバナーが一瞬にして真っ赤な獅子の紋章へと塗り替えられた。
グリフィンドールのテーブルからは割れんばかりの狂乱した歓声が巻き起こり、帽子を投げ捨てて喜ぶ生徒たちの声で大広間が揺れた。
その狂騒の只中で、セラフィナは静かに拍手を止めた。
(……スネイプ教授が普段からスリザリンを露骨にかばい、他寮を不当に貶めるのも……。ダンブルドア校長が土壇場でルールを捻折り、グリフィンドールを強引に勝たせるのも……。結局、やっていることは何も変わりませんわ)
どちらも立場と権力を盾にした、あまりに身勝手で露骨な「依怙贔屓」に過ぎなかった。
日常的にルールを守り、地道に学業に励み、正規の手続きを踏んで点数を積み重ねてきた生徒たちの努力は、教師の気まぐれ一つでゴミクズのように扱われる。
(なぜ……ルールを破り、大人の警告を無視して危険に飛び込んだ者たちが賞賛され、ルールを厳格に守ってきた者が踏みにじられるのですか……?)
この学校において、「規則」や「正義」などというものは、権力者の機嫌や『選ばれし者たち』の気まぐれな英雄的暴挙によっていくらでも書き換えられてしまう、空疎な飾り物に過ぎなかったのだ。
大広間を包む熱狂の中で、セラフィナのアイスブルーの瞳だけが、氷のように冷たく澄み切っていた。
大人たちの不備、組織の歪み、そして権力者たちの不条理な依怙贔屓。
この学校のシステムと指導者層へ完全に失望したセラフィナは、ローブのポケットの中で、冷たく滑らかなアスペンの白杖を強く握りしめた。
他人の気まぐれな評価や歪んだルールなど、端から当てにはしない。
いかなる理不尽にも惑わされぬ確固たる理論と、己の鍛え上げた魔法――それだけを信じ、気高く孤高の道を歩み抜く。――。
歓声が響き渡る大広間の中で、セラフィナは静かに、精神的自立とともに1年目の物語に幕を下ろした。
最後までお読みいただきありがとうございました!
賢者の石編はこれで終了です。
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次話の投稿は未定です。
当初想定していたプロットから離れてしまったので秘密の部屋編のプロットを考え直します。
(キャラが勝手に動いていく事がある…)
これからもよろしくお願いします!!