ホグワーツの聖女――アスペンの杖は灰色の秩序を刻む   作:神切優羽

9 / 13
第9話も来てくださりありがとうございます!!

お気に入りが日々増えていくのが嬉しいです!
評価もありがとうございます!

引き続き誤字脱字がありましたら教えてくれると幸いです!
キャラの性格や言動も一貫していないと感じたら教えてください!!
頑張ります!

では、9話もどうぞ!!


第9話:白の杖と正義の境界

11月に入ると、ホグワーツには凍てつくような北風が吹き荒れるようになった。

だが、城内は寒さを吹き飛ばすほどの熱気に包まれていた。グリフィンドール対スリザリンの、今期初のクィディッチ公式戦が迫っていたからだ。

 

「ハリー、いよいよ今日だね! 絶対に応援しているからね!」

 

大広間の朝食で、緊張気味のハリーにエマが弾んだ声をかける。

セラフィナは温かな紅茶を注ぎながら、気品あふれる微笑みをハリーに向けた。

 

「ハリー。怪我にだけは十分気をつけて、日頃の成果を存分に発揮なさってくださいね」

 

「うん、セラフィナ。行ってくる!」

 

◇ ◇ ◇

 

吹きすさぶ寒風の中、クィディッチ競技場は超満員の生徒たちの歓声で揺れていた。

セラフィナはエマやルーカスと共に観客席の最前列に立ち、上空を高速で旋回するハリーの姿を見守っていた。

 

試合は序盤から激しい攻防が続いたが、異変は突然訪れた。

 

ハリーの乗るニンバス2000が、脈絡もなく激しく揺れ始めたのだ。

まるで暴れ馬のように突進し、ハリーを振り落とそうと上空で不規則に乱高下を繰り返す。

 

「な、なにあれ!? ハリーの箒が……狂っちゃったの!?」

 

エマが悲鳴を上げ、ルーカスも顔を蒼白にして身を乗り出した。

 

「いいえ……あれは箒の不具合でも、操作のミスではありませんわ」

 

セラフィナはアイスブルーの瞳を細め、まっすぐに上空のハリーを見つめた。

箒の木肌を締め上げるような、不自然で力強い呪縛の魔力が上空で蠢いている。誰かが意図的に強い遠隔魔法を行使し、ハリーを振り落とそうとしているのは明らかだった。

 

だがその直後、遠くの教員席の一角で一瞬、小さな火の手が上がったのが見えた。

それとほぼ同時に、ハリーの箒の暴走がぴたりと収まる。

 

体勢を立て直したハリーは、見事な急降下で金色のスニッチを口で受け止め、グリフィンドールに鮮やかな勝利をもたらしたのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

放課後、いつもの空き教室には特に親しい6人――セラフィナ、エマ、ルーカス、そしてハリー、ロン、ハーマイオニーが集まっていた。

 

「ハリー、見事な捕獲でしたわ。スニッチを口で受け止めるなんて、少しヒヤヒヤいたしましたけれど」

 

「あはは、僕も自分でもびっくりしたよ。でも、勝てて本当によかった」

 

焼き立てのスコーンと温かな紅茶を囲み、最初はハリーの初陣の勝利を讃え合う和やかな時間が流れていた。

しかし、一口スコーンを噛み締めたハリーが、ふと真面目な面持ちで口を開いた。

 

「……実はね、試合の途中、急に箒が僕の言うことを聞かなくなったんだ。まるで自分の意志で僕を振るい落とそうとしているみたいに」

 

「ええ、観客席から見ていても明らかにおかしかったですわ。強力な遠隔の魔力が干渉していました」

 

セラフィナが静かに頷くと、ロンが待っていましたとばかりに身を乗り出した。

 

「やっぱりそうだ! ハリー、あの時スネイプが君の箒をずっと睨みつけて、ブツブツ呪文を唱えていたんだよ! スネイプが呪いをかけていたんだ!」

 

「私も見たわ」

 

ハーマイオニーがノートを開き、毅然とした声で重ねた。

 

「あの状況でハリーの箒に干渉できるような強力な呪術を扱える人物は限られているわ。だから私、教員席に回り込んでスネイプ教授のローブの裾に火をつけることで集中を切らせたの」

 

「――ハーマイオニー。教員の身につけているものに火を放ったのですか?」

 

セラフィナの静かな声が響いた。それまでの温かな笑みは完全に消え去り、アイスブルーの瞳には刃のような厳しい光が宿っていた。

誰もが息を呑み、ハーマイオニーも予想外の威圧感と思慮深さに思わず背筋を伸ばした。

 

「いくらハリーを助けたい一心だったとはいえ、それは明確な過ちであり、決して許される行為ではありませんわ。万が一火が燃え移り、教授や周囲の方々が大火傷を負っていたらどうなさるつもりでしたの? 正義を成すための手段が不当な暴力を孕むのなら、それは私たちが忌み嫌う『悪意』と同義です。一線を越えた暴挙は、いかなる正義の理由があろうとも肯定されません」

 

単なる叱責ではなく、真摯な危惧と倫理を説くセラフィナの強い眼差しに、ハーマイオニーは返す言葉を失い、小さく「……ごめんなさい、私……必死で……」とうつむいた。

 

「ハリーを思うお気持ちは尊いものです。ですが、二度とあのような危険で理を欠いた手段には出ないと、ここで約束してくださいませ」

 

「……ええ、約束するわ。行き過ぎてしまって、本当にごめんなさい」

 

ハーマイオニーが素直に反省を示したのを見届け、セラフィナは静かに視線をハリーたちへ戻した。

 

「ですが……スネイプ教授が生徒を殺そうとしただなんて、やはり私には信じがたいことですわ」

 

「でもセラフィナ、あの部屋のことを覚えているかい?」

 

ハリーが声を潜め、真剣な眼差しで語りかける。

 

「3階の開かずの廊下……あそこにいる『巨大な3頭犬』のことだよ。僕たち、ハロウィンの夜に迷い込んで見ちゃったんだ。あんな恐ろしい怪物が学校の中に封印されているなんて、絶対におかしいよ」

 

「3頭犬……!? 巨大な危険生物が、生徒の通う校内に……?」

 

セラフィナはアイスブルーの瞳を深く揺らした。

教員への不信感以前に、学校という教育機関がそのような超危険生物を安全管理の行き届かない場所に放置しているという事実そのものに、強い理不尽と不信感が込み上げてくる。

 

「ええ、危険極まりない状態ですわね……。万が一生徒が立ち入れば、命の保証はありませんもの」

 

「そうなんだよ! そしてね、トロールの夜のことを思い出してほしい」

 

ロンが声を弾ませて言葉を継いだ。

 

「あの夜、全員が地下室へ向かったのに、スネイプだけは3階の廊下へ向かっていたんだ。その後、スネイプの足が酷く傷ついて血を流しているのをハリーが見たんだよ! きっとスネイプは、あの3頭犬が守っている『何か』を盗もうとして、噛みつかれたんだ!」

 

「……なるほど。点と点が繋がってまいりますわね」

 

セラフィナは顎に手を当て、頭の中で論理を組み立てた。

 

「トロール事件の混乱に乗じて、スネイプ教授は3階の秘密を奪おうとし、3頭犬の防衛に阻まれて失敗し怪我を負った。そして今回のクィディッチでは、自分の企みに気づきつつあるハリーを害しようとした……それがお二人の推論ですわね?」

 

「その通りだ! スネイプは絶対に何か良からぬものを狙っている!」

 

確信に満ちたロンの言葉に、セラフィナは暫し沈黙し、静かにティーカップを置いた。

 

「……筋は通っておりますわ。ですが、だからこそ私たちが勝手に動くのではなく、まずはダンブルドア校長にご報告すべきです」

 

セラフィナの澄んだ声が、熱を帯びた室内を冷静に包み込む。

 

「あのような恐ろしい3頭犬を配備し、厳重な防衛を敷かれたのは校長ご自身です。つまり、校長こそが『護るべき何か』の意図をご存じであり、間違いなく私達生徒の味方であり、この城で最も偉大な魔法使いですわ。スネイプ教授の疑惑も、3頭犬の件も、正当な権限を持つ校長にお委ねするのが最も安全で確実な道です」

 

「校長先生に……そうか、ダンブルドアならスネイプの暴走だって止められるし、絶対に僕たちを護ってくれるよね」

 

ハリーが大きく安堵の息を吐き、ロンやハーマイオニーも納得したように深く頷いた。

 

「ええ。新学期が明けたら、機会を見て校長室をお訪ねいたしましょう。だからハリー、決して一人で抱え込まないでくださいね」

 

「……わかったよ、セラフィナ。ありがとう」

 

ハリーの安らかな頷きと共に、6人の間には固い信頼と結束の絆が結ばれたのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

12月中旬を過ぎると、城内には白い雪が降り積み、待ちに待ったクリスマス休暇が訪れた。

 

「セラフィナ、実家に帰っちゃうんだね。寂しくなるよ」

 

大広間の出口で、ハリーが名残惜しそうに声をかける。

 

「ええ。ですが、新学期にはまたすぐに戻ってまいりますわ。ハリー、ロン、城で過ごすクリスマスを楽しんでくださいね」

 

「うん! お土産の話、楽しみにしているよ!」

 

手を振るハリーたちに見送られ、セラフィナはエマやルーカスと共に、赤と金のホグワーツ特急へと乗り込んだ。

 

車窓の外を流れる銀世界の景色を見つめながら、セラフィナは膝の上の白杖をそっと愛おしそうに撫でた。

 

(もし仮に……スネイプ教授が唱えていたのが、呪いではなく『解呪(カウンター・カース)』だったとしたら……?)

 

ふと頭をよぎった逆転の論理思考に、セラフィナは意識を研ぎ澄ませた。

 

(両目を瞬きもせず対象を睨み続ける必要があるのは、解呪も同様。そして、火の手によって呪いが解けたのは、火事に驚いた周囲の誰かが集中を乱されたから……。つまり、ハリーを直接狙っていた真犯人は、スネイプ教授のすぐ近く、同じ教員席にいたということになりますわ)

 

真実に極めて近い、寒気の走るような恐ろしい推理。

だが次の瞬間、セラフィナは静かに首を横に振った。

 

(いいえ……確たる証拠もないのに、ホグワーツの教授方を疑うような不敬な思考に囚われるなんて、浅はかでしたわね。今考えるべきことではありませんわ)

 

冷徹になりかけた思考を穏やかに打ち消し、セラフィナは窓の外の雪原へと視線のピントを合わせた。

不穏な予感を雪の静寂へと溶かし込みながら、汽車は懐かしい我が家へとひた走っていくのだった。




最後までお読みいただきありがとうございました!

もし「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下部にある『しおり』『お気に入り』登録、『評価』『感想』『ここすき』などをいただけますと執筆の大きな励みになります。

次話の投稿は22日の0:00になります!

これからもよろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。