【男女比1:999】異世界に転生したら、なぜか美少女たちから激重感情と熱い眼差しを向けられるようになった件〜男に飢えた彼女たちを満足させられるのは、何度もできる僕だけ〜 作:茨木野
アルクと、初めての行為をした。
カトレアやシウネーと同様、アルクもまた、ベッドの上では普段とまったく違う顔を見せた。
普段は理知的でツンとしている彼女が、ベッドの上では、ひどくかわいらしかったのだ。
少しきつい印象を受ける彼女が、蕩けるような甘い声で「もっと、もっとぉ……♡」と強請ってくるのだ。
ドMというやつだ。
僕っ娘で、ツンデレで、ドMの錬金術師。なんとも属性が山盛りだった。
しかも、かなりヘンタイだった。詳細は省くけれど、とにかく凄かった。
普段の生真面目な姿とのギャップがありすぎて、ぼくもつい夢中になってしまった。
「で、カトレアたちだけで行ったんだね」
ひとしきり行為を楽しんだ後、ぼくは乱れたシーツの上で、カトレアたちがどこへ行ったのかを尋ねた。
ぼくたちパーティは元々、冒険者としてクエストを受けていたはずだ。
森に出現した謎の魔物の調査依頼。報酬は十万円。
カトレアたちは、そんな危ない場所へぼくを連れて行くのがどうしても嫌だったらしい。
だから、会心必中撃というチートスキルを使って、ぼくを強制的に眠らせたのだ。
「そうだよ、りょーたくん。大丈夫。さっき止めた時にも言ったけれど、最高級の転移結晶とポーションを渡してあるから」
カトレアがいないことに遅まきながら気づいたぼくは、服を掴んでそのまま部屋を飛び出そうとしたのだ。
でも、アルクに必死に止められた。彼女らのぼくを想う気持ちと、そしてきちんと安全策を取っていることを聞き、行くのを思いとどまったのだ。
「大丈夫だよ」
「そうだね。転移してきてないってことは、まだ大丈夫だってこと……」
ぼくがそう口にした、その時だった。
ぶぅうんっ、と。
空気を震わせるような重低音とともに、ぼくたちの目の前の空間にまばゆい魔法陣が出現したのだ。
「っ。これって……っ」
「ああっ。転移結晶だっ。僕らのもとへ飛ぶように設定してあるから、多分カトレアかシウネーだっ」
そんな。じゃあ、転移結晶を使わなければならないほどの危険な事態が起きたということじゃないかっ。
光の中から現れたのは、カトレアだった。彼女の体は、べっとりと酷い血まみれだった。
「ぼう……や……」
「【治癒】っ」
膝から崩れ落ちそうになった血だらけのカトレアに、ぼくはすぐさま治癒スキルを使用する。
全身に付着していた血が一瞬で光の粒子となって消え去り、傷が塞がる。ぼくは、カトレアの大きな胸の中に勢いよく飛び込んだ。
「カトレアっ。大丈夫っ!?」
「……ああ、大丈夫だよ。大丈夫さ」
「ほんと?」
「ああ。坊やのおかげで、傷はもうすっかり治ったよ」
……ああ、くそっ。ぼくはなんて暢気だったんだ。
カトレアが命懸けで戦って怪我をしている間に、のうのうと他の女の子と楽しんでいたなんて。
いや、反省は後でしよう。今の問題は。
「シウネーは!?」
そう、この場にシウネーがいないのだ。
転移結晶を使って逃げてきたのは、カトレアただ一人だけだった。
嫌な予感がする。そしてその予感は、最悪の形で的中していた。
「シウネーは、あたしを逃がしてくれたんだ」
「逃がすって……何があったんだい? って、りょーたくんっ」
部屋を飛び出そうとしたぼくの手首を、アルクが強く掴んで止める。
「離してっ」
「冷静になって。きちんと状況を理解しないで飛び出しても、時間の無駄だ。その分、シウネーが危ない目に遭い続けるよ」
「っ……」
アルクの言う通りだ。
焦って闇雲に向かっても意味がない。
「何があったの?」
「……ゴブリンに襲われたんだよ」
ゴブリン。ファンタジー系のアニメやゲームでよく見る、代表的な雑魚モンスターだ。
シウネーは確かSランク冒険者のはずだ。ゴブリンごときに後れを取るとは到底思えないのだけれど。
「あたしらは、依頼人のいる村まで行ったんだ。その村の近くに変な魔物がうろついているっていうから、森へ様子を見に行った。そこにいたのは、ゴブリン・メイジと、そいつの配下であるゴブリン亜種どもだった」
「メイジ……魔法を使う上位のゴブリンってこと?」
「ああ。魔法で凶悪に強化されたゴブリンどもが、初めから待ち受けていやがったのさっ」
待ち受けていた、というのはおかしい。
ゴブリンたちからすれば、討伐の冒険者がやってくるのは想定外の事態であるはずだ。
すると、アルクが「洗脳魔法だね」と呟いた。
「そうさ。ゴブリン・メイジが洗脳魔法で、村人を操っていたのさっ」
……からくりが見えてきた。
まず、ゴブリン・メイジは洗脳魔法が使える。
洗脳を使って村人を操り、ギルドへ嘘の調査依頼を出す。
のこのこと依頼を受けてやってきた冒険者は、村人の手引きでメイジの元へ誘導される。
そして、万全の態勢で待ち受けていたゴブリンどもに、多勢に無勢で袋叩きに遭うというわけだ。
「…………」
操られていた村人への怒りは、湧いてこない。あるのは、卑劣な魔物への激しい怒りだ。人の心を操って、罠の駒として利用するなんて。
「洗脳をしていたなんて、よくわかったね」
アルクがもっともな疑問を口にする。
「……メイジの野郎が、高らかに笑いながら種明かしをしてきやがったのさ」
なるほど。勝利を確信した者の、悪趣味な余裕というやつか。
「シウネーは、奴が油断したその一瞬の隙にあたしに転移結晶を握らせて、一人だけ逃がしてくれたんだ」
「結晶は、二人分あったと思うのだけれど」
「シウネーの分は、戦闘中に奴らに取り上げられちまったのさ」
……事情は把握した。
ゴブリン・メイジが悪の親玉だ。
カトレアたちは罠にはめられて絶体絶命のピンチに陥り、シウネーは自身の身を挺してカトレアだけを逃がしたのだ。
「いってくる。二人はここで待っていて」
「一人で行く気かいっ!? 危険すぎるよっ」
ぼくは迷いなく歩き出す。カトレアは今度は止めなかった。
「ぼくは……今、最高にムカついているんだ」
ぼくの可愛いカノジョたちを騙し、傷つけ、ひどい目に遭わせたあのメイジとやらを、絶対に許しておけない。
「彼に任せよう。僕たちでは足手まといになるだけだ。相手は洗脳持ちだしね」
「けどっ。坊やが洗脳に掛かったら……って、ああっ。そうか」
そう。ぼくが洗脳状態に陥ることは、あり得ない。ぼくには完全な回復チートがある。
どんな状態異常の魔法をかけられても、かけられる前の正常な状態に一瞬で戻せるのだ。
そういう理屈なら、カトレアたちがついてきても洗脳された端からぼくが一瞬で治せるのだけれど。
でも、もうこれ以上カトレアに、怖い思いや痛い思いをさせたくない。
「いってくる」
「うん、後は君に任せるよ。ギルドへの急行と事後報告などは、僕に任せておいて」
☆
良太の第二のカノジョである、シウネー。
彼女は、薄暗い洞窟の中で自分の絶望的な運命を悟っていた。
『げげげっ』
『げぎぎぎ……』
『ぐえっへへえ〜……』
自分が今いるのは、悪臭の漂うゴブリンどもの巣窟だ。
ゴブリン。誰もが知る、最弱の雑魚モンスターの代表格。
しかし、群れた彼らを侮ると痛い目に遭う。彼らは実に狡猾で、悪辣だ。
周到な罠にはめられ、そして、文字通りハメられる。
ゴブリンという種族に、雌は存在しない。雄のみの単一暴食種族だ。
彼らの繁殖方法はただ一つ。
人間の雌を捕らえ、無理やり孕ませること。
シウネーが転がされている洞窟には、何人もの人間の女たちが、衣服を剥ぎ取られた無残な姿で放置されていた。
皆、光を失った虚ろな目をしている。
捕らえられ、昼夜を問わず犯され続けたのだろう。心も体も完全に壊れ、ボロボロになっている。
もう少しで、自分も彼女たちの仲間入りを果たすだろうことは、火を見るよりも明らかだった。
(……良かった)
シウネーは絶望的な状況下で、ふっと安堵の息をついた。彼女がそう思う理由は二つある。
一つは、愛する良太を、こんなおぞましく危険な場所に連れてこずに済んだこと。
そしてもう一つは、良太の大事な彼女の一人であるカトレアを、無事に逃がして助けることができたこと。
(りょーたを、守ること、できた……。だから……)
シウネーには、天賦の剣の才能があった。だが、その圧倒的な才能でどれほど多くの魔物を葬り去ってきても、心には常に埋まらない空虚さを感じていた。
周囲からの盛大な称賛、どこまでも積み上がっていく華々しい実績。それらを得ても、心はピクリとも動かなかった。
一体何のために、こんなにも強い力が自分の体に宿ったのだろう。シウネーは、幼い頃からずっとその答えを求め続けてきた。
そして、良太と出会って、ようやく理解したのだ。
愛する彼を守るために、この力はあったのだと。
(彼と、彼の大事なものを守れた……。もういい。これで、十分……)
だが、冷たい岩肌に伏せた自分の頬を、温かい涙がつうっと伝った。
(あ、あれ……十分なはずなのに……どうして……涙が)
そんな無抵抗の自分のもとへ、ボスであるゴブリン・メイジがにじり寄ってくる。
メイジはひどく歪んだ、ニチャアという邪悪な笑みを浮かべた。目の前には抵抗すらできない、Sランクの極上の雌。
そんなとびきり美味しい餌を、今から自分がたっぷりと味見してやるのだと、醜い舌なめずりをする。
(やだ……こんなの汚い魔物に……わたし、触られたくない……っ)
逃げようと足掻くも、指一本動かせない。強力な麻痺の魔法をかけられているからだ。
(やだ……やだ……っ。わたし……わたしの体はっ。わたしの魂もっ。全部、全部っ。りょーたのものだからっ)
「たすけ……て……りょーたっ」
強烈な麻痺のせいで、声が正常に出せない。蚊の鳴くような、か細い声しか出ない。
そんな声が誰かに届くはずもないだろうと、メイジは嘲笑うように鳴き声を上げ。
シウネーの白い肌に汚らわしい手をかけた、その時だった。
ボゴォオオオオオオオオオオオオオオオッ。
耳を劈くような轟音とともに、ゴブリン・メイジがとんでもない勢いで横殴りに吹っ飛んでいったのである。
メイジは何らかの凄まじい物理的な力によって吹き飛ばされ、洞窟の硬い壁に激突してめり込んだ。
周囲を取り囲んでいた取り巻きのゴブリンたちは、半ば笑みを浮かべたまま硬直した。
『ぎ、ぎぎゃぎゃ?』
『ぎゃーす?』
何かの悪ふざけか、あるいはメイジ自身のパフォーマンスだろうとでも思ったのか。
彼らは首を傾げながら、倒れ伏すメイジに近寄る。
だが、壁から崩れ落ちたメイジは、ピクリとも動いていなかった。完全に沈黙している。
一体、何がどうなっているのだ。
誰もが、無敵のはずのメイジがなぜこんな無残な姿になったのか、その訳を知りたがった。
「おい」
静寂を切り裂く、低く冷たい声。
シウネーは、自分が都合のいい夢を見ているのだと思った。だって、こんなの出来すぎている。
絶体絶命のピンチに陥った女の子の元へ、愛する王子様が颯爽と駆けつけてくる。そんなおとぎ話は、古い絵本の中でしか見たことがない。
この一対九百九十九の歪んだ世界において、女のために命を懸けるような男気のある男など、存在しない。
命の危険を冒して助けに来てくれる男なんて、夢物語やファンタジーの中にしかいないはずなのに。
「ぼくの女に……汚い手を出すな……っ」
「りょーたっ」
そう、絶望の淵にあったシウネーの最大のピンチに、良太が駆けつけてきたのである。