【男女比1:999】異世界に転生したら、なぜか美少女たちから激重感情と熱い眼差しを向けられるようになった件〜男に飢えた彼女たちを満足させられるのは、何度もできる僕だけ〜 作:茨木野
シウネーはぼくらのホームタウンから、歩いて数時間の森の中にいた。
当然、その距離をまともに歩いていれば、シウネーはゴブリンどもに酷いことをされてしまっていただろう。
そこで、ぼくが使ったのは、シウネーから捕食《コピー》して手に入れたスキルだ。
~~~~~~~~~~~~~~~
■超加速(S)
→足の筋肉を超強化し、超人的ダッシュ力を得る。
足に負担が掛かるため連続使用が不可能。
~~~~~~~~~~~~~~~
超加速スキルを使用し、猛スピードで走ってきたのである。
ただ、このスキルは使用すると足にかなりの負担が掛かる。
何度も使えば足が壊れてしまう。だが。
ぼくには治癒スキルがある。
スキルの使用回数制限はなく、そして足への負担もゼロにできる。
あとはカトレアから聞いたゴブリンの住処へ直行し、メイジを加速した勢いのままぶん殴ったというわけだ。
もちろん、超スピードから放たれるパンチの威力は凄まじいが、反動も大きい。
でも、自己治癒によってそのダメージも回復、というか。
ダメージを受ける瞬間にタイミング良く治癒を発動することで、痛みを無視して攻撃できるようだった。
「ふぅ〜……」
ぼくは、拳を構える。視界に映るのは十匹のゴブリンたち。
指揮官であるメイジが行動不能となったことで、彼らは戸惑っているようだった。
だが、弱っちそうなぼくを見て、にやりと彼らは笑う。
考えは手に取るようにわかるよ。ぼくが弱そうだものね。ぼくをぶっ殺せば、シウネーが手に入る。
そう考えたのだろう。
「シウネー。大丈夫?」
「…………」
返事がない。ぼくはすぐさま治癒で彼女の体力を回復させた。でも彼女は気を失ってしまったのだ。
安堵の笑みを浮かべながらである。多分、安心して気が抜けてしまったのだろう。
いいよ、寝てて。ぼくがあと片付けるから。
『ぎぇげげええええええっ』
ゴブリンが十匹同時に、ぼくに襲いかかってくる。
武器も持たないぼくを侮ったな。
ドゴォオッ。
ゴブリン二匹が、背後へとぶっ飛んでいく。
残された彼らの間抜け面に、さらに拳をたたき込んでいく。
『ぎゃっ』『がっ』『げえええええええええええっ』
ぼくが使っているのは、カトレアを捕食して手に入れた格闘術スキルだ。
これを使うと、ケンカなんてしたことないぼくが、一瞬で格闘家さながらのパンチを繰り出せる。
間抜けなゴブリンどもの顔面に、超加速スキルで加わった全力パンチをお見舞いする。
ゲームやアニメを見てきたぼくだからわかる。
スキルは組み合わせられるのだ。
格闘に超加速を加えることで、超高速格闘が可能となる。
ただのパンチよりも、加速して殴ったほうが威力は大きい。威力は質量と速さのかけ算だからね。
無論スキルは連発できないし、超加速は体への負担も大きい。
が。
治癒スキルはそれら制約を無視する。使用回数制限も、肉体へのダメージも無かったことにできるのだ。
どごっ。
どがっ。
ぼごぉおっ。
ゴブリンどもを次々と殴り飛ばしていく。
相手はゴブリン。人間よりは、魔物寄りのビジュアルをしている。
身長も人間より小柄だ。だからだろうね。あんまり殴っても、嫌悪感を覚えない。人を殴ったら痛いだろうし、そもそも躊躇うだろうから。
そうならないのは、多分相手が魔物というのもあるし。それに、シウネーに酷いことをした相手というのもある。というかそっちの方が大きいだろう。
ひとしきりゴブリンたちを殴り飛ばしたあと。
『ぎぃ〜……ぎぎぃ〜……』
「ん? メイジ生きてたんだ」
どうやらメイジは、あの一発で死ななかったらしい。
まあゴブリンの上位種だし、HPが多いのかもしれない。もしくは回復魔法でも使ったのかも。
まあ、どっちでもいい。
「きっちり落とし前はつけさせてもらうよ」
『ぎぃい〜……』
ゴブリン・メイジはぼくの前で土下座し、何度も命乞いをしてくる。
どうやら見逃してほしいみたい。まあ、そんなことをする気は全くないのだけれど。
『ぎぎゃーーーっ』
と思ったそのとき、メイジが隠し持っていた杖をぼくに向けた。
ゴォオ、と杖先から炎の玉が生成され、射出される。
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオンッ。
『ぎゃはははっ。ぎゃーはーっ』
☆
シウネーが目を覚ました時、問題はほぼ解決していた。
倒れているゴブリンたち。
そして、血にまみれた良太。
最初、良太が怪我を負ったのではないかと思った。
だがよく見ると返り血だった。
(すごい……りょーた……あんなたくさんのゴブリンを倒すなんて)
男女比一対九百九十九の異世界において、男は絶対に戦わない。
男が希少種だからだ。怪我でもして死なれては困る。
それを理解している男たちは、戦いを女に任せる。
あるいは、そもそも戦う気のない気弱な者たちばかり。
いずれにせよ、男は戦わないもの。強くないもの。それがこの世界の常識だ。
たとえ凄い職業《ジョブ》を持っていたとしても、だ。そもそも戦う意志を男どもは持っていないのである。
そんな中で、良太は違った。積極的に戦っていた。
そして何より、自分のために、女のために戦ってくれたのだ。
そんな男がいるなんて思わなかった。涙が出た。ピンチに助けてくれる王子様が、自分の素敵なカレシだなんて。
(好き……♡ だいすき……♡ りょーた……もうぜったいに離さない……♡)
シウネーは良太に駆け寄ろうとした。
ちょうど、彼が残りのメイジだけを片付けるところだった。
だが、シウネーは見た。メイジは杖を構えて、良太に向かって攻撃してきたのである。
「りょーたぁ……」
ゴブリン・メイジの放った魔法は、業火球《フレイム・ストライク》。
中級の炎魔法だ。
成人男性なら、あれを受けただけで一瞬で死ぬ。
そんな魔法をもろに受けたのだ。
「あ、あぁああ……そんな……りょーた……」
『ぎゃっはっはーっ』
メイジは勝ち誇った笑みを浮かべる。卑劣な罠で、良太を殺した。
「…………」
深い絶望が彼女を襲う。やっと見つけた、生きる意味。
大好きな、二度と手放さないと思った彼が死んでしまった。
「りょーた……」
ぽろぽろと涙が流れてくる。胸に大きな穴が空いてしまったようだ。
今すぐ仇討ちをするべき状況だというのに、闘志が湧いてこない。
ただただ、悲しかった。良太を失った悲しみが大きすぎて。
「大丈夫だよ、シウネー。泣かないで」
「っ」
ばっと顔を上げる。そこには、無傷の良太がいた。
体から、一気に力が抜けた。
「いきてた……いきてたよぉ〜……りょーたぁ〜……」
愛する人が死んだと思った。瞬間、世界が終わったかと思った。大好きなカレのいない世界で生きている理由なんてないからと。
でも生きていた。大好きな彼が。生きて、目の前にいる。良かった、良かったとシウネーは何度も言葉をこぼす。
『ぎゃ……っ』
「何で生きてるのかって? もう一発試してみたら?」
良太は、怒っているのがわかった。彼は冷たい眼差しでメイジを見下ろしている。
メイジは慌ててもう一度、業火球《フレイム・ストライク》を放つ。
だが。
「治癒っ」
魔法が完成して放たれる前に、ぽしゅっという音とともに、魔法が消滅したのだ。
「どういうこと……?」
「治癒スキルを魔法に使ったんだ。ほら、ぼくの治癒って元の状態に戻すでしょ?」
たしかに。ちぎれた腕はちぎれる前の状態になったことがある。
「魔法って魔力を加工したもの。つまり魔法に治癒を使えば魔法になる前、魔力に戻る。魔力に攻撃力も殺傷能力もない」
「っ」
良太の発想は異次元だ。そしてそんな机上の空論を実現させる良太は。
「す、すごい……っ。すごすぎるよ……っ」
魔法を無力化するなんて聞いたことがなかった。
それができる人間が一体どれほどいるだろうか。
少なくとも、それができる男は、世界でただ一人、良太だけだ。
(そんな良太の女にしてもらえるの……♡ 光栄すぎる……♡ うれしくて……あたまおかしくなっちゃう……♡)
圧倒的優越感。こんな素晴らしい雄に種を蒔かれたこと。そして、そんな雄に抱かれ、伴侶にしてもらえること。
それが嬉しすぎた。女としての喜びを全身で感じるシウネー。
幸福な彼女とは対照的に、メイジは絶望の表情を浮かべていた。
頼りの綱である魔法が、良太には一切通じないのだから。
「じゃ、さよなら」
ぐしゃり。良太の拳がメイジを貫く。
凄まじく速いパンチだった。もろに受けたメイジは頭を潰され絶命する。
ふぅ、と良太が長く息をついた。
「シウネー。終わったよ」
「りょーたっ」
もう駄目だった。シウネーは愛する彼の元へと走り、そのまま押し倒す。
体は良太を求めていた。良太との子どもが欲しくてたまらなかった。
彼女は、良太の種をもらいたくてたまらなかった。
命が一度消えかけたからだろうか。良太の子を残さなければと、本能が体を動かしたのだろうか。わからない。
ただ、自分は良太に救われた。愛しい男。優しくて素敵な男。この人の子どもを孕みたい。そう思ったのだ。
愛しさがあふれてたまらない。その気持ちをそのまま良太にぶつける。良太は嫌がる素振りを一切見せず、シウネーを受け入れる。
(ああ……わたし……女に生まれてほんとによかった……♡ りょーたの女にしてもらえて、本当に……最高に……しあわせ……♡)
ここがどこかも忘れ、二人はケダモノとなって、お互いを貪り食うのだった。