チートヒーラー、男女比1:999の異世界で女子を治癒したら激重感情を向けられる件 作:茨木野
ゴブリンに洗脳されていたという村へとやってきた。
森からそう離れていない場所に、目的の集落はあった。
ぼくたちは村長の家へと向かう。
「えへえへえぇ〜……いらっしゃい旅人さぁん〜……。実は村は困ってましてねぇえへへえへへ〜……」
「……この人が、村長さん?」
ぼくは村長の娘さんであるジウさんに尋ねる。
ジウさんはぼくの半歩後ろで控えている。ぼくが話しかけると、なぜかその場にしゃがみ込んで深々と頭を下げながら、こくこくと頷く。
なんだ、この異常な態度は。
「そうです。リョータ様。我が父です」
「あ、そ、そう……」
ジウさんの過剰なリアクションが変なのは……まあ、今は置いておこう。
問題は村長さんだ。焦点の合わないうつろな目をしていて、ずっと薄気味悪い半笑いを浮かべている。
これはどう見ても、洗脳の魔法が掛かっている。ただ、まあ一応確認のために。
「【鑑定】」
~~~~~~
ソンチョ
性別 男
状態 洗脳
~~~~~~
やはり洗脳状態だ。
よし。治してあげよう。元々は森の調査依頼を受けただけだったから、別に村人を治す義理はないのだけれど。まあでも、知ってしまった以上は放置できない。
「【治癒】」
何でも治す、万能の治癒スキル。
対象を元の正常な状態に戻せるチートスキルだ。厄介な洗脳状態だって、あら不思議。
「んぁ……? あれ……わしは一体……」
「お父さんっ」
「ジウ……?」
正気に戻った村長さんに、ジウさんが泣きながら抱きつく。……ん? そういえば、この異世界で男の人に会うのは初めてじゃないだろうか……? いや、そんなことはないか。うん。他にもいた……いた……いたかなぁ? あれぇ?
「ジウ。この人は……?」
「リョータ様です。実は……」
ジウさんが涙ながらに事情を説明する。村長さんは「なんと……そうでしたか……」と呟くと、ぼくに向かって深く頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございませんでしたっ。なんとお詫びしてよいか……」
「いえいえ……それより、ちょっと気になっているんですけど、一体いつ、どうやってゴブリンによる洗脳を受けたのですか?」
ゴブリン・メイジは森の奥の洞窟に住んでいた。外に出れば目立つし、すぐに強い冒険者に駆除されてしまうだろう。
だから極力、外には出ないはずだ。なのに、村長は洗脳にかかっていた。
……自発的にメイジの元へ、この村長が行くだろうか。どうにも不自然だ。
「そう言われましても、洗脳されていた間の記憶がないので、なんとも……」
「森の中の洞窟に近づいたことは?」
「いえ、決してありませんが」
うーん……なおのこと怪しい。
「……どうしたの、りょーた?」
シウネーがぼくの腕にひっつきながら尋ねる。この子は先日の洞窟での一件があってから、すっごくくっつくようになった。まあ、柔らかくて気持ちいいから歓迎だけれどさ。もそもそ。
「ぼくの股間をもそもそしないで、人前で」
「……やんっ♡ 人前えっちもいいかも」
「いいかもしれないけれど、空気を読んでちょうだいね」
さて。
この様子だと、村長は自分の意志でゴブリンに会いに行ったわけではないらしい。
一方で、ゴブリンがわざわざこの村までやって来たというわけでもない。
そうなると、考えられる可能性は一つ。
「誰かが村長を騙して、メイジの元へ連れて行った……か。村長、誰かに誘い出された覚えは?」
「うーむ……。すみません、わかりません……」
「そっか……洗脳される前のことだもんね」
しかし、真犯人を探し出さないと、また同じような悲劇が繰り返される可能性がある。
村長さん自身じゃないってことは、村の他の人間、あるいは外部から来た人間……?
でも、外部の得体の知れない人間に、ほいほいと村長がついていくだろうか……?
「どうなさったのですか、リョータ様?」
「あ、いや……」
ぼくはジウさんだけを部屋の隅に呼び出して、ぼくの推論を説明する。
「なるほど……お父様をハメた真犯人が、この村の中にいると」
「うん。多分、村の人間だと思う。誰かはわからないけれど……。それに、はぐらかされたらそれまでだし」
この世界には、現代日本と違って監視カメラなんて便利なものはない。決定的な物的証拠がない以上、知らぬ存ぜぬで通されてしまう。
「犯人に『お前が犯人ですか』なんて聞いて、素直に『はい』って答えてくれるとは思えないし……」
すると、ちょんちょんとシウネーがぼくの頬をつつく。もそもそ。
「だからついでに股間をもそもそしないで……。どうしたの?」
「方法あるよ、犯人に口を割らせる」
「え、ほんとに? どうやるの? だからもそもそしないでってば」
なんだかさっきからずっともそもそしてくるんだけれどっ。
「りょーたの、これ……使う」
「これって……え? これ?」
「そう。村の女、みんなこれ欲しい。これをエサにして口を割らせる」
えっ、ええー……。それって、つまりえっちをやって、その快楽の対価として相手に真実をしゃべらせるってこと?
「名案ですね」
「ジウさんっ!?」
どこがっ!? どう考えてもおかしな発想だと思うのだけれど。
「皆、若い男との交尾に飢えきっております。これを最高のエサにすれば、犯人の口を割らせることは容易に可能……かとっ」
「ええー……ほんとにぃ?」
「はい、ほんとですっ。な、なぜなら……はぁはぁっ♡」
……ジウさんの瞳に、明らかな♡が浮かんでいる。ずいっと顔を寄せてくる。はぁはぁ……と荒い呼吸を繰り返しながら、熱を帯びた眼差しをまっすぐに向けてくる。
う。異世界はさすがだ。名もなき村人ですら、モデル並みの美人なのだから。
「む、村の娘たちに話して回ります。御男様《おとこさま》とやら、やらせていただけるとっ。その代わり、聞かれたことには嘘偽りなく答えるようにと」
「え、ええー……。それ、みんな納得するの?」
「「する」」
村人であるジウさんならともかく、シウネーまでどうしてそんなに確信を持った顔で言い切れるのだろうか……。わ、わからない……。
でも、まあ正直、たくさんの女の子とやれるっていうのは、非常に興味がある。
あれじゃん……夢のハーレムじゃんっ。
異世界に来たら一度は目指したいやつ。ハーレムえっち。
それが叶うなら……正直、やってみたい。
これが事件解決のため、正義のためっていう大義名分があるなら、なおさらだ。……まあ、手段としてはちょっと気が引けるけれども。
でも……。
「わかった、やってみようっ」
☆
ジウは熱を帯びた声で、村娘たちに声をかけて回った。
「神にも等しい御男様《おとこさま》が、我々と交尾してくださるそうですっ」
その言葉を聞いた瞬間、村娘たちは歓喜のあまりむせび泣いた。男女比一対九百九十九の狂った世界。男が圧倒的に少ない世界だ。
この村で唯一の男は、村長だけである。
そしてこの村長は、一般的なこの世界の男性と同様に、女を極端に怖がっている。
女が圧倒的に多い世界において、男は横柄な態度を取るか、女性を化け物のように怖がるか。極端な二択の対応を取る。村長は前者だった。
愛する娘以外の女に対しては常に恐怖し、決して強く出られないのである。だからこそ、騙されたとも言えるが。
話を戻す。
村娘たちは、唯一の男が重度の女性恐怖症であるため、旺盛な性欲を発散させる相手がどこにもいなかった。
村を出て男を探す、という選択肢は彼女らにはない。出て行ったところで生活する術がない。この閉鎖された村で働いて生きていくしかないのだ。
一生、男と関わりのない干からびた人生で終わる……そう絶望していた矢先にやってきた、極上の若い男《りょうた》との交尾。
「や、やりたいっ」
「わたしにもやらせて欲しいわっ」
「えっちのためなら、なんだって答える……っ」
とまあ、当然こうなるわけだ。村娘たちは皆、我を忘れて喜んで、村長の家へと殺到する。
素朴な顔立ちの女たちが、皆一様に性欲で目をギラつかせながら、家の前で長蛇の列を作っている。まさに異様な光景。だが、この男女比の壊れた世界では、極めてありふれた普通の光景だった。
「じゃあ、始めますよ」
ジウが仕切り、村娘たちを順番に村長の家に入れていく。
一人ずつだと時間が掛かりすぎるので、複数人まとめて部屋へと通した。
「そんな……複数人を一度に相手取れる男性なの……♡」
「すごいわ、りょーたさま……♡」
「さすがは神の子……♡」
しばらくすると、家の奥から獣のような激しい喘ぎ声が聞こえてくる。かわいらしく喘ぐ者。快感に耐えきれず野太い声を上げる者。それぞれ異なった声を上げている。
だが、皆共通して、脳が溶けるほど気持ちよさそうにしている。外で待つ村娘たちの期待は、否が応でも高まっていく。並んでいるだけで想像してしまい、腰をがくつかせる者まで出てきた。
飢えた野獣《むらむすめ》たちは、今にも良太の元へ暴動を起こして飛びかかろうとする。だが、それを扉の前に立つシウネーが鋭い殺気で押し止めている。
そうやって、村娘は次々と良太にえっちさせてもらっていった。
えっちする前に、良太は必ず問う。
「君が村長さんを、ゴブリン・メイジに引き合わせたの?」と。
大抵の村娘たちは「違うっ」と切実な声で答える。そして一発やって、さらに激しく喘ぎながら尋ねられる。
「あわせたの?」
「もっとぉ〜……♡ もっとほしいのぉ〜……♡」
「正直に答えて」
「ちがいますぅう〜……♡」
飢えた娘たちに、若い男とのえっちは劇薬だ。一度ハマったら、もう二度と後戻りできない。一度味わった甘美なる蜜を、誰も絶対に手放したくないのだ。
よって、彼女らは嫌われるのを恐れ、真実を語るしかなくなるわけだ。
そうして次々とえっちしていくうちに……ふと、列を整理していたジウは気づく。
「……あれ、ドロジョ?」
「っ」
良太待ちをしている狂乱の列を、遠くからじっと見ている女が一人いた。
二十代後半の女……ドロジョ。彼女は列に並ぼうとせず、こちらに探るような目線をくれている。その目には、明らかな迷いと焦りが見て取れた。
(何を迷っている……? まさか……)
「シウネーさ……」
ジウが言い終わる前に、シウネーが弾かれたように飛び出した。凄まじい速さで距離を詰め、逃げようとしたドロジョを捕らえる。
「ちょっ。何するんだい……っ。離しなよっ」
「……多分こいつ。やましいという気持ちと、逆らえない性欲とがぶつかって、葛藤してた」
(やっぱり……っ)
シウネーたちは暴れるドロジョを引きずって、良太のいる部屋へと連行する。
部屋の中は、女の気持ちよさそうな甘い声と、むせ返るような甘い香りが鼻孔を突いた。
「りょ、リョータ様……。賊を捕らえてまいりました」
「え、もう……?」
すでに、部屋の中は死屍累々。何人もの女性たちが快感のあまり白目を剥いてぐったりと倒れ、山積みなっている。
良太はスキルの恩恵で無限の体力があるが、一般の女性たちはそうはいかない。
良太も村人全員の回数をこなさないといけないので、あえて女性に治癒は行っていないのだ。
ドロジョを良太の前に引きずり出し、膝をつかせる。
「へ、へんっ。アタシが何したっていうんだい? 何かしたっていう証拠でもあるのかい? 証拠は……っ」
(やっぱり物的証拠を出せとなりますね。でも……)
ジウは、そしてシウネーもよく知っている。この世界の女は、目の前にぶら下げられた美味しい餌《おとこ》の強烈な誘惑には絶対に勝てないということを。
「ねえ、ドロジョさん。あなたが村長さんをメイジに引き合わせたの?」
良太は全裸だ。ドロジョの視線が、良太の猛々しい一部に釘付けになる。
熱い眼差し……そこからどうしても目が離せない。喉から手が出るほど欲しいのだろう。当たり前だ。若くて逞しい雄は、誰だって欲しい。
「し、知らない……」
「あ、そう。なら……体に直接聞いちゃおうかな」
そう言って、良太はドロジョの肩を押し倒す。
「な、なにするんだいっ♡ はぁんっ♡」
良太のものが目の前にある。それだけで、彼女は瞳に♡を浮かべた。熱に浮かされたような、だらしない表情だ。多分欲しくて欲しくてたまらないのだろう。
「い、いれてっ。ほ、ほしいっ。ほしいんだっ」
「じゃあちゃんと言って。君が犯人?」
「う、うぅううううううううううううううううううっ」
「じゃあお預けだね。嫌がる人を無理やりやる趣味はない。犯罪だしね」
否、こっちの狂った世界では、男から迫る不同意の性行為は犯罪ではない。だが。
「わ、わかったっ。わかった、認めるよぉっ。あたしがやったんだよぉおっ」
美味しい餌を目の前にして、ドロジョはあっさりと自白した。良太は安堵の息をつく。
「じゃ、拘束して。騎士団に引き渡そう」
シウネーは無言で頷くと、素早い動きでドロジョをロープで縛り上げる。
「あぁあああっ。酷いっ。真実を話したのにっ。どうしてやってくれないのっ。この卑怯者っ」
「犯罪者に卑怯者って言われても、なんとも思わないよ。それに……君のせいで大勢の人が死んだんだ」
ジウも、自分の目で見た。ゴブリンの巣の中には、無残に白骨化した死体がいくつもあった。
それはドロジョのせいで呼び出された、うら若き冒険者たちのなれの果て。
ドロジョが彼女らを殺したのと同義だ。
「犯罪者に施すものなんて何もないよ。それに……人を散々騙して陥れてきたんだ。騙されたって、文句は言えないでしょ?」
「そ、んなぁ〜……」
ドロジョは絶望し、がくりと頭を垂れる。ジウは涙を流しながら、感動のあまり拍手をする。
「さすがです、リョータ様。なんという鮮やかな問題解決……。お見事でした」
「え、ああ……うーん……鮮やかかなぁ……これぇ」
「なんて謙虚なお方……っ。素敵っ。抱いてっ」
ジウはとうとう欲望に耐えられなくなり、全裸の良太に激しく襲いかかるのだった。