チートヒーラー、男女比1:999の異世界で女子を治癒したら激重感情を向けられる件   作:茨木野

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第16話 頭おち◯ぽな女騎士、やってくる

 今回の主犯である中津川を、倒した。

 

 魔物を殺したのとは訳が違う。ぼくは、人を殺めてしまったのだ。

 

 冷たい畳の感触が、足元からじわじわと伝わってくる。

 ぼくがいるのは、ジウさんたちの村だ。

 今日、騎士団がドロジョを連行することになった。また、中津川を倒したぼくの事情聴取が行われるらしい。

 

 村長の家を使わせてもらっている。部屋の隅には古い木製の棚があり、埃っぽい匂いが微かに漂う。ぼくは畳に正座したまま、ずっと昨日のことを考えていた。

 

 中津川は、許されざる悪人だ。でも、人間だ。ぼくは人間を殺した。自分の手で命を奪ってしまった。

 

「りょーた」

 

 そっと、シウネーがぼくの震える手を握ってくれた。昨晩も、彼女はずっとこうして手を握っていてくれた。

 昨日はえっちをしなかった。シウネーも自分から求めるようなことはしなかった。

 

 ただ、隣に寄り添って、静かに支えてくれた。彼女の手の柔らかさと確かな温もりがなかったら、多分ぼくはもっと深く苦しんでいただろう。

 

「わたしも、悪人を殺めたことある」

 

「そうなんだ」

 

「うん。護衛依頼で、盗賊とか倒すから」

 

 そっか。シウネーはSランカーだし、戦闘経験は豊富なんだ。人を殺した経験も。

 

「わたしの手も、悪人の血で汚れてる。汚い? けーべつする?」

 

「まさかっ」

 

 反射で出た言葉だった。こんなに可愛くて強くて、そして優しい彼女を、嫌いになるはずがない。

 

「わたしのこと嫌いにならないなら、りょーたも自分のこと、嫌いにならないで」

 

 シウネーの真っ直ぐな瞳が、ぼくの心を見透かすように見つめてくる。

 

「こう思うといいよ。悪人は、ケダモノ。人を食う悪いバケモノだって。ほっといたらもっと多くの人を襲っていたし、不幸を生んでいた。それを未然に防いだの」

 

 害虫駆除と一緒、か。

 正直、現代令和の日本からやってきたぼくが、すぐに現地の人である彼女と同じように割り切ることはできない。

 

 でも、そうだ。中津川は明らかに、やっていることが悪だった。あれを野放しにはできなかった。

 あれで良かったんだ。

 

「ありがと、シウネー。少し楽になった」

 

「それは、良かったっ♡ ちゅっ♡」

 

 シウネーがふわりと微笑み、ぼくの頬に甘い口づけをしてきた。そして、そのままの勢いでぼくを畳の上に押し倒す。

 

「りょーたっ♡ りょーたっ♡ ちゅーっ♡ んぅっ〜♡」

 

「も、もぉ〜。シウネー、駄目だよ。もうすぐ騎士が来るんだってば」

 

「はっはっはっはっはっ♡」

 

 まったく聞いていなかった。シウネーは完全に発情しきっている。ぼくに抱きつき、細い腰をへこへこと動かして擦り寄ってくる。甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 

 もう。しょうがないなぁ。人が来るというのにもぉ。と言いつつ、ぼくは嬉々としてシウネーを受け入れようとした。そのときだった。

 

「は、は、破廉恥めええええええええええええええええええっ」

 

 出入り口のほうから、女性の激しい咆哮が轟いた。

 そっちを見やると、白銀の美しい鎧に身を包んだ、背の高い女性が立っていた。

 

 長く艶やかな金髪。凛々しく端正な顔つき。けれど、その顔は茹でダコのように真っ赤に染まっている。

 

「き、きき、貴様っ。な、何をしてるっ」

 

 ずんずんと、金属音を響かせて女性がこちらへ歩み寄り、剣の柄に手をかけて睨みつけてきた。

 

「ご、強姦めっ」

 

「「いや強姦って」」

 

 ぼくもシウネーも思わず動きを止める。

 

「それ、普通男の人が女の人を襲うときに使う表現ではないかな」

 

「わたしがりょーたを襲ってるんだけど♡」

 

 だから強姦じゃないような気がする。

 

「ええい、黙れ黙れっ。さっさとどくのだっ。汚らわしいオスめっ」

 

 どくと言われても、乗っかっているのはシウネーの方なのだが。

 

「そこの女っ。大丈夫か? 犯されていないかっ」

 

 鎧の女がシウネーの腕を掴み、強引に抱き寄せる。

 

「やん」

 

「やんじゃないっ。大丈夫かと聞いている」

 

「お預け、や」

 

 ぼくはゆっくりと起き上がり、乱れた服を直しながら鎧の女に尋ねる。

 

「あなたは?」

 

「王国騎士団騎士団長の、【ファナティオ】だ」

 

「ファナティオ。騎士団長? 騎士団長様が、一体何をしにこんな村へ?」

 

 ぼくが尋ねると、ファナティオがツンと顎を上げて答える。

 

「通報があり、凶悪な犯罪者を回収しにはせ参じたのだ」

 

「ははあ。ファナティオさんが、ドロジョと中津川の死体を回収しに来た騎士さんなんですね」

 

 ぼくが詳細を話そうと彼女に近づこうとすると。

 

「近寄るな、汚らわしい男めっ」

 

「えー。汚らわしいって連呼しているけれど、ぼく何かしました?」

 

 何もしていないような気がするのだが。

 

「か、下半身のそれを、し、しし、しまえっっ」

 

 あー。そうだ。さっきまでぼくは、シウネーとやる気満々だったのだ。

 ズボンとパンツがだらしなくずらされているわけで。

 

「そ、その立派なものをさっさとしまうがいいっ」

 

「ん?」

 

 なんだろう。今の発言に、何か引っかかったような。

 

    ☆

 

 ファナティオは、良太の股間に熱い視線を釘付けにしていた。

 

(あ、あれが。男性器。男の人の。お、おち○ぽ。おっきぃ〜)

 

 ファナティオは言葉と態度には絶対に出さないが。

 エロいことに興味津々の、超絶ドスケベ女騎士だった。

 

(おちん○。ああ、なんておっきいの。あんなのでぐちゃぐちゃにされたら、私、一体どうなってしまうんだぁ〜)

 

 ファナティオは表面上キリッとした顔を保ちながら、内側では男性器への興味で頭がいっぱいだった。

 さっきから良太の股間に、穴が開くほどの熱烈な視線を浴びせている。

 

 が、良太はファナティオの剣幕に萎縮してしまい、彼女の怪しい視線には気づいていなかった。

 

「ごめんなさい」

 

「ふ、ふんっ。ま、まあいい。おまえへの尋問は、あとだっ」

 

「尋問って。ぼく何もしてないんですけど」

 

(尋問っていうのは、密室でおまえのさっきのおち○ぽを至近距離で見せてもらうことだ。じっくりたっぷり。触って♡)

 

 尋問にかこつけて、自身の抑圧された性欲を解消しようという算段だった。職権乱用も甚だしい。

 

「とりあえず、まずは報告にあった男の死体の場所へ連れてゆけ」

 

「はい」

 

 ファナティオたちは、森の奥にあるゴブリンの洞窟へと移動した。

 重かったのと、死体をむやみに動かしてはいけないという判断の下、良太は中津川をそのまま放置してきていたのだ。

 

 死体を覆っていた布を取り、ファナティオはしゃがみ込む。

 すると、ちょうどファナティオの顔の正面に、良太の股間が来る形になった。

 

(おっ♡ おっ♡ お、男のおち●ぽ♡ おち●ぽがすぐ目の前に。おおぉお♡ おち●ぽぉ♡)

 

 ふがふが、と豚のように荒い鼻息で匂いを嗅ごうとする。

 

(駄目だっ。血の匂いが充満しているっ。くそっ。速く外に出て、おち●ぽくんかくんかしたいっ)

 

「どうですか?」

 

 良太が恐る恐る尋ねてくる。

 

「え、おち●ぽが?」

 

「は?」

 

「うぉほんっ。なんでもない。死体の状態だったな。ふむ。凶器は?」

 

「あ、はい。これです」

 

 中津川の使っていた致死性毒ナイフを、良太はアイテムボックスから取り出した。

 

「貴様、アイテムボックス持ちなのか?」

 

「え、あ、はい」

 

「そうか。レアだな」

 

「ええ、まあ」

 

 この世界において、アイテムボックスを持っているのは千人に一人である。だから、純粋にレアだと言ったのだ。

 

 何も召喚者だけがアイテムボックス持ちであるわけではない。それだけで、ファナティオが良太を召喚者だと疑うことはない。

 

 毒ナイフの刃の形と、死体の刺し傷とを見比べる。

 

「ふむ。これで間違いないようだな」

 

「そうですね」

 

(嘘は言っていない、ようだな)

 

 ファナティオの瞳の奥に鋭い光が灯る。彼女の固有スキルが発動したのだ。

 

(【超直感】。私のスキル。常人離れした直感力を持つ)

 

 先の危険を回避したり、相手の本当の性格や嘘を直感で見破れる力だ。

 彼の自然な仕草から、彼が犯人ではないことをファナティオは直感で理解した。

 

(まあ、報告に受けていた通りだ。そもそも、この男が自ら通報しているからな)

 

 最初から、良太が犯人ではないということはわかっていたのだ。

 だがどうして、ファナティオという騎士団長自らが、それも単独でこんな僻地まで乗り込んできたのか。

 

(お、おおお、男と二人きりっ♡ 若い男のおち●ぽが目の前にっ♡)

 

 とまあ、己の抑えきれない性欲に負けてしまい、彼女はわざわざここへと足を運んだのである。

 

(尋問と称して男を狭い部屋に連れ込み、色々と聞きたい。じっくりねっとり♡ そして、おお、おち●ぽさわりたい♡)

 

 見た目はキリッとした高潔なる美貌の女騎士なのに、中身は思春期の中学生レベルだった。

 

 そのときだった。

 

 カラン、と。毒ナイフをうっかり落としてしまったのだ。

 ファナティオが慌てて手を伸ばす。そして、良太もまた拾おうと手を伸ばす。

 

 二人の手が、重なる。

 

(ああっ♡ 男の手が触れてしまったぁっ)

 

「っ」

 

 良太が何故か、驚いたように目を剥いていた。きょろきょろと周囲を見渡す。

 

「どうした?」

 

「あ、いえ。なんだこれ。この声」

 

「声?」

 

(何言っているんだろうか。それより、まあさっきの手♡ いいなぁ♡ あのゴツゴツした男らしい手でぇ♡ 乱暴に私の胸を揉みしだいてほしいなぁ♡)

 

「っ!?」

 

 良太が再度、ギョッと目を剥く。

 

(あの手で毎日、自分のおち●ぽをしごいているんだろうなぁ♡ 若い雄の性欲は旺盛だと聞くからなぁ♡ ああ、私の前でやってくれないだろうかぁ♡)

 

「そ、そんなの見たいんですか?」

 

「へ?」

 

 良太の発言がひどく引っかかった。まるで、自分の心の奥底を読んだみたいだった。

 

(まさか、読心スキル? いや、あれは超レアなスキルだったはず)

 

「いや読心じゃなくて、翻訳スキル持ちなんですけど」

 

(っ!? やっぱり、私の心を読んでいる、だとっ!?)

 

 翻訳は、単に『ある言語で表現された文を他の言語に移し変えて表す』スキルだ。

 相手の心を読む事なんて、本来不可能なはず。

 

(けれど、心の中の声を、自分に向けられた言語に変えて翻訳するとしたらどうだろう。まさかそんなことができるとしたら)

 

「あ、多分そういうことかなと。翻訳の極みスキルなんで」

 

(ああ、駄目だっ。ということは。私の浅ましい願望がっ。相手に筒抜けになってしまうじゃないかぁ♡)

 

「浅ましい願望? へえ。どんな願望があるのかな?」

 

 良太がニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら近づいてくる。

 

(ああやめろぉ♡ わ、私に近づくんじゃないっ。み、見えちゃう。おち●ぽみえちゃう♡)

 

「へえ。高潔な騎士様は、おち●ぽとか言っちゃうんだ。興味あるんだぁ、へえ」

 

「ち、ちがっ。ちがうっ」

 

(あるんですぅ〜♡ おち●ぽ大好きなんですぅ〜♡)

 

 言葉では必死に違うと否定していても、心の中の正直な声は偽れなかった。

 

「処女のくせに、おち●ぽ好きなの?」

 

「そんなわけ無いだろっ。愚弄するなっ」

 

(そうでぇすぅ〜♡ 処女だからぁ♡ 妄想たくましくてぇ♡ エロ本も千冊くらいこっそり持ってまぁす♡)

 

「わぁ」

 

 普通に、良太はドン引きしていた。

 

「千冊って。エロガキなんだね、ファナティオさんは」

 

「ぅうううううっ」

 

(なんたる屈辱っ。けど。けどぉ♡ それが。いいぃ〜♡)

 

 いつの間にか、だらしなくとろけた表情をしているファナティオ。

 すでに彼女は、極度の興奮状態に陥っていた。

 

「おち●ぽ欲しいの? じゃあ、口で言わないともらえないよ」

 

「だだだ、誰がそんなはしたないことを言うかっ」

 

「へえ。あ、そ」

 

 くるっ、と良太があっさりと踵を返す。

 

「ああ、おまえどこへ行くっ」

 

「え、現場検証も終わったし、帰るんでしょ?」

 

「あ」

 

(そ、そんな。せっかく、二人きりなのに)

 

「二人きりだから、なに? おち●ぽに興味ないんでしょ?」

 

「ふぐぅうううううううう」

 

 良太がそのままスタスタと帰っていってしまった。ファナティオは洞窟の床に崩れ落ちる。

 

(ちくしょうっ。私のつまらないプライドが、邪魔してしまったっ。素直に欲しいと言えばよかったっ。くそっ。くそぉおっ)

 

 そんなエロ騎士の心の声を、良太はバッチリと聞きながらほくそ笑んでいるのだった。

 

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