チートヒーラー、男女比1:999の異世界で女子を治癒したら激重感情を向けられる件 作:茨木野
翻訳スキル。これは、古代の難解な文献を、現代の言葉に読み解くだけのスキルだと思っていた。
でも、それ以外の使い道もあったのだ。
それは、他人の思考を言葉として読むこと。
ファナティオの手に触れたとき、翻訳スキルが発動したのである。
頭の中に、最初、大人の女の人の甘えた声が直接響いてきた。ネット小説でよくある、天の声的なナビゲーションシステムが作動したのだと思っていた。
でも、あまりに声の内容が下品で直球すぎた。さすがにこれが天から降ってきた神聖なメッセージだとは思えなかった。
では何の声だろうと思って周りを観察してみた。すると、顔を真っ赤にしてフンフンと鼻息を荒くしたファナティオが、ぼくの股間を食い入るように凝視していた。
そこで、ピンと来た次第である。
さて。
現場検証を終えて、ぼくらはジウさんたちのいる村へと戻ってきた。
「りょーた。大丈夫?」
戻ってきたぼくを、シウネーが心配そうに出迎える。彼女は本気で、ぼくがあの高圧的な女騎士さんに、理不尽で酷い尋問を受けたと思っているのだろう。
そりゃ、やってきたのがあの物騒な騎士団長様だったら、心配するのも無理はない。
「大丈夫だよ。ぜーんぜん」
第一印象の怖さはもう微塵もない。今はもうずっと。
(ううぅ〜。うぅう〜。おち●ぽぉ。ほしいのにぃ〜。うう〜。村に帰ってきてしまった。くそっ。おち●ぽの機会を失ってしまった。うぅううううううううううムラムラするぅうううううううううううううううううっ)
ずっと激しくムラムラしているようだった。
ぼくに怒っているのではないのだ。そう思うと、あの威厳ある鎧姿とのギャップで、なんだか無性に可愛らしいと思ってしまう。
気持ちはわかる。痛いほどわかるよ。
ぼくも転生してチートヒーラーになる前は、毎日そんな感じだったし。
しかし、どうしよう。ファナティオ。このまま発情状態で放置していいものだろうか。というか、翻訳スキルって接触で自動発動したけれど、任意でコントロールできるものなのだろうか。
できないとすると、日常生活でちょっと不便だ。あとでシウネーやアルクに相談してみよう。そういえば、カトレアやアルクは、宿でどうしているだろうか。
念のため無事を知らせる手紙は、ギルド経由で彼女らのもとへ送ってある。
「あのー、ファナティオさん?」
「な、なんだ」
「ぼくへの疑いって、もう晴れましたよね?」
「そ、そうだな。少なくとも」
ぴた、とファナティオが歩みを止める。
「いや、まだだっ」
「え?」
「まだ終わっていないっ。おまえへの厳しい尋問はまだ続いているのだっ」
「えー」
証拠のアイテムも提出したし、死体の現場検証も済ませたのに。まだ疑いが晴れていないというのだろうか。
ふと、ぼくは気づく。あれ、ファナティオの心の声が聞こえなくなっている。
シウネーの心の声も聞こえていない。
ぼくはファナティオに近づいて、ぴた、と彼女のむき出しになっている二の腕にそっと触れ、念じる。翻訳スキル発動、と。
(ふぁぁああああああああああああああああんっ♡)
脳内に、ファナティオの甘く蕩けた声が大音量で響いた。
翻訳スキルが、無事に手動で発動したようだ。
「ななな、なんだ急にっ!?」
(誘っているのかっ!? そうなのかっ!?)
なるほど。ぼくは彼女の腕から手を離す。
(なんだったんだ今のっ!? 触れてきたぞ? わ、私に気があるのかっ!?)
なんでそう飛躍するのだろうか。ふふ、でも素直で可愛いところがある。
(わ、わ、笑ったっ。私を見て笑ってくれたっ。絶対気があるっ。気があるに決まっているっ)
ちょっと触れてニコッと笑いかけただけで、完全に気があると思い込んでいるようだ。
なんだか、中学生の童貞みたいだな(元童貞の余裕スマイル)。
「で、なんだっけ。尋問? したいの」
「あ、ああ。もっと詳細な話を、きちんと聞かないとな」
(せっかく処女を捨てる千載一遇のチャンスなんだ。有効活用したい。おち●ぽほしいし。若い男とやる機会なんて、もう今後一生ないだろうし。おち●ぽしたい)
「そんな一生ないなんてことないでしょうに。若くて凄く綺麗なんだから」
(か、かわ、かわわっ!? え、え、えーっ。なにっ。なんなのっ。え、可愛いって言ってくれたっ。う、嬉しすぎる。え、え、えーっ。それって私に気があるってことっ!? そうだよねっ!? 気があるから褒めているんでしょっ!? 優しくしてくれるんでしょっ!? そういうことでしょっ!?)
じゃ、若干うるさい。スキルキャンセルとかできないのかな。
「うぉほんっ。では、じ、尋問を行う。ついてこいっ」
あれ、うるさすぎる心の声がふっと消えた。あ、もしかして心の中でキャンセルと念じたからだろうか。
だんだん翻訳スキルで相手の心を読む方法がわかってきた。
相手の肌に触れて念じることで、発動。しばらく接触を絶って放置すると自動で切れるし、こちらからキャンセルと強く念じれば、即座にスキルが中断されるのだ。
「シウネー。おいで」
「っ♡」
とととっ、と小走りでシウネーが近づいてくる。仔猫のように、すりすりと顔を胸板にこすりつけてきた。すごくかわいい。
「大丈夫。シウネーはここで待ってて。絶対、酷いことはされないから」
「……うん、わかった」
触れたまま、翻訳を発動させる。
(でも心配だよぉ。やっぱり。でもりょーたは心配するなっていうから、我慢するけど)
ああ、もう、優しくて愛おしいなぁ。ぼくはシウネーの額に、ちゅっとキスを落とす。
「心配してくれてありがとう。大丈夫だから」
「ふぁいっ♡」
頬を赤く染めたシウネーを残し、ぼくはファナティオのもとへ行く。そして、並んで歩きながら再び触れてスキル発動。
(またぁっ。また触ってきたっ。え、え、えーっ。もうこれ確定で私のこと好きじゃんっ。確定でエッチできるじゃんっ。おち●ぽ確定じゃんっ)
う、うるさい。ぼくは振り返って、シウネーに向かって手を振る。
彼女も笑顔でこちらに手を振り返してくれた。彼女の心の声は、今は聞こえない。
どうやら翻訳の対象は、一度に一人だけのようだ。
新しい人を対象にすると、前の人の心の声は強制的に聞こえなくなる仕様らしい。
(うぅうう早くおち●ぽしたいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ。まちきれないぃいいいいいいいいいいいいっ。おち●ぽぉおおおおっ♡)
うーん、しかしどうしようか。そこまでしたいと懇願しているのなら。
正直、ファナティオは抜群のスタイルを持つ美人だ。とんでもない美人。そんな彼女がやりたいと(心の中で)熱烈に求めてきているのだから、こちらも男として無下には拒めない。
ぼくだって、綺麗な女性とは、いつだってエッチしたいわけで。
☆
ファナティオは興奮しすぎて、兜の下で鼻血が出そうになっていた。
目の前に、信じられないほど美味しそうな若い雄がいる。そして、自分に気がある(確定)。
これはもう、できるっ。そう確信したファナティオは、良太を連れて空き家になっている村人の家を借りた。
騎士団長である身分を明かし、極秘の尋問があると言えば、村長は二つ返事で快く貸してくれたのである。
(よ、よ、よぉし。よし。えっと、どど、どうすればいいんだぁ。どうしたら、やれる? やりましょうって単刀直入に言うのか? それとも、か、金か? 大金を払えばやらせてくれるのか? いやでもそんなストレートにいったら、はしたない女だと嫌われちゃうか? わからんっ。わからなすぎる)
部屋の中央で焦って固まっていると、良太が不意にファナティオの背後に回り、強く抱きしめてきた。
「ぉおおっ♡」
(お、お、だ抱きしめてきたっ。おぉおおっ!? か、硬いおち●ぽがあた、あた、あたって。ああぁああっ)
若い雄の逞しい腕に抱かれた。背中に熱いものを感じた。ただそれだけで、ファナティオは膝から崩れ落ちるほど腰砕けになってしまった。
「ファナティオさん。ねえ。どうしたいの?」
「ふぇ?」
「こんな暗がりに二人きりで連れ込んで、ファナティオさんは、ぼくとどうしたいのかな。騎士団長様のお口から、直接聞きたいなぁ」
「あ、だ、だか、だから。尋問だ。今回の事件の、おまえ」
「おまえ? ぼくは良太」
「りょ、りょーたが。重要参考人、だからぁ。あぁあっ♡」
さらにぎゅっと、さっきよりも強い力で、後ろから体を密着させてきたのだ。
(こ、これいいぃ〜♡ これしゅきぃい〜♡ もっとぉ〜♡ つよくぅ〜♡)
「もっと強くしてほしいの?」
「ぉおおおおおおっ」
(み、耳もとささやき、やばすぎるよぉ♡ い、いくら? いくら払えば受けられるサービスなのぉ〜♡)
まるで、心を読んだかのように、良太が自分のしてほしいことを的確にしてくれる。
すると、良太が耳元でクスッと笑う息遣いが聞こえた。
「実はね。ぼく、心が読めるんだ」
「え? え?」
最初、良太が何を言っているのか理解できなかった。
(心を読めるって。え? じゃ、じゃあ。私の。あの下品な言葉も全部っ!?)
「そうだよ。ファナティオさんが、えっちしたいよー、おち●ぽーって心の中で叫んでいるの、最初から全部聞こえていたよ」
「あぁあああああああああああああああああああああっ」
恥ずかしさで、今すぐ鎧ごと消滅してしまいたかった。
誰にも明かしていない、ドスケベな本音を完全に知られてしまったのだ。もう終わりだ。潔く切腹するしかない。
「いいよ」
「えっ♡」
「だから、いいんだよ。そういうエッチな女の子、ぼく、大好きだし」
「ぉおおおっ♡」
(だ、だいしゅきっ♡ しゅきってぇ♡ だいしゅきってぇ♡ 男からぁ♡ あぁあっ♡)
もう、自分の意思で立っていられなかった。腰から完全に力が抜けるが、良太が逞しい腕で支えてくれる。男の熱い腕に抱かれ、体を任すのは、なんと心地の良いことだろうか。
「ねえ、ファナティオさん。どうしてほしいの? 良いよ、素直に言ってごらん」
(素直にぃ〜♡ それってぇ♡ ほしいって言えばいいのかなぁ♡)
「ほら、口に出して」
「やぁ。はずかしいよぉ♡」
「心が読めるんだから、隠しても無駄だよ」
「か、かっこいぃ〜♡」
一体全体何がかっこいいのか。おそらくこんな風に、男らしく強引に迫られるのがかっこいいということなのだろう。
ファナティオはもう、体も心も完全にメロメロになっていた。若い雄に、こんな風に甘く、そして意地悪に攻められる経験などなかったのだから。
耳元で囁かれるたび、頭が気持ちよさで真っ白になっていく。自分の中にあった、騎士としての高潔な理性がドロドロに溶けていく。やがて。
「ほしい、です」
「なにが?」
「りょーたさまがぁ♡ ほしいですぅ〜♡ あっ」
良太はそのまま、ファナティオの体をゆっくりと床に押し倒した。
「はい、よくできました」