【男女比のぶっ壊れた異世界】転生した俺は、普通に冒険したい~激レアな男(俺)のことをみんな(肉食女子)がすっごく優しくしてくれる~ 作:茨木野
身長百八十センチはある高身長爆乳お姉さんは、カトレアという名前のようだ。
カトレアはお仲間の二人に「今日はあたしが独占な」と言って、帰らせた。
すっごく不満そうなお姉さん二人組は「また今度ねっ」「ぜったいだからねっ。約束だよっ」と名残惜しそうに手を振りながら帰っていった。
今度、とはなんだろう。絶対に、とはなんだろう。
疑問に思う間もなく、カトレアはぼくにぴったりとくっつき、肩に腕を回してくる。
ぼくのほうが彼女より背が低い。必然的に、ぼくの顔の横に、彼女の柔らかすぎる胸が押し当てられる形になる。
それでもカトレアは嫌がる素振りも見せず、嬉しそうに自ら胸をむぎゅむぎゅと押し付けてくる。
鼻腔をくすぐる、えっちなお姉さんの甘い香り。そして、女性の胸がこれほどまでに柔らかいものだとは、思いもしなかった。
現代日本で、こんな夢のような出来事はあり得なかった。
たとえばこの間、コンビニで買い物をしたとき、若いお姉さんがお釣りを渡してくれた。
その時、ほんの少し手が触れてしまったのだが、彼女は不愉快そうに顔を歪め、自分のシャツの端でごしごしと手を拭いていた。
そこまで嫌がらなくても、とひどく落ち込んだものだ。
翻って、異世界のお姉さんはまったく違う。
カトレアは嬉しそうに胸をくっつけ、腕を絡め、ひゃっ。
ぼくの頬を、細くしなやかな指先で優しくつつく。
「本当においしそうだね……坊や」
「あ、えっと……坂城《さかき》 良太《りょうた》です」
「さ、さかっき……りょた……? 変わった名前だね。坊やでいいかい……?」
「なんでもいいですっ」
こんなきれいなお姉さんに、坊やなんて甘い声で呼ばれた経験はない。
現実では到底叶わなかったことが、今まさに起こっている。異世界、万々歳だ。
カトレアに導かれるまましばらく歩くと、二階建ての建物の前に辿り着いた。
看板には『hkもb4tg』と書かれている。
最初は意味がわからなかった。だが、じっと見つめていると。
――宿屋。
文字が、自動的に日本語へと変換された。これもまた、お決まりの展開だ。
異世界人であるカトレアの言葉が日本語として理解でき、普通に会話が成立しているのも同じ理由だろう。
王道のテンプレをなぞるこの世界なら、脳内で自動翻訳されるシステムがあるに違いない。つまり、ぼくの脳が異世界の法則にアジャストしたということ。
脳を作り変えられているのだとしたら少しホラーだが、今のぼくはまったく気にしていなかった。
異世界へ来た感動と、これから始まる甘い出来事への期待感が、恐怖や違和感を完全に塗り潰していたからだ。
「ここでいいかい?」
カトレアが目を細め、熱っぽい視線でぼくを見下ろしてくる。
ぞくっ、と背筋を甘い快感が突き抜けた。彼女の瞳からは、隠しきれないほどの肉欲が滲み出ている。
ぼくの身体、そして股間をじっと凝視している。
女性からこんな熱を帯びた目を向けられるのは初めてだった。元の世界では、空気以下の存在としてしか扱われていなかったのだから。
「あ、はいっ。喜んでっ」
「ふふっ。喜んで……か……っ」
カトレアは本当に嬉しそうに微笑むと、ぼくをさらに強く抱き寄せた。
わあっ。な、なんだこの感触は。まるでお餅のようだ。柔らかいのに、心地よい張りがある。
低反発の枕などもう手に入らなくてもいい。こんなにも素晴らしい感触がこの世に存在するのだから。
んちゅっ、と。カトレアの柔らかい唇が、ぼくの唇を塞いだ。
みずみずしい感触とともに、甘い味が口内に広がる。ただ触れるだけのキスではない。彼女はゆっくりと舌を滑り込ませ、れろぉっ、とえっちに絡め取ってくるのだ。
「こんな男、初めてだよ……っ」
「あ、はぁ……」
こんな、とはどんな意味だろう。初めて、とは。
「カトレアさん、こんなに美人なのに……キスが初めてってことですか?」
「っっっ」
尋ねると、カトレアはなぜかビクッと体を震わせた。
ぎゅっと目を閉じ、ふーっ、ふーっ、と荒い息を吐きながら深呼吸を繰り返している。
「……さっさと入ろう。もう、だめだ」
「は、はいっ」
転生初日にして、ぼくはこんなにも美しくスタイルの良いお姉さんに、初めてを捧げることになるらしい。
嬉しい。そして、たまらなく楽しみだ。
宿の中へ入ると、受付にふくよかなおばさんが立っていた。
「いらっしゃ……って、男っ」
おばさんはぼくの姿を認めるなり目を剥き、カウンターからずいっと身を乗り出してきた。
「そう、男。やるから、宿一泊分で」
カトレアの表現がストレートすぎて、ぼくは頬を熱くした。やるから、とは。
とはいえ、宿に泊まるのだからお金が必要になるのは当然だ。
すると、おばさんはぱあっと顔を輝かせ、ぼくの手を両手でしっかりと握りしめた。
「ありがとうっ。うちに来てくれて、ありがとう……ありがとうっ」
「はぁ……? へ……?」
何に対して感謝されているのか、さっぱりわからない。
「はい、これ」
おばさんは部屋の鍵を差し出し、さらに言葉を続ける。
「そして、はいこれ」
ずっしりとした革袋が、ぼくの手に握らされた。
「坊やのだよ」
「ぼ、ぼくの……?」
恐る恐る袋の口を開けると、中には硬貨が詰まっていた。
「このコイン、なんですか? 記念コインか何かで……」
「何言ってるんだい、坊や。お金だろう?」
……え?
お、お金?
「お金って……え、あのお金ですかっ」
「あのがわからないが……この国で一般的に使われてる銀貨だよ。十枚は入ってるね」
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ロウリィ銀貨
→ゲータ・ニィガ王国で発行・売買に使用される硬貨の一つ。
銀貨1枚で10ゴールド
ゴールド
→世界共通の通貨単位。1ゴールド100円。
リスタ銅貨1枚1ゴールド(100円)。ロウリィ銀貨1枚10ゴールド(1000円)。ノアカーター金貨1枚100ゴールド(10000円)。
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「銀貨十枚って……えっ。い、一万円っ。なんで一万円も入っているんですかっ」
「宿屋からのお礼金だろ?」
「お、お礼金……?」
訳がわからない。
宿泊する側がお金をもらうなんて、どういう理屈なのだろう。
「これからも、うちをごひいきにお願いします。【御男様《おとこさま》】」
「は、はぁ……」
なるほど、頻繁に利用してほしいから、プレゼント的なものを渡しているのか。
動画配信サイトで、登録者にギフト券を配るような感覚かもしれない。
それにしても、【御男様《おとこさま》】とはどういう意味だろうか。
お客様ならともかく、男様。
やはり異世界はわからないことだらけだ。でも、だからこそワクワクする。
「さ、いこっか……っ」
カトレアがぼくの肩を抱き寄せ、二階への階段を上り始める。
もう、周囲の景色など目に入らなかった。心臓がバクバクと高鳴り、耳の奥で自らの鼓動が響いている。
だってこれから、ぼくはこの美しいお姉さんと楽しいことをするのだ。
期待が高まるにつれ、血の巡りが早くなり、下半身が熱を帯びて硬くなっていくのがわかる。
気づけば、ぼくたちは部屋の中に足を踏み入れていた。
もっと粗末な部屋を想像していたが、予想以上に広くて清潔だ。
床には絨毯が敷かれ、姿見のついた大きなベッドが置かれている。窓にはしっかりとガラスが嵌め込まれており、本格的な中世ファンタジーというよりは、中世風の便利な世界観らしい。これもまたテンプレだ。
そんな冷静な分析は、次の瞬間には完全に吹き飛んでいた。
「ぢゅぅうううっ」
部屋に入った途端、カトレアに激しいディープキスを奪われたからだ。
☆
カトレアは良太を連れ、ミョーコゥにある宿屋へと足を踏み入れた。
宿の主人から、男への礼金が手渡される。
この世界の男女比は一対九百九十九。
極端に男の数が少ないことで、深刻な問題が発生している。
超少子化である。
種を持つ人間の絶対数が少なすぎるのだ。しかも、そのわずかな男の中には老人や子供、病人も含まれている。
健康で若く、繁殖が可能な男となれば、その数はさらに限定される。
そこで、国は思い切った行政措置をとっていた。
若く健康な男に対する、過剰なまでの超優遇措置である。
その中の一つに、男を連れ込み宿として使用を許可すれば、多額の補助金が給付されるという制度があった。
宿側は、男が性行為の目的で宿泊したという事実を証明する書類を提出するだけで、莫大な利益を得ることができるのだ。
だからこそ、宿の経営者は若い男に喜んで施設を利用してほしいと願っている。
受付にいた女性主人は、良太に今後も贔屓にしてもらうため、迷わずワイロを手渡したのだ。
宿に限らず、この国では若い男への優遇措置が至る所で行われている。
そうした施設の経営者たちは、若い男を敬意と欲望を込めて【御男様《おとこさま》】と呼ぶ。
この世界において、若い男の客は文字通り神様と同義である。だからこそ、御と様を付けて崇めるのだ。
部屋に足を踏み入れた瞬間、カトレアは良太を壁に押し付け、激しく唇を奪った。
「んむっ、ちゅぅうっ、はぁっ、甘いっ。美味しいっ。これが若い男の味っ。うますぎるっ。頭がおかしくなっちゃいそうっ」
男が極端に少ないこの世界において、若い男は幻の希少種だ。
そして、その希少種たちの性格は、例外なく歪みきっていた。
女たちは皆、肉食獣のように飢えている。誰もが男との交わりを渇望し、隙あらば食い物にしようと狙っている。
想像してみてほしい。
普通の人間が、腹を空かせた猛獣の檻の中に放り込まれたらどうなるか。怯え、敵意を向け、心を閉ざすのが当然だろう。
カトレアも過去に、若い男に迫った経験は何度もある。
だが、彼らは皆、恐怖に顔を引き攣らせて逃げ出すか、騎士を呼んで彼女を突き出そうとした。
結果として、彼女はまともに若い男と肌を重ねた経験が一度もなかった。
どれほど望んでも、決して手に入らない若い男との時間。
さらに不運なことに、カトレアの身長は百八十センチもある。
この世界の男たちが好むのは、自分より背が低く、胸の小さな女だ。つまり、威圧感がなく、恐怖を感じさせない女である。
男たちはできることなら女と関わりたくないと考えているため、女らしさの薄い相手ほど重宝されるのだ。
カトレアは背が高く、胸も豊満である。誰の目から見ても、圧倒的な雌としての魅力に溢れている。動物に例えるなら、堂々たるライオンだ。
自分から進んでライオンの檻に入りたがる男など、いるはずもない。
だからこそ、カトレアには男がまったく寄り付かなかった。
若すぎる少年や老人に迫ったこともあるが、彼らもまた彼女の豊満な肉体を恐れて拒絶した。
どれほど美しい容姿を持っていようと、この歪んだ異世界において、彼女は誰からも求められない醜い女として扱われていたのだ。
カトレアも年頃の女性である。異性から忌み嫌われ続ければ、当然心は傷つき、自尊心はボロボロにすり減っていく。
たまに若い男を見つけては、仲間と徒党を組んで退路を断ち、半ば強引に関係を迫るような真似もしてきた。
この世界では、強姦は罪に問われない。そうでもしなければ出生率が致命的なまでに低下してしまうからだ。
法律上の罪ではないとはいえ、男から深く憎まれ、嫌悪されることは確実だった。
もういい。嫌われてもいいから、ただ男に抱かれたい。
それが、絶望に満ちたカトレアの悲しい本音だった。
けれど、心の奥底ではずっと願っていた。
本当は、互いに愛し合いたい。犯罪者や化け物を見るような目で、自分を見ないでほしい。
恋人同士のように甘く囁き合うのが高望みだと言うのなら。
せめて、普通の女を見るような普通の目で、見つめてほしかった。
そして、ただ普通に愛し合いたかったのだ。
だが、そんなささやかな願いすら、この異常な世界では絶対に叶わないはずだった。
そこに現れたのが、現代日本の倫理観を持った、どこにでもいる普通の少年である。
彼の感覚からすれば、道端で圧倒的な美女から逆ナンパされたことになる。大金を積んでも抱けないような極上の女が、ただで身を委ねてくれるのだ。喜ばない男などいない。
一方で、この世界の常識に縛られたカトレアからすれば、自分の誘いを喜んで受け入れてくれる男など、人生で初めての存在だった。
「こんなの、初めてっ。もうっ、ぜったいに、ぜったいに離さないっ」
カトレアは歓喜の涙を滲ませながら、良太をベッドへと押し倒した。
これまで、無理やり事を始めようとするたび、男たちは皆、恐怖で顔を歪めていた。
血の気の引いた蒼白な顔で、まるで恐ろしい悪魔でも見るかのような目を向けてきた。
自分が醜い獣にでも成り果てたようで、そのたびに心が軋むように痛んだ。
でも、今は違う。
「カトレアさんっ」
甘く弾むような声で、良太が彼女の名前を呼んだ。
彼の顔に、恐怖の色は一切ない。
ただ無邪気に笑って、こんな自分を丸ごと受け入れてくれている。
ポロリと、カトレアの大きな瞳から熱い涙がこぼれ落ちた。
こんなにも素敵な男は、世界中を探しても他にいない。
もう絶対に離さない。いや、違う。
もう絶対に、彼から離れたりしない。
カトレアは衣服を脱ぐことすらも忘れ、夢中で彼との甘い行為に没頭していくのだった。