チートヒーラー、男女比1:999の異世界で女子を治癒したら激重感情を向けられる件 作:茨木野
ぼくらは喧騒の戻りつつある街へ到着した。石造りの立派な役所が、この世界にもきちんと存在しているらしい。
建物の半分は騎士団の詰め所も兼ねていた。騎士という職業も、実態は公務員のようなものなのだろう。
アルクの言う通り、役所の窓口で手続きを済ませると、すんなり補助金をもらえることになった。
あとは拠点となる物件を探すだけだ。
この世界は、どうにも基本的には現代日本と同じようなシステムを取っているようで、不動産屋にあたる店も存在するらしい。
長旅でひどく疲れてしまったので、物件探しは明日に持ち越すことになった。
で、本題だ。
場所は、いつもの宿屋の薄暗い一室。
「召喚者なんだね」
召喚者というのは、文字通り異世界からこちらの世界に召喚された人間のことを指すらしい。
アルクの静かな問いかけに、ぼくは普通に頷いた。
「そうだよ」
「…………」
ん。どうしたのだろう、三人とも。なんだかひどく微妙な顔をしている。
「召喚者って、珍しいの」
「いや、全然。昔から召喚者はこっちの世界に来ていたよ。ただ」
「ただ」
カトレアはふるふると、艶やかな髪を揺らして首を横に振った。
「なんでもないよ。坊やが悪い人だとは思っていないし。ね」
シウネーたちも、カトレアに賛同するように小さく頷く。悪い人。まるで、召喚者が総じて悪い人だと言っているような口ぶりだ。
確かに、この間ゴブリンを利用していた中津川は最低な悪人だった。でもまさか、全員の召喚者が悪い人というわけでもないだろう。
「でもこれで合点がいったよ。君が治癒や捕食といったすごい力を持っているのは、召喚者だからなんだね」
アルクの口ぶりから察するに、アニメやマンガと同じで、召喚者は唯一無二のすさまじい力を持っているようだ。
「りょーた」
シウネーがぴったりと体をすり寄せてきて、耳元で囁く。
「召喚者ってこと、公言しないほうがいいよ。わたしたちは良いけれど、よく思わない人も多いから」
シウネーですら、警戒してこう言うのだ。やはり召喚者というのは禁句なのかもしれない。別に嘘をつくわけでもないし。
「うん、わかった」
彼女たちの善意の申し出を、無下にはしたくない。
ということで、ぼくは自分が召喚者であることを、これからは黙っておくことにした。
ぴったり。
「坊やぁっ」
目を潤ませたカトレアが、ぼくを見上げる。ひどく熱を持った視線だ。切なそうに、細い膝小僧を擦り合わせていた。
「どうしたの」
「も、もう何日もおあずけをくらっていて。もうあたし、だめっ」
そういえば数日留守にしていて、カトレアとはご無沙汰だった。
「ということは、アルクも」
「な、なぁっ。ぼ、ぼくは別にぃっ」
そっぽを向いているアルク。しかし、ちらちらとさっきからぼくの下半身を盗み見ているのがわかっていた。現代日本で、女性は男性から胸を見られているのが丸わかりだと聞いたことがある。
それって、きっとこういうことなのだろうな。
別にぼくは、不愉快だとは全く思わないけれど。
「いいよ、アルクも。シウネーも。みんなまとめて、おいで」
飢えた美しい野獣たちが、一斉にぼくへと甘くのしかかってくるのだった。