【男女比のぶっ壊れた異世界】転生した俺は、普通に冒険したい~激レアな男(俺)のことをみんな(肉食女子)がすっごく優しくしてくれる~ 作:茨木野
ぼくの初体験は、それはもう最高だった。
飢えた獣のようなカトレア。けれど、肌を重ねる行為が始まった瞬間、彼女はかわいらしい姿を見せてくれた。
まるで子猫のように甘い声を上げてもだえる姿がいじらしくて、つい、色々と頑張ってしまった。
童貞は初めての時に、結構苦戦するという。特に、童貞と処女との交わりはぐだぐだになることが多いらしい。
そう、カトレアはこんなにもエッチや恋愛にかけて百戦錬磨の空気を纏っていたのに、実は誰とも付き合ったことがない処女だったのだっ。
驚愕の事実だった。これほど高身長でスタイル抜群の爆美女なら、元の世界であれば恋人の一人や三人いてもおかしくはない。
本当に、この異世界はどうなっているのだろう。カトレアを放っておくなんて、みんな見る目がなさすぎるんじゃないか。そうぼくが笑って言うと、カトレアはぽろぽろと大粒の涙をこぼして号泣してしまった。
「そんなことを言ってくれるのは、坊やだけだよぉ……♡ だいすきぃ〜……♡ ふぇええ……♡」
とのこと。泣いているカトレアがあまりにも可愛くて、ぼくはさらに夢中になってしまった。
それで。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
汗ばんだ肌を寄せ合い、ぼくとカトレアは並んでベッドに横たわっていた。
部屋の中には、二人が交わった後のむせ返るような甘い匂いが満ちている。
正直、もうくたくただった。始めてからどれくらいの時間が経ったのかもわからない。
数時間かもしれないし、一瞬かもしれない。それくらい、ぼくは行為に没頭していた。
改めて思う。えっちって最高だっ。女の子の、普段は見せない無防備な一面を見せてくれる。どこを触っても柔らかいし、感じている女の子の表情のなんと素晴らしいことかっ。
現代日本だったら、ぼくは絶対に誰ともえっちなんてできなかっただろう。
こっちに来られて、本当に良かったっ。異世界バンザイだっ。元の世界には帰りたくないなと、心からそう思った。
さて。
「はぁ……はひ……はぁ……ひ……ふぅ……」
シーツに沈み込み、ぐったりとしているカトレア。すっごく疲れているのが伝わってくる。ぼくも同じだ。まるで水に濡れた服を着ているかのように体が重い。
このまま眠りに落ちたい気持ちもあるけれど、もっと彼女と楽しみたいという気持ちも、ある。
「ごめんね……坊や……♡ ちょっと休ませて……♡ ふ……ふ……ぅ……」
ちょっと、とはどれくらいだろう。
ぼくも休みたいけれど、できればもっともっとやりたい。
あ、そうだ。
「ねえカトレア。治癒スキルを試してみても良い?」
「ちゆ……? 治癒の魔法かい?」
「あ、いや。治癒スキルだよ」
「???? そんなスキル聞いたことないけど……」
あれ、そうなのだろうか。
「治癒魔法はあるんだよね」
「ああ。ただ、高位の魔法使いか、聖女っていうレアな職業《ジョブ》持ちじゃないと使えない、特別な魔法だけどね。治癒スキルなんて聞いたことないし。坊やの職業《ジョブ》は魔法使いじゃないんだろ?」
「うん。せいしょくしゃ」
「せいしょくしゃ……? それも聞いたことないね」
「え、聖女の男版っていないの?」
「神官のことかい?」
あ、そういう呼び方になるのか。ふぅん。じゃあ【聖職者】という職業《ジョブ》自体がないらしい。
なんでだろう。いそうなのに。
「神官は治癒魔法が使える男ってこと?」
「いや、光魔法、浄化や死霊系をやっつける魔法を覚えるだけ。治癒魔法は魔女と聖女の専売特許だよ」
ということは。
「男で治癒が使えるのは、せいしょくしゃのぼくだけってこと?」
「まあ、あたしは全知全能の神ミカデス様でもないから、わからないけど。少なくとも、今まで生きてて男で治癒の魔法を使っている人は見たことないね。スキルでなんて女でもいないし」
特別ということか、せいしょくしゃであるぼくが。
「それが本当なら凄いことだよ。別にあんたを嘘つきだとは思わないけども」
カトレアは優しいな。普通、得体の知れないぼくの言葉なんて、信じなくて当然なのに。やったから、だろうか。
そう、肌を重ねたことで、ぼくもカトレアのことを他人とは思えなくなっていた。愛おしいというか。
「まあ、とりあえず試していい?」
「いいよ」
スキルを使うぞ、とぼくは念じる。すると、自然と使い方が頭の中に浮かび上がってきた。
ふむふむ。対象に触れて、スキル使用を念じると。
「治癒っ」
その瞬間、パァアアアっ、とカトレアの体が淡い光に包まれた。
彼女は目を剥いて、「んんぅっ」と甘い声を上げる。
そして。
「はあはあ……す、すごい……すごいよっ。坊やっ」
カトレアがぼくを力強く抱きしめてきた。ぎゅーっと。
どうやら、体力がマックスまで戻ったようだった。
「すごいすごいよっ。すごいっ」
そ、そこまで驚くことだろうか。ただ体力が戻っただけなのに。
☆
カトレアは良太を抱きしめながら、自身の体に起きた劇的な変化に驚愕していた。
彼女は生まれつき、極端に目が悪かった。
この世界において眼鏡はとても高級品だ。一般人には手が出せない。無論コンタクトレンズもないし、レーシック手術といった視力回復の手段も存在しない。
聖女の使う治癒魔法でさえ、視力低下といった体質に関する変化は元に戻せない。あくまで細胞を活性化させ、傷ついた細胞を治す。それが治癒魔法の限界なのだ。
しかし、良太の使った治癒スキルは、その常識を根底から覆す破格の代物だった。
このスキルは、『正常な状態に戻す』というもの。
すなわち、視力が低下する前の健康な状態にまで、肉体を回帰させることができたのだ。
治癒と言うよりは、時間回帰に近いかもしれない。
良太との性行為によって失われた体力はもちろん、視力も完全に回復していた。
「ありがとう、坊やっ。ありがとうっ」
視力が悪いことで、カトレアは常に目を細め、相手の顔に近づかなければならなかった。
それが他人から見ると、極悪な人相という印象を与えてしまう。常に睨みつけているように見えてしまうのだ。それが余計に男を遠ざける要因になっていた。
それが、どうだ。輪郭がぼやけていた世界が、鮮やかな色彩を持って立ち上がってくる。こんなにもクリアな視界は、物心ついてから初めてだった。
改めて、至近距離にいる良太の顔がよく見える。
汗ばんだ前髪の奥から覗く、真っ直ぐで優しい瞳。
(か、かっこぉいい……♡)
どきどき、ばくばく、と心臓が異常な跳ね方をする。
そう、今まで良太の顔をしっかりと見られていなかったのだ。だからこそ、顔立ちの美しさに気付けなかったのである。
顔抜きでも、好みだった。内面が好きだった。彼はこの狂った世界で唯一カトレアに優しく触れてくれた、内面の素晴らしい男だと。
そこに加えて、彼の顔を改めて認識し、骨の髄まで惚れ込んだのだ。
既に、足の間がトンデモナイことになっていた。
そして気付く。
「あ、あれ……?」
「どうしたの?」
彼の声を聞いただけで、脳みそがとろけそうだった。
(ああっ、頭がおかしくなりそう……♡ なんでも答えたくなる……♡ 彼に尽くしたい……♡ 好かれたい……♡)
「あ、あの……リョータさんに出されたものが、無くなってて……」
「リョータさん……? いいよ、今までどおり坊やで」
「でも……」
「いいから」
(優しい……♡ 好き……♡ めちゃくちゃにしてほしい♡)
初めての感情だった。今までは、男をただ貪る対象としか思っていなかったのに。
逆に、貪られたい。めちゃくちゃにされたい。彼の下で屈服したい。そんな甘い従属欲が生え始めている。
「で、なんだっけ。出したものがなくなってる?」
「ああ……。いっぱい出してもらったのに……ごめんね……」
一対九百九十九という、男の極端に少ないこの世界において、人口減少は避けられない死活問題だ。
ゆえに、避妊という概念は存在しない。むしろ、そんなことをすれば周りから白い目で見られるし、世界全体がそれを禁じている。
だから、性行為イコール繁殖行為。それがこの世界の絶対的な常識。
良太が元いた世界のように、性行為をコミュニケーションや娯楽のように扱う文化がそもそもない。
ピルもないし、コンドームなんてものも開発されていないのだから。
「なるほど。治癒スキルで、行為をする前の状態に戻せる。つまり、中に出したものも、出される前に戻る。なくなるってことか」
「そ、それって……子どもができないってことだろう?」
「そういうことだね」
「…………」
信じられなかった。性行為をしているのに、中にたっぷり出されたのに、子どもができない。
子どもができる可能性が、ない。それは。
「「最高じゃあないかっ」」
二人の声が見事に重なる。カトレアは「ええっ」と目を見開いて驚愕した。
「どうしたの?」
「あ、いや……男にとって、それって嫌なことじゃあないのかい?」
この世界の男達は、そもそも性行為をしたいとあまり思っていない。女に頼まれ、土下座されて、ようやく仕方なく種をくれる。
恵んでやっている、という特権意識が彼らにはあるのだ。だから、中に出したのに子どもができないと分かれば不機嫌になり、激しく叱責される。
「そりゃ、子どもは欲しいよ。でも、愛もなく産み落とされた子どもがかわいそうだもん。あぷっ」
カトレアはもう我慢できなかった。初めてだ。初めて、自分と同じ価値観を持った男が現れたのだ。
彼女は弾かれたように良太の胸に飛び込み、その首に腕を回した。
「もう……もう絶対、ぜったいぜったい、離れないんだからなっ」
この男は、神が遣わした特別な存在。自分を救う救世主だと、カトレアは思った。
そして、絶対に手放してなるものかと、彼を抱きしめる腕の力をさらに強め、固く誓うのであった。