【男女比のぶっ壊れた異世界】転生した俺は、普通に冒険したい~激レアな男(俺)のことをみんな(肉食女子)がすっごく優しくしてくれる~ 作:茨木野
治癒スキル。はぁ、最高だった。
使用すればその都度、体力が全回復している。そして使っていて気付いたのだけれど、このスキルは精力も同時に回復してくれるのだ。
若いといえど、ぼくだって出せば限界が来る。でも治癒スキルを使えば、その都度体力も精力も限界突破の万全状態になるのだ。
そして、治癒スキルは自己だけでなく、相手にも施せる。相手が「も、もぉだめぇっ」とヘロヘロになっても、治癒を使えばあら不思議。行為に及ぶ前の体力に戻せる上に、中に出しても妊娠リスクがゼロになる。
もちろん、性病対策にもなっている。これは結構重要なポイントだ。
なにせこの世界、どうやらまだコンドームの存在や、性病の知識が普及していないみたいだからね。そういったリスクが頭をよぎると、どうしても行為を純粋に楽しめなくなってしまう。
あってよかった、治癒スキルっ。
カトレアからスキルについて説明を受けたことで、さらなる事実も判明した。
どうやらスキルというものには、使用回数制限が存在するらしい。
ゲームでいうところのMPや技ポイントのようなものだ。
使い切ると一定の時間を空けないと、回数は増えない仕組みなのだが。
ここが、治癒スキルの最大のぶっ壊れポイントだった。
なんと、治癒スキルを重ね掛けすることで、この使用回数制限すらも回復できるのだ。自分自身を対象にすれば、実質ノーリスクで制限をリセットできてしまう。
どこかの漫画の反転術式のように、焼き切れた脳を無理やり回復させるような危険な真似をしなくてもいい。
やばくないだろうか。
だってこれ、ランプの精霊に「お願い事が切れそうになったら、お願い事を百個に増やして」と要求するのを、無限に繰り返せるようなものだ。やばいなんてものではなかった。
せいしょくしゃのスキル、恐るべし。
治癒スキルの基本使用回数は十回らしいのだが、回数そのものを治癒するとその都度全回復するので、実質無限に使用できるスキルとなっている。
そして。
捕食スキル。こちらもとんでもない性能だった。
どうやら捕食は、人体を物理的に食べることで発動する猟奇的なスキルではなかったらしい。
性的に食べる、すなわち性行為を行うことで発動する特殊なスキルだった。
女の子と肌を重ねれば、その女の子が持っているスキルが、そのままぼくのものとなる。
対象から奪い取る略奪系ではないと分かり、心の底からほっとした。純粋に、抱いた女の子のスキルをコピーできるという平和的な能力だ。
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威圧
→一定レベル以下の存在を威圧し、一時的に動けなくする。
格闘術(上級)
→格闘術を使用可能。
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カトレアが持っていた二つのスキルを、ぼくは捕食を通してコピーした。
彼女に尋ねたところ、カトレアのジョブは武闘家らしい。
威圧も格闘術(上級)も、どちらも彼女の持つ強力なスキルだ。
ただ、一つだけわからないことがある。
彼女はほかにもスキルを持っているそうなのだが、ぼくが昨夜の行為で捕食できたのはその二つだけだった。
それ以上のスキルを捕食するためには、何か別の条件的なものがあるのかもしれない。
今の段階ではわからないけれど。
結論から言えば、ぼくは女の子と関係を持てば持つほど強くなれる。
そして、関係を持った女の子を、治癒スキルで確実に満足させられるだけの力を持っているということだ。
「はぁ、異世界最高っ」
朝の光が差し込むベッドで、ぼくの隣には裸の爆美女がスヤスヤと眠っている。
カトレア。昨日は本当にすごかった。
最初に出会ったときは、妖艶で百戦錬磨のお姉さんかと思った。
でも、ベッドの中での印象はガラッと変わったのだ。
処女であることを告白したときなど、消え入りそうな声で「ごめんね、初めてなんだ。優しくしてね」と震えていた。
まるで幼い女の子のように初心な反応が、大人びた外見とのギャップでかわいらしすぎて、ついつい意地悪をしてしまったほどだ。ベッドの上での主導権は、完全にぼくが握っていた。
なんとも表現できない、甘い優越感のようなものを覚えていた。
カトレアさんが背が高くて、ある意味で少し威圧感があるからこそ。そんな強い彼女を、ぼくが自由にできるのだという優越感。
「おはよう、ぼうやっ。ちゅっ」
もぞもぞと身じろぎしたカトレアが、自分からぼくにキスをしてきた。
昨日のキスとは、なんだか質が違う。昨日は単に性欲を満たすための、熱く激しいキスだった。
でも今のキスは、互いの愛を確かめ合うような、甘くて優しいキスだった。
そう思ったのも束の間、そこから貪るようなディープキスへと変わっていく。
どうやら、朝の生理現象で元気になっていたぼくのものを見て、再び発情してしまったらしい。
ぼくは治癒スキルを駆使して、彼女をたっぷりと満足させた。
いやぁ、治癒スキルは本当にすごい。何度でもできてしまう。
「さて、と。あたし、ちょっと仕事行ってくるね」
「仕事?」
ベッドから起き上がり、革の衣装を着込み始めたカトレアが、どこかへ向かおうとしている。
「何してるの?」
「冒険者。用心警護の仕事をしててさ」
「冒険者だったんだっ」
ファンタジー小説鉄板の職業、冒険者。
やっぱりこの世界にもあるんだ。カトレアは昨日一緒にいた取り巻きの二人とパーティを組んでいるのだろう。
冒険者が存在しているということは、つまり。
「ねえ、ギルドに案内してくれない? ぼくも冒険者やるっ」
「っ」
あれ。カトレアがなぜか目を見開き、ひどく驚いた顔をしている。
「は、働くって言ったのかい?」
「そうだけど?」
「っっ」
えーっと。労働って普通のことじゃないだろうか。
なぜそんな、この世の終わりでも見たかのようにびっくり仰天しているのだろう。
「何か変?」
「ううん、変じゃないよ」
カトレアがふわりと柔らかく笑い、ベッドの端にいるぼくへ近づいてくる。
優しく抱きしめられ、甘い香水と微かな汗の匂いが鼻腔をくすぐった。
「あんたは、ほんとに特別だなって思った。もうぜったい、離さないからねっ」
よくわからないが、ぼくはカトレアにひどく気に入られたようだった。
ぼくだって同じ気持ちだ。
こんな素敵で綺麗なお姉さんと、こうして抱き合えるなんて。そういえば。
「ぼくたちって、どういう関係なんだろう」
「首を傾げることかい? そりゃ、カップルさ」
「だ、だよねっ」
都合のいい関係などと言われたらどうしようかと、少しだけ不安だったのだ。
こうしてぼくは、異世界に来て初日でカノジョができてしまった。
異世界、万々歳だ。
☆
カトレアは目の前の男、良太の言葉に深く感心していた。
(男なのに、自分から働くって言うなんて。すごいっ)
男女比が一対九百九十九のこの異世界において、男は極めて希少な存在だ。
だからこそ、大半の男たちは飢えた猛獣のような女たちに怯えて暮らすか、逆に女に対してふんぞり返り偉そうに振る舞うかの二択に分かれる。
そうなると、この世界の男たちは総じて、自分から働こうとはしないのだ。
意志の弱い男は女の影に怯え、国に保護されて補助金で暮らす。
一方で自分を神だと思っているような男は、女を平気な顔で食い物にする。つまり、女に貢がせるヒモ生活を当然の権利として享受するのだ。
いずれにせよ、この世界においては『男は働かないもの』という絶対的な共通認識がある。
社会の風潮であり、空気と言い換えてもいい。
だが、現代日本でもそうであるように、そんな空気に対して不満を抱く女は多い。
当然だ。どうして好きでもない、愛してもいない横柄な男のために、血を吐く思いで働き、貢がなければならないのか。
カトレアも確かに男を求めていた。
だが、今になって思えば、それは単に男の持つ身体の一部で、自身の強すぎる性欲を満たしたかっただけなのかもしれない。
本当に愛する人を見つけ、身も心も抱かれ、深く結ばれた今ならわかる。
自分の中にあった男への関心は、純粋な愛情ではなく、飢餓感から来る執着だったのだと。
(良太。あたしはあんたのためなら、自分の全部を捧げてもいい。あんたのためなら、喜んで貢ぐつもりだったよ。でも、自分から働くって言うなんて)
途方もない優越感を、カトレアは噛み締めていた。
他の有象無象の軟弱な男たちと違い、自分の恋人は自ら働こうとしている。社会貢献をしようとしているのだ。
本当に素晴らしい男である。
(しかも、性欲旺盛な若い男なんてレア中のレア。そのうえでこんなに優しい男なんて。ああ、あたしはなんて運のいい女なんだろう。この人の恋人にしてもらえるなんて)
胸の奥が温かいもので満たされる。だが、同時にどす黒い不安も首をもたげてきた。
(リョータはこんなにも素晴らしいんだ。きっと、言い寄る女が腐るほど増えてしまう。やだな。リョータはあたしだけのリョータでいてほしいのに)
この世界では、一夫多妻制が国から推奨されている。
男が複数の女を抱くことはもちろん、複数の女と同時に関係を結び、結婚しても法的に何の問題もないのだ。
今はいい。良太は自分だけの良太だ。
でも、このまま冒険者ギルドなんていう、飢えた野獣の巣窟に足を踏み入れたら。
間違いなく、良太は飢餓状態の女冒険者たちの格好の餌食にされてしまう。
(あたしが、あたしがしっかり守らないとっ。良太を死ぬまで、一生、ずぅっと守ってあげるんだからっ)
カトレアがそんな重すぎる決意を固めていることなど、良太は欠片も知らない。
そして、これから向かう場所に女しかいないという異常な事実も。
「いいかい、リョータ。ギルドに居るときは、あたしのそばを片時も離れるんじゃないよ」
(でないと、飢えた女どもにすぐにパクッと食い物にされちまうからねっ)
「わかった」
(本当にわかっているのだろうか。自分が冒険者どもから見れば、とんでもなく美味しい極上の肉だということに)
性欲も労働欲も旺盛な、優しくて若い男。
そんな奇跡のような存在、誰もが喉から手が出るほど欲しがるに決まっている。
そのうえ、彼には治癒スキルというぶっ壊れ性能のレアスキルまで備わっているのだ。ギルド中の女が彼を巡って血で血を洗う殺し合いを始めても、なんら不思議ではない。
「ギルドでのやり取りは全部あたしに任せて。余計なことは喋らなくていいからね」
「えー、悪いよ」
(くうぅっ。優しいっ。なんて優しいんだいっ。こんな優しい男、はじめてっ。はぁっ)
下腹部がカッと熱くなり、甘く疼いた。
ここが外でなかったら、すぐにでも衣服を引き裂いて彼を貪り食っているところだった。外でよかったと、心から安堵する。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ」
「カトレア?」
「りょ、リョータ。そういう優しい言葉は、だめだよ。恋人以外に向けちゃっ」
「わかった」
(これは、あたしが守らないとっ。絶対にっ)
そうこうしているうちに、カトレアたちはギルドの前に辿り着いた。
レンガ造りの立派な二階建ての建物だ。良太は「テンプレ建物きたっ」と何やら無邪気に喜んでいる。何かテンションが上がるようなことでもあったのだろうか。
(はしゃいでるリョータ、かわいいっ)
カトレアは気合を入れ直し、良太の華奢な手をきつく握りしめた。
「えっ」
「この手を離しちゃだめだよ。あたしから絶対に、絶対に離れないこと」
「うんっ」
(かわいいっ。このままお持ち帰りしたい。宿で思う存分えっちしたい。昨日みたいにあんあん言わされたい。どうしてあたしはこんなところにいるんだろう)
ギルドなど放り出して、今すぐ宿に戻りたかった。一日中ベッドの上で抱き合っていたかった。
だが、良太がギルドでの労働を望んでいるのだ。
だから。
「いくよ」
「うんっ」
重い木扉を押し開け、ギルドの中に足を踏み入れる。
その瞬間。
中にいた何十人もの女たちの視線が、一斉に良太へと突き刺さった。
(ここは、猛獣の巣)
誰もが、良太に熱を帯びた視線を送っている。彼女たちの心の声が、手に取るように聞こえる気がした。
(男?)(男だわ)(しかも若い男)(かわいい)(何しに来たのかしら)
ねっとりと、じっとりと。彼女らは獲物を定めるように良太を舐め回している。
若い男が歩いている。それだけで信じられないほどレアなのだ。
そもそも、若い男は表に出ない。女が群れる外を怖がるか、女を働かせて自分は安全な場所でふんぞり返っているかのどちらかだからだ。
普通に外を歩いているだけで、良太は凄まじく目立つ。珍獣などというレベルではない。
伝説の聖剣が、鞘にも納まらず無防備にふらふらと歩いているようなものだ。誰だってそんな国宝級のお宝が目の前にあれば、欲しいと手を伸ばすに決まっている。
現に、性欲を持て余した冒険者の女たちが、良太に言い寄ろうと立ち上がりかけた。
だが。
「おい」
ぎろり、と。カトレアが威圧スキルを全開にして放った。
瞬間、空気が凍りつき、近づこうとした女たちがその場でへたり込む。
「あたしのかわいい男に、手ェ出すんじゃないよ。いいかい、この御男様《おとこさま》は、あたしんだからな」
こうして強烈に牽制しておかなければ、良太は今頃女たちに揉みくちゃにされるか、拉致されるか、裏路地に引きずり込まれて犯されるかしていただろう。
だが、ここまで強烈な殺気を放って睨みを利かせてもなお。
(やっぱり男だっ)(若くてかわいいっ)(絶対に手に入れるんだからっ)
良太に隠しきれない熱い視線を注ぐ者は多い。
カトレアは絶対に彼を守り抜くのだと決意し、繋いだ手をさらに強く握りしめた。
そして、昨日彼に全身を甘く愛撫された時の感触を思い出し、背筋をぞくぞくと震わせるのだった。