覇気だけが全てを凌駕する世界で「斬れぬものなど、あんまり無い!」 作:麦らァのみょん
お昼にも一話投稿しています。
「ありがとう! お前たちがいなかったら村は守り切れなかった」
ジャンゴを倒したおれたちは海岸まで戻ってルフィたちと合流した。
どうやらこちらも無事に勝てたようでクロネコ海賊団はキャプテン・クロを連れて島を離れたようだ。
……あれ、ジャンゴってその後どうしたっけ。
どうやらウソップは今回起きた戦いを村の人たちには秘密にすることにしたらしい。
村の人たちに余計な恐怖を与えないようにと。
「何言ってやがる。お前が何もしなきゃおれは動かなかったぜ」
「おれも」
寝っ転がりながらそういうゾロとルフィ。
いいなぁ、おれもそんな格好いいセリフ言ってみたい。
「なァお前ら。おれはこの機会に一つ、ハラに決めたことがある」
「?」
その後、朝から戦ってお腹が空いたのでルフィたちとご飯でも食べようかと思ったのだが。
おれはウソップに連れられて村の近くにある林が見える野原にやって来ていた。
「いいかお前ら! それぞれの野望の火を絶やすことなく、己の道をつき進むことをここに誓え!」
「今日限りを持ってウソップ海賊団を!! 解散する!!」
それは男たちの別れの儀。
ごっこ遊びだったとはいえ、本物の海賊に勇敢に立ち向かったウソップ海賊団の解散だった。
「悪いな妖夢。付き合わせちまって」
「いえ、良いものを見せてもらいました。けれど、なんで私を呼んだんですか?」
ぶっちゃけ、あの子らともそんなに関わってないからこの村に来て仲良くなったとかもないし。
「お前はカヤとあいつらを守ってくれたし、ウソとは言えおれのウソップ海賊団の勧誘に乗ってくれたやつだからな。なんていうか、見届けてほしかったんだよ。ウソップ海賊団という一味がここに居たってことを」
そう言って、流した涙の後をゴシゴシと拭いながら二カッと笑うウソップ。
なんだこいつ、格好いいじゃないか。なっがい鼻してるくせに。
「先ほど子供たちに野望を聞いていましたが、ウソップさんにもあるんですか? その、夢みたいなものが」
「そうだなァ。おれの夢はやっぱり勇敢なる海の戦士になることだな! 海に出て、海賊になって! いつかきっと親父みたいになってやるのさ!」
そう話すウソップの姿はなぜだかとても眩しく感じた。
「すごいですね、ウソップさんは。普通、あんな風に海賊に襲われた後でそんなこと言えませんよ」
魂魄妖夢の肉体という、予め鍛えられていた身体で生きている今のおれでさえ、ジャンゴのチャクラムに斬られ足が竦んで正直怯えた。
ウソップも今回の件で何度も恐怖を味わっただろうに、今キラキラとした顔で夢を語っている。
もし仮に、おれに夢があったとして。
あのような恐怖を味わっても、乗り越えて夢を追いかけることができるのだろうか。
△▽△▽
ウソップと分かれてルフィたちと合流したおれは再び海岸まで来ていた。
どうやら今回の件のお礼としてカヤさんから船を貰えることになったらしい。
「へぇ……」
「キャラヴェル!」
「キャラメルですか?」
「キャ・ラ・ヴェ・ル!」
「うおーっ」
そこに浮かんでいたのは羊の船首が特徴的な一隻の船だった。
「カーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル、ゴーイング・メリー号でございます!」
そう言って船を紹介してくれたのはカヤさんの家の執事のメリーさん。
これがゴーイング・メリー号か。
なんとも立派な船である。
「動索の説明をしますが、まずクルーガーネットによるヤードの調節に関しましては……」
メリーさんの解説に疑問符を浮かべながら首をかしげるルフィ。
「あ、ダメダメ。船の説明なら私が聞くわ」
ルフィでは理解できないだろうとナミが話を代わる。
いやー、ナミがいれば難しい話も解決できて実にありがたい。
「アンタもちゃんと聞くのよ」
おれもルフィと一緒で船の構造なんていくら聞かされてもわからないのだが?
とりあえずわかったことだけまとめるとこの船はお風呂やトイレ、キッチンが付いている上に海水ろ過機能や発電設備まで完備されているらしい。
すっげー、超快適空間じゃん。
「航海に要りそうなものは全て積んでおきましたから」
どうやら食料品なども一緒にくれたようだ。
ルフィもありがとう、ふんだりけったりだな! と喜んでいる。
……それを言うなら至れり尽くせりでは?
説明を聞き終えてさっそくメリー号に乗り込もうとしていたら。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ止めてくれーーっ!!」
絶叫しながら転がってくる大きなリュックを担いだウソップの姿が。
「何やってんだあいつ」
「とりあえず止めとくか」
足を前に出してドスンと受け止めるルフィとゾロ。
顔面に足をめり込ませられながら、ウソップが弱々しくお礼を言った。
「やっぱり海へ出るんですね、ウソップさん」
「ああ。今度この村に来るときはよ、ウソよりずっとウソみてェな冒険譚を聞かせてやるよ」
「うん、楽しみにしてます」
そう言ったカヤさんの笑顔は、ウソップの門出を応援するとともに、別れる寂しさをこらえているようにも見えた。
カヤさんとの別れの挨拶を済ませたウソップはメリー号に乗ったおれたちの方に向き直る。
「お前らも元気でな。また、どっかで会おう」
「なんで?」
ルフィの不思議そうな返事にウソップはおいおいと肩をすくめる。
「なんでってお前、愛想のねェ野郎だな……。これから同じ海賊やるってんだから、そのうち海で会ったり……」
「何言ってんだよ、早く乗れよ」
「え?」
ゾロの言葉に戸惑うウソップに、ルフィは当たり前のことを言うように。
「おれ達もう仲間だろ」
予想していなかった言葉に、ウソップが動きを止めて固まる。
しかし次の瞬間には大きくジャンプして喜んだ。
「キャ……! キャプテンはおれだろうな!!」
「ばかいえ! おれが船長だ!!」
ウソップを乗せておれたちは出航した。
オレンジの町を出た時の忙しない船出とは一転して、今回の船出はどこか寂しさを感じさせられる。
前世ではわからなかったが旅先で出会いと別れはなんともいえない気分にさせられるものなんだなぁ。
「何してんだお前」
「自分が少し大人になったことを噛みしめています」
「……そうか」
なんかゾロが微妙そうな顔でこっちを見てくる。
おれに何か言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。
「ルフィがウソップの歓迎の宴をするってよ。せっかくだから美味いメシ作ってくれ。酒も忘れんなよ」
「はい、かしこまりました」
別にこういう宴会の準備の経験なんてないのだが、なぜかこの体は完璧にこなせてしまう。
それはおれが魂魄妖夢だからなのだろうか。
まあいいさ。
今は宴を楽しんでこのしんみりとした気持ちを笑い飛ばしてしまおう。
これから旅を続ける度に何度もこうやって笑えるのだろう。
ならこんな思いをするのも悪くない。
この気持ちは、きっと嘘じゃない。
次回からバラティエ編ですが、特に原作と変えられる点が思いつかない(どうせミホーク戦が終わったらルフィ置いてココヤシ村行)ので大幅にカットするかもです。
偉大なる首領・クリークファンの皆さんごめんなさい。<(_ _)>