覇気だけが全てを凌駕する世界で「斬れぬものなど、あんまり無い!」 作:麦らァのみょん
バギー達が拠点としている酒場に着いた。
手出し無用とバギーに突撃しようとしたブードルさんをルフィは壁に叩きつけ気絶させる。
ルフィは説得(物理)に成功した!
「邪魔!!」
放っておいたら間違いなく死にに行ってただろうから大人しくしていてもらった方が安全なのはそうなんだけどもっとこう手心というかやり方はなかったのだろうか……。
ルフィには交渉術を身に着けてもらわないといけないのかもしれない。
ほらぁ、ナミも無茶するなっ! ってツッコんでる。
「デカッ鼻ァ!!」
そんなナミを無視してルフィは叫ぶ。
鼻をいじられて頭にきたのかバギーは屋上からドクロマークのついた砲弾を発射する。
「そんな砲弾がおれに効くかっ。ゴムゴムの……風船っ!!」
息を大きく吸い込むとルフィの身体は膨張し砲弾を受け止める。
受け止められた砲弾はそのままびよおんと弾き返され酒場に着弾。
ドカァンと酒場ごとバギー一味を吹き飛ばした。
「よっしゃ! 敵が減った!」
喜ぶルフィだったがそれも束の間、ガラガラと瓦礫をどかしながらバギー達が立ち上がる。
「よくもまァハデにやってくれたもんだ」
砂埃の中から現れたのは、部下を盾にしたバギーとリッチーを盾にした長いマフラーの男。
「旗揚げ以来最大の屈辱ですね、船長」
「おれァア、もう怒りでものも言えねェよ……」
そう言って二人は盾にしていた部下とリッチーを投げ捨てる。
さっき倒した相手とはいえ、こうもあっさり退場されてはなんとも言えない気持ちになる。
「バギー一味参謀長、曲芸のカバジ! 一味の怒り、この私が請け負う!」
そう言って一輪車に乗ったマフラーの男、カバジがルフィに向けて剣を突き立てる。
「剣士の相手はおれがする」
間に割って入ったゾロによりカバジの剣が止められる。
しかし合流する前にバギーに刺された腹部からジワリと血が滲みだしている。
「曲技、火事おやじ!」
ボッっとカバジが口から火を吹き出し思わずゾロが体勢を崩す。
その一瞬の隙を見逃さずカバジは傷口にドスッと蹴りを入れる。
「ぐああああっ!!」
これには流石のゾロも苦痛で声をあげる。
このままでは勝っても更に大怪我をしてしまうかもしれない。
助けに入ったほうがいいのだろうか。
「おい妖夢!」
そんなおれの余計な心配を察したのか、ゾロが言う。
「お前あの猫無傷で倒したんだってな」
猫というのはあそこで伸びているリッチーのことだろう。
「同じ剣士として負けてられねェ。おれも目の前のコイツ程度、瞬殺してやるよ……!」
さっきまで抜いていなかったもう一本の刀を抜き三刀流の構えをとる。
「ならば今すぐとどめを刺してやろう!」
剣を構え、ゾロに突進するカバジ。
「鬼……」
それでもゾロは冷静に相手との距離を見極め刀を構える。
「斬り!!」
「ぐはぁっ!」
ズバッ!! と斬撃音が響く。
ゾロの三刀流の前に、カバジは一太刀にて斬り伏せられた。
「おれは剣士と名乗る相手には負けるわけにはいかねェんだ」
倒れたカバジを見下ろしながらゾロが言う。
しかしその言葉はおれにも向けられているような、そんな気がした。
「おい……おれは寝るぞ」
傷口を攻撃されたからか、疲れた様子でゾロが地面に転がる。
「おう、寝てろ。あとは任せろ」
握りこぶしをつくってにっと笑うルフィ。
旅は始まったばかりだというのに、既にこの二人の間には相棒という関係性が出来上がっているようだ。
「海賊達がのびている今のうちに私はお宝を探すわ。偉大なる航路の海図はバギーが持ってるはずだから、もしあんたたちがソレを手に入れられたらその時は改めて手を組みましょう?」
堂々と窃盗宣言したナミは裏に回ってバギー達の宝を奪いに行った。
残った敵はバギー一人でその相手はルフィがしてる。
お宝もナミが奪いに行ったし、おれはどうしよう。
気絶しているブードルさんといびきをかきながら眠るゾロでも見守っていようか。
「おい女ァ!」
呼ばれた方を見るとさっきルフィに吹き飛ばされたモージがムチを持っておれを睨みつけていた。
ルフィにやられ砲弾をくらってもなお立ち上がるとは、こいつもこいつで随分としぶといやつだ。
この世界の人間は大砲をくらっても案外無事なのがデフォルトなのだろうか。
おれもそのうちなれるのかなぁ。
「ぼけっとしてんじゃねェ!」
ビュンッとモージがムチを振るう。
楼観剣で切り落とそうとするも刃の部分にグルンとムチが巻き付いて動かせなくなる。
「はっはァ! どうだおれのムチ裁きは!」
大声で高笑いするモージ。
たしかにすごいけど、この後どうすんの?
そっちはもう武器ないけどこっちはまだ白楼剣も残ってるし。
「あ……」
自分の状況に気付いたのかあんぐりと口を開けて固まるモージ。
「ふっ!」
「おわっ!?」
巻き付いているムチごと楼剣剣を手前に引く。
ムチを握っているモージも当然おれの方に引っ張られ。
「……この状態からでも入れる保険ってありますか?」
「ないです」
おれは白楼剣でモージを斬り伏せた。
そんな茶番をしているうちにどうやらルフィとバギーの戦いもクライマックスに差し掛かったようだ。
ゴムゴムバラバラとした摩訶不思議な戦闘もついに終盤。
身体のパーツをナミに抑えられ首と手足だけになったバギーは。
「吹き飛べバギー! ゴムゴムのバズーカ!!」
「やめろあああああああああ!!!」
絶叫しながら空の彼方へと消えていった。
「たーまやー」
「何変なこと言ってんのよあんたは。花火じゃないんだから」
ぼそっと呟いただけのつもりだったのに、いつの間にか隣にいたナミに聞かれてた。
お恥ずかしい。
無事にバギー海賊団を倒したおれ達だったが、その後すぐにやってきた町民に追いかけ回されて慌ただしく出航するはめに。
ブードルさんをルフィが物理的に説得したのがまずかった。
町民を怒らせた張本人であるルフィはいい町だなーっと笑っていた。
「小童ども!」
出航したその瞬間。
目が覚めたのか、追いかけてきたブードルさんが息を切らしながら叫ぶ。
「すまん! 恩に着る!!」
「気にすんな! 楽に行こう!!」
涙を流すブードルさんに向けてルフィは明るく笑った。
「なんだか、忙しない船出でしたね」
「だが、いい船出だ」
ルフィだけじゃなく、ゾロもナミも笑顔だ。
この一味は色々と特殊ではあるのだろうけど、これなら海賊というのも案外悪くないのかもしれない。
この世界で笑って生きていくのなら。