覇気だけが全てを凌駕する世界で「斬れぬものなど、あんまり無い!」 作:麦らァのみょん
「あったなー、本当に大陸が!」
「当然でしょ、地図の通りに進んだんだから」
地図を見るナミを感心したように眺めるルフィ。
地図を読める仲間ができたことでおれたちの漂流生活はようやく終わりを迎えたようだ。
海岸の先には一本の坂道が続いており、その奥には木々が生い茂っている。
「この奥に村があんのか?」
「うん。小さな村みたいだけど」
ナミの横から地図を覗き込むと確かに地図には村が描かれていた。
シロップ村というらしい。
「ところでさっきから気になっていたんだが」
船から降りて身体を伸ばしていたゾロが崖の上に視線を移す。
「あいつら何だ」
そこにいたのは三人の子供と一人の青年。
「「「うわああああ見つかったァ~~っ!!」」」
三人の子供はバレたと気づくと青年を置いて一目散に逃げ出していった。
「……」
置いて行かれた鼻の長い青年はこっちを向いて固まっていた。
いや、そんなつぶらな瞳で見られてもなぁ……。
「……おれはこの村に君臨する大海賊団を率いる、人呼んでキャプテン・ウソップ!!」
青年ことウソップはおれ達のいる海岸まで降りてくると何事も無かったかのように啖呵切った。
「この村には手を出さない方が身のためだ! おれには8000万の部下がいる!」
「うそでしょ」
「げ、バレた!?」
「ほらばれたって言った」
ナミが呆れながらツッコんだ。
「バレたって言っちまった!? おのれ策士め!」
今のところ全部勝手に自滅しているだけである。
「お前面白いな!」
ナミが呆れている一方でルフィは腹を抱えて笑っている。
そんな様子のルフィにウソップは憤慨して言う。
「おれをバカにするな! おれは誇り高き男なんだ! 人はおれをホコリのウソップと呼ぶ!」
「それもうそなんですよね」
「こっちはうそじゃねェよ!」
最後のは違ったらしい。
△▽△▽
シロップ村にある飯屋MESHIでおれ達は村に訪れた目的を話していた。
仲間探しとでかい船、仲間はともかく船なんてそう簡単に手に入るのだろうか。
「はーっ、そりゃ大冒険だな!!」
おれ達の話を聞いてどこか羨ましそうにしている興奮気味のウソップ。
「まァ、大帆船ってわけにゃいかねェが船があるとすりゃ、この村で持ってんのはあそこしかねェな」
「あそこって?」
「この村に場違いな大富豪の屋敷が一軒建ってる。その主だ」
そう言ってウソップはこの村の屋敷に住むカヤという少女の身の上話を始める。
屋敷の主である少女カヤは病弱で寝たきりの女の子。
一年前に病気で両親を失い莫大な遺産とでかい屋敷、そして十数人の執事達が残された。
「どんなに金があって贅沢できようと、こんなに不幸な状況はねェよ」
その話を聞きナミは、この村で船を手に入れる事を諦めた。
ルフィも急ぐ旅じゃねェしと言って笑っている。
ルフィ的には肉が食えただけで満足しているようだ。
それにしても病弱で寝たきりの少女か。
広い屋敷に、そんな状態で残されるなんて一体どれだけ孤独を感じているのだろうか。
船だけでなく、新しい仲間も探していると話したらウソップが船長になってやってもいいと申し出たので丁重にお断りしておいた。
「じゃ、じゃあおれのウソップ海賊団に入れてやってもいいぜ!」
「お願いします」
「なにーっ!? 妖夢!?」
「本当かっ!?」
「嘘です」
「ウソかよっ!!」
その後、なにやら時計を見て時間だと言ってウソップはお店から出て行った。
ちなみにお金は置いて行っていない。おい。
「それにしてもおもしれェ奴だったな!」
「はい、立派なツッコミでした。あのツッコミはナミさんにも引けを取りませんよ」
「そんなとこで張り合ってないわよ」
食後のお茶を楽しみつつ雑談していると。
「ウソップ海賊団参上!!」
ウソップと入れ違いに、さっき海岸で会った三人の子供が店に入ってきた。
「なにあれ……」
「さー、何だろうな……」
子供たちはおもちゃの剣を構えながら店の中をキョロキョロと見回して。
「おい、キャプテンがいないぞ……」
「おい海賊たち!! われらが船長キャプテンウソップをどこへやった!!」
怯える子供たちを見てゾロはニヤリと笑みを浮かべる。
「お前らのキャプテンならな、さっき……食っちまった」
「鼻のあたりがコリコリしててよかったですね」
おれも悪ノリした。
「ぎいやあああああ鬼ババア~~~っ!!!」
「なんで私を見てんのよ!!!」
子供たちはなぜかナミの方を見て悲鳴をあげながらその場にぶっ倒れた。
「あはは、鬼ババッ!?」
笑ったらナミにぶっ叩かれた。
ちくしょう、親父にもぶたれたことないのに!
子供たちから話を聞くと、どうやらウソップはカヤさんを元気づけるために屋敷へ通っているらしい。
ウソの冒険譚を聞かせて笑顔にさせているのだとか。
「じゃあもうお嬢様って元気なのか?」
「うん、キャプテンのおかげで!」
カヤさんが元気だと知るとルフィはやっぱり屋敷に船を貰いに行こうと言い出した。
ナミが止めようとしているがこの短い付き合いでこの状態のルフィに何を言っても徒労に終わるとおれは学習した。
ルフィはこの海で一番自由なやつなのだ。
「こんにちは――っ、船くださーい。さあ入ろう」
子供たちに案内されて、おれたちはカヤさんの屋敷までやって来た。
屋敷の周囲は全て高い塀に覆われ、塀の上に更に鉄の柵まで設けてある。
前世でもこんな立派な屋敷は見たことない。
まあそんな塀のセキュリティも我らがルフィさんの前ではその役割を放棄するしかないのだが。
堂々と不法侵入したルフィについていくと庭の方で楽しそうに談笑する男女の声がした。
見に行くとおしとやかそうな美少女が窓から身を乗り出して、笑いながらウソップの話を聞いている。
彼女がカヤさんだろうか。
ルフィがカヤさんに船がほしいと話そうとした瞬間。
「君達、そこで何してる!! ……困るね勝手に屋敷に入って貰っては!!」
現れたのは黒い丸メガネをかけた燕尾服の男、この屋敷の執事で名をクラハドールというらしい。
ルフィがクラハドールに船の話をするとダメだとばっさりと切り捨てられる。
まぁそうだよね。
断られてずーんと落ち込むルフィを横目に、ウソップを見つけたクラハドールはウソップと口論を始める。
ウス汚い海賊の息子がウチのお嬢様に近づくのはやめろ、と。
家族を捨てて村を飛び出した財宝狂いのバカ親父とウソップの父親への悪口を続けるクラハドール。
挑発に乗ったウソップはクラハドールを殴りつける。
誇りである父を貶され憤慨するウソップ。
殴られて尚、挑発を止めないクラハドールにウソップが掴みかかる。
再び殴りかかろうとしたウソップだったが、カヤさんが止めたことで踏みとどまった。
もう二度とここへは来ない、そう言い残してウソップは屋敷から去って行った。
△▽△▽
カヤさんの屋敷から一度撤退することになったおれたちだったが……。
なぜかおれはルフィを抱えて村の中を飛び回っていった。
「あ! いた! 降ろしてくれ妖夢」
海岸が見えてきた辺りで何かを発見したらしいルフィに言われ高度を下げる。
見ると崖の上でウソップがじっと水平線を眺めていた。
なんでも、ルフィは子供の頃にウソップの父であるヤソップに会ったことがあるらしい。
赤髪のシャンクスの船に乗って旅していると聞かされたウソップは目玉をガボーンと飛び出させながら驚いていた。
ヤソップの話で盛り上がる二人。
ヤソップを知らないおれは話に入れずそぉっと気配を消しておく。
そう、それはまるで幽霊のように。いや実際に半分はそうなんだけども。
「親父をおれは誇りに思っている! なのにあの執事は俺の親父をバカにした……! おれの誇りをふみにじった!」
憤るウソップにルフィがあいつはおれも嫌いだと同調する。
「でも、本当にもうカヤさんの所へは行かないのですか?」
たしかに、あのクラハドールの言い分には関係のないおれでも少しムカついた。
だがそれでカヤさんともう会わないというのも少々極端ではないだろうか。
彼女はウソップがいたからこそ元気になれたのに、これでさよならなんて悲しすぎるだろう。
「……そりゃ、あの執事が頭でも下げてきやがったらいってやってもいいけどよ」
「あの執事がか?」
そう言ってルフィが海岸を指さす。
「そうそうあの執事あの執事……あの執事がなんでここにいんだァ!?」
そこに居たのはクラハドールとハート型のサングラスをした縞々顎の男。
崖の上にいるおれたちに気づかず会話を始めたその二人は。
「それで……計画の準備はできてるんだろうな」
「ああ、いつでもイケるぜ。お嬢様暗殺計画」
そんな物騒なことを口にした。