覇気だけが全てを凌駕する世界で「斬れぬものなど、あんまり無い!」 作:麦らァのみょん
早くルフィたちを呼びに行きたいところだが、ここでおれが離れたらその間に村に入られてしまうかもしれない。
いや、あれだけ大声で騒いでるんだ。ルフィたちならきっと気づいてこっちに来るだろう。
ならばおれが今すべきことはここで少しでも敵の数を減らしておくことだろう。
「ぎゃーっはっはっは!!」
「暴れてやるぜ!」
海賊たちが、おそらく下っ端だろう、坂道を駆け上がってくる。
「悪いけど、ここから先は通行止めです」
「うわっ!?」
「ぐお」
登ってきた下っ端たちを楼観剣で斬り伏せる。
「てめェは海岸の……! 空から来たってことは、噂の悪魔の実の能力者か……!?」
いきなり現れたおれを見てジャンゴが驚きを口にする。
残念、おれは能力者じゃないんだ。
「半分人じゃないので、私」
下っ端が斧を構え、おれの頭目掛けて振り下ろしてくる。
楼観剣で攻撃を弾いて素早く楼観剣で斬りつける。
あの孤島でゾロと勝負稽古したおかげか、バギー一味と戦った時よりも上手く刀を扱えているような気がする。
もう一人、背後から仕掛けてきた敵を倒そうとするも、おれが攻撃するまえに敵が後ろから狙撃され転がっていく。
「おれの名はキャプテン・ウソップ! お前ら、死にたくなきゃさっさと引き返せ!!」
どうやらウソップが駆けつけてくれたようだ。
「忠告だ! 今の内に引き返さねェと一億人のおれの部下がお前らをつぶすことになる!!」
「何ィ!? 一億人!?」
下っ端たちはガキ以下のウソだと呆れているがジャンゴはガーン! と驚いている。
信じやすすぎだろ、それでいいのか催眠術師。
「ジャンゴ船長! あの妙な船で宝が見つかりました! 五百万ベリーはありそうです!」
「何ィ!?」
あっ。
どうやらナミの船から宝を見つけてきたらしい。
「それは渡しません」
「ぎゃっ!」
弾幕を放ち宝を運ぼうとした下っ端を撃つ。
それを盗られたらおれがナミに怒られるんだ。
「それはおれの宝だ! だがやる!!」
新しいウソを思いついたのか、ウソップが声をあげる。
「この村を諦めれば、それに免じて宝をくれてやろう!」
なるほど、確かにそれなら穏便にことが運ぶ。
とはならないよ!?
あれ盗られたらおれがナミに怒られるんだってば!
「バカなこと言ってんじゃないわよ!」
さっそうと登場したナミがガンっとウソップをぶっ叩く。
うわあ、痛そう……。
「その宝は私のよ! 1ベリーたりともあげないわ。妖夢、今すぐ取り返して!」
「あいあいさー」
宝を取り戻すために下っ端たちを蹴散らして前へ進んでいく。
気分はまるで無双ゲー。
「ぐああっ!」
「あの女つえェぞ……!」
「ちっ、情けねェぞ野郎ども! あんなガキ相手に」
そう言うとジャンゴは懐からチャクラムを取り出した。
「こんな所でグズグズやってるヒマはねェ。ワン・ツー・ジャンゴでお前らは強くなる。傷は完全回復し、だんだんだんだん強くなる!」
下っ端たちはじっと輪を見つめると。
「ワーン! ツー! ジャンゴ!!」
瞬間、フラフラだった下っ端たちが雄叫びをあげて立ち上がる。
ぬんっと拳を振り下ろすとその先にあった崖が抉られ崩れていく。
「催眠術でパワーアップってことですか」
「その通り! さァ行けお前ら!」
強化された下っ端たちが叫びながら向かってくる。
理性を失っているのか、中には武器を捨て素手で向かってくるやつも。
「面倒なので一気に片付けます」
空へと浮かび上がり、海岸に向けて刀を振るう。
すると剣閃から多数の弾幕が放たれる。
強化されてことで防御力も上がっているのだろうが、空からの一方的な攻撃に下っ端たちは為す術もなく再び倒れていく。
こういう時、原作の妖夢のスペルカードの技が使えればもっと楽なのだろうが、まだおれはそれを使えない。
できるもので我慢しよう。
「うおおお!!」
撃ち漏らした敵がナミとウソップに襲い掛かる。
しかし。
「「オラァ!!」」
ようやくやって来たルフィとゾロがそれを阻止する。
「おれにも戦わせろっ」
ルフィが坂を下っていく。
一度ルフィに任せて、おれは弾幕を止めてゾロの隣に着地する。
「遅かったですね、何してたんですか?」
「ナミに足蹴にされてあの油まみれの坂に落とされた」
「それは……その、災難でしたね」
「全くだ」
やっぱ駄目だったんじゃねぇか、あの作戦。
「うぎゃあああああああ!?」
「ん?」
なにやら物凄い悲鳴が聞こえ坂の下を見るとどういうわけ、物凄い形相のルフィに下っ端たちが追いかけ回されていた。
「なんです? あれ」
「あいつがまた催眠術で残りの下っ端を強化したのだけど……ルフィもかかっちゃったみたい」
えぇ……。
昨日の眠くなる催眠といい、ルフィはこういうのにかかりやすい体質なのだろうか。
ルフィはクロネコ海賊団の海賊船の船首をもぎ取ると、それで敵を仕留めようとする。
「ワン・ツー・ジャンゴで眠くなれ! ワーン・ツーッ! ジャンゴ!」
ギリギリでジャンゴが催眠をかけてルフィを眠らせる。
しかし、ルフィが眠ったことで支えを失った船首が倒れルフィごと下っ端たちを下敷きにする。
「……ほとんど全滅しましたね」
これはもうおれたちの勝ちか。
そう思ったのも束の間、新たな刺客がおれたちの前に立ち塞がる。
「下りて来いっ! ニャーバン・ブラザーズ!」
ジャンゴが叫ぶと二人分の人影が大きく跳躍し船から下りて来た。
現れたのは猫耳とかぎ爪をつけた細い男と太った男のでこぼこコンビ。
オレンジの町でライオンコスプレのモージと戦ったが、今度は猫コスプレか。
この世界は海賊してるおっさんの間で動物のコスプレが流行っているのか?
「ブチ、シャム。おれ達はこの坂を通らなきゃならねェんだが、見ての通り邪魔がいる。あれを消せ!」
ニャーバン・ブラザーズに命令を下すジャンゴだったが、当の二人はうろたえながらぶんぶんと首を横に振る。
「そ…そんなムリっすよォ、ぼく達には。なァ、ブチ」
「ああ、あいつ強そうだぜまじで」
「ごたごたぬかすな! さっさと行かねェか!」
ジャンゴの剣幕に押され、どたどたと走りながらシャムが近づいてくる。
「おいお前ら覚悟しろ―っ! このカギヅメでひっかくぞーっ!」
あまりのみっともなさにゾロが困惑している。
そりゃ、猫耳つけたおっさんがあんなばたばた脅してきたら困惑するなと言う方が難しい。
「お前! 止まらねェと斬るぞ!」
「斬れるもんならな」
忠告したゾロだったが、その瞬間にシャムの顔色が変わる。
ギラリと目を光らせるとすばやくかぎ爪をゾロに振り下ろす。
「こいつ……!?」
「貴様おれを見くびってたろ、今……!!」
すんでのところで攻撃を受け止めたゾロだったが、腰に携えていた刀をシャムに奪われてしまう。
「てめェらもちったァやるようだが、クロネコ海賊団ニャーバン・ブラザーズのシャムを甘くみねェこった……」
「猫かぶりに、ネコババってことですか」
「そういうこった。だが、戦うにゃあこの荷物は邪魔だなこりゃ」
そう言うとシャムはゾロから奪った刀を無造作に放り投げる。
自身の刀を雑に扱われたゾロは一瞬で距離を詰めるとシャムの横腹を斬り裂く。
そのまま刀を拾おうと駆けるゾロだったがシャムに捕まれ動きを止められる。
「残念おれは猫背なのさ」
「あいつ……腹はスカスカだったのか!」
オーバーサイズの服を着ることでシルエットを隠してゾロの攻撃を躱していたのか。
「やれブチ、出番だ!!」
「がってんシャム!」
シャムがゾロを捕らえたまま地面に押し付け身動きを取れなくした。
動けないゾロにとどめを刺そうとブチが天高く飛び上がる。
「猫殺っ!! キャット・ザ……!」
「させません」
「ぐうっ!」
ゾロを踏みつけようとしたブチに接近して斬りつけながら弾丸を打ち込んで攻撃を阻止する。
「悪ィ、助かった」
「ボケッとしてんじゃねェ! ネコ柳大行進!!」
ニャーバン・ブラザーズの二人が並んで前進しながら両手の爪を繰り返し振って攻撃してくる。
ゾロの前に出て代わりにおれが攻撃を受けていく。
「ゾロさん! 私が抑えているうちに刀を!」
「ああ!」
ゾロが刀を回収する。
刀の前にはジャンゴがいたが一刀流でいなして戻って来る。
「シャアアアーッ! 無駄だ、刀三本使っても実力は同じだ!」
「わかってねェな。刀三本使うことと三刀流じゃ意味が違う」
標的をおれから変えてニャーバン・ブラザーズがゾロに襲い掛かる。
それに対してゾロは両手に持った刀を背負うように構えて迎え撃つ。
「シャアアアーッ!」
「虎……狩り!!」
ニャーバン・ブラザーズが攻撃するよりも早く、ゾロは三本の刀を振り下ろす。
斬られたシャムとブチは大きく吹き飛びながら一撃で始末された。
「ニャ……ニャーバン・ブラザーズがやられたァ~!?」
これで残る敵はジャンゴだけかと思われたその瞬間。
「ッ!?」
突如、五本の刃がおれに迫る。
不意の攻撃だったがギリギリ楼観剣で受け止める。
「もうとうに夜は明けきってるのに、なかなか計画が進まねェと思ったら……何だこのザマはァ!!」
辺りを震わせるような凄まじい怒号をあげて現れたのは両の手に五本の刃がついた武器を持ったキャプテン・クロだった。