青の記録と幻想の空間使い   作:弾幕トレーナー

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第二話 白黒のつかない魂

 

 幽霊と一つ屋根の下で暮らす。

 

 言葉だけなら、多少は風情があるかもしれない。

 

 実際に始めてみると、最初に必要だったのは規則を決めることだった。

 

「さっきも言ったが、壁を抜けて部屋に入るのは禁止」

 

「はい」

 

「返事がないからといって、顔だけ突っ込んで様子を見るのも駄目だ」

 

「はい」

 

「俺が寝ている時に、枕元へ立つのもダメだからな」

 

「そんなことしませんよ」

 

「今、少し考えただろ」

 

「…………考えてません」

 

「間があったぞ?」

 

 夕食を終えた卓の向かいで、梔子が頬を膨らませる。

 

 と言っても、食事をしたのは俺だけだ。梔子の前にも湯呑みを置いてあるが、相変わらず持ち上げることはできない。湯気を眺め、時折そこへ顔を近づけては、何も感じないらしく残念そうに戻る。それを何度か繰り返していた。

 

「界人さんの中で、私の信用が低すぎませんか?」

 

「会って半日も経ってない相手に、どれだけ信用されてるつもりなんだ」

 

「元生徒会長ですよ?」

 

「それは身分であって、信用の証明じゃない」

 

「ヒィン……」

 

 そもそも、自分で『元』と言うたびに不安そうな顔をする人間へ、肩書を根拠にしろと言われても困る。

 

「俺から離れると、また身体が薄くなる可能性がある。今夜は隣の部屋を使え。襖は開けておく」

 

「お布団もですか?」

 

「必要かどうかは、寝てみれば分かるだろ」

 

「幽霊になって初めての夜ですから、私もよく分からなくて」

 

「初めての夜に詳しい幽霊がいたら、それはそれで怖い」

 

 卓上を片づけ、押し入れから客用の布団を出す。

 

 四年間住んでいても、客用の寝具を使うことは滅多にない。泊まるような知り合いは、大抵の場合、布団を必要としないか、勝手に寝床を用意するか、そもそも帰る気がないかのどれかだった。

 

 隣室へ布団を敷いている間も、梔子は興味深そうについてくる。

 

「そのお布団、ふかふかですね」

 

「干したばかりだからな」

 

「寝てみてもいいですか?」

 

「いいぞ、そのために敷いてる」

 

「では、失礼して」

 

 梔子は布団の前で膝を折り、両手をつく真似をした。そのまま慎重に横になる。

 

 身体が敷布団をすり抜け、畳へ半分ほど沈んだ。

 

「……界人さん」

 

「なんだ」

 

「世界が低いです」

 

「見れば分かる」

 

 浮かび上がってきた梔子は、悲しそうに布団を見下ろした。

 

「ふかふかそうだったのに」

 

「意味はないだろうが見て楽しむしかないな」

 

「猫ちゃんの時も聞きました、それ」

 

「便利な言葉だろ」

 

「便利に使わないでください」

 

 今のままでは、布団も枕も意味をなさない。霊体を受け止められる術具を作れば別だが、必要になると思っていなかったので手持ちはない。

 

 梔子は畳から少し浮いた高さで、布団に横たわる姿勢を取った。

 

「あっでもこれはこれで、寝られそうです」

 

「前向きだな」

 

「できないことを数えても仕方ありませんから」

 

 白玉楼でも似たようなことを言っていた。

 

 本心なのだろう。だが、そう言い聞かせることに慣れているようにも聞こえた。

 

「眠くなければ、無理に寝なくていい。ただし、家の外へは出るなよ」

 

「分かりました」

 

「本当に?」

 

「今度こそ本当です」

 

「今度こそ、ね」

 

「言葉の綾です!」

 

 襖を半分開けたまま、自分の部屋へ戻る。

 

 行灯の火を落とす直前、隣室から声が飛んできた。

 

「あの、界人さん」

 

「今度はなんだ」

 

「少し、お話ししてもいいですか?」

 

 断れば静かにはなる。

 

 その代わり、知らない世界から来た幽霊を、眠る必要すらあるか分からないまま暗い部屋へ放っておくことになる。

 

 俺は消しかけた行灯を戻し、卓の前へ座り直した。

 

「長くならないならな」

 

「はい!」

 

 返事だけで長くなりそうな予感がした。

 

     ◇

 

「つまり、キヴォトスというのは、学園が集まってできた巨大な都市なのか」

 

「はい。すっごく広いんですよ。学園ごとに自治区があって、それぞれ雰囲気も全然違うんです」

 

 卓へ紙と筆記具を広げ、梔子の話を聞く。

 

 質問を一つ投げるたび、答えが三つになって返ってくる。しかも二つ目の途中で別の話を思い出し、三つ目を話している間に最初の質問を忘れる。

 

 よく喋るとは聞いていた。

 

 妖夢の説明は、随分と控えめだったらしい。

 

「学校が行政まで担っている?」

 

「難しいことは置いておいて、大体そんな感じです」

 

「今の説明で一番置いておいちゃ駄目なところだろ」

 

「でも、普通のことなので」

 

「お前たちにとってはな」

 

 キヴォトス。無数の学園と自治区から成り立つ、巨大な学園都市。

 

 梔子の説明を信じるなら、そこでは生徒が銃を持ち歩き、学園ごとの組織が警察や行政に近い仕事まで行っている。

 

 最初は何かの比喩かと思った。

 

 違った。

 

「確認するが、その銃は玩具じゃないんだな?」

 

「本物ですよ」

 

「生徒同士で撃つのか?」

 

「喧嘩になったら、たまに」

 

「たまに」

 

「よく、かもしれません」

 

「言い直して悪化したぞ」

 

 梔子は笑って誤魔化した。

 

「でも、撃たれたくらいなら少し休めば治りますから」

 

「治らない」

 

「治りますよ?」

 

「普通の人間は治らない。場所によっては一発で死ぬ」

 

 梔子が目を瞬いた。

 

 どうやらキヴォトスの住人は、本当に銃弾を受けても致命傷にならないらしい。

 

 こちらの人間と、キヴォトスの生徒。その違いを一番分かりやすく示すものといえば――

 

「それは、あの頭の上の光と関係があるのか」

 

 梔子の頭上では、欠けた光の輪が弱々しく明滅している。

 

「ヘイローのことですか? たぶん、そうだと思います。みんなにありますから」

 

「みんな?」

 

「キヴォトスの生徒なら、普通に」

 

「俺にはない。幽々子にも、妖夢にもだ」

 

「……本当ですね」

 

「今気づいたのか」

 

 梔子が俺の頭上をまじまじと見つめる。

 

 右へ回り、左へ回り、最後には少し浮かび上がって真上から覗き込んできた。

 

「探しても生えないぞ」

 

「髪に隠れている可能性が」

 

「輪が隠れるほど髪は長くない」

 

「ですよねぇ」

 

 残念そうに戻ってくる。

 

「つまり、キヴォトスへ行ったとして、俺が銃で撃たれたら普通に死ぬ」

 

「えっ」

 

「驚くのはこっちだ」

 

「い、いえ、大丈夫です。撃たれなければいいんですから」

 

「画期的な対策だな。誰も思いつかなかったに違いない。流石だな元生徒会長」

 

「ヒィン…褒めながら怖い顔しないでください。」

 

 褒めていないからだよ。

 

 少なくとも、向こうへ行くことになった場合、防御の準備なしで街を歩くのは危険らしい。幻想郷で弾幕に慣れているからといって、鉛玉を身体で受け止められるようになるわけではない。

 

「それで、お前のいたアビドスという学校は?」

 

「とってもいい学校です!」

 

 今まで以上に力強い返事だった。

 

「昔は自然が豊かで、みんな優しくて、お祭りもたくさんあって——」

 

「昔は?」

 

「……少し、砂が増えてしまって」

 

 少し、という言葉の前に間があった。

 

「どのくらい」

 

「自治区の、ほとんど全部です」

 

「少しの使い方を間違えてないか?」

 

「でも、まだ学校はあります。諦めなければ、いつかきっと元通りにできますから」

 

 根拠を尋ねようとして、やめた。

 

 希望を持つことと、実現するための手段があることは別だ。だが、会って一日も経っていない俺が、彼女の故郷について口を挟む場面でもない。

 

「大切な後輩というのも、そこにいるのか」

 

「はい。小鳥遊ホシノちゃんです」

 

 梔子の声が柔らかくなる。

 

「ホシノは名前の方か」

 

「そうです。一年生で、強くて、すごく頭がよくて、しっかりしていて。私がうっかりしても、いつも助けてくれたんですよ」

 

「生徒会長が後輩に助けられてばかりでいいのか」

 

「私もちゃんと、先輩らしいところはありましたよ」

 

「例えば?」

 

「ええと……」

 

 梔子は考え込んだ。

 

「すぐ出てこないのか」

 

「たくさんありすぎて、どれにしようか迷っているんです」

 

「そういうことにしておく」

 

「本当ですよ?」

 

 抗議する声には、先ほどまでの重さがなかった。

 

 小鳥遊という後輩の話をする時だけは、梔子の表情が自然に緩む。

 

「会えたら、何を話すつもりだ」

 

「それは——」

 

 答えが途切れた。

 

 梔子は膝の上で両手を重ねる。触れ合わないはずの指が、今は彼女自身の輪郭の中で形を保っていた。

 

「ちゃんと、謝らないと」

 

「何を」

 

「……まだ、うまく思い出せません」

 

 それ以上は追及しなかった。

 

 何を話したいかではなく、何を話さなければならないかと考えている。

 

 きっと、帰りたい理由は一つではない。

 

「話は分かった。今夜はもう休め」

 

「あの、界人さん」

 

「まだあるのか」

 

「幻想郷は、どんなところなんですか?」

 

 今度はこちらの番らしい。

 

「説明が難しいが、まあ、人外が多くて割と物騒な場所だな」

 

「人外……妖夢ちゃんが刀を持っていましたけど、あれが必要なくらい危険なんですか? それに、何か不思議な力も使っていたような……」

 

 ただ順応が早いのかと思っていたが、違ったらしい。

 

 自分が死んだこと。見知らぬ冥界。姿の見える亡霊たち。俺の空間の門。

 

 一度に起こりすぎて、驚く順番が回ってこなかっただけだ。

 

「人外には、もう会っただろう。幽々子は亡霊で、妖夢は半人半霊だ」

 

「半人半霊?」

 

「半分が人間で、半分が幽霊。妖夢の隣に白いのが浮いてただろ」

 

「あの、白いの! あれも妖夢ちゃんなんですか!?」

 

「部分的にはそうだな。あれは半霊で、妖夢の半身だ」

 

「てっきり、かわいい雲みたいな生き物なのかと……」

 

「本人の前では言うなよ」

 

「幽々子さんは、本当に亡霊なんですか?」

 

「本人もそう言ってただろ」

 

「皆さんがあまりにも普通にしていたので、深く考える暇がなくて」

 

「お前も幽霊だからな。向こうからすれば、同類が一人増えただけだ」

 

「私の世界では、幽霊と普通にお茶を飲んだりしません」

 

「こっちでも、触れられない幽霊に何度も饅頭を勧めるのは幽々子くらいだ」

 

 梔子は白玉楼での光景を思い出したのか、妙に納得した顔になった。幽々子を亡霊の基準にされても困る。

 

「では、界人さんが景色を割って道を作ったのも、幽々子さんたちが使っていたものと同じ、不思議な力なんですか?あれっ、ということは界人さんも人じゃない?」

 

「同じとは限らない。後俺は人間で、あれは生まれつきの能力だ。梔子へ触れられるようにしたのは、後から学んだ魔法になる」

 

「能力と、魔法……?」

 

「幻想郷には、俺のいた現代の世界でいう科学とは別の理屈で動くものが珍しくない。生まれ持った能力もあれば、学んで扱う魔法も、妖怪が使う妖術もある。全部同じものではないが、今はそういう力が本当にあると思っておけ」

 

「魔法が、本当にあるんですか!?」

 

 金色の目が分かりやすく輝く。

 

「すごいです! 本当に物語やゲームみたいですね!」

 

「自分が幽霊になった人間に言われると、反応に困るな」

 

「それはそれ、これはこれです」

 

 怖がっているというより、未知への好奇心が勝ったらしい。身を乗り出した梔子を手で押し戻す。

 

「俺も魔法を扱うからな。魔道具も幾つか置いてある。危険なものは置いていないと思うが、面白そうだからと勝手に触るなよ」

 

「触りたくても触れません」

 

「それもそうか」

 

「うぅ~この身体って不便です」

 

「あとはそうだな。安全のためにも、妖怪のことは知っておいた方がいい」

 

 浮き立つ梔子へ釘を刺しておく。

 

「幻想郷は、人間より妖怪や人外の方が多い。話の通じるやつもいれば、こちらを食い物としか見ないやつもいる。幽々子と妖夢はかなり友好的な方だ。あの二人を基準に、誰へでも近づくなよ」

 

「見た目で分かるものなんですか?」

 

「分からないと思っておけ。人間と変わらない姿で、腹が減ったからと普通に噛みついてくるやつもいる」

 

「噛みつくって、人を食べるんですか?」

 

「食べる。理性的なやつなら我慢もするが、妖怪は人を食うものだと思っていた方が安全だ」

 

 目を輝かせていた梔子の顔が、一転して強張った。

 

「大丈夫なんですか、界人さん」

 

「梔子は肉体がないから、普通の意味で食われることはない。魂を狙うやつはいるが、俺から離れなければ大抵はどうにかなる。今のところは」

 

「ヒィン……不安になる答え方をしないでくださいよぉ」

 

「銃で撃ち合う世界の住人には言われたくない」

 

「もっと明るい話をしてください。今夜、眠れなくなりそうです」

 

「幽霊が妖怪を怖がって眠れないのか」

 

「幽霊になったばかりなので!」

 

 妙な理屈で押し切られ、仕方なく話題を変えた。

 

 自分を最強だと言い張る氷精。借りた本をなかなか返さない魔法使い。宴会となれば、どこからともなく集まってくる人間と妖怪たち。

 

 明るい話を求められたはずが、話しているうちに知人の奇行を並べるだけになった。それでも梔子は、怖がっていた時より楽しそうに笑っていた。

 

 結局、短く済ませるはずの話は、夜が深くなるまで続いた。

 

     ◇

 

 翌朝、目を覚ますと、開けておいた襖の向こうに梔子が倒れていた。

 

「おい」

 

 返事がない。

 

 布団を蹴飛ばし、隣室へ入る。

 

 梔子は畳から少し浮いたまま、横向きに身体を丸めていた。頭上の光は消えかけ、輪郭も昨夜より薄い。

 

 意識を空間へ広げる。

 

 魂をつなぎ留めている糸は切れていない。だが、俺を中心に作られている場が、眠っている間だけ弱まっていた。

 

「梔子、起きろ」

 

 肩へ手を伸ばす。

 

 昨夜と違い、水の術を使わなくても指先が輪郭に触れた。その事実に少し驚く。

 

 昨夜、俺が仮に与えた座標が、俺を基点として馴染み始めているらしい。触れられるようになったのは前進だが、今は喜んでいる場合ではない。

 

 考察は後だ。

 

 軽く揺すると、梔子の瞼が開いた。

 

「……おはようございます」

 

「随分と呑気だな」

 

「私、眠れたみたいです」

 

「見れば分かる。身体に異常は?」

 

「少し眠いです」

 

「寝起きの感想も結構だが、消えかけてたんだぞ」

 

「えっ」

 

 昨日と同じ反応だった。

 

 俺が起きて空間の流れを整えると、梔子の輪郭も少しずつ濃くなっていく。

 

「俺の意識と連動してる可能性がある。俺が眠ると、お前も活動を保てないらしい」

 

「では、界人さんが夜更かしをすれば、私はずっと起きていられるんでしょうか」

 

「かもしれないが、俺の睡眠時間を削るつもりはないぞ」

 

「冗談です」

 

 少なくとも、俺が寝ている間に勝手に出歩かれる心配はなさそうだ。

 

 安心していいのかは分からない。

 

 考えることは多いが、ひとまず後回しだ。

 

 朝餉の支度を始めると、梔子はまた卓の向かいへ座った。

 

 飯を炊き、味噌汁を温め、漬物を並べる。その一つ一つを、物珍しそうに目で追っている。

 

「キヴォトスには和食がないのか?」

 

「ありますよ。でも、界人さんがお料理できるのが意外で」

 

「一人で暮らしてれば、嫌でも覚える」

 

「てっきり、誰かに作ってもらっているのかと」

 

「誰が毎朝うちまで作りに来るんだよ」

 

「昨夜話していた巫女さんとか」

 

「あいつは作ってもらう側だ」

 

 むしろ、こちらが茶や食べ物を持っていくことの方が多い。

 

 味噌汁を椀へよそう。湯気と香りが立つと、梔子が無意識に身を乗り出した。

 

 けれど、すぐに元の位置へ戻る。

 

「気にせず食べてください」

 

「見られてると食べづらいんだが」

 

「では、見ないようにします」

 

 両手で目を覆う。

 

 指が少し透けているので、向こう側から金色の瞳が見えていた。

 

「隠せてないぞ」

 

「幽霊って不便ですね」

 

「今さらだな」

 

 残念そうな、そして物欲しそうな表情を見ていると、ふと思いつく。

 

 箸を置き、食器棚からもう一つ湯呑みを取り出す。

 

 肉体がない以上、食べ物そのものを口にするのは無理だ。幽々子と違って存在が薄いので、なおさらだろう。

 

 だが、味や香りまで完全に物質だけのものとは限らない。

 

 供え物を受け取る霊がいるなら、要るのは物理的な料理ではなく、向こう側へ届く形だ。

 

「少し待ってろ」

 

「はい?」

 

 新しく茶を淹れ、湯呑みを二つ並べる。

 

「何をするんですか?」

 

「昨日話した魔法だ。うまくいくかは分からないけどな」

 

「魔法!」

 

 さっきまで味噌汁を見つめていた目が、一瞬でこちらへ向いた。

 

 一つは普通の茶。もう一つには水の精を寄せ、立ち上る湯気を逃がさないよう薄い魔力の膜で包む。

 

 湯呑みから水滴が浮かび上がるたび、梔子の顔も一緒に持ち上がっていく。

 

「浮いてます。お茶が浮いてますよ、界人さん」

 

「見れば分かる。少し集中してるから静かにしてくれ」

 

「はい」

 

 返事は小さかったが、目の輝きは少しも収まっていなかった。

 

 香り、熱、色。茶を茶として感じさせる要素を水へ写し取り、梔子の魂が触れている座標へ重ねる。

 

 朝からするには、少し細かすぎる作業だった。

 

「手を出せ」

 

 梔子が両手を差し出す。

 

 湯呑みそのものではなく、その表面へ重ねた半透明の器を持たせる。水で形を作り、月の魔力で霊体側へ寄せた、茶の影のようなものだ。

 

 梔子の指が、今度はすり抜けずに器を包んだ。

 

「持てます……!」

 

「まだ飲むな。うまくいってるか分からない」

 

「飲んで確かめないと分かりませんよ?」

 

「それもそうだが——」

 

 止める前に、梔子は器へ口をつけた。

 

 一口。

 

 金色の目が見開かれる。

 

「味がします!」

 

「本当か」

 

「少し薄くて、ちょっと苦くて、でもちゃんとお茶です」

 

「茶は元から苦い」

 

「美味しいです。お代わりをお願いします!」

 

 大事そうに両手で器を抱え、もう一口飲む。半透明の器を光へ透かしては、内側を覗き込み、また一口。魔法そのものへの興味と、久しぶりの味のどちらを先に喜べばいいのか迷っているようだった。

 

 中身は減らない。飲食というより、茶から写した感覚を魂へ触れさせているだけだ。それでも梔子は、随分久しぶりに温かいものを口にしたような顔をしていた。

 

「界人さん、すごい魔法使いなんですね」

 

「悪い気はしないが、これくらいで褒められてもな。師匠に聞かれたら、俺が恥をかきそうだ」

 

「お師匠さんがいるんですか?」

 

「いる。性格に少し難はあるが、魔法の腕と知識は確かだ」

 

「きっと凄く頭のいい人なんでしょうね。ではその方なら、私のことも分かるんでしょうか?」

 

「どうだろうな」

 

 期待させすぎないように答える。

 

 だが、俺一人で分からないものを調べるなら、最初に頼る相手は決まっていた。

 

「そうだな。映姫さんの話を聞いてからだ。それでも足りなければ、会いに行こう」

 

「はい」

 

 梔子は素直に頷き、茶の影をもう一口味わった。

 

「あの、お味噌汁やご飯も同じようにできませんか?」

 

「もう次を要求するのか」

 

「味が分かると思ったら、急に食べたくなってしまって……」

 

 期待に満ちた目を向けられ、試しに味噌汁の影も作ってみる。液体は茶と同じ要領で形になったが、米や漬物はうまくいかなかった。味だけを写せても、粒や歯触りまで霊体へ伝えるには術が粗い。

 

「固形物は少し勝手が違う。明日までには形にするから、今日は茶と味噌汁で我慢しろ」

 

「十分です!」

 

 腹が満たされるわけでもないのに、梔子は味噌汁の影まで大事そうに味わった。

 

     ◇

 

 それから二日、梔子の状態を調べながら過ごした。

 

 俺から離れられるのは、およそ二十歩から三十歩。間に壁があっても問題はないが、強い結界を挟むと距離が近くても輪郭が揺らぐ。

 

 俺が眠れば梔子も眠り、俺自身が疲労すれば姿が薄くなる。反対に、意識して空間を固定すれば、多少離れても安定する。

 

 梔子本人の記憶も確かめた。

 

 名前。アビドス。生徒会の仕事。小鳥遊との日々。

 

 そこまでは、よく覚えている。

 

 だが、死の直前へ近づくほど記憶は曖昧になる。砂漠を歩いていた理由も、何を探していたのかも、思い出そうとすれば頭上の光が乱れた。

 

 無理に探るのはやめた。

 

 その間に、固形物の味と食感を霊体へ写す術も、どうにか形になった。

 

 実物を腹へ収めることはできない。それでも白米と漬物の感覚を初めて再現した時、梔子は見ているこちらが呆れるほど喜んだ。腹は満たせなくても、食卓に座る理由にはなったらしい。

 

 幸い、普段の生活に支障はない。

 

 支障がなさすぎて、俺が本を読んでいても、術式を組んでいても、梔子はよく喋った。

 

 アビドスの昔の祭り。生徒会でなくした書類。安すぎて買い込んだ怪しい商品。小鳥遊に叱られた回数。

 

 大半は調査に役立たない情報だった。

 

 ただ、静かすぎるよりは悪くないと思い始めている自分には、気づかないふりをした。

 

 二日目の夕方。

 

 正確に三度、玄関の戸が叩かれた。

 

 軽くもなく、強くもない。家の中まで確実に届く音だった。

 

「はい。今、開けます」

 

「界人さん?」

 

「姿勢を正せ。映姫さんだ」

 

「音だけで分かるんですか?」

 

「気配でも分かるが、あの人は、戸の叩き方まで真面目なんだよ」

 

 玄関を開ける。

 

 深緑の髪に、青と白を基調とした服。片手には悔悟の棒を携え、もう一方の手には布で包んだ円いものを抱えている。

 

 四季映姫・ヤマザナドゥ。

 

 幻想郷の死者を裁く閻魔は、仕事の時と変わらない姿で俺の家の前に立っていた。

 

 俺の背後から、梔子が恐る恐る顔を覗かせる。

 

「……かわいい子」

 

「同意はするが、閻魔様を見た第一声がそれか。それと、全部聞こえてる」

 

「えっ」

 

「ええ。聞こえています」

 

 映姫さんが淡々と答える。

 

 梔子は幽霊なのに、顔から血の気が引いたように見えた。

 

「ご、ごめんなさい。もっと恐ろしい姿の方を想像していて……」

 

「外見だけで相手の役割を決めつけるのは、あまり感心しませんね」

 

「はい……」

 

「ただし、褒め言葉として受け取っておきましょう」

 

 わずかに間を置いて付け加えられた言葉に、梔子が助かったような顔をする。

 

「映姫さん。お忙しいところ、わざわざ来ていただいてありがとうございます」

 

「構いません。事情を考えれば、梔子ユメを彼岸へ連れてくる方が危険でしょう」

 

 映姫さんの視線が、俺の後ろへ向く。

 

 梔子は言われた通りに背筋を伸ばしていた。伸ばしすぎて、肩に力が入っている。

 

「初めまして。梔子ユメ」

 

「は、初めまして。よろしくお願いします、閻魔様」

 

「緊張する必要はありません。今日はあなたを地獄へ送るために来たわけではない」

 

「今日は」

 

「梔子、その言葉を拾うな」

 

「ですが、気になりませんか?」

 

「普段の行いに自信を持て」

 

「界人さんまでそんなことを……」

 

 映姫さんは二人分のやり取りを静かに見てから、ほんの少しだけ表情を緩めた。

 

「会話をする余裕はあるようですね。まずは中へ入りましょう」

 

「どうぞ」

 

 上がってもらい、卓の前へ案内する。

 

 茶を出そうとすると、映姫さんは首を横へ振った。

 

「先に仕事を済ませます。話はその後に」

 

「分かりました」

 

「界人さんは、梔子ユメの隣へ。あなたが離れると魂が不安定になると聞いています」

 

 幽々子から、必要な情報は伝わっているらしい。

 

 俺と梔子が並んで座ると、映姫さんは持参した包みを開いた。

 

 現れたのは、一枚の鏡だった。

 

 縁に古い文様が刻まれている。磨かれた面へ部屋の景色は映らず、底の見えない白い光だけが満ちていた。

 

「浄玻璃の鏡です」

 

 梔子の表情が固まる。

 

「それって、悪いことが全部映る鏡でしょうか」

 

「善い行いも悪い行いも映ります。鏡が示すものを、都合よく片方だけと考えないことです」

 

「は、はい」

 

「そして、これは罪を探して楽しむための道具ではありません。死者がどのように生きたのか、本人の言い訳も他人の思い込みも除いて確かめるためのものです」

 

 映姫さんが鏡を梔子へ向ける。

 

「梔子ユメ。あなたは、自分が死者であると認識していますか?」

 

「はい。たぶん」

 

「たぶん、では白黒がつきません」

 

 厳しい声だったが、責める響きはなかった。

 

「他人からそう教えられたからではなく、自分でどう考えているかを答えなさい」

 

 梔子は自分の手を見る。

 

 物に触れられず、食事もできない手だ。

 

「私は……死んだんだと思います」

 

「死を受け入れていますか?」

 

「分かりません」

 

 今度は、曖昧さを隠さない答えだった。

 

「まだ帰りたいです。会いたい人がいます。謝りたいこともあります。だから、受け入れたとは言えません」

 

「よろしい」

 

 映姫さんが頷く。

 

「分からないことを、分かったふりで白く塗る必要はありません。自分の迷いを認めることも、正しく判断するためには必要です」

 

 鏡の白い面が揺れた。

 

 砂に埋もれかけた校舎。

 

 古びた机と、書類の山。

 

 淡い色の髪をした、小柄な少女の後ろ姿。

 

 次々と景色が浮かび、砂をかぶるように消えていく。

 

 梔子が息を呑んだ。

 

「ホシノちゃん……」

 

 鏡の中の少女が振り返ろうとする。

 

 その直前、映像が途切れた。

 

 白かった鏡面へ、黒い亀裂のようなものが走る。

 

 俺の隣で、梔子の輪郭も同時に歪んだ。

 

「界人さん」

 

「分かってます」

 

 梔子の周囲へ空間固定を展開する。

 

 鏡へ直接干渉しないよう、こちら側の座標だけを押さえる。梔子の姿は戻ったが、鏡の亀裂は消えない。

 

 映姫さんは黙ったまま、鏡を見つめていた。

 

「何か映っていますか?」

 

「いいえ」

 

「では、私は悪いことをしていないということでしょうか」

 

「逆です。善いとも悪いとも、判断するための記録がありません」

 

 梔子の顔から、期待が消える。

 

「浄玻璃の鏡は嘘を映しません。しかし、存在しない記録を作ることもできない。あなたの生は、こちらの帳簿にも、鏡が辿れる輪廻にも属していない」

 

 映姫さんは鏡を伏せ、次に悔悟の棒を梔子の前へ置いた。

 

 本来なら、そこへ生前の罪が刻まれる。

 

 何も現れない。

 

「やはり、裁けませんか」

 

 俺が尋ねると、映姫さんは頷いた。

 

「現時点では」

 

「それは、良いことなんでしょうか」

 

 梔子の問いに、映姫さんはすぐには答えなかった。

 

「裁かれないことと、罪がないことは違います。そして、行き先を定められない魂が自由であるとも限らない」

 

 伏せた鏡の上へ手を置く。

 

「あなたの肉体が死を迎えたことは間違いありません。ですが、魂と生前の世界とのつながりが切れていない。死者はこちらへ渡り、生者との縁を整理し、次の行き先を決めるものです。あなたは、そのどの段階にも入っていない」

 

 部屋の空気が静まる。

 

 外から、風に揺れる葉の音だけが聞こえた。

 

「梔子ユメ。あなたは、死者として完成していません」

 

 梔子は何も言わなかった。

 

 理解できなかったのではない。

 

 その言葉の先にあるものを、口にするのが怖いのだろう。

 

 代わりに俺が尋ねる。

 

「元の世界へ戻せば、どうなりますか」

 

「分かりません」

 

 閻魔の答えは、驚くほど明快だった。

 

「あちらの死後の理へ接続され、正式な死者として行き先を得るかもしれない。つながりを失い、その場で魂が散るかもしれない。あるいは——」

 

 映姫さんが梔子を見る。

 

「あなたの魂には、死を迎えてなお形を失わず、分かたれたものと再び結びつこうとする性質があります。由来までは分かりません。少なくとも、私たちの知る輪廻によるものではない」

 

「それが、元の世界へ戻ると……?」

 

「残っている縁が魂を生の側へ引き戻す可能性もあります」

 

「それは」

 

 梔子の声が震えた。

 

「私が、生き返るかもしれないということですか?」

 

「可能性はあります」

 

 梔子が自分の透けた両手を見下ろす。

 

「肉体がなくてもですか?」

 

「元の肉体が、そのまま戻るとは限りません。魂、肉体の痕跡、名、記憶、生者との縁。あなたを形作っていたものが元の世界に断片として残っているなら、それらが結び直され、魂を受け入れる器を得る余地はあります」

 

 映姫さんはそこで言葉を切った。

 

「ただし、それは起こり得る結果の一つにすぎません。可能性を保証と取り違えてはいけない。死を都合よく取り消せるとも、蘇ればすべてが元どおりになるとも考えないことです。死者が蘇るというのは、普通でも自然でもありません」

 

「はい」

 

「戻ったことで、今度こそ完全な死を迎えるかもしれない。それでも、あなたの魂が属する場所へ返すことには意味があります」

 

 これは死者を勝手に蘇らせる話ではない。

 

 道を外れた魂を、元いた世界へ返す話だ。

 

 その先が生なのか、死なのか。今は誰にも分からない。

 

「俺に、この子を送れと?」

 

「命令はできません」

 

 映姫さんは俺へ向き直った。

 

「私の権限は幻想郷と、その死者へ届く範囲に限られます。未知の世界へ渡る危険を、あなたへ強制することはできない」

 

「危険は」

 

「多いでしょう。座標の分からない世界へ道を開けば、あなたまで帰れなくなる可能性がある。移動中に結びつきが切れれば、梔子ユメの魂は世界の狭間で散る。そして、無事に到着しても、先ほど話したどの結果になるかは選べません」

 

「成功すれば生き返る、じゃない。成功して初めて、結果が分かるわけですか」

 

「その通りです」

 

 随分と割の悪い話だった。

 

 けれど、危険があるというだけなら、調べない理由にはならない。

 

「今すぐ行くつもりはありません」

 

「それがよいでしょう」

 

「まず、キヴォトスの座標を探す。移動中も梔子を維持する方法と、帰還路を確保する方法も必要です。全部揃わなければ門は開かない」

 

 隣の梔子がこちらを見る。

 

「界人さん」

 

「勘違いするな。行くと決めたんじゃない。行けるか調べるだけだ」

 

「はい」

 

「それと、生き返らせるとも約束しない」

 

「はい」

 

 返事をする梔子は、泣きそうにも、笑いそうにも見えた。

 

「それでも、ありがとうございます」

 

「まだ何もしてない」

 

「前にも聞きました」

 

「なら覚えておけ」

 

 映姫さんが小さく息を吐いた。

 

「二人とも、一つ忠告しておきます」

 

 背筋が自然と伸びる。

 

「希望を持つことは罪ではありません。しかし、希望だけを根拠に進めば、判断を誤ります。できないことから目を逸らさず、助けを求めることを躊躇わないように」

 

「分かっています」

 

「界人さんは、分かっていても一人で手を動かし始めるでしょう」

 

「……善処します」

 

「しない返事ですね」

 

 白玉楼で妖夢に言った言葉を、そのまま返された。

 

 映姫さんは鏡と悔悟の棒を包み直す。

 

「私から幽々子へ結果を伝えます。世界を越える方法については、私よりも適任がいるでしょう」

 

「心当たりはあります」

 

「ならば、まず相談しなさい。自分の能力だけで試そうとはしないことです」

 

「はい」

 

 今度は素直に答えた。

 

     ◇

 

 映姫さんを彼岸へ通じる道の近くまで門で送り、家へ戻る。

 

 卓の上には、梔子用に作った茶の影が残っていた。術が切れかけ、半透明の器がゆっくり形を失っている。

 

 梔子はその前に座ったまま、黙っていた。

 

「梔子」

 

「はい」

 

「期待するなとは言わない。けど、生き返れると思い込むな」

 

「分かっています」

 

「本当に?」

 

「……少しだけ、期待しています」

 

「それくらいなら仕方ない」

 

 梔子が顔を上げる。

 

「界人さんは、怖くないんですか?」

 

「何が」

 

「知らない世界へ行くことがです」

 

「まだ行くと決めてない」

 

「行けると分かったら?」

 

 答える前に考える。

 

 知らない場所へ踏み込む危険は、身をもって知っている。四年前、俺自身が何の準備もなく幻想郷へ迷い込み、生き残れたのは運がよかっただけだ。

 

 同じことを繰り返すつもりはない。

 

「帰ってこられる準備ができたら行く」

 

「帰ってこられなかったら?」

 

「その時は行かない」

 

 即答すると、梔子は目を丸くした。

 

「お前を送るために俺が死んだら、その後どうする。助けるなら、自分も帰ってくるところまで考える」

 

「……はい」

 

「だから、まずは調べる」

 

 卓の上へ手をかざし、収納空間を開く。

 

「うぇっ今度は何ですか、それ!」

 

 さっきまで沈んでいた声が、露骨に弾んだ。

 

「収納用の内界だ。物を入れてある」

 

 こちら側からは暗い裂け目にしか見えないはずだが、梔子は興味津々で縁をのぞき込んだ。

 

「空間の中に、別の部屋があるんですか?」

 

「似たようなものだ。頭を突っ込むなよ」

 

「突っ込めるんですか?」

 

「そこに食いつくな」

 

 朝に読んでいたものとは別の魔導書を取り出した。分厚い表紙には、空間転移と異界接続を示す術式が刻まれている。

 

 俺一人で読み解ける範囲には限界がある。

 

 なら、限界の先を知っている人間へ聞けばいい。

 

「明日、紅魔館へ行く」

 

「こうまかん?」

 

「前に話した師匠がいる場所だ。地下の大図書館で、キヴォトスへつながる手がかりを探す」

 

「私も一緒に行くんですよね?」

 

「離れられないんだから、そうなるな」

 

「どんな方ですか?」

 

「知識は豊富で、腕も立つ。体調と性格には難がある」

 

「界人さん、お師匠さんに対してちょっと失礼じゃありません?」

 

「会えば分かる」

 

 どこかで聞いた言葉を使うと、梔子は不思議そうに首を傾げた。

 

 死者を生者へ戻す道が見つかったわけではない。

 

 迷子の魂を、元の道へ戻せるかもしれないと分かっただけだ。

 

 その先にあるのが生か死か、今はまだ白黒つかない。

 

 それでも、何もなかった場所に、初めて進む方向だけは生まれていた。

 




今回登場した四季映姫・ヤマザナドゥの能力は「白黒はっきりつける程度の能力」。幻想郷の死者を裁く閻魔で、界人がきちんと「映姫さん」と呼ぶ相手でもあります。

作中で使った「浄玻璃の鏡」と「悔悟の棒」も、東方Projectに存在する映姫の道具です。浄玻璃の鏡は死者の過去の行いを映し、悔悟の棒には罪状が記され、その罪に応じて重さが変わります。

ただし、ユメの過去を鏡が最後まで映せないことや、悔悟の棒へ何も現れないこと、「死者として完成していない」という診断は、本作独自のクロスオーバー設定です。生と死のどちらへつながるのか、現時点では映姫にも断定できません。

また、界人がユメへ飲ませた「茶の影」は、水と月の魔法で味や香りだけを霊体側へ写したものです。仕組みとしては、お盆に供えた食べ物や香りを死者が受け取るという考え方に近いものになります。

腹を満たすことも、生きるための栄養にすることもできません。それでも、幽霊になってから初めて味わえたお茶は、ユメの心を少しだけ満たしました。
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