死んだらどうなるのか、考えたこともなかった。
『AP、残り10%』
考える必要がないから、というのが大きい
煙が噴き出し、機体のあちこちが歪みやへこみだらけになっている。
目の前の白い機体は光を反射し、キラキラと輝いていた。
弾薬を全て使い切り、今使える武装はパルスブレードだけ。
満身創痍、絶体絶命という言葉が脳裏を掠める。
「……まだだ」
操縦桿を握りなおす。
「まだ、負けてない」
機体を睨みつける
満身創痍という点においては目の前の機体と同じだ。
彼女の純白の機体にはたくさんの銃弾が撃ち込まれ、パルスブレードで何度も切りつけた箇所は歪み、焦げ後が付いていた。
「この
「あなたの火は…ここで終わらせます!」
コーラルと人の共存を望む、姿なきルビコニアン、エア。
「ウォルターの
亡き
その二人が相入れることは───なかった。
「決着を!レイヴン!」
エアがブースターを噴かし、赤い粒子を撒き散らす。
機体からのアラート音が頭に響く
操縦桿を握る手に力が入る
ブレードを起動する。
「うああああああああ!!」
ブースターを噴かし、加速する
涙で、景色が酷く歪む。
ブレードを振り下ろす。
振るスピードは私のほうが遥かに速い。
エメラルド色の残像を残し、エアを切りつけた───はずだった。
「なっ───」
パルスブレードはエアの機体を切り裂くことはなく、ただ白い煙を吐きだすだけだった。
ボフッという音と共に、ブレードが爆散する。
「……さようなら、レイヴ──」
エアがダガーを振り下ろす
──彼女はもう勝った気でいるらしい。
やはり機体性能と状況では向こうが勝っていても、経験なら私の方が遥かに上だ
手負いの獣がどれほど危険か。
青白い光が、機体を照らす。
「……ごめん」
「──ッ!!」
その言葉と共に、621の機体とエアの機体は強い光に包まれた。
アサルトアーマーによる爆発で地面は大きくえぐれ、巨大なクレーターが形成された。
クレーターの中心には、もう動くことのない白い機体と───もう一機、それを見下ろす隻腕のACがそこにいた。
「レイヴン───」
「それでも私は…人とコーラルの───」
紅い光が、消えた。
………友人を殺した。
胃から酸っぱいものが込み上げる。
不快な感覚だった。
バスキュラープラントを見る
ザイレムがバスキュラープラントを貫く
側から見ればバスキュラープラントがかなり脆く見えるが、実際にはとても硬い
紅い光がザイレムを包みこむ。
……もう一人、減った。
光が迫る。
ブースターを噴かし、友人たちに背を向ける
デプリやがれきをかわし、進む。
…………。
振り返ると、紅い光はそこまで迫っていた。
逃げられない、助からない
このルビコンで過ごしてきた経験と直感が囁く。
死んだらどうなるのだろう?永遠の虚無?それとも死んだ瞬間に草木にでも生まれ変わるのだろうか?
それとも、死んだ人間全員があの世にいて、そこは誰も苦しまない優しい世界なのだろうか?
分からない。
分からないからこそ、死は恐ろしい。
だが、あの世か…
もし───
もし…あの世があったとして───
もう一度ウォルターに会えるなら──
そんな馬鹿げた考えが頭を過ぎる。
思わず吹き出しそうになる。
だけど───
もし、また会えるなら───
死ぬのもそれほど悪くないと─────
そう、思った。
─────────
───────
─────
───
─
真っ暗だ。
これが死、というやつだろうか。
息苦しく、身体に鉄のような重さを感じる。
これが死?
「──ら」
声?
「本──に─こ?」
幻聴?
「うん──やっぱり!ほら見ろ!このゴミ捨て場、銃が沢山捨ててある!これで新しい銃が使える!」
「大丈夫?暴発しないのか?」
一体どこの誰───
「大丈夫だ。旧式ライフルを
身体を起こす。
身体から何かのパーツやらなんやらがこぼれ落ちる
これが息苦しさの原因か
まさか本当に重いかったとは。
「うわ!」
「お化けでた!」
光に目が眩む。
武装している赤と黒の二人組が私の目の前に立っていた。
………変な格好。
ヘルメットに制服?に輪っかのアクセサリー?
………これが笑えるファッション、というものだろうか?
「いや違う!よく見ろ!頭にヘイローがあるからちゃんと生きてる!!」
ヘイロー?
「驚かせて悪かった。私は────」
顔の近くを銃弾が掠める。
ヒリヒリとした感覚が頬を伝う
「クソ!驚かせやがって!」
「カタカタヘルメット団に喧嘩を売るとは良い度胸だな!」
……喧嘩を売っているつもりはなかったのだが。
「迷惑料払え!お前の財布、とっとと出しな!」
「COAMでいいなら払──」
「うるせぇ!今驚かされてイライラしてるんだよ!」
…………平和なあの世、というには物騒すぎる
話が通じないなら、やることは一つだ
目を閉じる
『メインシステム 戦闘モード起動』
全ての五感が拡張され、ゴミ捨て場に舞っている小さな塵までもが見える。
足にこびりついた違和感が払拭される。
体勢を低くする
「おい、何かおかしい!」
黒い方が言う
「あ?何言ってる?丸腰に負けるわけねぇだろ!」
「ハッ!降参ってか?許してくれなんてそうは問屋が───」
地面を踏み込む。
「速───」
左の黒いヘルメットのほうに接近する
撃とうとしていたが、遅すぎる。
俺が低く構えた時点で撃つべきだった。
懐に潜り込み、みぞおちに狙いをつける。
「ふん!」
肘がみぞおちにめり込む
「ゴホッ!」
決まった。
みぞおちには腹腔神経叢という神経の束があり、刺激することによって一時的な呼吸困難、激しい内臓痛などを引き起こす。
アイスワーム撃破後に習得した、ミシガン総長直伝の必殺技。
絡んできたイグアスで試したので、*1効果は熟知している
銃を奪い取る。
赤いほうに銃口を向ける
「な───」
AC越しならともかく、銃を実際に撃ったことがないから勝手がわからない。
ま、大体は同じだろう。
引き金を引く。
反動を筋肉で抑えこみ、胴体に撃ち続けた。
地面に崩れ落ちる
……なんとか窮地は脱し──
「ぐ…」
「!」
肘打ちした方が起き上がるが、振り返りざまに頭に銃弾を一発入れる
「ぐあ!」
やったか…
銃を向けていた二人は冷たい地面の上でぐったりと
………。
俺は今、この二人を
なぜ気絶で済んでいる?
血も流していない
………服をめくってみる。
……何かを着込んでいる訳でも無い。
ヘルメットを外す。
ヘルメットも防弾性能もないただのヘルメットだ。
………もしかして強化人間だろうか?
それだとしてもおかしい
強化人間は脳や神経だけでなく、ACのGに耐える為に骨と筋肉の一部を手術によって置き換える。そうする事によって、Gに強い身体ができる。
しかし、一般人よりは頑丈とはいえ、撃たれたら怪我をするし、当たりどころが悪ければ死ぬ。
しかしこの二人は気絶するだけで済んでいるのだ。
これはおかしい。
ひとまず二人を回復体位にして意識が戻るのを待った。
何か聞き出せるかもしれない。
「起きたか」
黒いヘルメットの方が起き上がる。
銃弾を受けても気絶だけで済むとは、本当に丈夫な身体である。
怯えているようだ
……少なくとももう一度戦闘になることはなさそうだ。
「一つ聞く。ここはどこだ?」
「?……ここはブラックマーケットです。誘拐でもされたんですか?」
…聞いた事がない場所だ
そもそも、ここはルビコンなのだろうか?
焼き払ったせいで人間は元より、生物は生存出来ないはずだ。
「ここは何て星だ?ルビコンⅢでは無さそうだが」
「ほ……星?その口振りは別の星から来たって事………!?もしかして人に化けた宇宙人………!?」
「違……うと思う、多分」
少なくとも私が知ってる範囲で、銃弾を生身で耐える人間は見た事がない。
もしかして構造的には全く別の生物?
ならこいつらにとって私はエイリアンなのか?
うーん
「……もっと色々教えて欲しい。ところで名前は?」
「え、えっと、イ、イムです」
その後、イムに沢山の事を教えてもらった。
学園都市キヴォトスについて、三大学園とブラックマーケット、頭に浮かぶヘイローと、銃弾が効かない事について。
………なんだか混乱してきた。
「そ、それにあなたにもヘイローがあるじゃないですか」
「え?」
「ほら後頭部に」
……指先には何も触れなかった
「ヘ、ヘイローは触れませんよ、ホログラムみたいな物です」
「ホログラム…なるほど」
後で鏡でも探してみるか。
手を戻そうとしたとき、何かが頭に触れた。
髪とは違う感触だ
「なんだ…?」
引っ張ってみる
「痛っ…」
「……な、何してるんですか?自分の
み…耳?
恐る恐る視線を上げるとそこには──
「?!」
動物の耳が自分の頭に生えていたのである。
ま、まさか…
自分の腰にも触れてみる
「し、尻尾ある…」
これではまるで…犬……
猟犬に、駄犬や野良犬と言われていたが、本当に犬になってしまうとは。
「と、とりあえず色々教えてくれてありがとう」
「え、あ、はい」
「後友達はごめん、さっき一回起きて暴れたからもう一回気絶させた」
背後にはゴミ捨て場に顔から突き刺さっているもう一人のヘルメット団がいた。
「多分後1時間は気絶してると思う」
「え、あ、ええ…」
「……驚かせた俺も悪かったし、送っていくよ」
ゴミ山から伸びているヘルメット団を引っこ抜く。
イムがそれを担ぐ
ついでに私は捨ててあった使えそうな銃をいくつか持っていく事にした
「ねぇ」
「ひっ………な、なんでしょう」
「……ヘルメット団の活動資金ってどこから出てるんだ?私でも金を稼げる方法があるなら聞きたい」
「ええと、さっきみたいにカツアゲしたり、飲食店を襲撃してレジから金をとったり、傭兵をやったり…」
「傭兵?」
聞き慣れた単語が聞こえた。
「あ…傭兵は辞めておいた方が…確かに仕事は沢山ありますし、依頼料は高いですが…」
そこで言葉を切った
「何か問題が?」
「はい。基本ヘルメット団のみんなで依頼を受けてるんですけど、報酬を山分けするとどうしても金額が少なくて…依頼に使った弾薬費と依頼料でトントンって感じで…」
「どこの組織にも属さず一人で依頼を受ける、”独立傭兵”ってのもありますが、所詮は一人。達成できる見込みは…」
「………ない、ってこと?」
イムが頷く
「その通りです」
「なるほど、私は独立傭兵になる」
「話聞いてました?」
…私はいままで、無茶な依頼をこなしてきた。
三人組を返り討ちにしたり、レッドガン部隊をせん滅したり…色々だ。
さらに私は強化人間で、真人間よりも身体能力、反射神経が上だ。
それに…イムが言っていた通り、銃弾が効かないというのが正しいなら───
「…俺を撃ってくれないか?」
「え!?」
「あと私は右利きだから撃つなら左腕で………それとライフルじゃなくて拳銃のほうで頼む」
「え…え!?」
「早く!」
「え?え?あ、はい!」
イムが拳銃を取り出し、私の腕に狙いを定める。
「えい!」
拳銃の引き金を引くと同時、スライドが後退する
破裂音とともに私の腕に銃弾がぶち当たった。
「痛……いけど…」
銃弾が当たった箇所をみると銃弾は腕を貫通せず、当たった場所がほんのり赤みを帯びるにとどまった。
仮説通り、なぜか私の体も銃弾を弾く不思議な体になっていた。
少し腕が痺れたが、しばらくすれば治るだろう
これなら───
「ありがとう、これで安心して傭兵稼業ができそうだ」
「え?その…どういたしまして……?」
「どこで依頼を受けられる?」
「えっと……」
イムがポケットからメモ帳を取り出し、書き込む
「これ…どうぞ」
道のりまでの簡易的な地図だ
「………もし今度会うことがあったら飯でもおごるよ」
「はは………出来ればもう会いたくないけど」
「なにか言った?」
「いえ、なにも」
カタカタヘルメット団に二人を送り届け、ブラックマーケットに戻る
「さて…」
ネオンサインがある建物に向き直る
ここで仕事をもらうらしい。
建物に入る
建物の中は薄暗く、それでいて碌に換気もしていないせいか、空気が悪い
カウンターの隣にあるゴミ箱からは、饐えた臭いがする
掲示板にはびっしりと紙が張られていた
「ねえ」
カウンターに突っ伏している猫をつつく
猫が経営している、という点では面食らったが今の私も似たようなものだ。
「え、あぁ?」
「仕事が欲しい」
「………そこに貼ってある依頼を剝がして勝手に受ければいい」
………随分と適当な奴だな
チャティの爪垢を胃にねじ込んでやりたい
チャティに爪があるかは謎だが。
壁から依頼を引き剥がす
Fromセイント・ネフティス
ブラックマーケットに入った時点で襲撃する。
我々の見立てでは護衛の数は一台につき3から5人ほど。
報酬は一台につき20万。
我々は憎きカイザーによって苦境に立たされた!輸送トラックを襲撃し、やつらに手痛い一撃をくらわせる!勇気ある傭兵諸君。キヴォトスの未来と経済は君たちの手の中にある!
………以外と給料は悪くないんじゃないか?
確かに何人かで等分するには少ないかもしれないが、それでもまぁまぁだ。
脳内コンピュータでセイントネフティスについて調べる
現金輸送トラックを襲撃したところでカイザーは痛くも痒くもないだろう。
現金が盗まれたからといって、必ずしも銀行が盗まれた金額をそのままて負担するわけではない。
それに、現金だって毎回数億円運んでいるわけでもないのだ。
ならなぜ襲撃を?
嫌がらせ、という可能性もあるにはあるが───
網膜に画面が浮かび上がる。
キヴォトスでもインターネットが使えるのは不幸中の幸いだった。
検索結果が映る。
……ほう?
なかなか面白い記事が見つかった。
見出しはネフティス、アビドスから撤退。鉄道計画によるものか。責任者が会見
記事を要約すると、アビドスという自治区で大規模な鉄道開発事業に着手するも、度重なる砂嵐で工事は難航。そして結果は大失敗。
災害によって衰退したアビドスの経済を道連れにし、落ちぶれた企業。
前述したカイザーにも並ぶ企業だったが、今では傭兵を雇って邪魔する事しか出来ない。
破綻した事業の妥当な末路、といったところだろうか。
まぁいい。
「これを受ける」
「……そこの機械に通せ」
言われた通り、依頼書を機械の中に放り込むと、『受注完了』の文字が浮かび上がると同時、さっきとは別の紙が排出される。
手に取るとそれは地図だった。
どうやら集合場所らしい。集合時間まで書いてある。
脳内コンピュータにその地図を焼き付ける
建物の外に踏み出す。
『行くぞ、621』
声の方に振り向く
さっきの猫がまたいびきをかいているだけで、
コーラル焼き付きによる、幻聴。
私のような旧世代型の強化人間にはよくあることだ。
頭を振って幻聴を追い出す。
ウォルターは死んだ。
それ以上のことはない
「行くか」
私は建物を後にした。
本作のC4-621について。
621はルビコンに来た時と肉体はほとんど同じです。
犬耳と尻尾、ヘイローがあること以外は。
なるべく原作で分かっていることを基準に設定を練ってます
……まぁほとんど妄想なんですけどね。
年齢
本作では15歳とします。
ウォルターは子供を死地に送るのはめっちゃ嫌がりそうだけどどうだろ。
脳・眼
脳深部コーラル管理デバイスが埋め込まれている。
それに加えて、コンピュータも増設されている
ミッションの脱出でACに乗っていないのにウォルターのメッセージを再生していたりするので脳内コンピュータとかあるんじゃないかなぁ?
脳深部コーラル管理デバイスは神経の強化のみに使われてるっぽいからコンピュータとは分けました。
眼も人工のものに置き換わっています
眼も脱出の時、生身なのに明らかにディスプレイ的なナニカが見えているので、眼も変えてる?
骨・筋肉
ACの機動力に対応するために骨と筋肉の一部が置換されてます
普通の人間よりは頑丈。
Gに強い
心臓
人工心臓に置き換わっている。
置き換わっている理由は後々………
シンゾウガニゲル!
手術の後遺症
ウォルターが「お前のような脳を焼かれた強化人間でも~」と供述していたので、V.Ⅲオキーフのアリーナ説明に登場したコーラル焼き付き、という後遺症が残っている………のかなぁ?
コーラル焼き付きについてはマジでわからん。幻覚とか見てたのかな?
本作では幻聴、幻覚とします。
後書きもかなりダラダラ書いちゃったなぁ……
最近クソ忙しくて更新できないかも。
来月には次の話を投稿します。