「貴方が依頼を受けた傭兵ですか」
驚いた。
「ああ」
まさかAIが依頼主とは。
厳密にはロボットだが。
依頼主が口を開く。
………この場合、スピーカーから音を発したの方が表現としては適しているのだろうか。
「………期待していますよ」
そうは見えない
確かに、今の私は傭兵というにはラフすぎる恰好をしている。
死ぬ前?に乗っていた時に着ていたパイロットスーツではなく、カーラからもらったダボダボのRaDTシャツにやや丈が長過ぎるダメージジーンズ、それにスニーカーという恰好だ。
今は銃を持っているが、ここはスーパー銃社会キヴォトス。カバンや時計を身に付けているのと大差ないだろう。
「私の他に依頼を受けたやつはいないのか?」
「ええ」
「なにせ人手不足ですから」
「人手不足………」
ネフティスの経済状況を鑑みるに、傭兵を雇う金が惜しいので、私だけ雇ったのかもしれない。
「一人ですか?」
「ああ」
「………トラックを破壊しない限り、報酬は払いませんよ」
「ああ」
依頼主に背を向けた。
こんなものだろうか?
トラックが来るであろう道にドラム缶と廃材で塞いだ。
通るためには退かす必要がある。
トラックが止まって廃材を退かしている最中に奇襲を仕掛ける、という算段だ。
廃材をどかしている時に見つけた廃車に身を隠す
1時間ほど待っていると、件のトラックが来た。
一台あたり、護衛が4人。
先頭のトラックが停止する。
護衛が廃材に銃を構えながら近づく。
「───!───!」
「───?───!」
「────」
車の中なので声が聞こえない。
息を殺して様子を伺う。
………………。
おおよそ30分後。ようやく動きがあった。
「───」
危険がないと判断したのか、護衛達が廃材を退かし始める。
銃弾は20発、マガジン一つ分だけ。
『メインシステム 戦闘モード起動』
銃のセレクターを単発に切り替え,引き金に指を掛ける。
護衛の一人の頭に照準を合わせる。
狙いをつけた護衛と目が合った。
引き金を引く。
1。
銃身が自然な弧を描く。
銃弾が車のフロントガラスを貫通し、頭に命中する。
「ぐぁ!」
命中し、よろめくが倒れない。
一発だけでは、駄目か。
今度は照準を胸に合わせ、引き金を引く。
2、3、4───
ようやく倒れた。
これは人間というより、MTと戦っていると思ったほうがいいだろう。
「て、敵襲!!」
「襲撃者は一人だ!!」
車からドアを引きちぎり、投げつける。
こんな馬鹿力、以前はなかった。
護衛の一人に命中する。
「ガホッ!」
車から転がり出て護衛に対して撃ち続ける。
5、6、7。
今度は装備がない眉間部分を撃ったので一撃でノックアウトさせることができた。
このまま撃ち続けても埒が明かない。
一番後ろのトラックに狙いをつける
8。
銃弾はガラスを突き破り、運転手に命中する。
運転手は防具の類がなかったせいか、一発で気絶した。
脱力し、アクセルを踏み込む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やめろ!くるな!」
金属がひしゃげる音を立ててトラックが前方のトラックに追突する。
ビリヤードの玉よろしくトラックが連鎖的に追突した。
悲鳴がブラックマーケットに響く。
暴走したトラックは、護衛のほぼ全員を巻き込んだ。
連絡を取り合っていた護衛達は沈黙した。
聞こえるのは激突したトラックが炎上し、炎が燃え盛る音のみ。
ミッション完りょ───
瞬間、銃声が耳を貫く
「危ないな」
今頭を傾けなければ当たっていただろう。
「死ね!クソ野郎!」
撃たれた方向を見ると護衛の一人が見えた。
服は煤け、破れ、もとの服の面影は消えかかっていた。
そいつは私が最初に撃った護衛だった。
「運が悪かったな、雇われ」
銃口を向ける。
引き金をゆっくりと引き、反動に身を任せる。
9。