〜38歳童貞のTS憑依転生。身体の主(9歳)の遺言が『結婚してくれ』だったんだが〜 作:楓舞星
夜蛾からの、その一声で、場は騒然とした声が流れる。
「今日からここに入学した編入生だ。挨拶を交わしてやってくれ」
その言葉に、めんどくさそうに五条悟は、友人、夏油傑に聞く。その流れに、家入は適当に返した。
「転入生?傑知ってる?」
「いや、私も知らないね」
「じゃ、私も知らなーい」
そんな流れを経たが、実際のところ、机が一つ増えているので、三人は薄々勘付いていた。夜蛾もそれを知ってのノリというのをわかって、内心、ソイツが混じれるかどうかを心配しながらも呼び出す。
「それでは、入ってこい」
夜蛾は扉を開けて、ソイツを中に入れた。ソイツは、後ろ髪を一つの三つ編みにしており、前髪はサラリとしている。目つきはどこか鋭く、相手を威圧……とまでは言わないが、ビビらせるような雰囲気だった。
ただ、身長が低すぎる。140cmないのではないだろうか。
「自己紹介をさせてもらいます。私は無択ナキです。好きなものは寿司で、嫌いなものは特にないです。ゴキブリも素手でいけます。人生の目的は『世界で1番の男と結婚すること』。よろしくお願いします」
無択はどこかぎこちなく台詞を発した。なんというか、敢えて言葉を固くしているような、そんな印象。
「へー、なかなかロックな自己紹介じゃん」
「悟、編入生の前なんだからいい加減、机から足を下ろしなさい」
「わーったよ」
「……それでは、朝礼を開始する。無択はそこの席に座りなさい」
「はい。わかりました夜蛾先生」
そうして、朝のホームルームが始まった。
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1限目、社会の授業。
「なあ、お前って頭はどうなの?」
「文系科目……暗記だったら出来るが、科学はまだしも、数学物理とかの理系科目が出来ない」
「夢が壮大にしては、夢がないゴリゴリの暗記キャラだ」
「暗記は誰でも出来るからな」
社会の授業中、ナキは当てられてもスッと立って問題に答える。それに対して家入は、
「真面目な優等生じゃん。夏油、立場脅かされちゃうよ?」
「いや、私は理系科目も出来る……というか、私はそこまでの優等生ではない」
「私もそうだ。優等生というよりかは、ただ型に嵌まっているだけ。ただの扱いやすい生徒だ」
「それが一番優等生なんだよー」
「……」
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3限目、4限目、体育。
「新体力テスト、あるんだな……」
「逆に、ないと思ったのか?」
「いや、呪力がある分有利に働くだろう。種目によっては、校内記録が世界記録になる。呪力はナシか?」
「いや、アリだ。私も、一年生の時に聞いてみたが、上手く調整してくれるらしい。記録は校内の方でしっかりとカウントされるようだ」
「なるほど」
四人はそう言いながらも、グラウンドに出たり体育館に入ったりして、測定を終わらせていく。
握力
結果:五条>夏油>無択>家入
「うわ、私がドベじゃん……」
「私も鍛えているんだが……まあ、性差か」
「呪力による身体強化が上手ければ、きっと埋められるさ」
「俺が一等賞です!」
上体起こし
結果:夏油>五条≧無択>家入
「同じ女子に負けると結構ショックだなぁ……まあ、私は非戦闘員だから割り切ってるけど」
「おいなんで俺が二位なんだよ。というか、ナキが結構接ってきてるんだが?」
「この競技は呪力強化がそこまでいらないからな。体が小さい私のほうが有利。その上で負けている……」
家入は勝者である夏油の顔を見る、どこか思案げな表情をしていた。
「勝者のコメントは?」
「いや、次の競技は……どうなるのかと思ってね」
その言葉に、無択はがっつりとため息をつく。
「……はぁ……」
「そうため息をつかなくても……」
長座体前屈
結果:五条>夏油>家入>>>無択
「……」
「おい、チビ、元気そうか?」
「おっ、ビリ脱却」
「……お前らがデカすぎんだよ……なんだよ身長190って、モデルかなんかか?別に私だって勝負なんてしてないし?本当だし?」
「まあまあ……」
反復横跳び
結果:無択>五条≧夏油>家入
「はい!私の勝ちぃ!クソガキどもがぁ!頭を垂れて蹲えぇ!!平伏せよぉぉ!!」
「……あれ?夏油と同じタイプかと思ったら違うか?」
「そうだねー、なんか夏油よりもノリがいい?というかノリがおかしいね」
「私がノリが悪いみたいに言わないでくれたまえ」
持久走
結果:五条≧夏油>無択>家入
「まあ順当か。去年もこんな感じだっただろ」
その他にもハンドボール投げなども行ったが、大体似た様な結果に落ち着いた。
4限が終わり、とうとう昼食の時間を迎える。
「あれ?あのチビは?」
「ナキなら階段で食べるって言って出て行ったよ」
「だから栄養付かねえんだよあの反復横跳びチビが」
「調べると、反復横跳びは身長が小さい方が重心が低く、俊敏に動けるようだね。逆に身長が大きいと一歩で遠くまで足を運びやすく、私達は呪力によるアシストによって、小さい方が有利に働いた……ということらしい」
「雑学乙」
5限目、国語(古典)
宇治拾遺物語の、稚児の空寝。ぐだぐだとした説明に、疲れているような五条はふと無択のノートをみる。そこには、板書される前にもう答えが書いてあった。
「お前の古典力高くね?」
「なんだ古典力って……まあ私は予習済みだからな」
当たり前のようにそう言う無択に、
「やっぱ優等生じゃん」
家入は、ふーんと呟きながらも敢えて優等生というレッテル貼りを行っていく、
「私は大学受験の勉強を小学4年生の頃からしていた過去がある。それだけの理由だ」
無択はつまらなそうにそう言うと、質問にピシッと答えていく。
「お前小4からよくこんなつまらない勉強をしようと思ったな」
無択は疲れた様な顔をしながら、
「早稲田大学ってあるだろ?そこ行きたかったんだよ」
「やめたのか?」
「いや、別にやめた訳じゃないが……まあ、うん、そうだな。今回は高専で呪力を学ぶことにした」
「へーまた編入でもすんの?」
「……聞いた割に興味がなさそうだな」
「聞いたら興味がなくなる……っての、あるだろ?」
「まあ、否定はしないが……もっと礼節を持った方がクールだよ……って、なんかじじ臭くなったな」
「お前の場合ばば臭えだろうが」
「……そうだな」
今日は5限で終了だ。五条達はマクドナルドに行っている。無択はサクッと寮に帰った。
そうして、体を鍛えるためのトレーニングを始める。
まずは軽いストレッチから始めて、次は、グラウンドを最大限使い、呪力を使って全力で走り込んだ。
走り込みは運動の神経を養うのに良い効果をもたらす。走るというのはどのような行動にでも転用可能な素晴らしい技術だ。
疲れ切ったその後は、続け様に呪力を使わずにスクワットと腕立て伏せをして、全身に効かせていく。
そうして、彼女は基礎力を上げていく。
「はぁ……はぁ……」
疲れ切った体で、水分補給。また少し休んでから、違う部位を鍛え込んでいく。
そして……
寮についた無択は、夕飯を出来る限り詰め込み、夜、寝る前に、復唱する。
「俺は、俺が貧弱であることを知っている」
「俺は、俺が弱者であることを知っている」
「それでも、もう二度と、世界を壊す恐怖には屈さない」
「……あと、うん、一応、結婚もする……予定……だ……うん」
そう言い、彼女は眠りについた。
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