〜38歳童貞のTS憑依転生。身体の主(9歳)の遺言が『結婚してくれ』だったんだが〜 作:楓舞星
2名以上の1級術師から推挙された者は、現役の一級、または1級相当の術師と共に幾度か任務をこなす。
そこで適性アリと判断されれば、準一級へと昇級する。
「これが条約だけどさぁ……」
俺は自室のベッドに寝込みながら考える。
これ、もしかしたら、永久に俺って2級術師なのではないか?ようするに、友人とか先輩とかのツデに頼れってことだろ?
「1人でどんな任務にでもつければ、階級なんてどうでもいいんだがなぁ……如何に給料が良くなっても、俺の必要なものって金じゃ買えねえからな」
「まじめに頑張って友人関係を広めるしかないのかねぇ……じゃあまずは、媚を売る体操から始めようか」
ラジオ体操でも始めようとするかの如く、あえて気楽に考える。
「まずは身近な1級術師は五条、夏油、夜蛾、ぐらいか……人脈うっす……」
噂では、高専卒業生として、冥冥という人もいるらしいが……
「まあ、会ったことないからなぁ……」
さらに思考を深める。
「七海には可能性を感じるし、そっちにシフトして考えるってのも手の内か……?七海を一級に育てあげて……って流れで……」
この場合、構図としては談合ということになりうるが……しかし、別の問題もあり、
「いや、普通に何年かかんだって話だからな」
「ダメだな……高専卒業したら、フリーの呪術屋になろうかねぇ」
そこで、任務を受けまくるというのが、世界を良くする要因になりうるだろう。だが、ふと思う。
「いや、そもそもなんで俺が他人の命まで心配しねえといけねえんだよ、天は自ら助くる者を助くだぞ……ああ、でも、全力で救われるように努力していたらどっかの自認『天』サマが救いにこねえと通りに合わねえか……やっぱことわざは嫌になるね。二度ある事は三度ある、三度目の正直……はぁ、ある意味、この矛盾自体が世界の通りを決めていると言えるかも知れないが……」
他人にだけは甘い……なんて、言われるかもしれないが、内心ではそれを否定している。
「……報われねえ努力をしねえ方が悪い。周りに助けを求めて、それでもダメだったら、もう諦めろ。勝手に世界からフェードアウトしとけ……と、言いてえ所だが、相手が子供だったりするなら、大人として導く義務がある……ちっ、義務感はほとほと厄介なもん……ただそんだけ」
優しさとか高尚なもんではなく、単なる義務感だ。そこら辺、わかってれる奴は今の所、会ったことがねえ。夜蛾だって、実際のところは俺が街の掃除をしていたことを『献身』だとか思っていそうだ。
マジでなんなんだろうな……
まあ、とにかく今の所は階級を上げる術はないってこと。
「今日も鍛錬して、夜ご飯食べまくって、寝よう」
____________
冥冥と庵歌姫はとある屋敷の内部の、呪霊の領域の中に閉じ込められていた。
だが、突如領域は外郭ごとぶっ潰れ、両者は解放される。そして、歌姫はその場にへたり込むことになる。誰の仕業かというと……
「助けに来たよ〜歌姫」
「泣いてる?」
「泣いてねぇよ!!」
五条であった。蒼で屋敷を解体したのだ。
「泣いたら慰めてくれるのかな?是非お願いしたいね」
「冥さんは泣かないでしょー」
五条が呑気にそう言っている間にも、歌姫は立ち上がり、
「五条!私はね、助けなんてーー」
そう言い切るはずだったが、後ろからの呪霊の奇襲。
「っ!」
振り向き様、歌姫は悪寒を感じたが、その呪霊は目的を果たせず、別の呪霊に拘束されることとなる。
「飲み込むなよ。後で取り込む……悟、弱い者イジメはよくないよ」
颯爽と登場したのは夏油だった。
「強い奴イジメるバカがどこにいんだよ」
「君の方がナチュラルに煽っているよ。夏油君」
そして、
「歌姫せんぱ〜い、無事ですか〜?」
「硝子!」
「心配したんですよ?2日も連絡なかったから」
「硝子!アンタはあの2人みたいになっちゃ駄目よ!」
「あはは、なりませんよ、あんなクズども」
五条は冥冥に向かって、
「あー、やっぱ呪霊の結界で時間ズレてた系?冥さんがいるのにおかしいと思ったんだ」
「そのようだね……うん、『帷』もしっかり張ってあるし、救助としていうことなしさ。君たちの事だから、張り忘れる可能性も考慮に入れてたんだが……」
「「「……」」」
「ん?なんだい?」
「初めまして冥冥さん。庵歌姫さん」
「……ああ、なるほど、君か」
「はい。バカ2人が先行して突撃していったので私が帷を張らせていただきました」
「いいね、良い子だ」
その会話の中に、歌姫も割って入って、
「君。名前はなんていうの?」
「無択ナキです。階級は2級術師、この人生を舐め腐った身長と共に生きています。先輩にはこれからもお世話になることがーー」
「きゃー!かわいいぃ!」
歌姫は無択に抱きついた。すりすりとしてくる歌姫に、無択は疲れた目をしながら、
「……自由な人だっちゃなぁ……」
「はははっ、歌姫も結構自由人だから。まだ高専を卒業したてでね」
「そういえば冥冥さんは一級術師なんでしたっけ?五条の奴から聞いたんですけど」
「そうだけど?推薦でもしてほしいのかい?」
「そうですね。それで悩んでいたので」
「だったら、もっと価値を示してくれないとねぇ……」
「望むところです。結果を出すことで言ったら私に敵うやつはそういない」
「頼もしい限りだ」
____________
8月も終盤に差し掛かってきたこの頃、五条達に課せられた任務は星漿体の護衛だった。
それは、高専中に広まっていた。当然だろう。元々、情報に疎い外部の呪詛師達がこぞってくるのが星漿体なのだから。高専にも噂ぐらいは広まってくる。
そして、護衛につくのが一級呪術師である五条と夏油であることは疑いようのないことだった。
「五条、夏油、頑張れよ」
「ん?なんのこと?」
「さー、一体なんのことだろう?」
ここまで噂が立っているとはいえ、他方に情報を出すことが禁じられてあるためか、あくまでしらばっくれる五条と夏油。
「夜蛾先生からも言われるだろうが、決して油断するなよ」
「「へいへーい」」
____________
授業終わり、七海と無択は共にベンチに座りながら話す。
「まず、世界一の男がなんなのかを精査していきましょうか」
「そうだね」
「……そこもわからずに結婚するとかほざいてたんですか?」
「そうだけど?」
「……はぁ……」
七海は全力でため息をつきながらも、
「金か、権力か、知力か、武力か。基準が曖昧すぎる」
そう言い、まずは世界一の男の基準を定める様だ。
「あなたは、何が1番の男が良いと思いますか?」
「……まあ、一般的な目線で見たら金と権力だよな。そして、呪術師としての目線なら武力だ」
「そうですね。その認識でまあいいと思います」
「んで、そうなると……世界一の人は……」
2人が思い浮かべたのは、六眼をもち、上層部とも強い関わりを持つ五条家出身の、一級でもトップ実力をもつ呪術師で白髪の……
「……減点評価にしない?」
「……そうですね。いや、それでもかなり候補には上がると思いますよ」
「えぇ……いざ世界で1番の男を見つけるとげんなりするな……もっと、性格がさ……」
「……あんなのでも先輩なのでその意見はフォローできないんですよ。私に言わせないで下さい」
2人はため息をついた。