ダイヤモンドを取り返せ!   作:不定音高ふたつ

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【登場人物 第1話なので、ちょっと詳しく】
♪ タク:水野拓(みずの・たく)。男。30歳代前半。東海林商事のアクティブな御曹司で、重役。
 
御曹司で重役だが、決して甘やかされて育ったのではない。昔なら、周囲の人から至れり尽くせりの育てられ方なら、自分では何もできない「芋の煮えたも御存じない」や「蝶よ花よと育てられた」と言われる。
しかし、タクは「蝶よ花よ」ではなく「丁よ半よ」に近かった。自分のことは自分で決めて、成功は喜び、失敗は残念がる。親は少しだけタクの補佐をするだけ。実行の前に「失敗しないための、あらゆる注意点」を考慮するのは、子供にとっては大変だ。実行することで意味がわかる注意点もある。
それでも、失敗することはある。試行錯誤は成長の喜びだった。
口癖は「東海林商事の御曹司を、なめるなよ」だが、決して他人を馬鹿にする感じではない。「色んな経験をして、その努力もしたんだ」という意味だと、周囲のみんなが知っている。
タクの口癖で、友達は「自分も、経験の種類は違うし少ないが、努力すれば上達する」という気持ちになる。
 
 
♪ メイ:久米郁葉(くめ・いくは)。女。20歳代後半。タクの彼女。小柄な手品師で、手品と同様、楽しむことに貪欲。
 
小さな頃から、いたずらが好き。大きくなった今でも小さいが、幼少の頃に「いたずらで、誰かを困らせるのはダメ。いたずらで、みんなが喜ぶように」と、優しく叱られた。
その意味がわからなかったが、子供の頃に、近所のおじさんから、子供だましの手品を見せられ、その種(タネ)を教わったことで、「アイディアで、人を喜ばせられる」と知ってから、現在の手品師に至る。
手品は貪欲で、誰かを驚きで喜ばせるためには、あらゆる資料(心理学だけでなく、トポロジーや化学など)を利用する。これが、メイの性格そのもの。
 
 
♪ うらなり:成浦なすび(なりうら・なすび)。おっさん。ギャング会社である「エッグ・プラント」の輸入課の課長。ドジ。


第1話[キャンプしてたらダイヤモンドを見つけちゃった]
第2話[東海林商事の笑って死ねる拷問]
第3話[空港で歩きスマホと8の字転倒]
第4話[抱き合ってエッグ・プラントに潜入]
第5話[盗んだ飛行機で孤島に向かったら銃撃を受けた]
第6話[エッグ・プラントの社長の温情はウソ]
第7話[わたくし、素敵なワインが飲みたい気分ですの]
第8話[エッグ・プラントの社長が捕まる]
第9話[うらなりのハッピーエンド]

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第1話 キャンプしてたらダイヤモンドを見つけちゃった

▼ 第1話[キャンプしてたらダイヤモンドを見つけちゃった]

 

世界の絶景に、メイは大喜び。

 

「海だー! 山だー! かーわだー! たーまやー! スキーだー!」

 

そこに、タクが優しくツッコミ。

 

「スキーは無理だろう。春だし」

 

ここはタクの自宅ガレージ。ちょっとした工房や、キャンプ道具の収納庫も兼ねている。

 

壁には、世界中の風景のポスターが貼られている。メイは、それらのポスターを見て、歓喜の叫び。

 

「ぼちぼち、行こうか」

 

「おー!」

 

ワゴン車で出発。

 

さて、今日のキャンプは、グランピング(豪華なキャンプ)という程ではなく、困りごとが少ないように、荷物をたくさん積めるワゴン車。

 

不便を楽しむのもキャンプだが、メイと一緒なので、きれいなトイレもあるキャンプ場を選んだ。

 

テント、折り畳み椅子、焚き火台などをさっさと設置すると、暇になった。薪(まき)を集めに、ちょっと散策。

 

湖があり、周囲には森が広がっている。

 

「それにしても、荷物が多いよね」

 

「不便を楽しむけれど、サバイバルでもないし、困ることが多かったら楽しめないだろう?」

 

夜は、マシュマロを焼いた。キャンプ用の大きなものではなく、コンビニで売っているような小さなもの。

 

長い語らいをして、焚き火が消えて、大きめのテントで並んで眠った。

 

翌日の早朝。

 

昨夜は、長い語らいをしても、テレビなどが無い夜だったので、実は早く就寝していた。

 

そのため、今朝は意外と早く目覚めた。

 

こういった、いつもと違う朝を、安心できる相手と迎えることができるのは、幸せなことだ。目覚めた時に、すぐに笑顔で「おはよう」と言える。キスができる。

 

キャンプではあるが、朝食はレトルト食品も含めた簡単なもの。

 

椅子だけを残して、テントも焚き火台も、全部をワゴン車にしまった。

 

散歩。湖の向こう岸を眺め、ゆっくり歩き、森の中に。

 

「なんだ、こっちには、焚き火の薪(まき)が、たくさんあったな」

 

「ホント。昨日は細い枝ばっかりだったのに」

 

このような会話は、二人にとっては「今回の失敗」ではなく、「次への期待」になる。

 

メイが、木のウロ(洞。木の幹にある穴)の中に、黒い布の袋を見付けた。

 

「タクちゃん。これって、何だろう? 誰かが仕掛けた、虫取りの罠でもないし」

 

「そうだなあ。ただ押し込んだだけみたいだ。それが仕掛けなのかも」

 

「どっちにしても、「触らないで」とかの注意書きも無い」

 

タクは、袋を引っ張り出す。

 

「ここはキャンプ場。いたずらされることを怖れていない。それよりも、人間に見付からないようにしているみたいだ」

 

袋は巾着のように、紐で結ばれている。中を見ると、たくさんのダイヤモンドの原石が、ゴロゴロと入っている。

 

「なるほどな。氷砂糖だ」

 

「違うよ。きっと何かの石だよ。でも、割れたガラス瓶が海で丸くなったものでもないし」

 

「いや、氷砂糖だ。決してダイヤモンドの原石ではない」

 

ニヤリと笑う。この時は、まだ「楽しい大きなハプニング」という予感だけだった。拾得物として警察に届ける前に、会社に帰って、ちょっと調べてみようか。

 

「よし、帰ろう!」

 

手早く椅子をワゴン車に片付けて、出発。

 

メイが助手席から森の中を見ると、黒ずくめのスーツの男、うらなりが、木のウロに袋が無いことに気付き、キョロキョロしている。

 

「タクちゃん、さっきの木の所に、見るからに怪しい人がいるよ。おっさんがキョロキョロしている」

 

「そうか」

 

タクは、運転席にある秘密のレバーを上げた。

 

「東海林商事の御曹司を、なめるなよ」

 

秘密のレバー操作により、ワゴン車のナンバープレートが、偽造のものに変わった。

 

うらなりが、キャンプ場の出口に向かうワゴン車を見付けた。

 

「このタイミングで、逃げるように出て行くのは、偶然なのか?」

 

よく見ると、助手席にいる女が、ダイヤモンドの袋を持っているではないか。

 

うらなりは急いで双眼鏡を出し、ワゴン車のナンバープレートを確認する。

 

「あいつか、ダイヤモンドを盗んだのは。取り返さなければ……」

 

双眼鏡でワゴン車を追いながら、うらなりは歯ぎしりする。

 

 

 

注釈:

 

私有地でも、本物に似た紛らわしい偽造ナンバープレートは違法です。

 

 

 

 

 

 





次回は …… 第2話[東海林商事の笑って死ねる拷問]

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