ワールドトリガー LOSTCOLARS
プロローグ
三門市西部、警戒区域。
夕暮れの住宅街に警報が響く。
「トリオン反応確認。トリオン兵、モールモッド四体、バムスター一体。アッシュフォード隊、迎撃をお願いします。」
オペレータールームから遊佐の落ち着いた声が入る。
「了解。」
ライは短く返事をすると、トリガーホルダーを起動した。
「――トリガー、オン。」
白い戦闘体へ換装され、右手にはイーグレットが現れる。
「渚、右路地、千束、正面道路を抑えて。」
「了解。」
「はーい!」
二人が走り出すのを見届けると、ライは三階建てのビル屋上へ跳んだ。
バッグワームを起動。
姿が街並みに溶ける。
「遊佐、敵の配置。」
「正面道路、バムスターが一体。モールモッドが左に三体、右に一体」
「予想通り。」
ライはスコープを覗く。
「渚。」
『はい。』
「三秒後、右から一体出る。」
『……いました。』
スコーピオンが一閃。
モールモッドが真っ二つになる。
「ナイス。」
その瞬間。
モールモッドが咆哮を上げる。
「千束。」
『任せて!』
二丁の拳銃型トリガーが火を吹く。
右手のアステロイドが足を止め、
左手のハウンドが回り込む。
バムスターをライの射線上に誘導する。
「遊佐。」
「隊長の射線、確保しました。」
「了解。」
ライは息を整えた。
引き金を引く。
乾いた一発。
イーグレットの弾丸がバムスターの頭部を正確に撃ち抜いた。
爆散。
「ナイスショット!」
千束が笑う。
しかしライはスコープを外さない。
「……まだ三体いる。」
遊佐が即座に報告する。
「地下駐車場から反応。」
「渚、千束」
「行きます。」
「了解〜」
返事と同時に渚が姿を消した。
カメレオンで隠密しながら、千束とコンビネーションを組む。
数秒後。
「撃破しました。」
「よし。」
警戒区域に静けさが戻る。
「任務終了。」
ライがトリガーを解除すると、遊佐がいつも通り淡々と告げる。
「ベイルアウトなし。トリオン消費、想定より八パーセント低下。」
「いい結果ですね。」
「隊長のおかげだよ。」
千束が笑いながら歩いてくる。
「いや。」
ライは首を横に振る。
「今日は渚の判断が良かった。」
突然褒められた渚は照れくさそうに頭を掻く。
「えっと……ありがとうございます。」
「隊長はもっと自分も褒めればいいのに。」
「褒めるところがない。」
「あるある!」
千束は頬を膨らませる。
「毎回一発で終わらせる狙撃とか!」
「それは仕事だから。」
「真面目すぎるよ……。」
渚が苦笑する。
そんな二人を見て、ライも小さく笑った。
「帰ろうか。」
「ご飯どうします?」
「隊長のおごり!」
「……また?」
「隊長、今月教官手当もらったでしょ?」
「もう使った。」
「何に?」
「訓練用トリガーの改修費。」
千束は大げさに肩を落とす。
「やっぱりそういう人だったー!」
遊佐が通信を切る前に一言だけ付け加えた。
「本部から連絡です。」
「何?」
「城戸司令が帰還後、隊長を呼んでいます。」
ライの表情がわずかに変わる。
「……分かった。」
その様子に渚が首をかしげる。
「何かあったんですか?」
「たぶん。」
ライは夕焼けに染まる本部を見上げる。
「また、面倒な仕事かな。」