人生は選択の連続だ。
ゲームをするか、勉強をするか。
課金するか、我慢するか。
怒られたとき、素直に謝るか。それとも、苦し紛れの言い訳を並べるか。
そんな、誰もが一度は経験するような小さな選択の積み重ねが、やがて人生を形作っていく。
……なんて、偉そうなことを言ってみたところで、僕の人生は大したものではなかった。
二十歳を目前にして、将来の展望はない。
これといって誇れるものもない。
勉強ができるわけでも、運動が得意なわけでもない。人付き合いが上手いわけでもなければ、何かに本気で打ち込んだ経験があるわけでもなかった。
あるのは、無駄に積み重ねたゲームのプレイ時間と、使った金額を思い出したくもない課金履歴。それから、やろうと思っていたのに結局やらなかったことの数々。
……まあ、今さら後悔したところで、何かが変わるわけでもないのだけれど。
うちは、決して裕福な家庭ではなかった。
だからといって、毎日の食事にも困るような貧乏暮らしをしていたわけでもない。
父さんが働き、母さんが家のことをして、僕が学校に通う。特別なことなど何もない、ごく普通の家庭だったと思う。
小学生の頃は、それなりに楽しかった。
学校が終われば友達の家に遊びに行き、夕方になったら帰宅する。宿題を済ませて、夕飯を食べて、風呂に入って寝る。
少なくとも、当時の僕はそれで満足していた。
変わり始めたのは、小学三年生の頃だった。
友達の家で本格的にゲームに触れたのがきっかけだったと思う。
最初は、ただ面白かった。
敵を倒す。ステージをクリアする。新しい装備を手に入れる。少しずつ上達して、今まで勝てなかった相手に勝てるようになる。
現実では何をやっても人並みだった僕でも、ゲームの中なら努力した分だけ結果が返ってきた。
それが、たまらなく嬉しかった。
気づけば、ゲームをする時間は少しずつ長くなっていた。
夜遅くまで遊んで、翌朝に眠い目をこすりながら学校へ行く。
親に見つかって怒られても、「あと少しだけだった」「友達との約束があった」「セーブできなかった」などと、もっともらしい言い訳を並べた。
今思えば、どう考えても僕が悪い。
それでも当時の僕は、自分の非を認めるより、怒られずに済む方法を考えることを優先していた。
そして、そういう小さな逃げ道を見つけるたびに、自分はまだ大丈夫だと思い込んでいた。
いつかちゃんとすればいい。
いつか本気を出せばいい。
今はまだ、そのときじゃないだけだ。
そんな都合のいい言葉を、何度自分に言い聞かせたことだろう。
けれど、いつかはいつまで経ってもやってこなかった。
クレジットカードを勝手に使って課金したことが発覚した日のことは、今でも覚えている。
父さんは怒鳴った。
それはもう、今まで聞いたことがないくらいの大声だった。
何に使ったのか。いくら使ったのか。どうして相談しなかったのか。
当然の質問だったと思う。
僕は答えに詰まり、最初は曖昧な返事をした。それから、ゲームの期間限定イベントがどうとか、欲しいキャラクターがどうとか、そんな話をした気がする。
今となっては、何を言ったのか、細かいところまでは覚えていない。
ただ、母さんが何も言わなかったことだけは、はっきりと覚えている。
怒鳴られることよりも、母さんが黙っていたことの方が、ずっときつかった。
怒られるのなら、まだよかった。
反省しているふりでも、謝罪の言葉でも、何かを返せばいい。
でも、黙って見られると、何を言えばいいのか分からなくなる。
母さんは、僕に何を期待していたのだろう。
失望したのだろうか。
それとも、怒ることすら馬鹿らしくなってしまったのだろうか。
本当のところは、今でも分からない。
その日の僕は、謝った。
もう二度としないと約束した。
そして、しばらくは本当に大人しくしていた。
けれど、時間が経つにつれて、少しずつ元の生活に戻っていった。
別に、反省していなかったわけではない。
……いや、反省していたつもりになっていただけなのかもしれない。
反省したという事実に満足して、肝心の行動を変えることを怠っていた。
そんなことを繰り返しているうちに、僕はいつの間にか、自分に期待することをやめていた。
どうせ続かない。
どうせまた失敗する。
どうせ僕なんかが本気を出したところで、大した結果にはならない。
そうやって、何かを始める前から諦めることを覚えてしまった。
失敗して傷つくくらいなら、最初から期待しない方が楽だ。
努力して結果が出なければ、自分の無能さを認めることになる。
なら、努力しなければいい。
そうすれば、結果が出なくても仕方がないと言い訳できる。
……我ながら、ひどい理屈だと思う。
けれど、そのひどい理屈にすがりついていなければ、自分が本当に何もできない人間だと認めることになりそうで、怖かったのだ。
そんな僕は今、アルバイト先の休憩室で、一冊の漫画を読み終えたところだった。
タイトルは『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』。
通称、モブせか。
もともとは妹に押し付けられた作品だった。
「これ、絶対面白いから。お兄ちゃんも読みなよ」
そんなことを言われて渡されたのが始まりだったと思う。
最初は、乙女ゲームを題材にした作品なんて自分には関係ないだろうと思っていた。
ところが、読み始めると意外にも面白かった。
乙女ゲームの世界に転生した主人公、リオン。
女性が強く、男性が理不尽な扱いを受ける世界で、彼は前世の知識を武器に、さまざまな問題に巻き込まれていく。
しかも、単純に知識で無双するだけの話ではない。
原作の展開が崩れ、登場人物たちの関係が変わり、それぞれが自分の立場や過去と向き合っていく。
最初は敵対していた相手と理解し合うこともあれば、自分の間違いを認め、以前とは違う道を選ぶこともある。
もちろん、綺麗事だけで片付くような世界ではない。
思いどおりにならないこともあるし、どうしようもない理不尽に振り回されることもある。
それでも、登場人物たちは悩みながら、少しずつ変わっていった。
リオンも。
マリエも。
オリヴィアも。
アンジェリカも。
彼らは決して、最初から完璧な人間だったわけではない。
間違えることもあった。
自分勝手なことをしたり、誰かを傷つけたり、取り返しのつかない失敗をしたりもした。
それでも、自分の弱さや過ちと向き合いながら、前へ進もうとしていた。
僕は、そういうところが好きだった。
ただ強いだけの主人公よりも、失敗して、悩んで、それでも立ち上がる人間の方が、ずっと格好いいと思えたからだ。
……それに比べて、僕はどうだろう。
二十歳近くになっても、ろくに自立できていない。
実家暮らしで、免許も持っていない。
学校を卒業してからはアルバイトを続けているが、特別な目標があるわけでもない。
稼いだ金は、生活費として家に入れる分を除けば、かなりの割合が趣味に消えていく。
その趣味が悪いと言いたいわけではない。
好きなものがあるのは、悪いことじゃないと思う。
問題は、僕が好きなものを楽しむために、何も考えずに金や時間を使い、その結果について真剣に考えてこなかったことだ。
漫画の中の彼らは、失敗しても変わろうとしていた。
では、僕は?
僕だって、何度も変わろうと思った。
勉強を頑張ろうと思ったこともある。
アルバイトで稼いだ金を貯めようと思ったこともある。
無駄な課金をやめようと決意したこともある。
でも、長くは続かなかった。
何かを我慢すれば、その反動で別のものに手を出した。
一度失敗すると、もういいやと投げ出した。
そして、また同じことを繰り返した。
僕には、リオンたちのような覚悟がなかった。
……いや。
本当は、覚悟がないという言葉すら、言い訳なのかもしれない。
変わりたいと言いながら、変わるために必要な苦労はしたくなかった。
今までどおりの生活を続けながら、いつか自然と何かが変わることを期待していた。
そんな都合のいい話があるわけないのに。
「……はぁ」
思わず、ため息が漏れた。
読み終えた漫画を閉じ、表紙を眺める。
物語の中の登場人物たちは、ページをめくるたびに変わっていく。
一方で、僕は漫画を読み終えても、昨日と何も変わっていない。
それが、少しだけ情けなかった。
「おーい、そろそろ戻ってこーい」
バックヤードの向こうから、先輩の声が飛んできた。
「あ、はい! 今戻りまーす!」
慌てて返事をする。
休憩時間は終わりだ。
僕は漫画を鞄にしまい、立ち上がった。
いつまでも考え込んでいたところで、何かが変わるわけでもない。
とりあえず、今は働こう。
来月のガチャに使う金も必要だし。
……ほら、結局これだ。
さっきまで自分の人生について考えていたくせに、頭に浮かんでくるのは次のガチャのこと。
我ながら、呆れてしまう。
それでも僕は、いつもどおり仕事に戻った。
いつもどおり働いて、いつもどおり時間が過ぎて、いつもどおり一日が終わる。
明日もきっと、同じような一日になる。
そのときの僕は、本気でそう思っていた。
まさか、その日のうちに人生が終わるなんて、想像もしていなかった。
「……ふぅ」
アルバイトを終え、店の外に出た。
夜の空気が肌に触れ、思わず肩をすくめる。
「……寒い」
秋だというのに、今日は妙に冷え込んでいた。
空を見上げると、街灯に照らされた雲が薄く流れている。
天気予報では、そこまで気温が下がるとは言っていなかった気がするのだが。
それとも、単に僕が薄着なだけだろうか。
……いや、服装に無頓着なせいかもしれない。
そういえば、去年買った上着はどこへやっただろう。
確か、部屋のどこかにしまったはずだ。
明日、探してみるか。
そんなことを考えながら、僕は家へ向かって歩き始めた。
田舎の実家暮らし。
移動手段は、徒歩か自転車。
免許は持っていない。
別に、車が嫌いなわけではない。あれば便利だとも思う。
ただ、免許を取るための金も、車を買うための金も、今の僕には簡単に用意できるものではなかった。
もちろん、計画的に貯金をしていれば、今ごろは違ったかもしれない。
……またこの話だ。
自分の過去を振り返ると、結局いつも同じところに行き着く。
あのとき、こうしていれば。
あのとき、我慢していれば。
あのとき、ちゃんと考えていれば。
そう思うことはいくらでもある。
でも、過去に戻れるわけじゃない。
だからといって、未来のために今から何かを始めるほどの気力もない。
我ながら、どうしようもない。
「……どうにか、したいものなのだがな」
誰に聞かせるでもなく、そんな言葉が口からこぼれた。
変わりたい。
本当は、ずっとそう思っていた。
ただ、何をすればいいのか分からない。
いや、正確には分かっているのだろう。
少しずつでも貯金をする。
無駄遣いを減らす。
何か役に立つことを勉強する。
将来について考える。
言葉にしてしまえば、どれも特別なことではない。
でも、その当たり前のことが、僕にはひどく難しく感じられた。
何かを始めるには、今までの自分を否定しなければならない気がした。
今までの自分が間違っていたと認めなければならない気がした。
そして、そんな自分を認めたところで、本当に変われる保証などどこにもない。
そう考えると、結局、何もできなくなってしまう。
……本当に、面倒くさい人間だ。
自分で自分のことをそう思う。
それでも、いつかは。
いつかは何とかなるかもしれない。
そんな淡い期待だけを抱えながら、僕は歩き続けた。
家へ帰るには、大きな道路を一本渡らなければならない。
普段から何度も通っている横断歩道だ。
周囲には住宅や小さな店舗が並んでいて、夜になると人通りは少なくなる。
その日も、車の往来はまばらだった。
信号が青になったのを確認し、僕は横断歩道へ足を踏み入れた。
そのときだった。
――ゴオオオオッ!
遠くから、低いエンジン音が聞こえてきた。
顔を上げる。
白いトラックが一台、こちらへ向かってきていた。
荷台には貨物が積まれている。
側面に、どこか鉄道会社を思わせるロゴが見えた。
……何を運んでいるんだろう。
そんな、どうでもいいことを考えた。
トラックは、かなりの速度で走っていた。
だが、道路を走る車など珍しくもない。
僕は特に気に留めず、横断歩道を渡り続けようとした。
そのとき。
「――っと待ってよ! まだ話は終わってないの!」
女性の声が聞こえた。
反射的に、そちらを見る。
横断歩道の反対側から、一人の女性が歩いてきていた。
片手にはスマートフォン。
耳に当てたまま、何やら電話の相手に向かって声を張り上げている。
「――ねえ! ちょっと、聞いてるの!?」
ずいぶんと感情的な話し方だった。
電話越しに誰かと喧嘩をしているのだろうか。
声は聞こえても、相手の言葉までは分からない。
女性はスマートフォンに意識を向けていて、周囲をほとんど見ていなかった。
そして、その背後から。
トラックが迫っていた。
「……ん?」
最初は、何かがおかしいという程度だった。
女性とトラック。
その位置関係。
トラックの速度。
横断歩道を渡る彼女の歩幅。
頭の中で、それらがばらばらの情報として浮かんだ。
そして、次の瞬間。
「――え?」
理解した。
このままでは、ぶつかる。
女性は気づいていない。
トラックは止まりそうにない。
距離が、思っていたよりもずっと近い。
クラクションが鳴った。
けたたましい音が、夜の道路に響き渡る。
それでも女性は、まだ電話の相手に何かを訴えていた。
「ねえ! だから、私は――」
そこまで聞いて、僕はようやく、自分が何を目撃しているのかを理解した。
危ない。
助けなければ。
そう思った。
……でも。
僕が助けに行ったところで、どうなる?
間に合う保証なんてない。
下手をすれば、僕まで巻き込まれる。
そもそも、僕は運動が得意なわけでもない。
反射神経が優れているわけでもない。
こんなときに冷静な判断ができるほど、頭がいいわけでもない。
だったら、警察に連絡する?
いや、今から電話をかけたところで間に合うはずがない。
誰か、ほかの人は。
周囲を見回す。
誰もいない。
いや、いたとしても、僕と同じように突然の出来事に戸惑っているだけかもしれない。
どうする。
どうすればいい。
頭の中で、いくつもの考えが浮かんでは消えていく。
怖かった。
自分が死ぬかもしれないと思った。
当たり前だ。
死にたくなんてない。
まだ二十歳にもなっていない。
大したことを成し遂げていないとしても、これから何かが変わる可能性くらいはある。
……いや。
そんなことを言えるほど、今まで何かをしてきただろうか。
将来のことを考えるのが嫌で、面倒なことから逃げ続けてきた。
変わりたいと言いながら、変わるための努力をしなかった。
そんな僕が、こんなところで命を懸けてまで、他人を助ける必要なんてあるのだろうか。
助けたところで、感謝されるとは限らない。
むしろ、余計なお世話だと怒られるかもしれない。
僕は自分の顔に自信がない。
性格だって、褒められたものじゃない。
人を助けるような立派な人間ではない。
そもそも、僕は――。
「……っ!」
女性が、こちらを向いた。
目が合った。
驚いたような顔。
何が起きているのか、まだ理解できていないような表情。
その背後には、白いトラック。
クラクションが、もう一度鳴った。
――間に合わない。
その瞬間、頭の中の言い訳が、すべて吹き飛んだ。
考えるよりも先に、足が動いていた。
走る。
全力で。
普段なら、少し走っただけで息が上がる。
運動不足の身体は重い。
それでも、今だけは止まるわけにはいかなかった。
「危ないっ!」
声を張り上げる。
女性が何かを言った気がした。
けれど、聞き取る余裕はなかった。
僕は彼女の肩に手をかけ、そのまま横へ押し出した。
「きゃっ――!?」
女性の身体が、横断歩道の端へとよろめく。
スマートフォンが手から離れ、アスファルトの上を滑った。
彼女が転ぶのが見えた。
けれど、トラックはもう目の前だった。
……よかった。
その一瞬、そんなことを思った。
彼女は助かった。
少なくとも、トラックの進路からは外れた。
それだけで、十分だった。
僕は逃げようとした。
当然だ。
ここで立ち止まっていたら、自分まで轢かれてしまう。
身体をひねり、足を動かそうとした。
でも、遅かった。
目の前いっぱいに、白い車体が迫っていた。
ブレーキの音。
タイヤが路面を擦る音。
運転手の顔が、一瞬だけ見えた気がした。
ああ。
これ、駄目なやつだ。
そう思ったときには、もうどうしようもなかった。
「――っ!」
衝撃。
身体が宙に浮いた。
何が起きたのか、すぐには分からなかった。
痛みがあったのかどうかさえ、曖昧だった。
ただ、世界がひっくり返ったような感覚だけがあった。
空が見えた。
街灯が見えた。
暗い夜空に浮かぶ雲が見えた。
そして、アスファルトが近づいてきた。
鈍い音がした。
身体が地面に叩きつけられる。
息が、うまくできない。
何かが壊れたような感覚があった。
手足を動かそうとしても、思うように動かなかった。
……ああ。
そっか。
僕、轢かれたんだ。
妙に冷静な自分が、頭の片隅にいた。
どうやら、これが僕の最期らしい。
まだ、やりたいことがあっただろうか。
いや、どうだろう。
ゲームはもっと遊びたかった。
読みかけの漫画も、まだ残っていたはずだ。
来月のガチャだって、引くつもりだった。
……本当に、そんなことばかりだな。
死ぬ間際になってまで、考えることがそれなのか。
自分でも、少し笑えてきた。
もっと、何かあるだろう。
家族に伝えたいこととか。
後悔していることとか。
これまでの人生を振り返って、最後に思い出すような、大切なこととか。
でも、すぐには何も浮かばなかった。
僕は、何をしてきたんだろう。
何を残せたんだろう。
誰かの役に立てたことなんて、あっただろうか。
……いや。
さっき、一人の女性を助けた。
それだけは、間違いない。
理由なんて、うまく説明できない。
自分が立派な人間だからでもない。
死ぬことが怖くなかったからでもない。
むしろ、怖かった。
逃げたかった。
助けなくてもいい理由を、いくつも考えた。
それでも、僕は走った。
どうしてだろう。
どうして、あのとき。
考えても、答えは出なかった。
けれど、ひとつだけ分かったことがある。
僕は、自分のことをどうしようもない人間だと思っていた。
実際、そうだったのかもしれない。
何度も失敗した。
何度も逃げた。
自分に甘くて、面倒なことを後回しにして、変わろうと決意しても長続きしなかった。
それは、今さら否定できない。
でも。
それでも、あの瞬間。
僕は、目の前の人を見捨てなかった。
それだけは、嘘じゃない。
「……そっか」
声になったのかどうかも分からない。
視界がぼやけていく。
身体の感覚が、少しずつ遠ざかっていく。
痛みも、音も、夜の冷たさも。
まるで、自分という存在が、世界から切り離されていくようだった。
そのとき。
視界の端で、何かが光った。
一瞬だった。
街灯の明かりとは違う。
車のライトとも違う。
もっと奇妙な、説明のつかない光。
後ろの方から差し込んできたようにも見えたが、もう振り返ることすらできなかった。
……なんだ、あれ。
走馬灯、というやつだろうか。
いや、走馬灯というには、あまりにも短い。
結局、何も分からないまま、意識が遠のいていく。
最後に思い浮かんだのは、父さんと母さんの顔だった。
母さんは、今ごろ何をしているだろう。
父さんは、明日も仕事だろうか。
僕が帰らなかったら、心配するだろうか。
怒るだろうか。
悲しむだろうか。
……ごめん。
今まで、心配ばかりかけて。
何度も約束を破って。
何度も、期待を裏切って。
結局、最後まで何も変われなかった。
それでも。
もし、もう一度やり直せるのなら。
今度こそ。
今度こそ、ちゃんと――。
その先を考えることはできなかった。
意識が、完全に途切れた。
二十歳を目前にして、将来の展望もなく、誇れるものもない。
そんな僕の人生は、あまりにもあっけなく幕を閉じた。
白いトラックに轢かれ、宙を舞い、アスファルトに叩きつけられた青年――森本裕太は、その夜、命を落とした。
けれど。
それが、彼の人生の終わりだったのか。
それとも、新しい人生の始まりだったのか。
このときの僕には、知る由もなかった。
皆様初めまして。ルーラン810という者です。いつもは頭の中で「もし自分が介入していたなら」などの様々なifを妄想できる一方で文字にする事はとても難しく、それ故に他の方が「自分の書きたいもの」を文字にしているのに、私はAIという小説家から見て邪道とも言えるものを使いました。
何分経験不足なので、かなり粗削りな場所もあり、かなり不安でいっぱいです。指摘や感想などを書いていただけるのであればもっと嬉しいです。
それでは次の話でお会いしましょう
少なくとも、僕はそうやって考えることで、これまで自分の人生と向き合うことから逃げてきた。