5歳になり、ようやく拳銃を扱う許可が出た。
王国では「冒険者の権利」として一家が銃などの武器を管理するなどの比較的緩い条件で管理される一方、乃蒼たちのいる美空では現代日本並みに銃規制が厳しいらしい。
因みに、美空には「PMC」が存在するらしいが、漫画の中みたいな戦争屋ではなく「役員や株、特措法などで政府に縛られ、主に冒険者の訓練や冒険者や傭兵などを使った鉱山採掘中の労働者をモンスターの脅威から守る事、未開拓地や山間部などでの害獣やモンスター狩りなどをし、冒険者は各々で行動したりパーティーを組んだりするのではなくPMCの管轄下に入り、銃器や魔法、通信など様々な資格を取った上で、国会議員の何倍にもなる金を手にする『老いるまでに多額の金を稼げば引退後の生活が楽になる』ある意味エリート職兼日本のハンターのような感じ」らしい。
パァン!!
「...外れた」
それはそうとして、
許可が下りた日からずっと試していたが、射撃の腕前は散々だ。的に当たる事すらなく、壁に弾痕を残すばかり。
「はぁ...。」
因みに、この後は兄上と剣術の訓練だが、正直に言って行くつもりはないし行っても無駄だと思ってる。でも向こうは「少しくらいはマシになるはず」と思っており、少なくとも1年間は僕が「本当に剣術が向いていない」と証明する為に負け続けなければならないだろう。
因みに、いつも僕は一撃で負けている。
「はぁっ!」
「いだっ!」
気付けばもう5歳7か月だ。
そしていつも通り、一撃で負けた。無論、これが僕の本気だ。
「いてて...」
「ギルバート様、今日も剣の腕が磨かれていますね。鍛錬の賜物でしょう。」
「いえ、これは私だけの成果ではありません。これまでの師匠の御指導や、不得意でありながら練習に付き合ってくれたアルのおかげでもあります。」
外部から雇った指南役が今日でもう役目が終わるとはいえ、いつも通り兄上は謙遜していた。
・・・イケメンで剣の腕が良くて性格まで良いとなると、もはや同じ人間かと疑いたくなるほど完璧に近い。
こんな兄上があのダメ王子からアンジェへの婚約破棄1つで家ごと没落しかけて貰い手が激減するのは、正直に言って王国の国益を損なっているとも言える。
それはそうとて、僕は兄上と共に指南役に別れの言葉を告げ、部屋へと戻っていった。
指南役が役目を終えてから1か月、もう8月へと突入していた。
そして今僕たちは、領内にある避暑地の浮島にいる。
「ふぅ...」
父上が理解してくれたのか、ようやく僕は毎日1時間の射撃訓練と引き換えに剣術の訓練をする必要が無くなった。
因みに流石の兄上も父上に心配され、強制的に同じ避暑地へと連行された。
そして...
「アル、いつまで辛気臭い顔してんのよ。」
「そ~そ~。せっかくのお休みだから羽を伸ばさないと...。」
正直に言うと、僕は前世で半分引き籠り状態だったので外で遊ぶ事はあまり好きではなかった。
だが、今はまだ5歳故にゲームをやらせてくれないしやっても怪しまれるだけだ。
そうやって自分に言い聞かせながら外遊びに付き合い続けた結果、どうにか慣れた。
そうやって色々と考えていると、麻璃が僕の手を引っ張ってきた。
「ねぇ、そういえば子の浮島には地下に遺跡があるんだって~。」
・・・そういえば、確かにこの島には立入禁止の遺跡がある。
でも、我が家は公爵家だから完璧な封鎖もできるはずだから子供3人で入ろうとしても止められるだけだし、そもそもあそこは古代のロボットやらモンスターがいて危険って聞いてるから流石に行かない方がいいはずなのだが...
そう考えていると、麻璃は僕の手を引っ張ってきた。
「ね、行こ!秘密の通路は1つだけ見つけたから!ちなみに3人分の銃は家から盗んできた!」
「アタシはこれでも近所の威張ってる奴をボコボコにしたから、安心しな。モンスターなんてこの拳銃の的にしてやるから」
えぇ・・・
僕より2歳上の7歳児とはいえまだ子供なのに大人すら苦戦する立入禁止区域に入るなんて、いくらなんでも無謀すぎる...。僕は絶対に行きたくない...。
そう思いながらも、僕はズルズルと引っ張られていった...。
「おぉ...!古代のロマンを感じるねぇ...。」
麻璃は嬉しそうな顔で、この古代遺跡の天井や壁を見ている。
正直に言って、僕は来たくなかった。
理由?そんなのモンスターとか古代のロボットが怖いからに決まっている。
それはそうとして、怖いが右も左も分からずに1人で出口を探して逃げるよりは、子供故に頼りない2人についていった方がいいと考えた。
全体的に探索しただけだが、ただ不気味なだけでモンスターも何もいなかった。
途中で武器庫らしき場所から拳銃弾などを補給したりしたが、別に警備システムなどもなかった。
ついでに言うと、ここは別に数千年とか数万年とかも昔の古代っぽくはなく、100年くらいしか経ってなさそうな感じだった。
そして僕たちは、開けてはいけない扉を開けてしまう...。
ガチャッ
「・・・なんだよ・・・あれ・・・」
僕が目にしたのは、某宇宙世紀世界に出てきそうな巨大ロボみたいな「鎧」と、某宇宙戦艦系アニメに出てきそうな巨大な宇宙戦艦らしきものだった。
「おぉ...!」
麻璃が嬉しそうに、鎧と宇宙戦艦を見る。
すると、けたたましい警報と共に人型ロボットが3体ほどやってきた。
<侵入者を確認。強制排除プロトコルを発動。>
「は、排除!?」
「チッ!取り囲まれたわね...。」
麻璃と乃蒼はとても驚いている。ちなみに僕は声が出せないほど驚いているので2人以上に驚いている。
それはそうとして、僕は麻璃から渡された拳銃の事を思い出し、ホルスターに手を賭けようとする。すると...
ガシッ
「ッ...!クソッ!」
ロボットに腕を掴まれ、銃を抜くどころか僕含めて3人全員が地面に組み伏せられる。
「ちょっと!離しなさいよ!」
乃蒼の声に反応したのか、ロボットは突然口を開く。
<それはできません。新人類であるあなたたちを、生きて帰す事などできません。>
ロボットは無機質な口調でそう言うと、僕たちの首を締め上げる。
「あぐ...っぇぁ...っ!」
首を締め上げられてもはや2人の事を心配する余裕すら無くなった僕は、ぼやける意識の中でロボットが首にぶら下げている。
「たな...か...たろ...う...?」
首にぶら下げてある薄い鉄製のタグには、「田中太郎設計主任」と書いてあった。
<・・・なぜ・・・あなたは新人類でありながら日本語を読めるのですか・・・?>
ロボットが僕の首から手を離し、僕は地面へと落ちる。
「はぁっ、はぁっ...それは...」
ここで正直に「転生者だからです」と答えても恐らく理解してもらえないだろうし、麻璃も乃蒼も純粋だから、親に「転生者って何?」と聞かれると後から怪しまれたりして僕も困る。かといってここでどう答えれば安全に帰してくれるのかも分からない。すると、ロボットが先に口を開いた。
《どうやら、出入口の方に向かって邪魔者が来ているようです。私の火力ではこの興味深い3人もろとも破壊してしまいそうです。大人しく鉄屑のフリをしましょう。》
そう言うとロボットたちは電源が切れたのか、操り人形のように倒れた。
そして、それと同時に「豪華な迎え」も来た。
「こちらA4。対象の3名を発見。...報告とは違い、古代ではなく現代風のロボットに包囲されていますが、問題なく制圧できそうです。」
ホルファート王国の騎士たちとは違い、完全防備で自動小銃を持った特殊部隊が突入してきた。我が家の家紋をつけているのでおそらく、僕たちを助けに来たのだろう。
「はぁっ、はぁっ...やっと、助けが来た、わね...」
乃蒼は息が絶え絶えになりながらも安堵している。
こうして、僕たちは彼らによって助けられた。
「...それで、あそこに入った事に対して何か言いたいことはあるか?」
「いえ、全てあの2人の誘いを断って止める事ができなかった僕の責任です。」
僕は今、あの遺跡に入った事に対して父上から問い詰められている。
内心ではかなり震えながらも、正直に非を認めてどうにかこの場を切り抜けようとした。
「...まあいい。自らの過ちを認めたのなら、それはたとえ小さくとも成長の第一歩となる。それに、お前が無事でよかった。」
どうやら父上は、僕を叱る以上に僕の命を心配していたらしい。
正直に言って、他人から本気で心配されると僕が感じ取ったのは久しぶりだ。
「だが、次からは二度とあのような危険な真似はするな。命は金では買えない。この事を忘れるな。」
「分かりました、父上。そのお言葉を脳内に刻み付けておきます。」
僕は父上にそう言われ、部屋を後にした。
その後に分かった事だが、どうやらあの鎧はかつてファンオース公国がまだ大公だった頃にホルファート王国からの独立を宣言して戦争が起きた際、美空国から供与されたもので、宇宙戦艦も同じようにして渡されたが、処分費用をケチってそのまま埋めたらしい。つまり、「どちらも古代ではなく割と最近の遺物」らしい。
そして、鎧の名前は美空国の当時の主力鎧の輸出型である「ファイグ」で、宇宙戦艦の名前は「紀伊」、そしてあのロボットの名前は「ルイナ」らしい。
にしても、この世界では旧人類の言葉故に古代語の一部という扱いとはいえ、八八艦隊計画にあった「紀伊」の艦名をそのままつけてるのは除いて、ドイツ語で「臆病者」やら「卑怯者」を意味する名前を輸出型の鎧につけてる事に関しては美空の軍関係者のネーミングセンスが捻くれてように僕は感じる。
でも、ルイナに関しては僕は一番驚いた。
どうやら、会議を盗み聞きした結果、アレは「旧人類の滅亡後に主を失い、彷徨い続けた末にまだあの島がレッドグレイブ領ではない無人の浮島だった頃に、地下施設の中にある紀伊とファイグに住み着き、2つを遠隔操作なしの自己判断で管制できる能力を持つ」らしい。
そして、ルイナはどうやら「あの少年が我々の言葉を理解してくれるので、警戒は解かないが限定的な協力はする」として、「補助AI」として僕がルイナの「マスター」になって共に生活し、僕をルイナが監視する事を認めるなどの事を条件に、新人類ではなくレッドグレイブ家でもなく「僕に」協力してくれるらしい。
おまけに、父上たちはどうやらルイナの「真の力」を王家に知られるとどれだけ清廉潔白であると証明しても疑いは残ると考えて、苦渋の決断で「偽の文書を作成し、ファイグと紀伊はそのままのスペックで報告するが、ルイナは『現行モデルと同格の単なる補助AI』として王家に報告する」らしい。
僕には政治が分からないが、つまりは「ルイナは『僕を監視してデータを集め、僕と共に生活する事を条件に僕に協力してくれる』という事と『紀伊とファイグはそのままのスペックで報告するが、ルイナだけは意図的に"補助AI"として報告する』」という事だと僕は整理した。
そしてどうやら父上は僕に「剣術もできず運動能力も低いが、一縷の望みを遠隔操作にかけて、麻璃と乃蒼の両親こと直人と戸三々が経営するPMCノ『藍衛』」に、鎧の操縦の指導の依頼をするらしい。
・・・めんどくさいけどやるしかないのかぁ...
一応、4話が完成しました。次が訓練編です。長々と引き伸ばして申し訳ありません。