※お知らせ:作品の雰囲気を整えるため、第1話〜第11話における主人公の口調を「タメ口」から「敬語」へ一括修正いたしました。ストーリー展開自体に変更はありません。
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入学式当日。
式場に足を踏み入れた僕は、思わず天井を見上げていた。
広い。
いや、広いなんて言葉では足りない。
前世で見た安田講堂なんか比較対象にすらならないほどの広さと豪華さだった。高い天井には精巧な装飾が施され、壁際には貴族の家紋を思わせる意匠が並んでいる。正面の壇上には金色の装飾が施された演台が置かれ、そこに立つ者を一段と立派に見せるための工夫が凝らされていた。
ここまでくると、もはや講堂というより劇場だ。
これだけの施設を維持するのに、一体どれほどの金が必要なのだろう。
そんなことを考えながら、僕は指定された席に腰を下ろした。
眠い。
朝早くから着替えだの挨拶だのと忙しく、式が始まる前から既に帰りたい気分だった。
しかし、ここで居眠りなどすれば、レッドグレイブ公爵家の名に傷がつく。
僕自身はともかく、家の名前まで巻き添えにするのは避けたい。末っ子であろうと、レッドグレイブ家の人間である以上、最低限の振る舞いは求められるのだ。
面倒な話である。
僕は背筋を伸ばし、周囲をさりげなく見回した。
見渡す限り、貴族、貴族、また貴族。
身に着けている衣装も、家によって微妙に違う。刺繍の細かさや装飾品の質、仕立ての良さ。そういった細部にまで、それぞれの家の財力や格式が滲み出ていた。
なるほど。
これが貴族の子弟を集めた学園というわけか。
平等な教育の場などという建前はあるものの、実際には家格も財力も権力も持ち込まれる。むしろ、そうしたものが複雑に絡み合うからこそ、ここは貴族社会の縮図と呼ばれるのだろう。
そして、そんな会場の視線を一身に集めている男がいた。
壇上に立つ、紺色の髪を短く整えた少年。
ホルファート王国の王太子、ユリウス・ラファ・ホルファート殿下である。
見た瞬間、僕の頭には率直な感想が浮かんだ。
うわ、出たよ。バカ王子。
もちろん、そんな言葉を口にするわけにはいかない。
彼は王太子だ。公の場で不敬な発言をすれば、僕個人の問題では済まなくなる。レッドグレイブ家の名前まで巻き込んで面倒なことになるのは目に見えていた。
何より、今の僕は姉上の弟である。
王太子殿下と婚約している姉上を差し置いて、僕が好き勝手に振る舞うわけにもいかない。
だから、表面上は何事もないような顔で演説を聞き流す。
……いや、聞き流すと言っても、完全に無視しているわけではない。
ユリウス殿下は、悔しいことに見た目だけなら完璧だった。
背が高く、鍛えられた体つきも均整が取れている。肌は綺麗で、紺色の瞳には宝石のような輝きがあった。立ち姿にも無駄がなく、王太子として人前に立つことに慣れているのがよく分かる。
周囲の女子生徒たちが、彼の姿を見て溜息を漏らすのも理解できた。
あれは確かに、一般的な美男子という範疇を超えている。
顔面偏差値だけなら、もはや別世界の住人だ。
もっとも、その内面については、いろいろと言いたいことがある。
特に、婚約者である姉上への態度だ。
今後の展開を知っている身としては、あの男が姉上を冷遇し始めることを思うと、どうしても好意的な目では見られなかった。
とはいえ、今この場で何かできるわけでもない。
僕の近くにはダニエルとレイモンドの姿もあったが、さすがに王太子殿下の演説に文句をつけるほど命知らずではないらしい。2人とも大人しく壇上を見ていた。
そんな中、不意に後方から弾んだ声が聞こえてきた。
「ついに来たわね。もう、王子様ったら10年も待たせちゃって」
……はい、来ました。
聞き覚えのある声。
間違いない。マリエ・フォウ・ラーファンだ。
金髪碧眼。美人というよりは、妹系の可愛らしさを前面に押し出した容姿。声も仕草も愛らしく、相手に警戒心を抱かせない雰囲気を持っている。
ただし、その内側に何があるのかを知っていると、話は変わってくる。
彼女がユリウス殿下と結ばれ、王妃の座に就く。
その未来を阻止できなければ、ホルファート王国は革命前夜のフランスのような有様になりかねない。
……いや、別に僕は愛国者ではない。
国がどうなろうと知ったことではない、と言いたいところだ。
しかし、そんな国の中で生きている以上、国が傾けば僕の生活にも影響が出る。ましてやレッドグレイブ公爵家の人間である僕は、国の情勢と無関係ではいられない。
つまり、非常に迷惑な話なのである。
それにしても、マリエの視線は分かりやすかった。
壇上のユリウス殿下を見つめる瞳は、恋する乙女そのもの。
ただ、そこに純粋な恋心だけがあるのかと問われれば、僕としては疑問符を付けざるを得ない。
金と権力。
そして、自分が望む未来。
それらを手に入れるために、彼女は王太子殿下を選んでいるのではないか。
もちろん、今の段階で断言するつもりはない。あくまでも「原作通りなら」の話だ。僕は彼女の心を直接読めるわけではないのだから。
それでも、原作を知っている身としては、警戒せずにはいられなかった。
その時、隣の方からダニエルの声が聞こえた。
「なあ、リオン。もう相手を見つけたのか? お、可愛い感じだな。ああいう子が好みなのか?」
からかうような口調だった。
話を振られたリオンは、しばらく壇上を眺めた後、静かに首を横に振った。
「いや、どちらかと言えば……嫌いだ」
「そ、そうか。可愛いと思うんだがな」
ダニエルは少し困ったような顔をしていた。
正直に言うと、僕はリオンのその感覚を評価したい。
この時点でマリエと深い関わりがあるわけでもないだろうに、彼女に対して好意を抱いていないらしい。
原作を知る僕からすれば、その反応には納得できるものがあった。
彼にとってマリエは、単純に異性として好き嫌いを判断できる相手ではないのだろう。
怒りや嫌悪感、割り切れない感情。
いずれそうしたものが複雑に絡み合っていくのかもしれない。
もっとも、今の僕にとってマリエは、そこまで複雑な存在ではなかった。
軽蔑。
今のところは、それだけだ。
……などと考えているうちに、ようやく入学式が終わった。
そして、間を置かずに新任式が始まる。
正直に言って、もう寝たい。
しかし、ここで眠ればレッドグレイブ家の名を汚すことになる。
僕は自分にそう言い聞かせ、どうにか姿勢を崩さずに座り続けた。
次々と教師たちの名前が読み上げられ、壇上に上がっては簡単な挨拶をしていく。
その中で、僕の目を引く人物が現れた。
「南雲レンです。まだ22歳で教師としての経験も浅く、身分制度のない美空国から来たので平民ですが、教育実習生としてしばらくお世話になります」
(レン先生:
)
……ん?
思わず、そちらを見た。
南雲レン。
その名前も気になるが、それ以上に格好が気になった。
ホルファート王国は、どちらかといえばゲルマン圏を思わせる文化を持つ国だ。金髪などの明るい髪色も珍しくない。
それに対して、美空国は日本に近い文化を持つ国である。
だから、黒髪そのものは別におかしくない。
問題は、その髪が黒と紫の混じったような色合いで、瞳まで同系統の色をしていること。そして、白いワイシャツを羽織り、ミニスカートを身に着け、一部が破れたタイツまで履いていることだった。
……マジですか。
僕は思わず、そんな言葉を心の中で呟いた。
いや、待ってほしい。
ここは貴族の子弟が通う学園だ。
使用人をいびる者もいれば、身分の低い者を見下す者もいる。礼儀作法や伝統を重んじる人間だって多い。
そんな場所で、あの格好が許されるとは。
いや、教育実習生という立場だからこそ、ある程度の自由が認められているのかもしれない。
それにしたって、攻めすぎではないだろうか。
試しに周囲の男子生徒たちを見てみる。
「あの先生、メイドとして雇いたい……」
「平民じゃなければ、俺と婚約しても文句は言われないんだけどなぁ」
「あのタイツの破れ具合がたまんねぇ……」
……うん。
まあ、そうなるよね。
彼らの視線は、教育実習生としての能力などではなく、ほぼ完全に見た目に向けられていた。
一方、壇上にいる教員たちの表情はあまり芳しくない。
眉をひそめている者もいれば、露骨に嫌そうな目を向けている者もいる。
校風や伝統、風紀への影響を懸念しているのだろう。
それに加えて、平民である彼女が貴族の学園で堂々と振る舞っていることへの反感もありそうだ。
身分制度のない美空国。
その国から来た平民の教育実習生。
そして、あの服装。
いろいろな意味で、この学園には刺激が強すぎる人物だった。
……まあ、かくいう僕も、少しばかりドキドキしていたのだが。
別に、仕方ないだろう。
目の前にあれだけ目立つ人物が現れれば、多少は意識してしまう。
僕は咳払いをして、視線を正面に戻した。
これ以上見ていると、何か余計なことを考えてしまいそうだったからだ。
そして、その時。
この入学式の裏側で、僕たちが知る由もないニュースが世界を駆け巡っていた。
美空国が、20年ぶりとなる公開核実験を実施した。
その報道が、王国の人々にどのような影響を与えることになるのか。
少なくとも、この時の僕はまだ知らなかった。
ただ、後になって振り返れば、あの日の入学式は、僕が思っていた以上に多くの厄介事の始まりだったのかもしれない。
……できれば、そんな始まり方は遠慮してほしかったのだが。
入学式から1か月が過ぎた。
学園生活にも慣れ始めた頃だが、僕の周囲には相変わらず面倒な空気が漂っていた。
入学当初、姉上は僕の交友関係について、ある懸念を抱いていた。
それは、僕がレッドグレイブ公爵家の人間であることを利用しようとする女子生徒が集まってくることだ。
我が家は王国でも有数の名門貴族であり、姉上は王太子殿下の婚約者。
その弟である僕と親しくなれば、社交界で何らかの利点を得られると考える者がいても不思議ではない。
中には、僕自身に興味があるというより、レッドグレイブ家との繋がりを求めて近づいてくる女子もいるだろう。
ひどい場合は、僕を都合のいい飾りか、手元に置いておくペットのように扱おうとする者までいるかもしれない。
……実際、入学直後はそんな空気があった。
ただし、予想外だったのは、その後の展開である。
姉上は、美空国出身の乃蒼と麻璃が、身分制度のない国から来た平民であることを理由に、学園でいじめの対象になるのではないかと心配していた。
ところが、現実は少し違った。
乃蒼と麻璃は、ただの留学生ではない。
2人は、美空国の大手PMCである藍衛。その経営者一家、生塩家の双子の姉妹だ。
美空国には身分制度がないため、王国の基準で言えば平民に分類される。
しかし、それはあくまで王国側の価値観で見た場合の話だ。
実家の影響力、本人たちの能力、そして背後にある美空国という国家の存在。
それらを知った者たちが、彼女たちを単純な平民として扱えるはずもなかった。
さらに、入学式直後には美空国が公開核実験を実施したという報道まで流れた。
そんな状況で、藍衛の経営者一家の娘たちに露骨な嫌がらせをする。
よほど無謀な人間でもなければ、そんな真似はしないだろう。
もちろん、陰でひそひそと噂する者はいる。
だが、表立って手を出す者はほとんどいなかった。
乃蒼も麻璃も、生塩家の人間として相応の立場を持っている。平民だからといって、簡単に見下せる相手ではないのだ。
そして、僕はその2人と親しい。
結果として、僕自身にも妙な評判がついてしまった。
曰く、美空国の大手PMCの経営者一家と繋がりがある。
曰く、あの双子を怒らせれば面倒なことになる。
曰く、レッドグレイブ家の人間である以上、迂闊に手を出すべきではない。
……いや、待ってほしい。
僕は別に、そんな大層な人間ではない。
乃蒼や麻璃と親しいのは事実だが、僕が何かされたからといって、藍衛がわざわざ王国の学園にまで介入してくるとは限らない。
そもそも、そんなことをすれば国際問題になりかねないだろう。
それでも、周囲の人間は勝手に想像を膨らませているらしい。
僕自身は怖くない。
だが、隣にいる2人の背景が厄介すぎる。
だから、僕を利用しようとするのも、敵対するのも避けておこう。
そういう結論に至ったわけだ。
おかげで、僕は良くも悪くも孤立していた。
近づきたくても近づけない。
親しくなりたいと思っても、背後関係が気になって踏み出せない。
そんな微妙な距離感が、僕の周囲には出来上がっていた。
……正直、ありがたい。
面倒な人間関係に巻き込まれずに済むのだから、僕としては願ったり叶ったりだった。
ただし、そのせいで余計な誤解まで広がっているのは困りものだが。
そんなことを考えながら、僕は学園の中庭にあるベンチに座っていた。
木々の葉が風に揺れ、遠くから生徒たちの話し声が聞こえてくる。
授業の合間の、比較的静かな時間。
こういう時間こそ、学園生活で最も価値があるのではないだろうか。
少なくとも、僕にとってはそうだった。
……しかし、静かな時間というものは、そう長く続かないらしい。
「なあ、お茶会はどうする? やっぱり招待する相手は選ぶべきだよな?」
隣のベンチから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
リオンたちだ。
どうやら、5月の連休に開催されるお茶会について相談しているらしい。
この世界では、男子生徒が女子生徒を茶会に招待することが、婚活における重要な行事の1つになっている。
ただ女性を誘うだけなら、そこまで難しいことではない。
しかし、お茶会となると話が変わる。
誰を招待するのか。
どのような会場を用意するのか。
どんな茶器を使い、どのような菓子を出すのか。
招待する相手の家格に見合ったもてなしを用意できるかどうかまで、厳しく見られるのだ。
つまり、単なるお茶会ではない。
男子生徒にとっては、自分の家の財力や教養、そして将来性をアピールするための場でもある。
面倒な話だ。
僕としては、そんなことに労力を割くくらいなら、適当に休んでいたい。
しかし、そうもいかない。
僕はレッドグレイブ公爵家の末っ子だ。
家を継ぐ立場ではないとはいえ、家格に見合った振る舞いを求められることに変わりはない。
ここでお茶会を開かなければ、女子生徒たちの間で「あのレッドグレイブ家の子息は、お茶会すら開けない」と噂される可能性がある。
そうなれば、僕個人の評判だけでなく、家の名誉にも関わってくる。
地方の余裕のない貴族なら、まだ言い訳もできるだろう。
しかし、我が家はレッドグレイブ公爵家だ。
金がないわけでもないのに、家格に見合った茶会を開けないとなれば、周囲からどう見られるかは想像に難くない。
敵対する派閥に、余計な口実を与えることにもなりかねない。
……本当に、貴族というのは面倒な生き物である。
「実家から仕送りをしてもらったけど、そんな贅沢なお茶会は開けないんだ。僕は参加してくれそうな女子なら誰でもいいや」
レイモンドが、困ったような声で言った。
その言葉に、ダニエルも肩を落とす。
「今年は殿下や名門貴族たちがいるからな。下手に比べられたら、たまったもんじゃないぜ」
「そうだよな。僕たちがどれだけ頑張っても、最初から用意できるものが違うんだから」
2人の言い分はもっともだった。
王太子殿下や有力貴族の子弟は、家から十分な資金や人手を用意してもらえる。
会場の手配も、茶器の準備も、菓子の選定も、必要なら専門家に任せられるだろう。
一方で、そうした後ろ盾が十分ではない生徒たちは、自分たちで何とかしなければならない。
もちろん、工夫次第で素晴らしい茶会を開くことはできる。
だが、最初から条件が違うのも事実だった。
僕は遠い目で空を見上げた。
できることなら、僕もお茶会など開きたくない。
しかし、開かなければ家の名前に傷がつく。
開けば開いたで、招待する相手を選ぶところから頭を悩ませることになる。
誰を呼べばいいのか。
どの程度の規模にすればいいのか。
どこまで金をかければ、家格に見合ったものになるのか。
考え始めるだけで、頭が痛くなってくる。
いっそ、女子生徒たちから罵声を浴びる覚悟で、適当に済ませてしまおうか。
そんな考えが頭をよぎった、その時だった。
「ユリウス様! どうか私を招待してください!」
「いえ、私もぜひ! どのような条件でも受け入れますから!」
……何事だ?
声のする方へ視線を向けると、そこには大勢の女子生徒たちが集まっていた。
中心にいるのは、もちろんユリウス殿下。
その隣には、彼に仕え、共にマリエを守ることになるジルクが控えている。
女子生徒たちは、瞳にハートでも浮かべていそうな顔で殿下に話しかけていた。
中には、普段なら絶対にそんな真似はしないだろうと思えるほどの家格を持つ女子までいる。
周囲には、伯爵家や辺境伯家出身の男子生徒たちが取り巻きのように集まり、殿下の機嫌を取ろうとしていた。
まさに大名行列。
……すごいな。
いや、何がすごいって、あの人数に囲まれても殿下が平然としていることだ。
僕なら、あの時点で帰りたくなっている。
まあ、王太子殿下という立場なら、こういう状況にも慣れているのだろう。
そんな光景を見ていると、隣のベンチから深いため息が聞こえた。
「……今年は殿下や名門貴族たちがいるから、ハードルが高いよね」
レイモンドが両手で顔を覆っていた。
「比べられるのは勘弁してほしいぜ」
ダニエルも苦笑している。
確かに、あれを見せつけられれば、自分のお茶会をどうするべきか悩むのも無理はない。
王太子殿下が開く茶会と、僕たちが開く茶会。
同じ基準で比較されるだけでも、かなり厳しいだろう。
……などと思っていたら、さらに面倒な人物が現れた。
姉上だ。
取り巻きを引き連れ、背筋を伸ばして歩いてくる。
その姿は、まさに公爵令嬢に相応しい。
周囲の生徒たちが自然と道を開けていくのを見て、僕は改めて姉上の存在感を思い知らされた。
なるほど。
これが姉上の放つオーラというやつか。
美しいだけではない。
近寄りがたい威厳と、相手に有無を言わせない圧力がある。
……強敵感がすごい。
そんな感想を抱いていると、殿下を取り囲んでいた女子生徒たちが、そそくさと距離を取った。
さすがに婚約者の目の前で、露骨に茶会への招待をねだるのは気が引けるらしい。
もっとも、姉上の視線が少し鋭くなったのを見れば、彼女たちが距離を取った理由もよく分かる。
姉上は殿下の前で足を止めると、丁寧に頭を下げた。
「王太子殿下。5月の茶会について、少しお話があります。ご一緒してもよろしいでしょうか?」
声は落ち着いていた。
しかし、その場の空気は明らかに変わっていた。
学園内では、外の地位や親の権力を持ち込むべきではない。
建前としては、そういうことになっている。
だが、現実は違う。
生徒たちがどこの家の人間なのか、誰がどの派閥に属しているのか。それらは学園に入ったからといって消えるわけではない。
ましてや、王太子殿下の婚約者である公爵令嬢が相手となれば、周囲が無関係でいられるはずもなかった。
「アンジェリカ、周囲を威圧するな。ここは学園だぞ」
殿下が少し煩わしそうに言った。
「ええ、心得ています。ただ……王太子殿下の周囲が少々騒がしかったもので」
姉上は微笑んだ。
その笑顔を見て、周囲の女子生徒たちが気まずそうに視線をそらす。
……怖い。
いや、本当に怖い。
怒鳴っているわけでもないし、露骨に脅しているわけでもない。
それなのに、姉上が一言口を開くだけで、周囲が勝手に萎縮していくのだ。
これが家格というものなのだろうか。
僕は末っ子として姉上を見慣れているつもりだったが、こうして学園で見ると、また違った印象を受ける。
公爵令嬢としての姉上は、普段の姉上とは別人のようだった。
……まあ、そんな姉上が何を言いに来たのかは、だいたい想像できる。
茶会の格についてだろう。
そして、その予想はすぐに当たることになった。
姉上の視線が、殿下の背後にいる女子生徒たちから外れた。
その先にいたのは、1人の少女。
金髪碧眼。
華やかな美人というより、可愛らしさが先に立つ容姿。
子爵家の娘、マリエ・フォウ・ラーファンだった。
……現代のマリー・アントワネット。
僕は思わず、そんな言葉を心の中で呟いた。
もちろん、彼女が歴史上の人物と同じ運命を辿ると決まったわけではない。
それでも、自分の幸せを優先するあまり、周囲の人間を踏み台にしてしまう危うさは、どこか似ているように思えた。
ただ、僕自身もまた、目的のために他人を変数として扱う計画を立てている。
そういう意味では、彼女のことを一方的に非難できる立場ではないのかもしれない。
だが、それとこれとは別の話だ。
少なくとも今の僕は、彼女に対して好意を抱いていなかった。
原作での彼女の行いと精神的な幼さを知っているので、怒りというよりも、軽蔑に近い感情だった。
その時、僕の視線に気づいたのか、ジルクがこちらを一瞬だけ見た。
そして、殿下に何かを耳打ちする。
「ん? ああ、マリエか。ちょうど良かった。お前のことを探していたんだ。こっちに来てくれないか」
殿下は笑顔でマリエを呼んだ。
その瞬間、姉上の眉がわずかに動いた。
ほんの少し。
普通なら見逃してしまうほどの変化だったが、近くで見ていた僕には分かった。
姉上の取り巻きの1人が、マリエについて殿下に何かを伝えたらしい。
姉上の表情が、さらに険しくなった。
……まあ、当然だろう。
自分の婚約者が、家格の釣り合わない少女をわざわざ呼び寄せているのだ。
しかも、その少女が周囲からどう見られているのかを知れば、気分が良いはずもない。
僕だって、身内が誰かに軽んじられていると知れば、多少は腹が立つ。
だから姉上の言いたいことは分かる。
呼ばれたマリエは、少し戸惑ったような顔をしながら近づいてきた。
「なんでしょう、殿下?」
その声は、いかにも可愛らしい。
緊張感の漂うこの場にあっても、彼女だけはどこか別の空気をまとっているようだった。
いや、正確には、そう見えるように振る舞っているのかもしれない。
その様子を見て、隣のダニエルが胃のあたりを押さえた。
「俺、帰ったら駄目かな?」
小声で呟く。
リオンも、露骨に嫌そうな顔をしていた。
レイモンドは周囲を見回し、逃げ道がないか確認しているようだった。
残念ながら、僕たちはこの場から離れられそうになかった。
ここで立ち上がれば、かえって目立つ。
王太子殿下と公爵令嬢が話している最中に、レッドグレイブ家の次男と貧乏貴族2人、成り上がり1人が揃って逃げ出したとなれば、余計な噂を立てられる可能性がある。
結局、僕たちはベンチに座ったまま、成り行きを見守るしかなかった。
「実は、男子は5月に茶会を開かなくてはいけなくてね。あまり派手なものにはしたくないから、知り合いだけを呼ぶつもりなんだ」
ユリウス殿下は、そう説明した。
その言葉に、姉上がすぐさま反応する。
「王太子殿下。茶会にも格がございます。このような者を招待するというのは――」
「いい加減にしろ、アンジェリカ」
殿下は姉上の言葉を遮った。
ああ、始まった。
僕は内心でため息をついた。
この展開は、原作でも重要な場面だったはずだ。
そもそも、貴族社会における茶会とは、単に茶と菓子を楽しむための集まりではない。誰を招待するかによって、主催者がどの家と親しいのか、どのような人間関係を築こうとしているのかが周囲に伝わる。
家格の違いを無視して招待客を決めれば、相手を軽んじていると受け取られることさえある。
もちろん、学園の中では生徒同士は平等だという建前もある。
しかし、その建前だけで貴族社会の仕組みが消えるわけではない。
姉上が気にしているのは、単純にマリエが気に入らないからというだけではないのだろう。
王太子殿下が軽率な振る舞いをすれば、それは婚約者である姉上にも、ひいては王国の政治にも影響を与えかねない。
だからこそ、姉上は止めようとしている。
……まあ、感情的な部分もあるのだろうが。
その一方で、殿下は聞く耳を持たなかった。
「ここは学園だ。俺は一生徒としてここにいる。お前は俺の婚約者だが、そこまで干渉されるいわれはないぞ」
殿下の声には苛立ちが滲んでいた。
姉上は一瞬だけ言葉を失い、それから静かに頭を下げた。
「……失礼しました」
それだけ言うと、姉上は踵を返した。
去り際、マリエに鋭い視線を向けたのが見えた。
その視線を受けても、マリエは特に何かを言うことなく、少し困ったような顔をしていた。
姉上の取り巻きたちも、マリエに対して厳しい視線を向けている。
当然だろう。
彼女たちにしてみれば、家格も釣り合わない少女が、王太子殿下から特別扱いされているように見えるのだから。
しかも、マリエ本人はどこか居心地が悪そうにしながらも、殿下の誘いを断ろうとはしない。
その態度が、余計に周囲の反感を買っているのかもしれなかった。
「すまなかったな、マリエ。悪い気分にさせてしまった」
殿下は、先ほどとは打って変わって優しい声を出した。
「い、いえ、そんなことはいいんです。でも、本当に私が参加しても良かったんですか?」
マリエは遠慮がちに尋ねる。
すると、隣にいたジルクが肩をすくめた。
「殿下は堅苦しいのが嫌いでね。もっと気軽な茶会が良いんだ。ぜひ参加してほしい。それに、殿下がここまで誘うなんて珍しいんだよ」
「ジルク、余計なことを言うな」
殿下は顔を赤くして、視線をそらした。
その様子を見たジルクは、楽しそうに笑っている。
……なるほど。
周囲からすれば、王太子殿下が特定の女子生徒を特別扱いしているようにしか見えないだろう。
そして、そうした行動がどのような問題を引き起こすのか。
少なくとも、僕には想像がついた。
しかし、今の僕にできることは何もない。
姉上が去り、殿下たちもその場を離れていく。
ようやく周囲の空気が元に戻り始めた。
「……助かった」
ダニエルが、心の底から安堵したように呟いた。
「本当にね。あの場にいたら、いつ自分に話が飛んでくるか分からなかったよ」
レイモンドも苦笑している。
リオンはというと、何か考え込むような顔でマリエの後ろ姿を見つめていた。
僕も、つられてそちらを見た。
そして、気づいた。
誰も見ていないと思ったのだろう。
マリエの口元に、薄い笑みが浮かんでいた。
ほんの一瞬のことだった。
次の瞬間には、彼女はいつもの可愛らしい表情に戻っていた。
……やっぱり、油断ならない相手だ。
僕はそう考えながら、静かに視線を戻した。
今はまだ、何かを断定するには早い。
だが、原作を知っているからこそ、あの笑みを見過ごす気にはなれなかった。
それから数日後。
僕たちは、お茶会のためのマナー教室に参加していた。
教室の中には、実際に茶会を開くことを想定したテーブルが並べられ、茶器や菓子まで用意されている。
教壇に立つのは、髭を綺麗に整えた紳士風の男性教師。
ルーカス先生だ。
……原作通りだな。
僕はそんなことを考えながら、目立たないように席に座っていた。
この授業の後、リオンが茶の魅力に目覚めることになる。
いわゆる、茶狂いの誕生である。
原作を知っている僕としては、むしろそちらの方が気になっていた。
ただし、僕自身が授業で失敗して家の名前を汚すわけにはいかない。
だから、表向きは真面目に話を聞いている。
「良いですか? 女性を茶会に招待する際は、自分の全てを見られていると思いなさい」
ルーカス先生は、教室を見渡しながら説明した。
「立ち居振る舞いから、どのような教育を受けてきたのか。そして、どのような人物なのか。相手はそうした部分を見ています。逆に言えば、ここでしっかりともてなすことができれば、それだけ高い評価を得られるということです」
なるほど。
言っていること自体は、理解できる。
茶会は単なる食事の場ではなく、相手に自分を知ってもらうための場でもある。
どれほど豪華な茶器を用意しても、主催者の振る舞いが悪ければ意味がない。
そういうことなのだろう。
僕自身は紅茶が苦手なんだけどね…、
……とはいえ、僕は今すぐこの授業を終えてほしかった。
お茶会の準備だけでも面倒なのに、そのための作法まで覚えなければならないのだから、貴族というのは本当に大変だ。
「ミスタ・リオン! もっと緊張感を持ちなさい!」
「は、はい!」
突然、先生の声が教室に響いた。
呼ばれたリオンは、慌てて背筋を伸ばす。
周囲から、小さな笑い声が聞こえてきた。
「田舎者はこれだから」
「少し手柄があるからと、偉そうに」
「野蛮人は冒険者に向いているが、この場には相応しくないね」
笑っているのは、裕福な家や宮廷貴族の跡取りたちだった。
リオンが冒険者として活動してきたことを知り、それを理由に見下しているのだろう。
僕は思わず眉をひそめた。
別に、冒険者であることが悪いわけではない。
むしろ、危険な仕事をこなしてきたという点では、彼らよりも実践的な経験を積んでいる可能性だってある。
それなのに、家格や育ちだけで人間を判断する。
いかにも貴族社会らしい光景だった。
僕自身、レッドグレイブ家の人間というだけで、周囲から一定の評価を受けている。
そう考えると、他人事とは思えなかった。
もちろん、今ここで彼らに説教をするつもりはない。
余計な騒ぎを起こせば、僕まで面倒なことに巻き込まれる。
ただ、少なくとも、リオンを嘲笑する彼らに好感を抱くことはできなかった。
ルーカス先生は、そんな周囲の様子を気にすることなく授業を続けた。
「さて、茶会で大切なのは全体の雰囲気です。道具を揃え、空いている部屋を押さえただけで満足するのは論外です!」
先生は、教室のテーブルに視線を向けた。
「茶器1つ、菓子1つ、そして会場の設えに至るまで、全てに意味を持たせるのです。招待した女性を特別な空間に迎え入れる。その心遣いこそが、もてなしの基本なのですよ」
ふむ。
そう言われると、少しは理解できる気がする。
ただ高価な物を並べれば良いというわけではないのだろう。
相手が何を好むのかを考え、それに合わせた空間を用意する。
確かに、それならば単純な財力の勝負ではなくなる。
……まあ、金がある人間は、その工夫にさらに金をかけられるのだろうが。
僕がそんなことを考えていると、先生がリオンの方を向いた。
「ミスタ・リオン。どうやら、まだ理解できていないようですね」
「え?」
「では、実践してご覧に入れましょう」
そう言って、先生はリオンを前へ呼び出した。
どうやら、彼を客に見立てて、もてなしの実演をするらしい。
リオンは戸惑いながらも前へ出る。
そして、先生が用意した席に案内されると、茶器の配置から菓子の出し方、言葉の選び方に至るまで、丁寧な説明と実演が始まった。
僕は、思わず見入っていた。
なるほど。
これは確かに、ただ茶を出すだけの授業ではない。
相手の動きを観察し、必要なものを先回りして用意する。
会話の流れを妨げず、それでいて相手が退屈しないように気を配る。
細かな所作の積み重ねによって、相手に心地よい時間を過ごしてもらう。
それが、ルーカス先生の考えるもてなしなのだろう。
そして、授業が終わる頃には、リオンの表情が明らかに変わっていた。
授業終了後。
教室を出たルーカス先生に、リオンが勢いよく声をかけた。
「先生! 俺、感動しました!」
呼び止められた先生は、綺麗に振り返ると、自慢の髭をそっと撫でた。
「ミスタ・リオン。分かってくれたようですね」
「はい! 俺、お茶というものを舐めていました。今は凄く反省しています。俺、先生みたいに完璧なお茶会を開きたいです!」
……あ、始まった。
僕は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。
ルーカス先生は満足そうに頷く。
「大変結構。ですが、1つ間違えていますよ」
「え?」
「大切なのは、もてなす心です。そして、私はまだ道半ば。未だに満足できるもてなしができたことはありません」
リオンは目を丸くした。
「そ、そんな。先生でも完璧じゃないんですか?」
「ええ、そうです」
先生は穏やかに微笑んだ。
「その場、その瞬間における最高のもてなしを目指してはいますが、私もまだその境地には届いていません。しかし、基礎ならば教えることができます。ミスタ・リオン、共に茶の道を進もうではありませんか」
「はい!」
……何だろう。
目の前で、何かとんでもないものが誕生した気がする。
いや、別に悪いことではない。
礼儀作法を身に着けるのは、貴族としても役に立つだろう。
問題は、リオンの目が妙に輝いていることだった。
先ほどまで面倒そうに授業を受けていた人間とは思えない。
人は何がきっかけで変わるか分からないものだ。
そんなことを考えていると、後ろからダニエルとレイモンドの声が聞こえてきた。
「なあ、あいつ、何かやばい薬でもキメたのか?」
「さあ? まあ、無駄にはならないし、良いんじゃないかな」
2人とも、リオンの変わりように困惑しているらしい。
僕は苦笑した。
まあ、茶道に目覚めたところで、誰かに迷惑をかけるわけでもない。
むしろ、これから開くお茶会で役に立つ可能性だってある。
そう考えれば、悪いことではないだろう。
……ただ、僕には1つ気になることがあった。
リオンとは、これまでほとんど話したことがない。
酒場で顔を合わせたこともなければ、個人的に交流したこともなかった。
彼がどのような人間なのか、直接知る機会がなかったのだ。
原作を知っているからといって、本人と親しいわけではない。
それに、情報収集をするという意味でも、彼と交流を持っておくことは悪くないはずだ。
ただし、あまり露骨に近づくのも考えものだった。
周囲からは成り上がりと見られているリオンのそばに、レッドグレイブ家の人間である僕が頻繁に出入りすれば、余計な憶測を招く可能性がある。
……いや、考えすぎだろうか。
別に、友人になること自体は悪いことではない。
そう結論づけた僕は、リオンたちの方へ歩いていった。
「こ、こんにちは…」
まずは、無難な挨拶から。
声をかけられたリオンは、こちらを振り向いた瞬間、目を見開いた。
「お前、確か……!? アルフォンスさん!? どうしてここに!?」
……いや、そんなに驚かれても困る。
僕だって、普通に授業を受けていただけなのだが。
「知っていると思いますが、僕はアルフォンス・ラファ・レッドグレイブです。気軽にアルと呼んでくれて構わないので…よろしくお願いします…。」
すると、リオンは少し戸惑いながらも、頷いた。
「そうか……分かった。じゃあ、俺も遠慮なくいかせてもらう。俺はリオン・フォウ・バルトファルトだ。よろしくな」
「俺はダニエル・フォウ・ダーランド。よろしくな!」
「僕はレイモンド・フォウ・アーキン。よろしく。」
3人が順番に名乗ってくれた。
僕も改めて挨拶を返す。
こうして、僕には新しい友人が3人できた。
……いや、厳密には、これで友人と呼んでいいのかは分からない。
ただ、少なくとも彼らは、僕の家格や背後関係だけを見て接しているようには思えなかった。
そういう意味では、悪くない出会いだったのかもしれない。
そして、これで原作とのズレを観察するための足掛かりもできた。
もちろん、彼らを利用するつもりだけで近づいたわけではない。
ただ、この世界が原作とどの程度違う方向へ進んでいるのかを知るためにも、彼らとの交流は重要になるだろう。
「そいじゃ、せっかく新しい友達ができたことだし……」
僕がそう言いかけると、ダニエルが勢いよく声を上げた。
「飲みまくりますかーッ!」
「おう! 覚悟しとけよ、アル!」
レイモンドまで乗り気になっている。
「特に、あの留学生について根掘り葉掘り聞かせてもらうからな!」
……ああ、そっちか。
どうやら、彼らは僕が乃蒼と麻璃と親しいことが気になって仕方ないらしい。
それにしても、情報収集をするつもりが、逆に情報を求められる立場になるとは。
人生、何が起こるか分からないものだ。
結局、僕は3人に連れられ、酒場へ向かうことになった。
そこで僕は、乃蒼と麻璃について、どうにか誤解を解くことができた。
彼女たちが本当に僕の婚約者ではなくただの友人である事。
そして、身分制度のない国から来たからといって、何も知らない平民というわけではないこと。
もちろん、話せる範囲には限りがある。
それでも、少なくとも彼らは、僕が何か特別な秘密を握っているわけではないと理解してくれたようだった。
話が進むにつれ、緊張していた空気も和らいでいく。
リオンは相変わらず茶会の話をしていたし、ダニエルとレイモンドは時折それをからかっていた。
僕も適当に相槌を打ちながら、彼らとの会話を楽しんだ。
因みに、呼び捨てはできるがどうしても敬語を外せない事は伝え、どうにか理解してくれた。
こうして、入学式から始まった慌ただしい日々の中で、僕は少しずつ自分の居場所を作り始めていた。
まだ、何もかもが上手くいくわけではない。
貴族社会の面倒な仕組みも、原作から外れ始めている世界の動きも、これから先に待ち受ける厄介事も、何1つ解決していない。
それでも、少なくとも今は。
気兼ねなく話せる相手がいるというのは、悪くないものだった。
……まあ、彼らが今後どんな騒動に巻き込まれるのかを知っている身としては、少しばかり複雑な気分ではあるのだが。
僕はグラスの代わりに手元の飲み物を持ち上げ、3人と軽く乾杯した。
これから先、原作通りに進むこともあれば、そうでないこともあるだろう。
ならば、せめて今のうちに、できるだけ多くのことを知っておきたい。
そう考えながら、僕は新しくできた友人たちとの時間を過ごすのだった。
1話や2話でアルとヴィンス、ギルバートのミドルネームの誤字を発見しました。正しくは「フォン」ではなく「ラファ」でした。申し訳ありません。