幽鬼59回目のゲームに参加する《アスレチックミート》   作:狼然零時

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かなり、長編になりそうですが良ければお付き合いください。
※六巻までのネタバレを含みます。
後、オリキャラいっぱいです。



出会いと始まり

 

 

 

 

 

 

過ちをどう覆すかは自分次第だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈0/13〉

 

ドアノックの音で幽鬼(ユウキ)は目を覚ました。

 

〈1/13〉

 

幽鬼(ユウキ)は体を起こした。

いいベッドのおかげか、体が痛むことはなかった。

幽鬼(ユウキ)のボロアパートと違い、設備のしっかりした部屋だった。

大きな本棚、作業机、クローゼット、など日常生活を送る上で最低限の家具が置かれていた。プレイヤーごとに与えられている個室、といったところだろう。飾り気はないが、落ち着いた雰囲気があった。ただ、窓が小さいので、幽鬼(ユウキ)のボロアパートよりも確実に広いというのに、妙な圧迫感があった。

そして、幽鬼(ユウキ)の胸部にも別の妙な圧迫感があった。

幽鬼(ユウキ)はそこに、視線を落とした。

幽鬼(ユウキ)の胸には白いサラシが巻かれていた。元々ささやかな胸部はいよいよ壁のように平たくなっていた。運営は幽鬼(ユウキ)を惨めな気分にさせるのが好きなんだろうか。

その上には黒い学ランが着せられていた。サラシの上に学ラン、モチーフは応援団だろうか。銀髪や色白な肌と、全体的に白っぽい幽鬼(ユウキ)には、似合っている気がした。

寝起きの頭を覚ますのと、周りを観察するのを兼ねて、頭を振っていたら、幽鬼(ユウキ)はとあることを思い出した。幽鬼(ユウキ)はそれを確かめるため、自分の後頭部に手を回した。

 

「無い」幽鬼(ユウキ)は呟いた。

 

そこには、幽鬼(ユウキ)の幽霊じみた雰囲気を増長させる、髪が無かった。実際には短くなっているだけだろうが、長さが長さだったので、《無い》という表現の方がしっくりきた。手のひらを上下に動かすと、ザリザリした感触が返ってきた。自分のものを触っているので違和感はあったが、なんだか少し、癖になりそうな手触りだった。坊主頭を撫で回したいと思うのと同じ感じなのだろうか。幽鬼(ユウキ)は少しの間その感触を楽しんでいた。

すると、またもやドアノックの音が鳴った。

そうだ、幽鬼(ユウキ)はこの音によって目覚めたのだ。

決して、忘れていたわけではない。少し夢中になっていただけだ。

幽鬼(ユウキ)は急いで扉の前まで移動した。

扉の向こうにいるのは味方か敵か、あるいは運営の用意したNPCか。ともかく判断しかねるので警戒しつつ、幽鬼(ユウキ)は扉を開けた。

扉は外開きだった。扉にぶつからない程度離れたところに、ノックをした──幽鬼(ユウキ)を起こした張本人が立っていた。そして、扉の前に立つ人物を見て、幽鬼(ユウキ)は目を見開いた。

果たして、幽鬼(ユウキ)はいつの間にか、映画の撮影にでも巻き込まれたのだろうか?

俳優のように眉目秀麗で、圧倒的な存在感を持つプレイヤーが、そこには立っていた。

 

〈2/13〉

 

幽鬼(ユウキ)は目を瞬かせた。

細部は違えど幽鬼(ユウキ)と同じく学ランを着ている。なので、プレイヤーだと思う。けれど、正直どこからどう見ても、男性にしか見えなかった。

「おはよう」スタイルの良さを際立たせるような首から、その姿に見合う低く色気のある声が出てきた。

百八十はあるタッパ。誰もが認めるであろう顔面。幽鬼(ユウキ)と似た色をした銀髪には、遊び心のある癖がついていた。サラシを巻いてある胸は幽鬼(ユウキ)に負け劣らず平たく、その下には腹筋が綺麗に割れていた。人相が良さそうなので、頼んだら触らせてくれそうだ。

美術館の大トリに飾られてる芸術品のような、その美貌で人間の精気を骨の髄まで喰らい尽くしてしまう化け物のような、玉藻と肩を並べるレベルで──と、そこまで考えたところで幽鬼(ユウキ)は急いで思考を打ち切った。

今は──今から、ゲームが始まるんだ。余計なことを考えている暇は無い。

そろそろ本格的に[[emphasismark:見えなくなってきている > ﹅]]んだから。

幽鬼(ユウキ)は自分に言い聞かせて、強制的に意識の端へと追いやった。

「…おはよう、ございます」理解の追いつかない頭でなんとか挨拶を返す。

男性のようなプレイヤーは、顎に手を当てて幽鬼(ユウキ)の顔を見ていた。ややあって、形のいい唇が開く。

「どうも、俺は凪銀(ナギ)って言うんやけど……きみはもしかして、幽鬼(ユウキ)?」

「……知ってるの?」

幽鬼(ユウキ)は驚いて、質問に質問で返した。

「せや、幽霊じみたオッドアイのベテランプレイヤー。結構、噂やさかい、もしかしたらて思てん」

「そういうことか」

良かった。一瞬、本気でボケ始めたのかと焦った。

凪銀(ナギ)はプレイヤーにしては珍しい関西弁を使っている。幽鬼(ユウキ)の周りには標準語が多いので、かなり新鮮だった。

「なあ、ひとつ気になることがあるねんけど……聞いてええ?」

またしても質問が飛んできた。幽鬼(ユウキ)の部屋まで来て、わざわざ起こしにきてくれたのだろう。なのに、ゲーム開始まで余裕があるのだろうか。

気になることといえばこちらもある。

凪銀(ナギ)の存在そのものについてだ。

だが、これを聞くのが失礼ということくらいは、いくら鈍感な幽鬼(ユウキ)でも分別はつく。幽鬼(ユウキ)は好奇心を飲み込んだ。

「…まあ、答えられることなら」

答えられないことなら答えなければ良い。幽鬼(ユウキ)は質問を許可した。

すると、凪銀(ナギ)はなぜかしゃがんで、幽鬼(ユウキ)と視線を合わせてきた。

切れ長の瞳が幽鬼(ユウキ)を捉える。深緑のような瞳には癒しの効果がありそうだ。

そして、凪銀(ナギ)は自分の右目をさして、事も無げに言ってきた。

「その右目、見えとるん?」

幽鬼(ユウキ)の心は跳ねた。本日一番驚いた。なぜだ?一体なぜ?ボロなんか見せてないはずだし。そもそも対面してから一歩も動いてない。無意識に意識していたのか?

分からない。

──なんで、知ってるの?

幽鬼(ユウキ)はそう聞こうとした。

だが、できなかった。

 

 

 

 

その瞬間、突如として幽鬼(ユウキ)の肌を殺気がさしたからだ。

 

 

 

 

凪銀(ナギ)からではない。別の方向からだ。

凪銀(ナギ)もそれを感知したのだろう。バネが弾けるような勢いで、その方向へと走って行った。

雑談をする余裕があったくらいだ。ゲームはまだ始まってないと思う。

だが、殺気を感じたとなれば話は別だ。

幽鬼(ユウキ)は反射的に後を追った。

 

〈3/13〉

 

千影(チカゲ)は目の前のドアに三度目のノックを加えた。

コンコンコンと三回、トイレノックではなく、ちゃんとドアノックだ。

ノックをしてから歩幅三歩分、千影(チカゲ)はドアから離れた。このドアが外開きであることを知っているからだ。

千影(チカゲ)はプレイヤーを起こしにきていた。

今回はリビングでゲームの説明が行われる。

なのだが、時間ギリギリになっても二人のプレイヤーが起きてこなかった。

人数が明確に分かったのは、リビングにあった説明用の大きなテレビのおかげだ。そこには《十時から説明が始まるよ〜ちゃんと八人集まって全員で聞いてね♪》と幼児が書いたような字で書いてあったのだ。

なので、千影(チカゲ)は我が師範である凪銀(ナギ)と、手分けしてプレイヤーを起こしに来ていた。今回、衣装がチアと学ランの二つに分かれていたので、そこは考慮済みだ。

理由は、運営の趣味とかだろう。師範は学ランを着せられていたのだが、その美貌をもってして、そつなく着こなしていた。より肌を見せるチアを着せるのが勿体ないほどに。

そして、千影(チカゲ)は肌を見せる方が似合うと判断されたのだろうか、チアの方を着せられていた。

セパレートタイプで、トップスもボトムスもギリギリまで肌を見せている。

年齢的にはまだ問題ないと思うが、普通に恥ずかしいし、気持ち悪い。こういう衣装には毎回嫌気がさす。衣装を製作している人の意図なんて考えたくもない。せめてもの幸いとしては、師範が似合っていると言ってくれたことだ。

あの人は天然のタラシなので、言葉に嘘がない。なので、他人ならともかく、普通に嬉しかった。

それに、味方という事実も心強い。

学ランとチアは両方とも、黒を基調としたものだった。そういった文化には明るくないが、黒の学ランはともかく、黒のチアは珍しいな、と思った。

味方であることを暗示しているのだろう、いかにも、な感じだ。

けれど、一つ不安もあった。

なぜ、同じゲームに参加しているのだろう、という疑念だ。

千影(チカゲ)は師範の意向で参加が被らないよう、時期をずらしている。なので、リビングでその姿を見つけた時はとても驚いた。理由は聞きたかったが、他のプレイヤーも数名起きていたので、それは惜しくも叶わなかった。

一体、なぜだろう?

千影(チカゲ)は目を瞑って、深く考え込もうとした。

だが、その行為は──思考はすぐに打ち切った。当て推量は良くないし、思考に耽りすぎるのは自分の悪い癖だ。今回で終われるかもしれないというのに、気を抜きすぎている。

千影(チカゲ)は意識を切り替え、既に三回ノックしている目の前の扉を見た。

それなりに時間は経ったので、一際強く、四度目のノックを加えた。

三十秒待って起きてこなかったら、部屋に入ろう。時間は有限なのだ。

 

十秒経った。

──扉は開かない。

二十秒経った。

──扉はまだ、開かない。

そして、三十秒たった。

 

──扉は開かなかった。 

 

仕方ない、入るか。

嫌な予感しかしないので、扉を全開にしておいて、部屋に侵入した。

「あのー…起きてますか?」

一歩、二歩と侵入していった。

そして、部屋の全貌が見えた。

その時、千影(チカゲ)の警戒心が反応した。

 

殺気だ。 

 

〈4/13〉

 

「ああああ‼︎」

自分と似た格好をした、青髪のプレイヤーが襲いかかってきた。

右手には、先の尖ったハサミを握りしめている。

かなり距離は近かったが、事前に警戒していたので回避は難なく成功した。

千影(チカゲ)は部屋の中へ踏み込んで攻撃を避けた。

先ほど千影(チカゲ)がいた場所をハサミが切り裂く。

千影(チカゲ)が体を反転させると同時、相手はこちらに向かってきていた。

追撃だ。

右から左へ、左から右へ、明確な殺意を持って、振り回している。

ただ、半狂乱なのか、大振りの攻撃が多かったので、千影(チカゲ)に攻撃が当たることはなかった。

そして、一際大きく振りかぶったのを見て、千影(チカゲ)は部屋から脱出した。

廊下の行き着く先は、行き止まりかリビングか、千影(チカゲ)は前者を選択した。

大きく距離を取り、千影(チカゲ)は振り返った。

青髪のプレイヤーはハサミを両手に握り締め、突進してきていた。

かかったな、と思った。

ここが正念場だ。千影(チカゲ)は相手の動きを注視し、ギリギリまで引きつけた。

近づいた。

千影(チカゲ)は左足を軸に、体を九十度回転させて、突進を避けた。

人間は、予備動作なしに急に方向転換することはできないのだ。

 

そして、相手も例外ではなかった。

 

そのまま更に数歩進み、千影(チカゲ)に無防備な背中を晒した。

大きすぎる隙だ。

千影(チカゲ)はその背中に肘を叩き込んだ。

「がっ…‼︎」相手は短い悲鳴と共に、ハサミを落とし、体勢を崩した。

千影(チカゲ)は右手で落ちつつあるハサミを掴み、反対の手で相手の背中を押さえつけた。

「……っ‼︎」

やがてその娘は胸を床に打ち付け、声にならない悲鳴を漏らした。

千影(チカゲ)はそのまま背中に馬乗りになり、ハサミが視界に映るようにして、首筋へ近づけた。殺すつもりはない。味方

なので、あくまで脅しだ。

 

立場が逆転した。

 

その意味を理解したのだろう。抵抗は無くなった。

 

〈5/13〉

 

幽鬼(ユウキ)は凪銀(ナギ)に──殺気のしたほうへ行った。

幽鬼(ユウキ)達は木造りの廊下を走った。といっても、短い距離だったので、それほど速度は出せなかった。

一つ扉を通り過ぎて、角を二回曲がると、開け放たれた扉が現れた。

扉を出るとそこは広いリビングだった。

テレビやキッチン、ソファが大きめで、家具の数も一般的な家庭よりも多いように見えた。

幽鬼(ユウキ)はそれらを横目にやって、扉の壁沿いを走った。

また一つ扉を過ぎて、一番奥の扉へ入ると殺気のした場所についた。

そこには幽鬼(ユウキ)を含めて八人のプレイヤーがいた。

幽鬼(ユウキ)や凪銀(ナギ)と同じく学ランを着ている娘が四人、チアを着ている娘が四人いた。

そのうち、少し離れたところにいるチアを着た二人が揉めていたのだろう。

片方の娘が馬乗りになって、先の尖ったハサミを首筋に近づけていた。

それを幽鬼(ユウキ)を含めた、他の六人は二部屋ほど離れた場所から見ていた。

何があったんだろうか?

「千影(チカゲ)、何があったん?」

こちらにいる六人を代表して、凪銀(ナギ)が尋ねた。

すると、馬乗りになっている方が反応した。こちらの娘が千影(チカゲ)らしい。千影(チカゲ)は起こったことを整理するように、少し黙ってから答えた。

「その……何度ノックをしても起きなかったので、部屋に入ったのですが、突然襲いかかってきまして、……動きを封じました…」

千影(チカゲ)は現在に至るまでの経緯を教えてくれた。言い草からするに嘘ではないだろう。千影(チカゲ)からは動揺が見られるが、殺気や敵意はない。逆にうつ伏せになっている子からはひしひしと伝わってきている。

千影(チカゲ)も凪銀(ナギ)と同じく、プレイヤーを起こしにきたのだろう。

そして、なぜか惨事が起こったということか。

凪銀(ナギ)はどう波風立てずに抑えるか考えているんだろう。真面目な横顔が見えた。イケメンはどんな顔でも似合うな。

ややあって、凪銀(ナギ)は解決法を見つけたのか、「うーん……なら、」と言って、千影(チカゲ)と幽鬼(ユウキ)達のちょうど真ん中辺りに立った。

「俺がこの娘なだめるから、君ら五人はリビングに戻っといてくれへん?大人数おったら萎縮させてしまうやろうし。」

「……できるんですか?」

凪銀(ナギ)がそう言うと、四人の中で一番タッパの小さい娘が聞いた。

声色からして、挑発ではなく純粋な疑問のようだ。

「うん、何か勘違いしているだけやろうから、いけるよ」

凪銀(ナギ)は言い切った。それが虚勢かどうかは分からないが、自信はあるようだった。

それに《勘違い》という見解には幽鬼(ユウキ)も同感だ。

多分、初めての娘なのだろう。そういう娘に勘違いはつきものだ。

「分かりました。なら、お願いします。」

さっきと同じ娘が言った。そのまま、軽く頭を下げて、リビングに戻って行った。他の娘もそれに続いていったので、同意見ということだろう。幽鬼(ユウキ)もそうした。できるというのなら任せてみよう。

それに、もし幽鬼(ユウキ)が関わったら、なだめるどころかきっと、逆上されるだろう。

 

〈6/13〉

 

凪銀(ナギ)と千影(チカゲ)ともう一人のプレイヤー

[rb:凪銀 > ナギ]]と千影(チカゲ)ともう一人のプレイヤーを除いて、五人のプレイヤーがリビングに戻った。

既に起きていたであろう四人のプレイヤーは、ソファに腰を下ろした。

ソファはテレビを囲むようにして、三方向に置かれていた。テレビに向かって、右側に三人、左側に一人。正面には誰も座っていなかった。

見た感じ知り合いはいなさそうだったので、幽鬼(ユウキ)はどこに座ろうかと辺りを見回した。すると、その様子を見たのか、左側に座っていた娘が自分の横を指して、「どうぞ」といってきた。ここに座れということだろう。幽鬼(ユウキ)は素直にそうすることにした。

「どうも、幽鬼(ユウキ)です。」

幽鬼(ユウキ)はそう言いながら、黒髪黒目のプレイヤーの隣に腰を下ろした。黒曜石のような切れ味のある目をしている。

「私は、百合(ユリ)といいます。」

幽鬼(ユウキ)が座ったのを確認してから、彼女は名前を教えてくれた。

「あの、どういった状況なんですか?」

現状、ゲームに関しての情報を全く持たないので、幽鬼(ユウキ)は聞いてみた。

百合(ユリ)はテレビの画面と、その上にある時計を交互に指した。

時計の方は九時五十四分を指していて、テレビの画面には《十時から説明が始まるよ〜ちゃんと八人集まって全員で聞いてね♪》と書かれていた。

「十時から説明が始まるらしいのですが、時間間際になっても二人のプレイヤーが起きてこなかったので起こしに行ったんです。」

片方は幽鬼(ユウキ)だ。時間間際まで寝かしてくれていたのだろう。ありがたさと申し訳なさを同時に感じる。

「衣装が二つに分かれていたので、凪銀(ナギ)さんがあなたを、千影(チカゲ)さんがもう一人の方に行きました。」

幽鬼(ユウキ)は振り返った。壁には三つドアがあった。

右は学ラン、左側はチア。真ん中は何かしらの設備がある部屋だとして、左右は衣装で分かれているということだろう。

「なので、ここで待機していた私たちには、千影(チカゲ)さんに何があったかは分かりません。ただ、何かしら勘違いをしていたんでしょう。」

「いや、だからってあんなんになるっすか?」

向かいのソファに寝っ転がっていた娘が突っ込んだ。

水色の髪に黄色いメッシュ、衣装は学ランの方を着ていた──その娘は前髪で両目を隠しているのだが、前が見えているのかが気になった。

「詳しいお話は後で聞きましょう。憶測でものを語っていても、真相はわかりませんので。」

「了解っす〜」

 

〈7/13〉

 

説明が始まる一分程前、凪銀(ナギ)たちは戻ってきた。

うつ伏せになっていた娘は、凪銀(ナギ)の学ランの袖を掴み、後ろに隠れていた。どうやら、懐柔には成功したようだ。だが、警戒心はまだまだ残っているようで、特に千影(チカゲ)に対しては鋭い視線が向けられていた。

三人はテレビの正面にあるソファに座った。イケメンの凪銀(ナギ)が真ん中に座ったので、はたから見たら、両手に花の状態だ。もっとも、そんな羨ましがるような状態ではないと幽鬼(ユウキ)はわかっているが。

これで、この建物にいるプレイヤーは全員揃った。

いつもなら自己紹介をするところだが、「もうすぐ、ゲームの説明が始まるから、自己紹介は後にしよか」と、凪銀(ナギ)が言ったため、後回しになった。

そして、十時になり、ゲームの説明が始まった。

 

〈8/13〉

 

「みんな、おっはよう!今日は待ちに待ったアスレチックミートの日だよ!」

テレビの画面に一匹の黒いウサギが映った。

チアの上に学ランを着ている。どうやら今回の衣装を合わせたようだ。正直、かなりダサい。

「じゃあ、ルールを説明するからよく聞いといてね」

それから、行われた説明を要約するとこうだ。

参加者は合計八十人。それを色ごとに十のクラスに分けて競わせる。

方法は、三日間で合計十の種目を行い、順位に応じて点数が与えられる。

一位は八十点、二位は五十点で、三位から九位までは五点刻みで下がっていく。そして、最下位である十位は0点だ。

そして、十の種目が終わった後、合計点の下位三チームが脱落する。翌朝八時にお迎えが来るとのこと。クリアしたクラスも同時刻に。

もし、同点の場合は翌日にもう一つゲームをやって決めるらしい。そうなった場合はクリアが確定したチームも観覧する側として、この建物に残らなければならないらしい。

全体的な感想としては、脱落する数は生還率からして妥当だな、と思った。それと、《お迎え》の言い方が皮肉だなと思った。

「何か、質問がある人はいるかな?」

最後にウサギは聞いてきた。凪銀(ナギ)が質問した。

「なあ、もし勝利が確定した場合は種目にでやんでもいいん?配点的にはそうなる可能性もあるはずやと思うねんけど。」

「このゲームはみんなが主役だから、棄権はなしだよ〜」

どの種目も強制参加らしい。何かしら参加させなければならない理由でもあるのだろう。

「…そうか」と、凪銀(ナギ)は言った。

「他に質問がある人―?」

ウサギが聞いた。すると、今度は百合(ユリ)が聞いた。

「種目ごとに参加人数は分かれているのでしょうか?」

「そうだよー。でも、今は教えれないから、楽しみにしててね」

「了解いたしました。」

その後は他に質問をする人がいなかった。

「じゃあ、十三時に第一種目の説明があるから、みんなテレビの前に集まってね。」

と言って、テレビの画面は真っ暗になった。

 

〈9/13〉

 

「んじゃあ、俺から時計回りで自己紹介していくってことでええかな?」

説明が終わって、凪銀(ナギ)は提案した。否定する要素なんてなかったので、全員が賛同した。

凪銀(ナギ)はその意思を確認して、「じゃあ、まず俺から」と言った。

「プレイヤーネームは凪銀(ナギ)や。参加は今回で四十五回目。」

凪銀(ナギ)はさらっとすごい数字を出した。知り合い以外で三十回越えに会うのは久しぶりだ。他のプレイヤーも大小あれど反応した。

そして、凪銀(ナギ)の右腕を掴んでいた娘は一際強い反応を示した。

「そんなにやってるんですか」

その言葉は以前、幽鬼(ユウキ)がメイド服を着せられていた時に言われたことと同じだった。

幽鬼(ユウキ)はあの時、連勝記録を達成したい、という理由を述べて微妙な空気にしてしまったことを思い出した。あの時の異常者を見るような目を忘れることはないだろう。でも、幽鬼(ユウキ)としては嘘をつくのは嫌だったので、それが最適解だったと思う。果たして、凪銀(ナギ)はなんと言うのだろうか。

凪銀(ナギ)はその娘に掴まれてない方の人差し指を顔の前に立てて、こう言った。

 

「秘密や」

 

なるほど、幽鬼(ユウキ)もこうすればよかったのか、と思ったが、すぐにはその考えは否定した。いや、あの顔面だからこそ成り立つことだな、と。もし、幽鬼(ユウキ)がそんなことをやろうものなら、幽霊という評価が、やばい幽霊へと格上げされるだけだろう。絶対にこういうことはしないでおこう。

その娘は納得したのか、聞いてはいけない、ということを感じ取ったのか、無言でこくこくと頷いた。

「後、こんな容姿やから、よう勘違いされるねんけど、ちゃんと女性やから安心してな」

凪銀(ナギ)は先ほど、顔の前に立てていた指を自身の胸に当てながら、情報を付け足した。幽鬼(ユウキ)が気になっていたことだ。

確かに凪銀(ナギ)は、喉仏はなく、胸に当てた手も細くしなやかで女性のものに見えた。

いくら、男性っぽくてもこのゲームでは例外はないということらしい。

「じゃ、次千影(チカゲ)。」

凪銀(ナギ)は左手で、先ほど揉めていて、有利をとっていた方をさした。

「千影(チカゲ)と言います。ゲームの参加回数は三十回目です」

こちらはもっとすごい数字を出してきた。

「三十回、やっぱり意識はしますが、最善は尽くします。」

「あの……三十回目って何かあるんですか?」

千影(チカゲ)がわざわざ意気込みを言ったので、初めての娘は嫌な予感を感じたようだ。

千影(チカゲ)は少し悩んでから答えた。

「……理屈ではないんですけど、三十回になると、思わぬイレギュラーが発生して、急激に生存率が下がるらしいんです。この業界に蔓延っている、《三十の壁》といわれる呪いです。」

千影(チカゲ)は詳しく説明した。だが、それは逆効果だったようで、初めての娘の顔はみるみるうちに恐怖の色に染まっていった。

けれど、そんな鈴蘭(スズラン)に対して、凪銀(ナギ)は言った。

「そんな怯えんでええよ、鈴蘭(スズラン)。そんなもん、俺が突っぱねたるわ」

正直、経験者としては、そんなことでどうにもなるわけはないと思う。だが、四十五回という数字と屈強な体、その二つの要素に安心感を覚えたのか、少しだけ表情から恐怖が薄れた。

「では、次どうぞ」タイミングを見計らって、千影(チカゲ)は幽鬼(ユウキ)をさした。

幽鬼(ユウキ)はいつの間にか、少し前屈みになっていた姿勢を戻して言った。

「幽鬼(ユウキ)です。参加は五十九回目、よろしくお願いします。」

凪銀(ナギ)をも上回るその回数で、再び場は大きな反応を見せた。反応からして、幽鬼(ユウキ)が一番多いのだろう。手放しには喜べないが、少し嬉しくなった。

だが、鈴蘭(スズラン)だけは、信じられないという表情と安心したという表情が九対一くらいの割合で混ざっているように見えた。

参加回数こそ多いけれど、幽鬼(ユウキ)は特に特別な情報はなかったので、左にいる百合(ユリ)を手でさして、「どうぞ」と順番を譲った。

「百合(ユリ)と申します。参加回数は今回で二十二回目となります。よろしくお願いいたします。」

お堅い挨拶だった。多分、バイトの面接とかだったら、合格は間違いないだろう。

「では次、雷(イカヅチ)さんどうぞ」

百合(ユリ)は正面にいる──この中で唯一寝そべってるプレイヤーをさした。

「雷(イカヅチ)っす。ゲームは九回目、よろしくっす」

豪胆な娘だな、と思った。彼女は幽鬼(ユウキ)や凪銀(ナギ)、千影(チカゲ)が回数を述べても、どこか上の空だったし、今も、のほほんとしている。雷(イカヅチ)は眠いのか、一つ大きなあくびをして、そのまま、「ほうほー」と左隣の一番小さい娘に言った。

「花弥(ハナミ)です。参加は今回で七回目です。よろしくお願いします。」

普通そうな娘だった。今まで、クセのあるプレイヤーが多かったので、なおさらそう見えた。

「夕陽(ユウヒ)ちゃん…大丈夫?」

順番を譲るためだろう、花弥(ハナミ)は左隣の娘に話しかけた。が、それは心配を含むものだった。

夕陽(ユウヒ)と呼ばれたプレイヤーが暗い表情をしていたからだろう。顔には不安という文字まで幻視できそうなほどだ。

《三十の壁》のことを知っていたし、七回目という花弥(ハナミ)とも仲が良さそうだ。初めてではないだろう。

ではなぜか?

少しの間、夕陽(ユウヒ)は左右に瞳を揺らした。やがて、何人もの警官による尋問に耐えかねた、観念した囚人のように驚くべき真実を告げた。

 

「その…………私も、三十回なんです…」 

 

〈10/13〉

 

「……わーお…」

その場にいた全員はもちろん、豪胆な雷(イカヅチ)でさえも反応した。

夕陽(ユウヒ)が心配していたのはこのことだったのか。

幽鬼(ユウキ)も何度か、三十回の娘に出くわしたことはある。だが、このケースは初めてだ。三十回が二人、千影(チカゲ)の時とは打って変わって、明らかに空気が沈んだ。水中で息ができないみたいになった。

けれど、凪銀(ナギ)はなんなく、その空気を破った。

春の陽だまりが氷を溶かすのは当然だと言わんばかりに、穏やかに、それでいて確実に。

「なあ、夕陽(ユウヒ)。マイナスとマイナスが掛け合わさせたらさ、プラスになるやん。」

「……?そう、ですね」

凪銀(ナギ)はそう言って、両方の人差し指を交差させて、ばつ印を作った。

「やから、それと同じ理屈で呪い同士がかけ合わさったら、祝福にでもなるんとちゃう。三十回が二人って、逆にラッキーやん」

凪銀(ナギ)はとんでも理論を展開した。完全なる机上の空論だった。

だが、その機転を利かせた発言は、重くなった空気を陸に引きずり上げるには十分だった。

気遣い上手、というのはまさにこのような人を指すのだろう。しかも、殺人ゲームという非常に難易度の高い場所で難なくやってのけた。

なんとなく、凪銀(ナギ)がどうやってここまで来たのか、分かった気がした。

そんな凪銀(ナギ)は「それに」と付け加えた。

「あくまでもジンクスや。現に俺は生きとるし、幽鬼(ユウキ)だって生きとる。楽観視するつもりなんて一切ないし、絶対に切り抜けたる」

コース料理のデザートのように、凪銀(ナギ)は最後に微笑みを添えた。

その言葉で場の空気はさらに軽くなった。容姿と性格は満点。学生時代はさぞかしモテていただろう。

「……ありがとうございます」 

それを受けて、夕陽(ユウヒ)もいくらかはマシな表情になった。元々、三十回もやってるからだろう、切り替えは上手かった。

そして、凪銀(ナギ)は最後となるプレイヤーに視線を向けた。

「鈴蘭(スズラン)……行けそ?」

そう呼ばれた鈴蘭(スズラン)は最初の時より警戒心が薄まっているように見えた。

凪銀(ナギ)の発言によって絆されたのか、単純に気を張り過ぎて疲れたのか、どちらにしろいい傾向だ。

「えっと…鈴蘭(スズラン)、です。…ゲームは、初めてです。お願いします。」

鈴蘭(スズラン)は今までの自己紹介を真似て言った。

やはり初めてだったようだ。

しかし、あの有様になったのはなぜだろうか?

「ん、ありがと」

凪銀(ナギ)は言って、鈴蘭(スズラン)は少し微笑んだ。

これで、自己紹介は終わりだった。けれど、凪銀(ナギ)は聞きたいことがあるらしく、鈴蘭(スズラン)に一つ尋ねた。

「ああなった理由って説明してもええかな?みんなも気になってると思うし、誤解を解くためにもさ」

凪銀(ナギ)は鈴蘭(スズラン)に許可を求めた。こういう気遣いの一つ一つが、凪銀(ナギ)の人格を表しているように思えた。

やらかしてしまったと思っているのか、鈴蘭(スズラン)は少し迷っていた。

けれど、最終的には頷いた。やはり、誤解は解いておきたいんだろう。

そして、凪銀(ナギ)は騒動の原因を語り始めた。

「このゲームに参加したキッカケってさ、エージェントさんに誘われてやん」

凪銀(ナギ)は一度で切って、視線で同意を求めた。周りはこくこくと頷く。全員、同じのようだ。それを確認して、凪銀(ナギ)は続けた。

「で、軽く内容とか説明されるんやと思うねんけど、…一攫千金とか、サバゲーやとか。」

凪銀(ナギ)は例を挙げた。大抵はそんな感じなのだろう。思い出せないが幽鬼(ユウキ)もそんな感じだった気がする。

凪銀(ナギ)は「で、鈴蘭(スズラン)は」と言って、少し溜めてから言った。

「……《全員殺さないと生き残れない》って言われたんやって」

一体どこの戦闘民族だろう。あながち間違いではないが、かなり歪曲した事実を伝えられていたようだ。素直に可哀想だな、と思った。

「物騒っすね」雷(イカヅチ)からもツッコミが入った。

理由を聞けば、鈴蘭(スズラン)がああなったのも無理はないだろうと思う。少なくとも、理由もなく襲ったのではないと分かって、安心した。

 

「それで、殺そうとしたんですか?」

 

そして、花弥(ハナミ)はドストレートの球を鈴蘭(スズラン)に投げつけた。

ど直球もいいところだ。またもや、鈴蘭(スズラン)の表情が暗くなる。

横にいる夕陽(ユウヒ)が肘で小突いて「花弥(ハナミ)、率直すぎるよ」とたしなめた。

対する花弥(ハナミ)は「…気をつけます」と素直に非を認め、「ごめんね、鈴蘭(スズラン)ちゃん」と謝罪した。

そんなやりとりの後、ややあって鈴蘭(スズラン)が口を開いた。

「いえ、…その………すみませんでした」

「いや、大丈夫ですよ。お互い特に怪我も──」

鈴蘭(スズラン)の謝罪を受けて、千影(チカゲ)が口を開きかけた。その時、ぐぅ、と音が鳴った。

お腹が空いたことを知らせる合図だ。

誰なのかはすぐ分かった。鈴蘭(スズラン)だ。

顔を赤くして、俯いていたので明らかだった。きっと、初めてのことで疲弊したのだろう。

「腹ペコ青虫っすねー」

雷(イカヅチ)がからかい、鈴蘭(スズラン)の顔はより一層赤くなった。そんな鈴蘭(スズラン)を見て、千影(チカゲ)はすかさず弁護した。

「雷(イカヅチ)さん、人間の生理反応ですよ。からかわないであげて下さい」

「はーいっす」

場の空気は柔らかくなった。嵐の前の静けさかもしれないが、心地よかった。その様子を見て、凪銀(ナギ)は提案した。

「じゃあ、ちょっと早いけど、お昼にするか」

「……はい」

 

〈11/13〉

 

凪銀(ナギ)の提案を受けて、幽鬼(ユウキ)達は食料を探した。幸い、この建物はさして広くはなかったのですぐに見つかった。キッチンの裏に食料庫があった。

幽鬼(ユウキ)達はそこに入った。

食料庫はリビングと同じくらい広かった。缶詰やレトルト食品、保存の利いたものが置かれていた。というか、それしかなかった。

「あーっ!」

そして、食料庫に入って数秒、なにを見つけたのだろうか。千影(チカゲ)の声が弾んだ。早足になって、とある棚へ一直線に行った。そこにあったのは、

 

「お酒だ!」

 

お酒だった。

昼食を探しに来たはずだったのだが、千影(チカゲ)は戸棚を開け、物色し始めた。

「シャルトリューズ・ヴェール、ジョーヌ、エリクシール・ヴェジェタル……あっ、スピリタスもある!」

よほど、お酒が好きなんだろう。千影(チカゲ)は幽鬼(ユウキ)の知らない単語を呪文のように唱えた。ほとんどは聞き取れなかったが、最後に聞こえたスピリタスだけ、度数の高い酒だということが分かった。幽鬼(ユウキ)の頭が混乱するのに反比例して、千影(チカゲ)の目は輝きを増していく。他にも色々取り出しては、子供のようにはしゃいだ。

そして、そんな千影(チカゲ)に近づく影が一つあった。凪銀(ナギ)だ。

凪銀(ナギ)は足音を消しながら近づいていた。千影(チカゲ)に気づかれないギリギリの距離まで迫ると、一気に間合いを詰め、千影(チカゲ)の手から酒瓶を引っこ抜いた。そして、高々と持ち上げた。一瞬の早業だった。

「あーっ!返してください。私のですよ、師範」

幽鬼(ユウキ)の肩がピクリと跳ねた。けれど、その反応は誰にも気づかれなかった。

千影(チカゲ)は既に私物化したお酒を取り返そうと奮闘している。が、二十センチほど身長差があるゆえに、千影(チカゲ)が取り返すのは難しそうだ。

「ゲーム前に酒飲もうとすんなや、アホ」

「飲みませんって……流石に分かってますよ」

千影(チカゲ)はそう言いながらも、凪銀(ナギ)が没収した酒瓶に手を伸ばしていたので、全くもって説得力はなかった。

「……ほんまやな?」

凪銀(ナギ)は目つきを鋭くした。

「はい、少彦名神(すくなひこなのかみ)に誓って飲みません……だから、返して」

「……はあ、絶対にあかんからな」

最終的に凪銀(ナギ)は千影(チカゲ)を信じることに決めたようで、酒瓶を渡した。

「もちろんですよ。……ふふ、楽しみだなあ」

千影(チカゲ)は酒瓶を腕に抱え、微笑んでいた。

 

本当に飲まないんだよな?

 

〈12/13〉

 

その後、各自で食料庫を漁り、昼食を確保した。リビングには大きな机と人数分の椅子があったので、全員で机を囲んで食べた。こんなふうに大勢と食卓を囲むのは、小学校以来だと思う。直近も似たようなことがあった気がするが、それは記憶の隅に寄せといた。

昼食を終えると、幽鬼(ユウキ)達は建物を探索することにした。といっても、探索するべき場所は一カ所しかなかった。学ランとチアの部屋の間にある扉だ。

幽鬼(ユウキ)達はそこに入った。奥にあったのは大浴場だった。

三十回目のトラウマが尾を引いてるので、できることなら、一人で入りたいが、今はそうもいかないだろう。幽鬼(ユウキ)は、どうにか一人の時間を見つけようと考えた。

それと、リビングには、トランプやオセロなどの遊び道具も置かれていた。先十三時までは特にやるべきことはなかったため、プレイヤー達は自由時間を過ごすことになった。遊び道具を使って時間を潰すものもいれば、仮眠を取る者もいた。

そして、十三時。

テレビの画面に再び黒ウサギが現れた。

場の空気が一気に引き締まり、緊張が走る。

「これから、第一ゲームの説明を始めるよ」

 

さあ、本格的なゲームの始まりだ。

 

〈13/13〉

 

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