「はぁ、まったくそこかしこに現れるんだから…!」
私はただ、日が沈みかけている街を駆け抜けていた。息を切らしながら、悲鳴の聞こえた方向へ。この世界は"私が元々いた世界と違って"普通じゃない。日常茶飯事、というわけではないけれど、人が死ぬのなんてまあまああることだ。
先に言っておくと、私は転生者だ。といっても、前世の記憶を取り戻したのはつい最近。交通事故で死んだはずなのに、目が覚めると知らない部屋にいた。個人情報やエピソード記憶はほとんどなく、残っていたのは人間としての基礎知識と、アニメや漫画などの娯楽に関する記憶だけだった。情報がいっぱいあったから、多分オタクだったんだろうな、私。
そして私は身の丈に合わない力を手に入れた。でも、手に入れたからにはそれなりに使わなければという使命感もあって。そんな中途半端な心持ちで、今日も私は"それ"の前に立つ。
目の前には今にも怪物に襲われそうな女の子が怯えており、動けない様子だった。
「うおりゃぁーっ!」
このままでは手遅れになると思い、私は飛び蹴りを怪物に食らわせる。ま、よろけてるだけであんまダメージないけどね。現役JKスペックの蹴りじゃこんなものかな。
そして振り返って、女の子に話しかける。
「安心して、もう平気だから」
「うっ、ひぐっ…ゆうくんが…」
「っ!」
ゆうくんというのは、恐らくこの子の友達なのだろう。この怯え方からして、最悪食べられてるか……。
「ごめん、ゆうくんって子はもう、多分助けられない。だからせめて…あなたは無事に帰して見せるから」
私が鞄から取り出したドライバーを腰に当てると、自動で私の腰に巻きつく。…やっぱどうなってんのこれ。自動で巻き付くって普通にすごくない?まあいっか。
そしてもう一つ、巨大なバックルをドライバーに装着する。それでえーっと、なんだっけ?あ、そうだ。
「
卵型のアイテムをセットすると、チャイナ風の音楽が流れ始める。さて、後はあのお決まりのセリフを言うだけ。
「変身」
私はバックルへ手を伸ばし、龍の牙を模したスイッチを押し込む。
『東!』
『仮面ライダー! ズイ 青龍!』
するとドライバーの卵が割れ、巨大な卵が私を包み込む。それが割れると、破片が私の体へと収束し、装甲となった。水面のような青い装甲、頭の装甲は龍を思わせる見た目だ。
そう、ここは仮面ライダーの世界。……いや、仮面ライダーの世界なのは分かるんだけど、どの作品なのかはさっぱり分からない。そもそも、こんな怪物は見たことないし。目の前の怪物、不可思議は珍しいものを見るような目で私を見つめる。
「仮面ライダーズイ。参る」
私は不可思議に対して、名乗りを上げた。まああいつは多分理解してないだろうけど、自分を鼓舞する的な意味も込めて、ね。
私は迫ってくる不可思議の攻撃を避け、女の子から距離をとるように蹴り飛ばす。こうして戦って思うけど、誰かを庇いながら戦うって結構大変。
「あなたは早く逃げて!」
「う、うん……!」
女の子に逃げるよう促していると不可思議が女の子を追いかけようとする。おっとっと、おいたはダメだよ〜?
『セイリュウブレイド!』
「ハッ!」
「GyAA!?」
ドライバーから出現した龍の柄が付いた剣で何度か不可思議を斬りつける。どうやら効いてるみたいで、不可思議は傷口を抑えながら後ずさる。と思ったらこっちに殴りかかってきたので、攻撃をギリギリでよけ、カウンターを叩き込む。
すると不可思議は突如背中から翼を生やし、飛行の構えに入る。…おっと、そういう感じですか?
「そこまでしてあの子追いかけるぅ?」
どうやら女の子…というか子供に対する執着が強いのかな?ああいう野生っぽい怪人は何考えてんのか分からんね。まあ何にせよ……。
「追いつけない道理はない」
私はドライバーから青龍の卵を取り外し、懐から取り出した別の卵を装填する。翼を模したレバーを押し込むと、聞き慣れた音声が響いた。
『南!』
『仮面ライダー! ズイ 朱雀!』
「飛べるのはそっちだけじゃないですよっと」
私は背中の朱い翼で不可思議と同じく飛翔する。飛ぶときに一気に加速して、不可思議との距離を詰める。
『スザクスラッシャー!』
私は生成された翼のような双剣で不可思議を斬りつけようとしたけど、不可思議が急旋回したせいで避けられた。ちょっとイラっときたので、翼から炎を纏った羽をいくつか飛ばし、不可思議に差し向ける。避けきれずに何発もそれを食らった不可思議はそのまま廃工場に落ちていく。うん、近くに人はいなさそうだ。私もその後を追って急降下する。
「やーっと追い詰めた」
「GyA....!」
「はいはい、もう終わらせるから」
私はそうため息をついてバックルの翼のレバーを再び押し込む。
『朱雀! ゲ・キ・メ・ツ!』
その音声が鳴ると先ほど放った羽が双剣に集まっていき、炎を纏う。柄から剣先へと炎が広がっていき、周囲に火の粉が舞っている。向かってくる不可思議の攻撃を見切って避け、必殺の一撃を食らわせた。
「セイッ!!」
「GyAAAAAAAA!?」
不可思議は断末魔のような声を上げて爆散した。カランコロン、と卵のようなアイテムが3つドロップし、それを拾う。これが何なのかは分からないけど、集めて損はない、と思う。放置して誰かに拾われたら面倒くさいし。
「不可思議も倒したし、さっさと帰りますか~~」
そう呟いてその場を立ち去ろうとした、その時だった。
「不可思議の匂いを辿ってきてみれば、誰だお前は?」
そんな声が聞こえたので振り返ると、大正時代からタイムスリップでもしてきたのかと思う服装の男が立っていた。てか卵拾うのに夢中で変身解除するの忘れてた。私今結構ヤバい人なのでは?
「その謎のバックル。恐らくその力で不可思議を倒したのだろうが…何よりもお前からは嗅いだことのない匂いがする。不可思議ではないが普通の人間とも言い難い」
に、匂い?鼻が利く方でしょうか?何か勘ぐってる様子だけど、何とかなるかな?これ。
「何はともあれ、少し話を聞かせてもらおう」
「…もし断る、と言ったら?」
正直、私のことを洗いざらい話すと何がどうなるか分かったもんじゃない。裏方で人知れず不可思議を倒すくらいがちょうどいいのだ。この人がもし"物語的に重要な人"だったりしたら、変に関わると大変なことになってしまう。と、思っていたのだけど…
「ならば仕方ない。本意ではないが、多少強引にでも情報を吐いてもらう……
「メ、メタモ…?」
男は腰巾着に手を伸ばした。取り出されたのは、私の持つものとよく似た…ていうか全く同じと見られるドライバー。そして、見覚えのない銃型のバックル。……え、ちょっと待って。まさか、それ、変身アイテム?
あっれれ~?これはまずい流れなのでは?男はドライバーにバックルを装着し、紫色の卵をはめ込む。そして鼻を拭うような動作をしてから、銃型のバックルのトリガーを引いた。
「変身」
『戌!』
『仮面ライダー! ヴァンケン!』
「ええ~~……?」
何それ、私聞いてない……。
好評だったら続き書く……かも?