「十二支同盟の戌、仮面ライダーヴァンケン」
「え〜、戦う流れ?これ」
男の人は変身して黒い犬っぽいライダーになった。てか十二支同盟って…絶対重要組織じゃん…。こっちとしては正体バレたくないし戦いたくもないんだけど……。こうなったら……
「三十六計逃げるにしかず!」
「なっ!?」
私は翼を大きく広げ、一気に飛行する。このままここを抜けて遠くまで……!
「逃がすか!」
「あだっ!?」
と思ったら普通に銃弾当てられた。エイム良すぎ。装甲越しに衝撃が伝わってくる。朱雀って装甲薄いから結構痛いんだよね、攻撃当たると。
どうやら簡単には切り抜けられないらしい。私は仕方なく双剣を構えていつでも戦える状態にする。
しばらくの睨み合いの後、ヴァンケンと名乗る男は銃弾を放ちながらこちらとの距離を詰めてきた。私は放たれた銃弾を双剣で叩き落とす。
「くっ!」
「はっ!目的は何だ?人間か、不可思議か、それとも……シードエグズか!」
「しいどえぐず…?」
ヴァンケンは拳をふるったり銃を撃ったりしながら質問してくる。てか避けたり受け流したりするので手一杯でそれどころじゃないんですけど!絶対戦闘経験豊富だよこの人ぉ!
拳は剣か腕で受け止め、銃弾は防ぐか極力当たらないように避ける。もしここで攻撃に転ずれば敵対意思があると誤解されかねない。てかシードエグズって何ぃ!?
「とぼけるつもりか?貴様が拾っていた卵、あれは正しく管理しなければ危険なものだ!だから我々十二支同盟が回収する!得体のしれない貴様に渡す気はない!」
「知らない!私はただ不可思議を倒してるだけ!それ以外の目的はない!」
「……何?」
私の言葉を聞いたヴァンケンの動きがピタッと止まる。
「私のことは話せないけど、あなた…たち?と敵対するつもりもない。シードエグズが欲しいならこれはあげる」
「おっと、ふむ……」
私がさっき拾った卵…シードエグズとやらを3つ投げ渡すと、ヴァンケンはそれらをキャッチしながら何やら考えている様子だ。ま、シードエグズの使い道が分からない以上、管理の仕方が分かってる人たちに渡したほうが賢明だよね。
この世界の主人公がどんな立ち位置かは分からない。十二支同盟ってやつの一員なのか、それとも十二支同盟とは別の勢力なのか。どちらにせよ、彼らも不可思議を倒そうとしてるっぽいし、シードエグズを渡しても悪手ではない…はず。
「……どうやら早とちりだったようだな。分かった。お前の正体は詮索せん。華武利様……我らの主にも口添えはしておこう」
「ありがと。じゃ、そういう事で」
私はそう言い残してその場を飛び去る。良かった〜!何とかなったぁ〜……。
〜Side ヴァンケン〜
不可思議の匂いを辿って廃工場に来た私が目撃したのは、朱い鳥のようなライダーがシードエグズを拾っている光景だった。
だがやつが我々にとってどのような存在なのか分からない以上、多少強引にでも情報を聞き出すしかない。
そう思った私は質問に答えようとしないそいつに対して、変身して攻撃を仕掛けようとした。しかしそいつは次の瞬間、すぐにその場から逃げおおせようとした。
私は咄嗟に銃で逃亡を阻み、攻撃しながら目的を問う。だが返ってきた答えはシードエグズなど知らないというもの。声質から、恐らく女性だろう。彼女は不可思議を倒しているだけだと。
そう言った彼女はシードエグズを私に投げ渡す。戦闘をよく振り返れば、彼女は防御するだけで全く反撃してこなかった。今も敵対の意思は感じられない。
「……どうやら早とちりだったようだな。分かった。お前の正体は詮索せん。華武利様……我らの主にも口添えはしておこう」
「ありがと。じゃ、そういう事で」
彼女は端的にそう返すと飛び去っていった。不可思議を倒し、シードエグズをこちらに渡し、こちらへの反撃も控えていた。少なくとも、今ここで敵と断定する理由はない。もちろん、警戒は怠らずに行う必要があるだろうが。
「さて、華武利様にどう伝えようか」
変身を解除しながら私は、その場に残っていた朱い羽根を見つめていた。
そういえば自己紹介してなかったっけ。私は
「あら、おはようございます。霊沙さん」
「ん、おはよ、優菜」
同じ学年、同じクラスの瑞生優菜だ。瑞生家のお嬢様だがご両親はすでに亡くなっているらしく、今は優菜と使用人の音澄さんと二人で暮らしているらしい。マイペースな割にしたたかな子である。そして、別に打算とかではないのだけど、私が優菜とよく話すのには理由がある。それは…。
「それで、首尾はどう?不可思議事件研究会」
「順調ですわ。私の使命ですから」
「頑張るねぇ~」
優菜も不可思議の動向を追っていることだ。正直、不可思議の情報を追いかけてる時点で優菜が重要人物なのは火を見るよりも明らかだ。かといって、私だけじゃ不可思議のことを追うのにも限界がある。だから正体がバレない程度にそれとな~く不可思議のことを聞いてはこっそりそれを倒したりしている。
「あ、そういえば。この前変な目撃情報があって」
「へぇ~。どんな?」
「朱い鳥が空を飛んでたっていう目撃情報があったんです。丁度その場面をカメラでとらえた人がいたらしくて…」
「!?」
そう言いながら優菜はその写真を見せてくる。それにはこの前私が不可思議を追いかけていたところがバッチリと映っていた。め、目立ちすぎたかな…。
「ふ、不思議なこともあるもんだね~……」
「これはきっと不可思議に繋がる何かに違いありません!もっと調査に本腰を入れなくては!」
「……調査するのはいいけど勉強を怠るのはやめときなよ?そろそろ先生から何か言われてもおかしくないって」
「大丈夫です!いざというときは音澄が何とかしてくれますから」
赤点を取るレベルの勉強意識の低さを丸投げされる音澄さんが不憫でならない……。ていうか女性が主人公ってわけじゃないと思うから、この世界の主人公はその音澄って人なのかな?となると十二支同盟はライバルライダー的なポジション?
いや、主人公の協力者陣営っていう線もあるか。どちらにせよ断定するにはまだ早い。情報を集めつつ、かな〜。
「霊沙さん?どうしたの、急に立ち止まって…」
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してた。行こ」
ともかく、私の正体は誰にも知られるわけにはいかない。
「華武利様。少しお耳に入れたいことが」
十二支同盟では定期的に、不可思議の出現状況や撃破数を報告する「十二支会議」が開かれる。その会議の最中、ジャオとダットの報告が終わったところで、ヴァンケンが口を開いた。
「いいよ、言ってみて」
「先日、我々以外の仮面ライダーを目撃、戦闘及び対話を行いました。彼女は単独で翼の不可思議を撃破、私との戦闘では反撃の様子は見られず、シードエグズも即座にこちらに譲渡したことから、敵対意思は現状ないと思われます」
「我々以外のライダーだと?」
「へぇ、面白いね。本来変身装置は12つしかないはずなのに」
ジャオやティグルは各々の反応を見せる。華武利もヴァンケンの報告を聞き終わると笑みを浮かべた。
「ありがとう、ヴァンケン。不可思議を倒し、シードエグズもこちらに渡すとなると……明確な敵というわけでもなさそうだね。しばらくは様子見、かな?」
華武利はそう言うと、自分の個室に戻っていった。
これがヴァンケンじゃなくてジャオだったら「前のマコト兄ちゃんみたいだ…」ってなってたと思う。十二支のエミュ難しい…。
公式サイトに天桜学園高等部と書いてあったしお嬢様が通う学校だから中高一貫だろうなという予想。