拝啓。私は今、空の旅を楽しんでいます。……強制的に。
「うわぁー!?」
「なんでこうなるかなぁー!?」
遡ること少し前。私は優菜と同じく友人の小衣と満姫と一緒にカフェで優雅な時間を過ごしていた。前世だったらこの空気感は耐えられなかったかもしれないけど、今世はお嬢様として育てられた記憶がある以上、慣れてしまうのも必然というもの。ちなみに優菜はさっきからずっとタブレットを操作している。不可思議について調べてるのかな?
「優菜さんってば、また何とか研究会の調べもの?」
「不可思議事件研究会です。私の大いなる使命なので。……おかしい。今回の不可思議、普段より行動範囲が……」
「2人ともそろそろ研究会の名前覚えてあげなよ~?」
私の口調ってお世辞にもお嬢様口調とは言えないけれど、3人とも全くそういうの気にしてない様子だから、この空間は居心地がいい。話しているうちに音澄さんの話題になったところで、音澄さんが店の前でバイクを停車させた。
優菜が音澄さんと何か話してる…?と思ったら音澄さんが優菜に何かを渡してバイクで走り去っていった。結構真剣そうだったし、これは……何かが起こる予感!仮面ライダーを見続けてきた私の直感がそう告げているっ!
「ごめん2人とも、私用事思い出した!すぐ帰らなくちゃ!」
「あら、そう?」
「もう少し楽しみたかったけれど……残念」
「また今度埋め合わせするから。優菜にもよろしく言っておいて!」
私は自分の分の代金を置いて急いで店を出る。あ、バイクには追いつけないって思ったでしょ?ふっふーん、実は私もあるんだよね、バイク。4月生まれだからすでにバイクの免許は取ってあるのだ!だってライダーたるものバイクくらいは運転できるようにしたいじゃん?
「というわけで、しゅっぱーつ!」
マッハ全開!…ではなく少し速度を落として音澄さんに気づかれない程度に後ろを走行する。そしてしばらく音澄さんを追いかけるうちに、大きな広場のような場所で停まったので私も少し離れた場所でバイクを降りる。
見ればスーツの男の人が不可思議からカップルを助け出していた。でも不可思議がターゲットをあの人に変えてる。あのままじゃあの人が危ない!
「おらっ!」
「でやぁっ!」
私と音澄さんの蹴りが命中したのはほぼ同じタイミングだった。さすがに生身といえど2人分の蹴りだったので、不可思議は少し怯んだ。
「無茶なやつだな…ってお前は!」
「あなたは…!」
なんか音澄さんとスーツの人が通じ合ってる。私だけ仲間外れみたいじゃん。
「そちらのお嬢さんも、ありがとうございます。勇敢な方なんですね」
「あ、いやいや。そんなことは」
「ん?あなたは優菜お嬢様のご友人の……」
音澄さんがその言葉を言い終わる前に、肩をガシッっと掴まれるような感触がした。嫌な予感がして振り返ると、私と眼鏡の人を不可思議ががっちりとホールドしていたのだ。
「「ん?……うわぁーーっ!?」」
………で、今に至るというわけ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「そっちこそ人の心配してる場合!?」
この不可思議はおそらくこのまま私たちを連れ去って食べる気だろう。人前で変身はしたくないけど、いざとなればするしかないかな、これは。
「「うおぉぉぉぉーーっ!?」」
しばらくするとどこかの工場のような薄暗い場所に放り込まれた。周りを見るとほかにも連れ去られた人たちが糸みたいなのでぐるぐる巻きにされている。
「ここが巣、ってわけね?」
「さ、下がっててください。ここは私が引きつけますから。あなたのような子供を危険にさらすわけには……」
するとスーツの人がそんな提案をしてきた。その優しさは嬉しいんだけどさ、どっちかというとあなたは守られる側なのよね。
「大丈夫、あなたが下がってて。あ、これから見るものは内緒で」
「えっ?それはどういう……」
彼が問うよりも早く、私鞄からドライバーとバックルを取り出し、装着する。そして朱雀の卵を取り出し……
「
いつもの決まり文句を言ってから装填し、翼のレバーを操作する。
狭い場所だから朱雀は使いたくないけど、もし途中で十二支同盟とやらが来たら私が色んな姿になれるとバレる、もしくは複数人ライダーがいると誤認されかねない。だからしばらくは朱雀を使う。
「変身」
『南!』
『仮面ライダー! ズイ 朱雀!』
そしていつものように現れた卵が割れ、朱雀の装甲となった。
「赤い…鳥?」
「朱雀、ね!」
変身した私は不可思議に向かっていった。
〜Side 達臣〜
私は近頃我々十二支同盟以外に不可思議を倒している者を調査するという任を受け、その者を探し出すため不可思議の動向を追っていた。
その途中、先ほどから目を付けていた男と、勇敢な女子高生が私に襲いかかってきた不可思議を追い払った。女子高生はともかく、この男はやはり何かある。そう思っていたところ、不可思議は私と女子高生を巣まで連れ去ってきた。
(一般人が巻き込まれては、調査をしている場合では……!)
ひとまず私が囮となって女子高生を逃がそうと、そう思っているとその女子高生は私の前に出て、ドライバー、そして見たことのないバックルとライドエグズを使って変身した。
「赤い……鳥?」
(赤い鳥のライダー!?ではあれが、ヴァンケン様が遭遇したという……!)
「朱雀、ね!」
朱雀…確か中華民国の伝承にある霊獣の名だったか?彼女はその力を宿すライダーということか?彼女は双剣を生成して不可思議と対峙する。
閉所で翼を活かすのは難しいはずなのに、動きが鈍い翼不可思議に対して、彼女は翼を細かく動かして攻撃を避け、正確に一撃をいれていく。
不可思議が放った羽根の攻撃も、燃えるような羽根をいくつも射出して相殺している。双剣の片方で動きを止め、もう片方で斬り刻む。こいつ、かなり戦闘慣れしているようだ。
私は思わずその戦いに見入っていると、右から物音がした。その方向を振り返ると、彼女が対峙しているはずの翼不可思議がいた。
「こ、こっちにも!?」
「はっ?ウソ、二体目ってこと!?」
不可思議が、もう一体……!?まさか、群れで行動するようになったのか?百年前とは何かが違う……?私が襲われることを覚悟したそのとき、誰かが背後から私を飛び越え、不可思議を蹴り飛ばした。
◇
「ふぅ~、なんとか追いついた……って、不可思議が二体?それにあの赤い鳥は……」
私が不可思議と戦闘していると二体目が現れ、そいつを音澄さんが蹴り飛ばした。追いついたんだ……。
「まあいいか。俺はあいつの相手だ!」
『マイスドライバー!』
音澄さんはそう言うとバッグからドライバーを取り出し、腰……ではなく胸に装着した。
あれぇ〜?胸ベルトってゼッツだけじゃないの!?あれまだ続くもんだったの!?てかよく見たらバックルらしきものもないし……必要ないのかな?
そんな私の疑問を解決する暇もなく音澄さんは卵のアイテムを取り出すと、足で軽く叩くようにしてからドライバーへ装填した。左右の機構を操作し、傅くような姿勢をとる。
『エッグリューション!』
そして両手を合わせてネズミの頭を模した形を作り、最後にドライバーの上下にある機構を操作した。
「変身」
『マウス!』
『ネイズミーチーザー! マイス!』
音澄さんを包んでいた卵が割れ、その破片が足場となりその上で音澄さんの姿が変わっていく。その姿はまるで……
「こ、今度はネズミ!?」
「マイス、だ!」
やっぱ音澄さんも仮面ライダーだったか。ネズミ…今作のモチーフが十二支で、音澄さんも同盟の一員ってことなのかな?と、考え事をしていると横やりが入った。
「GyA!!」
「わっと!今考えごとしてるんじゃい!」
不可思議のとんできた羽根攻撃を避けながら双剣で攻撃する。ったく、狭くて狭くて戦いにくいったらありゃしない。こうなったら……
「あんた、空の旅にちょっと付き合いなさい!」
「GyA?」
私は不可思議を掴んで無理やり飛翔し、建物の外まで連れ出す。今回は囚われてる一般人がたくさんいるから、早く終わらせようそうしよう。
私は掴んだままの不可思議を空中で地上に向かって投げ飛ばす。工場の外を見渡しても、人影はない。少なくとも、今いる場所に人を巻き込む心配はなさそうだ。私はバックルの翼を操作し、必殺技の構えに入る。
「これで…終わり!」
不可思議は地上から羽根を飛ばしてくるけど、私はそれを避けながら急降下し、炎を纏った右足で思いっきりライダーキックを食らわせた。
『朱雀! ゲ・キ・メ・ツ!』
「はあっ!!」
「GyAAAAA!!?」
不可思議が爆散し、シードエグズを拾っていると、戦闘で失ったのか、片翼になった不可思議が私の横を過ぎ去り、それをマイスが追跡して走り去っていった。マイスは一瞬私の方に振り向いたけれど、すぐに不可思議に視線を戻した。
って、ボーっとして場合じゃないか。でも正体ばれるの嫌だし、もう決着つきそうなくらい不可思議はダメージ負ってたし、これ以上は眺めるだけにしておこうかな?うん、そうしよう。そう決めた私は近くの高い建物の上まで飛び、その様子を眺める。
「悪いが、タマゴもらうぜ」
『エッグシード!』
マイスがそう宣言すると、ドライバーの上下の機構を開いてもう一度閉じる。マイスがその場で側転すると足の軌道に沿うように回し車のようなものが完成する。そのままマイスが不可思議へと突進し、激突するとそいつを空中へ吹っ飛ばしライダーキックを決めた。
『マウス! セパレード!』
「はあーっ!」
「GyAAA!!!」
マイスは不可思議が爆散する直前、その体内からシードエグズを取り出した。あれ、倒す前に取り出せるもんなの?私出来ないんだけど。ま、いっか。これ以上いると本格的に見つかりそうだから逃~げよっと。
私は建物を降りた後に変身を解除し、そそくさと現場から去るのだった。……そういえばバイク回収しなきゃ…はぁ。
マイスの見せ場を邪魔しないために虚空から生えてきた二体目の翼不可思議。すでに原作崩壊劇場は開演している。