ようこそ女装がバレたら即死の教室へ 作:納豆にネギ入れない派
神様という存在に、皆さんはどのような印象を抱いているだろうか。
慈悲深く、人々を見守り、ときには迷える者に救いの手を差し伸べる存在。あるいは、人間の理解など及ばない超越者。宗教によって色々と解釈は異なるだろうが、少なくとも俺は、神様というものには相応の威厳が備わっていると思っていた。
その認識が根本から間違っていたと知ったのは、つい先ほどのことである。
「いやあ、いいねえ! 実にいい! 君、素晴らしい素質を持っているよ!」
目の前で、白い服を着た何者かが大はしゃぎしていた。
見た目は二十代くらいの青年だろうか。整った顔立ちに、肩まで伸びた銀色の髪。服装も相まって、いかにも神秘的な存在といった風貌をしている。
ただし、言動は最悪だった。
「特にその性格! 面倒見がよくて、年下にはついつい世話を焼いちゃう! なのに親しい相手にはちょっと意地悪で、からかうのが好き! ああ、素晴らしい!」
「……あの」
「それでいて恋愛経験は少ない! 女の子をからかうのは好きなのに、自分が口説かれると途端に弱くなる! うんうん、実にいい素材だ!」
「人の人生を素材扱いするのはやめてもらえません?」
俺の抗議など聞こえていないらしい。
青年は宙に浮かぶ半透明の板を操作しながら、一人でうんうんと頷いている。板には何やら文字や数字が並んでいたが、こちらからではよく見えなかった。
それにしても、どうしてこうなった。
つい先ほどまで、俺は自宅のアパートにいたはずである。
大学の講義を終え、スーパーで買った弁当を食べ、風呂に入って、さて寝る前にゲームでもするかとパソコンの電源を入れた。その瞬間、視界が真っ白になったのだ。
気がつけば、この妙な空間である。
床も壁も天井も白一色。窓も扉も見当たらず、どこから光が差しているのかすら分からない。試しに床を踏み鳴らしてみたが、足音は普通に響いた。
夢にしては妙に感覚がはっきりしている。
そして、俺をここへ連れてきたらしい青年は、先ほどから人の個人情報を読み上げながら喜んでいる。
新手の詐欺だろうか。
いや、詐欺師ならもう少しまともな勧誘方法を考えるだろう。
「すみません。話を聞いてもらっていいですか?」
「ん? 何かな?」
「ここはどこで、あなたは誰なんです?」
「ああ、説明してなかったね!」
青年は手を叩いた。
その瞬間、背後に椅子が出現した。
「まあまあ、まずは座ってよ。長い話になるからさ」
「……どうも」
椅子はごく普通の背もたれ付きだった。
腰掛けてみると、意外にも座り心地がいい。少なくとも大学の講義室にある椅子よりは上等だ。あれは二時間も座っていると尻が痛くなるからな。
青年は俺の正面に腰を下ろし、得意げに胸を張った。
「改めまして! 僕は美と恋愛を司る神様だよ!」
「はあ」
「もっと驚いてくれてもいいんじゃない?」
「いや、驚いてはいるんですけどね」
正直、驚きすぎて何から質問すればいいのか分からない。
この空間も、突然現れた椅子も、常識では説明がつかない現象だった。神様という自己紹介が本当かどうかはともかく、普通の人間でないことだけは確かだろう。
「それで、神様が俺に何の用ですか?」
「うん! 君には異世界に転生してもらおうと思ってね!」
「嫌です」
「即答!?」
「そりゃそうでしょう」
何を言い出すかと思えば、異世界転生である。
確かに俺も、そういう小説や漫画は読んだことがある。主人公が神様から能力を貰い、異世界で活躍する話だ。娯楽として読む分には面白いと思う。
しかし、自分がやりたいかと聞かれれば話は別だった。
俺には家族も友人もいる。大学だって卒業したいし、積んでいるゲームもまだ何本か残っている。何より、今の生活に大きな不満があるわけでもない。
わざわざ全部放り出して異世界へ行く理由がなかった。
「というわけで、お断りします。元の場所へ帰してください」
「えー? せっかく面白い世界を用意したのに?」
「面白いかどうかは俺が決めることでは?」
「大丈夫! 絶対楽しくなるから!」
「その自信はどこから来るんですかね」
神様は聞いていなかった。
再び半透明の板を操作し始めたかと思えば、今度は俺の目の前に何枚もの画像を並べてみせた。
そこには、様々な女性の姿が映し出されていた。
長い黒髪の女性。銀髪の女性。眼鏡をかけた女性。背の高い女性。柔らかな笑顔を浮かべた女性。
共通しているのは、どの女性も美人で、どことなく大人びた雰囲気を持っていることだろうか。
「どう? この中だとどんな子が好み?」
「……何ですか、急に」
「いいからいいから!」
俺は画像を眺めた。
美人ばかりである。
正直、誰が好みかと聞かれても困る。そもそも顔だけで人を好きになるわけでもないし。
「まあ、強いて言うなら、落ち着いた雰囲気の人ですかね」
「なるほどなるほど!」
「あと、話していて楽しい人とか」
「うんうん!」
「……これ、何の質問です?」
「参考にしようと思って!」
何の参考だ。
嫌な予感がする。
俺の直感は、残念ながら正しかった。
「実はね、君には女の子として転生してもらおうと思ってるんだ!」
「…………は?」
「しかも、ただの女の子じゃないよ! 綺麗で優しくて、包容力たっぷりのお姉さん系美少女!」
神様は立ち上がり、両手を広げた。
「どうだい! 素晴らしいと思わないかい!」
「いや、ちょっと待ってください」
「もちろんスタイルも抜群! 身長は百七十センチくらいで、髪は長め! 胸だって大きくしちゃおう!」
「待てって言ってんだろ!」
思わず立ち上がった。
神様はきょとんとしている。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないですよ! 何で俺が女になるんですか!」
「だって、その方が可愛いじゃないか」
「理由がひどすぎる!」
この神様、根本的に何かがおかしい。
美と恋愛を司るとか言っていたが、実際には自分の趣味を他人に押し付けるだけの存在ではないだろうか。
俺が頭を抱えていると、神様は何やら得意げに人差し指を立てた。
「あ、でも安心して! 身体まで完全に女の子にするつもりはないから!」
「……え?」
「君は男の子のままだよ!」
俺は椅子に座り直した。
なるほど。
そういうことか。
つまり、女性になるというのは見た目だけの話で、実際の性別は変わらないというわけだ。
それなら、まだ理解できなくもない。
「要するに女装しろと?」
「そう! 究極の男の娘になってもらうんだ!」
「全然安心できねえ!」
理解できたところで、納得できるかどうかは別問題だった。
◇
それから、およそ十分。
俺は神様の趣味について、実にどうでもいい講義を聞かされていた。
曰く、男の娘には独自の魅力があるらしい。
曰く、中性的な美少年も素晴らしいが、女性にしか見えない美青年もまた素晴らしいらしい。
そして今回、神様が目指しているのは、誰がどう見ても綺麗なお姉さんなのに、実は男性という存在なのだという。
理解はした。
共感はしない。
「それに君、もともと面倒見がいいでしょ? 後輩の相談にもよく乗ってたみたいだし」
「まあ、普通に接してただけですけど」
「そういうところがいいんだよ! 外見さえ整えれば、きっと素敵なお姉さんになる!」
「俺にとっては褒め言葉になってないんですが」
「細かいことは気にしない!」
細かいことではない。
人生が丸ごと変わる話である。
しかし、どうやら神様には俺の抗議を聞く気がないらしい。
「さて、それじゃあ始めようか!」
「何を?」
「変身!」
神様が指を鳴らした。
次の瞬間、身体がふわりと浮き上がる。
「ちょっ、おい!?」
「動かないでねー!」
まばゆい光が全身を包んだ。
痛みはなかった。
ただ、身体の輪郭が曖昧になるような、妙な感覚があった。手足の長さが変わり、頭の後ろに何かが触れる。視界の高さも、ほんの少し変化したようだった。
やがて光が収まる。
足が床に着いた。
「はい、完成!」
神様が満面の笑みで拍手する。
俺は自分の手を見た。
細い。
指が長く、肌も随分と綺麗になっている。
続いて腕を確認し、髪に触れた。
長い。
それはもう、驚くほど長い。
肩どころか、背中の辺りまで伸びているではないか。
「……鏡」
「ん?」
「鏡を出してください」
「はいはーい!」
目の前に姿見が現れた。
俺は恐る恐る、その鏡を覗き込んだ。
そこに立っていたのは、一人の美少女だった。
いや、美少女というよりは美人と言った方が近い。
艶のあるダークブラウンの長い髪に、少し垂れ気味の茶色い瞳。顔立ちは整っており、全体的に柔らかな印象を受ける。身長も高めで、同年代の女子の中にいれば大人びて見えるだろう。
服装はいつの間にか白いワンピースへ変わっていた。
そして、胸元には明らかに以前の俺には存在しなかった膨らみがある。
随分と立派なものだった。
「…………」
俺は鏡に近づいた。
右手を上げる。
鏡の中の美人も右手を上げる。
首を傾げる。
向こうも同じように首を傾げた。
「……嘘だろ」
口から出た声に、さらに驚かされた。
女性の声だった。
やや低めではあるが、柔らかく落ち着いた声である。少なくとも、俺が知っている自分の声とは似ても似つかなかった。
「どう? 気に入った?」
背後から神様が尋ねてくる。
俺は鏡を見たまま答えた。
「……正直、すごいとは思います」
「でしょ!」
「でも、それとこれとは別です」
「えー?」
確かに美人だ。
悔しいが、そこは認めざるを得ない。
ただし、自分がなりたかったかと聞かれれば、答えは断固として否である。
神様はそんな俺の心境など気にも留めず、さらに説明を始めた。
「ちなみに、胸は僕の特製だよ! 本物そっくりの特殊なパッドでね、見た目も感触も自然なんだ!」
「……そこまで作り込んだんですか」
「もちろん! お姉さん系ならスタイルにもこだわらないと!」
「変なところに情熱を注ぎすぎでしょう」
「サイズはGカップ相当にしてみたよ!」
「誰がそこまで指定したんだよ」
「僕!」
「知ってた!」
神様は満足そうに笑っていた。
腹立たしいことに、技術だけは本当に凄いらしい。
説明によれば、胸パッドは装着部分の境界が分からず、体温や自然な動きまで再現するという。水泳や入浴にも対応しており、日常生活で偽物と見抜かれる心配はないそうだ。
そこまでできるなら、もっと別のことに能力を使えなかったのだろうか。
例えば、病気を治すとか。
世界平和を実現するとか。
少なくとも、大学生一人を美少女に改造するよりは有意義な使い道があると思う。
「それで、俺はこれからどうなるんです?」
鏡から離れ、神様へ向き直る。
「この格好で異世界に行けと?」
「そうだよ!」
「……分かりました。百歩譲って、それは受け入れましょう」
「おお!」
「ただし、生活するための身分とか、そういうものは用意してくれるんですよね?」
「もちろん!」
神様が再び指を鳴らした。
宙に一枚の書類が現れる。
そこには、見覚えのない名前が記されていた。
『橘 千紘』
「これが君の新しい名前!」
「……橘千紘」
「年齢は十六歳! 性別は女性! 学生としての身分も、必要な手続きも全部済ませておいたよ!」
「十六歳って……高校生ですか?」
「そう! 青春を謳歌してもらおうと思ってね!」
なるほど。
つまり俺は、二十二歳の大学生から十六歳の女子高生へ逆戻りしたわけだ。
六年間の若返り。
しかも美少女。
条件だけ聞けば、喜ぶ人間もいるのかもしれない。
だが、俺は知っている。
こういうとき、妙に気前のいい話には大抵裏があるのだ。
「……それで?」
「ん?」
「他にも何かあるんじゃないですか?」
神様が一瞬、動きを止めた。
そして、ぽんと手を叩く。
「あっ、そうだった! 大事なことを言い忘れてた!」
ほら来た。
俺は身構えた。
「君、男の子だって誰かにバレたら死ぬからね!」
「…………は?」
「だから、男の子だってバレたら即死!」
俺は神様の顔を見た。
神様は笑顔だった。
実に爽やかな笑顔である。
「……すみません。もう一度お願いします」
「男バレ即死!」
「何で!?」
思わず叫んだ。
いや、当たり前だろう。
どうして女装していることがバレただけで死ななければならないのか。
「だって、その方が緊張感があるじゃないか!」
「人の命で緊張感を演出するな!」
「大丈夫だって! 疑われるくらいなら平気だから!」
「何が大丈夫なんだよ!」
「相手が君を本当に男の子だと確信したらアウト、って感じかな!」
最悪だった。
疑惑だけなら助かる。
しかし、確信されたら死亡。
つまり、たとえ相手が親友だろうと恋人だろうと、正体を知られた時点で終わりということだ。
しかも、俺の身体は男性のままである。
……待て。
これ、学校生活どころか日常生活すら危険じゃないか?
「健康診断は?」
「入学前の記録は用意してあるよ!」
「体育の着替えは?」
「頑張って!」
「風呂は!?」
「工夫して!」
「ふざけんな!」
俺は本気で神様の胸倉を掴もうとした。
しかし、手はあっさり空振りした。
神様がいつの間にか数メートル離れた場所へ移動していたのである。
卑怯者め。
「まあまあ! 君ならきっと上手くやれるって!」
「何を根拠に!」
「僕の勘!」
「頼りにならねえ!」
こんな神様に人生を預けなければならないとは。
俺は前世で何か悪いことでもしたのだろうか。
いや、多少の心当たりはある。大学の講義をサボったこともあるし、友人にくだらない悪戯を仕掛けたこともある。だが、いくら何でも罰が重すぎるだろう。
せめて追試くらいにしてほしかった。
◇
「さて、説明も終わったことだし、そろそろ送り出そうかな!」
「待ってください。まだ聞きたいことが山ほどあるんですが」
「細かいことは向こうで確認してね!」
神様の足元に、光る円が現れた。
嫌な予感しかしない。
「ちょっと待て。本当に待て。まだ学校の名前すら聞いてないぞ!」
「ああ、そうだったね!」
神様は何でもないことのように答えた。
「高度育成高等学校ってところだよ!」
「…………」
聞き覚えがあった。
というか、ありすぎた。
高度育成高等学校。
確か、以前読んだライトノベルに登場する学校の名前だったはずだ。
国が設立した特別な高校で、生徒には毎月十万円相当のポイントが支給される。ただし、実際には成績や素行によって待遇が変化し、クラス同士で激しい競争が行われる。
そして何より、綾小路清隆という、とんでもない主人公が在籍する学校でもある。
「……よう実?」
「おっ、知ってるんだ!」
「知ってるも何も……」
俺は頭を抱えた。
なるほど、そういうことか。
異世界転生と言っても、剣と魔法のファンタジー世界ではなく、既存作品の世界へ送り込まれるらしい。
それも、よりにもよって『ようこそ実力至上主義の教室へ』。
俺は原作を読んだことがある。
ただし、細かい内容まで完璧に覚えているわけではない。試験の仕組みも複雑だったし、登場人物も多かった。何となく印象に残っている出来事はあるが、時系列まで正確に説明しろと言われれば自信がない。
そんな世界で、男だとバレたら即死する女子高生生活。
……いや、冷静に考えれば、普通の高校より危険では?
「ちなみに、君は一年Dクラスだからね!」
「Dクラス!?」
「うん! 綾小路君たちと同じクラス!」
「ちょっと待て! せめて普通の高校にしてくれ!」
「大丈夫! きっと楽しいよ!」
「その大丈夫には何の保証も――」
言い終わる前に、足元が消えた。
いや、正確には床が光に変わり、俺の身体が沈み始めたのだ。
「それじゃあ、千紘ちゃん!」
「おい!」
「素敵なお姉さんになって、青春をいっぱい楽しんでね!」
「だから俺は男だって言ってんだろ!」
神様は笑っていた。
俺は最後まで抗議した。
しかし、当然ながら聞き入れられることはなかった。
視界が白く染まっていく。
そして最後に、あの変態神がとんでもないことを言いやがった。
「あ、ちなみに恋愛も大歓迎だから! 可愛い女の子と仲良くなるのも、男の子から告白されるのも、どっちも楽しみにしてるよ!」
「お前、絶対に許さねえからなあああああ!!」
◇
次に目を開けたとき、俺はベッドの上にいた。
見慣れない天井。
見慣れない部屋。
そして、頬に触れる長い髪。
……どうやら夢ではなかったらしい。
枕元には、一通の封筒が置かれていた。
表には、こう記されている。
『橘千紘様』
中身を取り出す。
高度育成高等学校の合格通知。
入学案内。
そして、新生活に関する諸々の書類。
どうやら神様の言っていたことは本当だったようだ。書類には必要事項がすべて記入されており、学生証の申請も済んでいるらしい。
入学式は三日後。
俺は書類を机に置き、部屋の中を見回した。
クローゼットがある。
開けてみる。
女子用の制服が吊るされていた。
スカート。
ブラウス。
その他、女子高生として生活するための衣類一式。
何とも言えない気持ちになった。
「……マジかあ」
声が漏れる。
当然、女性の声だった。
俺はしばらく制服を眺めていたが、やがて小さく息を吐いた。
ここまで来てしまった以上、今さら文句を言っても仕方がない。
神様の趣味には心底腹が立つ。
だが、死ぬつもりはなかった。
幸い、顔も声も女性として申し分ない。身分も用意されているし、入学前の手続きも済んでいる。
それなら、やることは一つだ。
女子として振る舞い、男だとバレないようにする。
そして三年間、無事に卒業する。
できれば友達を作って、楽しい高校生活を送りたい。どうせもう一度青春を送るのなら、勉強ばかりではもったいないだろう。
……それに。
俺は部屋の姿見に目を向けた。
そこには、長い髪を少し乱した美人が立っていた。
「…………」
改めて見ても、相当に整った顔である。
少し笑ってみる。
鏡の中の女性も、柔らかく微笑んだ。
……うん。
悪くない。
いや、かなりいい。
「まあ、せっかくだし……楽しむくらいは、いいよな」
誰にともなく呟いた。
男だとバレれば即死亡。
そんな理不尽な条件を背負わされた俺だが、だからといって毎日怯えて過ごすつもりもない。
前世では普通の大学生だった俺が、今度はお姉さん系美少女として高校生活を送る。
しかも、あの『よう実』の世界で。
どうなることやら。
とりあえず、最初の目標は決まった。
友達を作る。
正体は隠す。
そして、できる限り楽しく暮らす。
「……よし!」
俺は気合を入れ直し、クローゼットから制服を取り出した。
まずは着替えの練習から始めよう。
何しろ、スカートなんて人生で一度も穿いたことがないのだ。
……いや、待てよ。
さっきの神様、胸のサイズがどうとか言っていたよな。
そういえば、下着はどうなっているんだ?
俺はクローゼットの引き出しへ手を伸ばした。
そして、そこに綺麗に収納されていた品々を見て、しばらく固まることになった。
「…………」
なるほど。
女子高生というのも、色々と大変らしい。
俺の第二の人生は、まだ始まったばかりである。
ちなみに、このときの俺はまだ知らなかった。
女子制服を着るだけで、あんなに時間がかかるとは。
特にブラジャー。
あれを毎日着けている世の女性たちには、心から敬意を表したいと思う。