●オグデンの記憶を見た後の一幕(ハリー、ダンブルドア)
「先生、こんな風にヴォルデモートの過去を知ることは大切なことなのですか?」
「非常に大切な事じゃと思う」
「それは、予言に関係することですか?」
「大いに関係しておる」
「わかりました。…先生もう1つ、お聞きしていいですか?」
「構わぬとも」
「ゴーントは、僕の知る多くのスリザリン寮の関係者と同じような性質をしているように見えました。…ということは、サラザール・スリザリンもああいった……人間性だったのですか?」
「ハリー。それは…わしにも、答えられぬ問いじゃ。君同様、わしの生まれた時には既にサラザール・スリザリンは過去の人じゃった。……君が気に掛ける理由は、友人のドラコかな?」
「いいえ、先生。それだけじゃありません。ドラコのご両親もです。…先生。本当のスリザリンらしさって、何なんでしょう?」
「それもまた、わしには答えられぬ問いじゃ。事実として、スリザリン寮に入る者は『純血』が多く、また後に悪名を轟かせた魔法使いの多くも、スリザリン出身ではあった。しかし、君の友人や、スラグホーン先生をはじめ、素晴らしい魔法使いを多く輩出していることもまた事実なのじゃ。ハリー。『本質』とは、その物事をどこから見るかという話でしかないのじゃよ」
「……どこから見るか、ですか?」
「そうじゃ。わしから教えられることは、わしから見たスリザリンでしかあり得ぬ。…なればこそ、ハリー。君の知る『本質』は、君から見たスリザリンでなければならぬ」
「……わかりました」
●日常の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「……はあ」
「ハリー、ハリー。物憂げなあなたも素敵だって、あっちで下級生がキャーキャー言ってますから、ため息をつくならそちらへどうぞ」
「そんなつもりじゃない!…そもそも、ため息だってそんなに吐いてないだろう?」
「いいや、ハリー。僕らが勉強を始めてからもう10回はいってるぞ」
「いやに具体的じゃないか。数えてたのかい?」
「僕が1ページ読み終わる間に2回はため息をついていたからね。今5ページ進んだから10回って訳さ」
「ロン。あなたはため息より読み進めることに集中すべきだわ」
「わかってるよ!…で、ハリー。いったいどうしたって言うんだい?」
「うーん……特に、思い当たる節は無いんだけどなあ」
「……はあ。あなたってば、恋人が出来ても治らないのね」
「恋人じゃないよっ!?」
「はいはい。最近、あまりマルフォイに会っていないんでしょう?」
「それはそうだけど……たまに会っても忙しそうにしてるし、仕方ないよ」
「いったい何をしてるんだろうな?君も、何も聞いていないんだろう?」
「うん。僕が知らない方が都合が良いってさ」
「……まあ、あいつに限って君に不利なことをするとは思えないけどさ」
「そもそも、ハリー。一応ツッコんでおきますけどね…今までが異常だったのよ。他寮なのに頻繁に会い過ぎだったのよ、あなた達」
「……あれ?言われてみれば、なんであんなに会ってたんだろう?」
「そりゃ…マーリンの髭!だよ。言うだけ野暮ってもんさ」
●ブタイウラ その1(ドラコ、ダンブルドア)
「失礼します。ダンブルドア先生」
「おお、ようこそ。ドラコ。…校長室に1人で来るのは、初めてだったかの?」
「ええ。…ダンブルドア先生。この度、折り入って相談があって来ましたの」
「ほう…珍しいことじゃ。いや、生徒の悩みを聞くのは教師の務め。是非、聞かせて頂こう」
「はい。では単刀直入に…闇の帝王からお父様へ、あなたの暗殺命令が下りましたわ。マルフォイ家として、失敗は家の破滅を意味する事態になっておりますの。…今までの誤魔化しに対する、しわ寄せですわね。……家の事情に、先生を巻き込んで申し訳ないのですが」
「ほっほ。良いとも。君は、友を守るために行動した。そして、今は家族を守るために行動している…それだけのことじゃろう」
「ええ、先生。…何か、妙案がおありですの?」
「あるとも。…わしの暗殺を、成功させればよい」
「っ!?」
「そうじゃの…すぐに、セブルスを呼ぼう。あやつも巻き込んで、3人の悪だくみじゃよ」
「ええ、先生。……本当に、ハリーには知られる訳には、いかなくなったわね」
●ホグズミード行き前の一幕(ハリー、ロン)
「ハリー…?ついに君、気が狂っちまったのかい?」
「ロン。急になんだい?見ての通り、集中したいから話しかけないで欲しいんだけど」
「それがおかしいって話さ!?朝っぱらから読書だなんて!君、いつからハーマイオニー型の変人になったんだい?」
「読書が好きになった訳じゃないよ。…ただ、調べたいことがあっただけさ」
「マーリンの髭!…オーケー。譲歩しよう。それで、何を読んでいるんだい?」
「ん?…ほら、ハーマイオニーから勧められたことがあっただろう?『ホグワーツの歴史』だよ」
「僕にはもう、君が分からないよ!どうせ読むんなら君の『上級魔法薬』だろう?」
「うーん。…そっちは、一旦保留だ。魔法薬学の時に参考にはするけど、他の内容は『目的』がわからないし。一旦、ドラコやハーマイオニーに相談して、『半純血のプリンス』の正体が分かってから決めるよ」
「……」
「……黙り込んで、どうしたんだい?」
「君はマルフォイと会ってなくて寂しいかもしれないけれど、僕らは会ってるようなもんだって思っただけさ」
「……はあ?」
●2度目の個人授業後の一幕(ハリー、ハーマイオニー)
「ハリー。今、時間空いているかしら?」
「え?どうしたんだい、ハーマイオニー。そんな改まって…何かあったのかい?」
「えっと…ほら!今年も、どの授業もいっぱい宿題を出しているでしょう?まだ終わっていないなら、それを邪魔してまでするような話ではないのよ!だからあまり気にしないで―」
「オーケー。一旦落ち着いてくれ。宿題は一旦落ち着いてるし、最悪の場合君に頼らせてもらうよ。…だから大丈夫だよ。いったいどうしたんだい?」
「えっと…ほら、あなたとマルフォイって、仲が良いじゃない?とっても!」
「……うん、そうだね?」
「だから、えーっと…コツ、とかがあれば、教えてもらいたいのよ」
「……もしかして、ロン?」
「っ………そうよ」
「そっかあ…ついに、僕らの間でもそういうことが起こるんだね」
「言わせていただきますけれど、今更よ!今更!同衾までしてたあなたに言われたくないわ!」
「同衾なんてしてないよ!?」
「似たようなことしてたじゃない」
「……してたけどさあ」
●2度目の個人授業後の一幕 その2(ハリー、ハーマイオニー)
「自分でこんなことを言うのもなんだけどさ、絶対に相談相手間違ってると思うんだ」
「そんなことないわ!あなたとマルフォイが仲睦まじいのは事実だもの。参考に出来ることはあるはずよ!」
「そう言われてもなあ…。そもそも、君とロンだって十分仲は良いじゃないか」
「分かってるわ!けれど、分かるでしょう?そういうのではなくて…その…ドキドキさせたいじゃない?」
「……ハーマイオニー。僕がドラコをドキドキさせられると思うかい?」
「あまり思わないけれど、無自覚にドキドキさせているんじゃない?」
「無自覚じゃ僕にもわからないじゃないか。…やっぱり、相談相手を間違ってるよ」
「いいえ!むしろ、あなたがマルフォイのどんな振舞いにドキドキするのか聞きたいわ!男の子側の感覚として、そっちの方が参考になるはずよ!」
「うん。君の相談に乗ったことにだんだん後悔してきたよ」
●2度目の個人授業後の一幕 その3(ハリー、ハーマイオニー)
「それで?あなたはマルフォイのどんなところにドキドキするの?」
「……っ。し、してないよ!?」
「ダウト。…でもちょっとだけ、あなたをからかいたくなるマルフォイの気持ちが分かった気がするわ」
「勘弁してよ。…でも、そうだなあ。ドラコって、多分自分の見せ方?ってやつを理解してる気がするんだ」
「……なるほど。からかって精神に隙を産んで、そこに魅力を叩きつけているのね。参考に…なるかしら?」
「ならないと思うなあ…ロンだもの」
「そうよね…」
●2度目の個人授業後の一幕 その4(ハリー、ハーマイオニー)
「わかった、整理しよう。ハーマイオニー、君の『目的』はロンをドキドキさせることでいいのかい?」
「ええ、そうよ。……その、ドキドキさせて、女の子だって意識させたいのよ」
「オーケー。なら、ドキドキさせるはあくまでも手段だよ。そっちにこだわる必要は無いんだ。重要なのは『ロンに意識させるにはどうすれば良いか』の方だ」
「ええ、分かってるわ!でも、他にどんな方法があるって言うの?」
「……特別な方法をとる必要はない気がするんだけどなあ」
「駄目よ!それじゃあ今までと何も変わらないわ!」
「うん。でも、今までの関係でもロンは充分意識してると思うよ?」
「そうかしら?」
「うん。…強いて言うなら、意地を張り過ぎないことじゃない?君もロンもその…ムキになり過ぎるところがあるじゃない?」
「あら、そのお言葉そっくりそのままお返しするわ!」
「ほら、そういうところだよ」
「……そうね。気を付けるわ」
「うん。そうしてくれると、僕の環境も平和になって助かるよ」
●2度目の個人授業後の一幕 その5(ハリー、ハーマイオニー)
「それこそ、なんか君が言ってなかったっけ?スラグホーンの…」
「スラグホーン・パーティ?」
「そう、それ。…あらためて、ロンを誘えば喜ぶと思うよ」
「……そうね。せっかく相談に乗ってもらったんだもの。結果を出さなくちゃ申し訳ないわ」
「その意気だよ」
「そういうあなたはどうするつもり?…ちょっと前に、女子トイレであなたに『愛の妙薬』を盛る方法を話し合ってるのを聞いたわ」
「なんだそれ!?…没収しなかったの?」
「その前にマルフォイが颯爽と踏み込んでいったわ。…問題ないと思ってその後は聞いてないけど、同じような企みをしてる子が他に居ないとも限らないし…早く誰か誘ったら?」
「うーん…最近ドラコに会えてないし、そもそもドラコも招待されてそうじゃない?」
「……なるほどね。そこで当然のようにマルフォイの名前が出るようにならなきゃいけないのね。参考になるわ」
「そういうつもりで言ったんじゃないんだけどなあ…」
●シリウスの両面鏡通信(ハリー、シリウス)
「『半純血のプリンス』だって?…ハリー。気持ちはわからないでもないが、そうした称号を自ら名乗るのは後々になって―」
「違うよ。魔法薬学で借りた教科書にそう記名されてたんだ。魔法薬の上手な作り方の他にも、色々な呪文についてメモがされてるんだ」
「ふむ…。いや、すまない。やはり、覚えが無いな。ハリー、分かっているとは思うが出所不明の魔法を使うことはお勧めできない。闇の魔術の中には使い手に代償を払わせるようなものも存在しているんだ」
「うん。わかってるよ。今は魔法薬を作る時だけ参考にしてる」
「そうか、それならばいい。…やはり私としては、君には『王子』よりも、むしろ『貴公子』の方が―」
「だから違うんだってばっ!!」
●スラグホーン・パーティ前の一幕(ハリー、ドラコ)
「あっ、ドラコっ!!」
「あら、ハリー。ごきげんよう。…久しぶりね。どうかしたの?」
「うん。…スラグホーンがパーティを開くんだけど、招待者は誰でも1人同伴者を連れていけるらしいんだ。よかったら、一緒に行かないかい?」
「……っ…ごめんなさい、ハリー。スラグホーン先生からお誘いは受けてるけれど…忙しいからお断りしたのよ」
「……そっか。うん、なら仕方ないね」
「ええ。…忙しいから、失礼するわね」
「うん。ばいばい」
「……」
「一度も、目を合わせようとしなかったな。……もしかして、避けられてる?」
●スラグホーン・パーティにて(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「マルフォイに避けられてるって?そりゃ、どうしてさ?」
「わからないよ!…わからないから、困ってるのさ」
「忙しいって言ってたんでしょう?もともと、学期初めから言われていたんだし、きっと他意はないわよ」
「……そう、なら良いんだけど」
「逆に、君は何があり得ると思ってるのさ?」
「……別の人が良くなった、とか?」
「それはあり得ないって!だって―あれ?そっか!あの時君は居なかったんだ!」
「あの時って?」
「君、個人授業の為に早めに夕食済ませて先に部屋に戻った日があっただろう?その時、マクラーゲンの奴が、このパーティーに誘ったんだよ!」
「誘ったって?…まさか」
「そうとも!マルフォイさ。最初の内は適当にあしらってたんだけど、それにイラついた奴さん、ハリーをこき下ろし始めたのさ。そしたらもう―凄かったぜ?」
「どうしたってのさ?」
「鬼の形相ってやつ?マクラーゲンの奴固まっちまってさ。そこにとんでもない毒舌の嵐さ。…ありゃあもう、バジリスクの化身だったよ」
「……全然、想像がつかないや」
「そりゃそうさ。マルフォイは君の前だと完全に『姫君』だもの。だから僕にも固く口留めを……あ……」
「……はあ。ロン、私は黙っていてあげるわ」
「……えっと、骨は拾うよ」
「おいっ!?ハリー、冗談だろう!?」
●クリスマス休暇のスクリムジョールとの一幕(ハリー、スクリムジョール)
「君は、予言についてダンブルドアと話したりしているのかね?」
「ええ、話しています」
「そうか。…いや、実際に君が『選ばれし者』かは大した問題ではない。すべては認識の問題だ。人々にどのように見えるか、ということこそが重要だ」
「……それならば、去年と同じ方針を取ったらいかがですか?『日刊予言者新聞』で、ヴォルデモートが復活したことは誤報だったと報じれば良い」
「様々な実害が出ている以上、そのような報道は誰も信じない。必要なのは説得力のある希望だ。それこそ、君のような―」
「1つ、お聞きしてもよろしいですか?」
「ああ。答えられるか、わからないがね」
「魔法省は何を『目的』としているんですか?」
「むろん、魔法界の安寧だ」
「それなら―それなら、懐柔すべき相手を間違えています。あなた方が協力を申し出るべき相手は、僕じゃない。ダンブルドアだ」
「もちろん、ダンブルドアにも協力を仰いでいる」
「違います。…魔法省にダンブルドアが協力するんじゃない。ダンブルドアに、魔法省が協力するべきだと言っているんです」
「……君は、心の底からダンブルドアに忠実だな」
「さあ?実際に忠実かどうかは、問題ではないでしょう?…少なくとも、あなたにはそう見えている、というだけです」
「ああ。その通りだ」
●「姿現わし」練習コースにて(ハリー、ドラコ)
「……久しぶりだね、ドラコ」
「ええ、ハリー。ごきげんよう。…元気だった?」
「もちろん。…君は、クリスマスも忙しそうだったから、てっきり『姿現わし』の練習も来ないかと思ってたよ」
「流石に参加せざるを得なかったのよ。合法的に『姿現わし』の練習をできる機会をふいにはできないわ」
「……そっか」
「ええ。…ほら、わたくしたちの得意分野よ。『3D』…つまり、明確な目的意識に他ならないわ」
「うん。分かってる。…ねえ、ドラコ」
「なにかしら?」
「やっぱり、僕に手伝えることは、ない?」
「……何もないわ」
「そう。……うん、わかったよ」
●フェリックス・フェリシス使用翌日の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「へえー、それじゃ君は2年生の時に既に『例のあの人』の魂を破壊してたって訳だ!?」
「うん。だから、今のルシウスさんの扱いは、分霊箱を失ったにしては厚遇過ぎるって。…逆に、ドラコの身柄を求めたのは、その報復の意味があったのかもしれない」
「それなら、昨年のあなたの行動は大正解だったってことね」
「そうならいいんだけど…もしかして、今年ドラコが忙しそうなのって、その報復の無茶な命令の所為じゃないかって思ってさ。そうすると、ドラコは今、とんでもなく危険な橋を渡ってるんじゃないかって」
「それでも、マルフォイはずっとホグワーツに居るじゃないか。『例のあの人』だって、ホグワーツに居るマルフォイに手出しできっこないよ」
「……そう考えると不思議ね。マルフォイは、ホグワーツに居る状態でいったい何の『準備』を進めているのかしら?」
「……わからない。あと、もう1個。不思議なことがあるんだ」
「まだなにかあるのかい?」
「うん。……昨日の僕は、とても幸運だったはずなのに、どうしてドラコに会えなかったんだろう―」
●ブタイウラ その2(ドラコ、ダンブルドア、スネイプ)
「我輩が撤退する時間稼ぎ…もとい、撤退出来た事実への理屈付けに数人の死喰い人は招き入れたいところですな」
「あまり多く入れても被害がいたずらに増えすぎますわね…狙いとしては3~4人位かしら?」
「ならば、3人だ」
「そうなると、3人入れた時点で、キャビネットが限界を迎えるように修復せねばならぬ…ということかの?」
「……いっそ、数人通ったら物理的に起爆すればよいのでは?」
「「なるほど」」
「…騎士団の配置も練らなければなりませんわね」
「君の脱出手段もな」
「あら、ご心配には及びませんわ。…既に、手配は着けてありますもの」
「…心強い限りですな」
●クィディッチ最終試合前の一幕(ハリー、ドラコ)
「……あれ?ドラコ?」
「っ……ごきげんよう、ハリー」
「君、トイレで…もしかして、泣いていたのかい?」
「そ、んな訳、ないでしょう!…わたくしは、大丈夫よ。だから、ハリーあなたには何も―」
「ドラコ。少しの間、ここで待ってて。どっかに行っても無駄だよ。…僕には、君の居場所なんて手に取るようにわかるんだ。…いいね?」
「っハリー!……はあ、仕方ないわね」
「お待たせ、ドラコ。…これを、君に」
「これは……フェリックス・フェリシス?」
「そうだよ。…多分、9時間分くらいは残ってる。君のやっていることを、僕は知らない方が都合が良いんだろう?それでも…これは、君の手助けになるはずだ」
「……っ…わたくしには、必要ないわ!」
「君が受け取らないなら、すぐに地面に叩きつけて捨てるよ。…受け取ってくれ、ドラコ。君がそんな顔をしていることに、僕は耐えられない」
「…………受け取るわ」
「そっか、ありがとう。…それじゃ、僕はもう行くよ」
「ええ。…ごきげんよう、ハリー」
「うん。ばいばい」
「………っ……それでも、だからこそ。わたくしは…やり遂げなければならないのよっ…」
●洞窟帰還後、天文台の塔の上(ハリー、ドラコ、ダンブルドア)
「先生。『闇の印』があるのに、誰も居ません…どういうことでしょう?」
「わからぬ。ハリー、しっかりとマントを被るのじゃ」
「……はい、先生」
「よし。…ふむ、少し早すぎたかもしれぬな」
「はい?それって―」
「すまぬ、ハリー。しばし、石になっていてくれ…なに、そこまで待つことも無いじゃろう―」
「エクスペリアームス!……ダンブルドア先生。万事、手筈通りですわ。スネイプ先生も、まもなくいらっしゃるでしょう。…ただ、これだけ。我儘を通させて頂きましたわ」
「っ…!?」
「おお、ドラコ。……そうか。それもまた良いじゃろう。あっぱれ、じゃ」
「ありがとうございますわ。…ハリー、そこに居るのでしょう?」
「……っ」
「まもなく、ここに『死喰い人』が来るわ。そして目的を果たし次第、撤退を始めるの。…わたくしは『3階の女子トイレ』で待っているから、必ず来て」
「……っ!」
「さて、足音が近いようじゃな。…ドラコ、一世一代の大芝居の準備は良いか?」
「もちろんですわ、先生。…すべては、わたくしたちの目的の為に」
●3階の女子トイレ(ハリー、ドラコ)
「あら、ハリー。遅かったわね。マートルには少し離れていてもらったから―」
「ドラコっ!ドラコ・マルフォイ!!君はっ……僕を、裏切ったのかっ…?」
「……ええ、そうね」
「どうしてっ…どうしてそんな嘘をつくんだ!?僕に、憎まれようとしないでくれっ!ダンブルドアが死ぬことを、君も、スネイプも、ダンブルドアも!最初から計画していたんだろう!?」
「………ええ、そうね」
「どうして……どうして。それを…目的に出来なかったんだ……?」
「……ハリー」
「君なら、出来たんじゃないのか?君なら…ダンブルドアの命を捨てることなく、目的を…果たせたんじゃないのかい?」
「……ハリー。覚えておいて。何かを選ぶということは、それ以外を選ばないということなの」
「いったい、何を…?」
「わたくしは…わたくし達は、選ばなかったのよ。ダンブルドアの命と、あなたの…信頼を」
「だったらっ…だったらなんで、そんなに苦しそうな顔をしてるんだ!?」
「……っ」
「欲しいものをどんな手段を使っても手に入れるのが蛇の流儀だって、教えてくれたのは君だろう?…どうして、諦めてしまったんだっ!」
「……あなたの隣に並び立つために、様々な努力をしたわ。それでも…わたくしの目的の為に、これ以上の方法を思いつくことが出来なかったのよ」
「何を言って…ドラコ…?」
「あなたは、わたくしの守護霊を知りたがっていたわね。…エクスペクト・パトローナム」
「……獅子?いや……尾が、蛇だ」
「そう。あの日、わたくしは誇り高い獅子に救われた。…その隣に、並び立ちたかった。あなたを、失望させたくなかった。……けれど、わたくしは獅子に憧れた怪物でしかなかったのよ」
「……そんなこと―」
「いいえ。ハリー。…原初の目的を忘れて、あなたを蔑ろにした今のわたくしは、あなたの傍に居るべきではないわ」
「…っそんなこと―」
「ありがとう、ハリー。これで充分よ。仲間とはぐれたわたくしは、あなたに追い詰められた。この事実があれば……わたくしが姿を晦ましても、またあなたに誘拐されたって言い訳が立つわ」
「な、にを……?」
「また、会いましょう。ハリー。…ステューピファイ!」
●旅の決意(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「―ハリーっ!ハリー!!起きてっ!」
「……ハーマイオニー?」
「良かった!あなたが見つからないって、皆で探していたのよ?どうしてこんなところに居たの?」
「……ドラコは!?」
「ええ。マルフォイが、あなたの居場所を教えてくれたのよ。…ロン!ハリーが目を覚ましたわ!」
「ハリー!!良かった。…いったい、何が起こったんだい?」
「そんなことより!ドラコをっ…ドラコを、追い掛けなくちゃ」
「落ち着いて、ハリー。マルフォイはどこも怪我をしていなかったわ」
「違うんだ!……僕が、追い掛けないとっ…」
「残念だけど、ハリー。…多分、マルフォイはもうホグワーツには居ないわ。私達が会った時、屋敷しもべ妖精を連れていたの。帰らなきゃいけないから、あなたを頼むって言って、『姿くらまし』しちゃったわ」
「……そっか」
「ねえ、ハリー。いったい何があったの?」
「……ダンブルドアが死んだ」
「……ええ、知っているわ。それもあって、あなたを探していたの。ダンブルドアと一緒に居たあなたなら、何か知っているんじゃないかと思って」
「……殺したのは、スネイプだ。でも―」
「スネイプ!?あいつは騎士団の一員だろう!?ダンブルドアは、あいつを信じていたのに!?」
「じゃあやっぱり、スネイプは『死喰い人』だったの?」
「わからない。…ダンブルドアの死は計画されていたんだ。ダンブルドア自身と、スネイプと………ドラコが、仕組んだんだ」
「待ってくれよ!まったく意味が分からないぞ!?」
「僕にだって、何もわからない!!!」
「……っハリー」
「ドラコは…目的の為にはこれしかなかったって、それしか言ってくれなかった。そして…行ってしまったんだ」
「……ハリー。こんな時にごめんなさい。でも、考えなければならないと思うの。ダンブルドアは自分が死ぬことを知っていた。そして、あなたにヴォルデモートを滅する方法を託した後に、死んだの。これって、つまり…」
「うん。ダンブルドアは、僕にヴォルデモートを倒せと言っているんだ。そしてきっと……あの計画を、僕にだけ見せたことにも意味があるはずだ」
「……ごめん。どういうこと?」
「皆には、スネイプがダンブルドアを殺したことだけ伝えよう。ヴォルデモートに開心術を使われたら、ダンブルドアの死の真相がバレてしまう。…知らない方が都合が良いって、こういうことだったんだ」
「ハリー、本当にいいのね?」
「うん。…来年、僕はホグワーツには戻らない。分霊箱を見つけて、破壊する旅に出る。その中で、きっとこの計画がなぜ必要だったのか、明らかになるはずだ」
「そっか。それなら、準備しなきゃな」
「ええ。…過酷な旅になりそう。シリウスが大反対しそうだから、言いくるめる方法も考えなきゃいけないわ」
「それはうちのママもだ」
「ちょっと待ってくれ。僕は1人で―」
「僕たちも行くに決まってるだろ、ハリー」
「ええ。全部明らかにして、私もマルフォイに一言文句言ってやらないと、気が済まないもの」
「だけど、旅に出るより前に一度僕の家に来なきゃいけないぜ?ビルとフラーの結婚式があるもの」
「ああ、そりゃあ…見逃せないな」
お読みいただきありがとうございました。
後書きです。
解説していきます。
●本話における原作との乖離点(本編記載内容省略)
・ドラコが味方で、ダンブルドアと共謀している為、ドラコ関連の出来事の大半が消滅。(ホグワーツ特急でのハリーへの呪い、ケイティ・ベルのネックレス、ロンの毒入り蜂蜜酒、セクタム・センプラ等)
・ジニー関連イベント全消失。
・『蛇の流儀』により『上級魔法薬』を警戒。便利な魔法薬学の供としてのみ使用。
・ドラコにより、『愛の妙薬』混入回避。
・上記諸々により、ハリー、ロン、ケイティが欠席することなくクィディッチ継続。よってジニーとディーンのキスイベント回避。
・ロンがラベンダーと付き合わない
・『蛇の流儀』により、ハリーの『無言呪文』と『姿現わし』が原作より上達(推定)。
・ハリーは未だに「必要の部屋」の存在を知らない。
・ハリーが『ホグワーツの歴史』を読破済み。
・『死喰い人』の人数を絞ったことで、グレイバックが来られていない。よってビルが負傷していない。
●『謎のプリンス』における人間関係
当初、ロンとジニーの口論の場面を読み返した時、「ハリーとドラコまだキスしてない!完璧なオチがついたな!」と思い、ウキウキで執筆していました。
その矢先に、そもそも本作ではクラムがドラコに夢中だった為、ハーマイオニーもキスしてないし、そもそもケイティ・ベルが呪われていないからディーンがクィディッチに参加せず、すると隠れ場所も変わってこの場面が存在し得ないのでは?と気づき全削除。
ロンのストレスの原因が減る為、これハーマイオニー側を説得できればどうにかなるのでは?という発想から、まさかのハーマイオニーからハリーへの恋愛相談になりました。
一応、原作通りの進展具合になる程度には効果があった、ということにしておきましょう。
●終盤の戦いについて
参戦した死喰い人はダンブルドア暗殺計画をヴォルデモートから授かった本人のルシウス、そしてベラトリックスとアミカス・カローです。
妹のアレクト・カローとグレイバックが後から続こうとしましたが、キャビネットが再び壊れた為にお留守番。
一方、光の陣営側は原作のようにDAの戦力が無い代わりに、接敵場所が有利で、かつ数的有利も確保できていた為に原作よりも遥かに有利に進んでいました。
原作でハーマイオニーがDAで、またドラコがロスメルタと連絡を取る為に使っていたコインと似たような連絡手段をダンブルドア達3人が確保していた為、ドラコの連絡を受けてスネイプが天文棟へ急行。フリットウィックも気絶させられることなく参戦出来たため、これもまた大きかったことでしょう。
一方、開心術対策に何も知らされずに参戦したルシウス。
おっかなびっくりドラコに着いて行ったらなんかダンブルドアが追い詰められていてびっくり。それをスネイプが容赦なく殺してさらにびっくりしていました。
そのままスネイプが導くままに撤収。…あれ、ドラコは?という感じでした。
●ドラコについて
原作とは違う方向で、ずっと苦しんでいました。
襲撃後はドビーをお供に雲隠れ。事前にスネイプから「逸れた為、ハリー・ポッターに捕まった可能性がある」と言ってもらうように協議済みです。
目的を細分化し、手段を細分化し、見落としを探し、自己の思考の癖を見直し…それでも、この展開を避けられませんでした。
その上で、計画外の『エクスペリアームス』は悪あがきです。
原作でドラコの守護霊は明かされていなかったので、折角ですからド派手にお披露目しました。
一見、大きな雌獅子で、尾が蛇になっています。
しかし、実態として本体は尾の蛇の方であり、むしろ『獅子に擬態した蛇』と言った方が正確な存在です。
原作ではトンクスやスネイプのように、心の在り方の変化で守護霊は変化すると描写されています。
ドラコも同じように、本作のハリーとの交流の中で守護霊が変化した結果として、こうなったのでしょう。
しかし…それでも、蛇であることを捨てられなかったのです。
後書きは以上です。
続きは死の秘宝を読み終えてからになります。
気長にお待ちくださいませ。
感想を頂きまして、ありがとうございます。
執筆の励みになっております。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。