●グリモールド・プレイスへの帰還(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「オリバンダーの事はシリウスが何とかしてくれるとしてさ。…どう思った?あの話」
「ヴォ…『例のあの人』が最強の杖を求めてるって話?ニワトコの杖って、『吟遊詩人ビードルの物語』にあった『三人兄弟の物語』に載っていたものでしょう?御伽噺でしかないわよ」
「でも、その御伽噺を君に授けたのはダンブルドアで、『例のあの人』も真剣にソレを探しているんだぜ?」
「それはそうだけれど…ねえ、ハリーはどう思う?」
「……うん。きっと、実在するんだ。そして多分、ヴォルデ―」
「『例のあの人』!!」
「ごめん…『例のあの人』は、そこに辿り着く。きっとその為にドラコは―」
「……1人でぶつぶつ言い始めちゃったよ」
「きっと、何かに気づいたのよ。気が済むまで待ってあげましょう?」
「まあ、仕方ないか」
「―よし。多分、大丈夫」
「考えはまとまったかい?それで、僕らはその『最強の杖』を探しに行くのかい?」
「ううん。何もしない」
「何もしない!?君、本気で言っているのかい?」
「うん。…何もしなくていいから、ダンブルドアは『ニワトコの杖』について何も言わなかったんだと思う。僕らの目的はあくまでも『分霊箱』だ」
「オーケー。そうすると…マルフォイの情報が正しければ、僕らグリンゴッツを銀行破りしないといけないことになるけど、どうするんだい?」
「正直なところ、正気の沙汰じゃないわね。透明マントで様子を伺って、どうにかなるとも思えないし…」
「……ビルに相談しちゃおうか?『ダンブルドアからの使命の為に、銀行破りをする必要がある』って」
「流石にもっと隠すべきじゃないかしら?」
「身内から銀行破りなんて出たらビルの立場が悪くなっちゃうよ!」
「ビルの協力と関係なく、銀行破り自体はやらなきゃならないんだけど…」
「あー……変わらないのか」
●貝殻の家での一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ビル)
「――という訳で、ビル。ダンブルドアから託された使命の一環で、グリンゴッツを破らなきゃいけないんだけど、どうすれば良いと思いますか?」
「どストレートに言った!?」
「ハリー!?もっと、探るような言い回しをする予定だったでしょう!?」
「そうは言うけどさ。このご時世に『グリンゴッツの仕事に興味がある』とか言いながら金庫の罠の種類を聞くとか、怪しいことこの上ないじゃない?下手すれば僕らが『服従の呪文』に掛かってるんじゃないかって余計な疑いを掛けられちゃうよ」
「あー…オーケーだ。ハリー。君たちが本物だってことも、事情も、あくまで正気で正気の沙汰じゃないことをしようとしてることもわかった。その上で…どうしても、やらなければならないのかい?」
「うん。ベラトリックス・レストレンジの金庫に必要なモノがあります。誰かが本人に持ち出すようにお願いしてくれるなら、破らずに済むかもしれない」
「なるほどな。…わかった。僕に言えるのは、銀行にある罠の種類と、金庫から物を引き出すために必要なモノだけだ。破り方のアドバイスや実際に破る手助けは出来ない。…それでいいかい?」
「もちろん!ありがとう、ビル」
「よし。では手始めに、罠から説明しよう。まず―」
●貝殻の家での一幕 その2(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ビル)
「―とまあ、僕に言えるのはこんなところだ」
「えっと…うん。ありがとう、ビル。助かりました」
「君の助けになるならば、何よりだとも。…そういえば、君たちは『レジスタンス』について知っているかい?」
「レジスタンス…反政府組織ってこと?魔法省に反抗しているって意味では騎士団はそう呼べると思うけれど―」
「いや、違うんだ。騎士団の事じゃない。…『レジスタンス』というのは通称でね。最近、人攫いや囚人を護送中の役人を狙って襲う者たちが居るという噂があるんだ。今のところ、騎士団の情報網には全く引っかかってない上に正式名称もわからないから便宜上『レジスタンス』と呼ばれているんだ」
「……なんか、あやふやな情報しかないな」
「そもそも今の状況で、騎士団以外にそんな組織を作れる人なんて居るのかしら?」
「わかった!スクリムジョールだ!」
「確かにスクリムジョールを救ったのも『レジスタンス』かもしれない。けれど当然、時系列が合わないんだ」
「……流石に、確定した情報が少なすぎる。アテにするには危険だと思います」
「ああ。僕も同意見だ。しかし、仮に『レジスタンス』が実在するならば、君たちの起こす騒ぎに乗じて姿を見せるかもしれない。敵の敵は味方、という考え方もあるが…用心するに越したことは無いだろう」
「ええ。その通りです。…ビル。色々と、ありがとう」
「いいや、君たちの健闘を祈っているよ。…内心、複雑だけどね」
●グリンゴッツ破り計画中の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「さて。ビルの話をザックリ整理すると『受付さえ超えてしまえばどうにかなる』ということだ」
「ハリー、あなたちゃんと話を聞いていたの?トロッコを動かせるのも、金庫の鍵を開けられるのもグリンゴッツ所属のゴブリンだけなのよ?」
「そっちはトロッコに乗り込んでから錯乱呪文か…最悪、服従の呪文でどうにかなるよ」
「ハリー!?あなた、『許されざる呪文』を使うつもりなの!?『許されざる呪文』を使ったら、アズカバンで終身刑なのよ!」
「有難いよな。今の僕らの立場なら、『許されざる呪文』を使って逮捕された方が長生きできるぜ?」
「……受付を超えた後のことはわかったわ。それでも、怪しまれずに受付を超えなければトロッコに乗り込むことすらできないわ!」
「うん。それなんだけど…やっぱり、誰かに変身するしかないと思うんだ」
「そりゃあそうだろうけど、いったい誰に変身するんだい?あの狂った婆の髪の毛なんて持っていやしないだろう?」
「えっと…先に、情報を整理しよう。レストレンジ家の金庫は一番奥にあって、開けるには職員のゴブリンが手をかざす必要がある。つまり、一番深い通路への行き方を知っているゴブリンに案内をしてもらう必要があるから、変身する対象は『大きな金庫を持つ必要がある旧家』で、『闇の陣営に怪しまれない人物』であり、かつ『身分証としての杖』を僕らが持っている必要がある。その上で、『その人物の髪の毛』を手に入れないといけないんだ」
「……聞けば聞くほど不可能じゃないか?」
「いや、1人だけいる。…髪の毛も、ある」
「そんなっ!いったい誰なの?」
「……ドラコだ」
「あー。確かに、マルフォイ家なら奥に金庫はあるだろうけどさ。…杖と髪の毛は?もう一回行ってもらってくるのかい?」
「杖は、なんか返すタイミングが無くて、そのまま持ってきちゃったんだよ」
「後で返さないといけないわね。…髪の毛は?」
「……ローブに、何本か付いてた」
「マーリンの髭!!……ただ、マルフォイって今、君に誘拐されてることになってるんだろう?大丈夫なのか?」
「そこは…うまい具合に、設定を考えなきゃいけないけど。今のところ、彼女以上の適任者が居ないんだよ」
「オーケー。それじゃあ、それを軸に作戦を考えよう」
●グリンゴッツ破り計画(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「何度でも言うけどさ、絶対に配役おかしいよね?ロンの顔を整形して他人にするのは良いとして、ドラコへの変身はハーマイオニーがすべきじゃないの!?」
「散々話し合ったでしょう?私よりもハリーの方がドラコの演技が上手いし、マルフォイの杖も十全に扱えてる。透明マントを被る人は他2人のサポート役だから、より多くの魔法を使える私が一番の適任だって落ち着いたじゃない。全て適材適所、完璧な配置よ」
「ハリー、腹を決めろよ。ここでビビっちゃ男じゃないぜ?」
「むしろ男だから嫌がってるんだって!」
「大丈夫よ、ハリー。ドラコの演技をしているあなた、本当にポリジュース薬であなたの姿に変身しているドラコにしか見えなかったもの!きっと誰にもバレやしないわ!」
「そういう問題じゃないんだけど……今更、やるしかないか」
「その意気よ、ハリー!」
●グリンゴッツ破り計画 その2(ハリー、ロン、ボグロッド)
「無事に入れたわね…さて、マルフォイ家の金庫を開けたいのだけれど?」
「マルフォイさん…では、身分証を」
「杖でいいかしら?」
「ええ、結構です。……ミス・マルフォイは誘拐されたとお聞きしましたが?」
「ええ、そうよ。隙を見て杖を取り返して逃げてきたの。…だから、家族に連絡を取るためにお金が必要なのだけれど?」
「それは、失礼致しました。…宜しければ、わたくしめの方から、ご家族にご連絡差し上げますが?」
「あら、グリンゴッツはいつから連絡代行を始めたのかしら?…控えなさい。あなた達と定型取引以外をするつもりは無いわ」
「……すげえや、本物にしか見えないア痛っ!?」
「失礼ですが、お連れ様は?」
「途中で拾ったボディガードよ。ろくにこの国の言葉を話せないから、無視してもらって構わないわ」
「左様で…では、わたくし目がご案内いたします。こちらへ」
「ええ。頼むわね……まずは、第一段階クリア」
●グリンゴッツ破り計画 その3(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「インペリオ!…さて。ここまでは計画通りだけど、流石にトロッコがコースを外れて行ったらバレそうね」
「ハリー、ハリー。もう演技を続ける必要ないんだぜ?」
「わかっているわ。けど…口調を維持してないと、心が折れそうなのよ」
「マルフォイが弱気だ…ハリーの前だとこんな感じなんだなあ…」
「ロン。おしゃべりはそこまでよ。この先にドラゴンが居ることは分かっていても、どのタイミングで遭遇するのかはわかっていないんだから」
「わかってるさ!ちゃんと前も確認して—ストップ!ブレーキだ!!」
「ダメっ間に合わないわ!」
「これはっ…盗っ人落としの滝!?クッション呪文だっ!早く!!」
「ギリギリ、間に合ったわ…」
「……変身、解けちゃったね。服がきつくて息が苦しいよ」
「君の想定内じゃないか。むしろ、本物のマルフォイが来ていると信じ込まれる方がマズいって言ってたじゃないか」
「まあ、そうなんだけどね。…インペリオっ!!危ない、服従が切れてたよ」
「やっぱり、気分の良いものじゃないわね。さあ、さっさと進みましょう」
「うん。…追手が来る前に、金庫に辿り着かなきゃ」
●グリンゴッツ破り計画 その4(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「オーケー。全員金庫に入れたね」
「本物のドラゴンってこんなに怖いんだな…ハリー、君ほんとに良く3年前に対決できたよな」
「そんなことより、今は杯よ!どこにあるのかしら?…熱っ、それに、増えた…?」
「呪いが掛かってるんだ!?ものに触れないように探さなきゃいけない…それなら、ロン。僕の服に浮遊呪文を掛けてくれ」
「そんなことをしたら首が締まっちゃうよ!?」
「服が小さいから大丈夫だよ!早く、時間がない!!」
「ウィンガー・ディアム・レヴィオーサ!…これくらいの高さで良いかい?」
「オーケー!…あった、あそこだ!!ロン、そのままもっと前だ。…そう、もう少し。…ちょっと左へ!…よし、掴んだっ!」
「よし、脱出だっ!!早く、カップのコピーで部屋が埋まっちまう前に!!」
●グリンゴッツ破り計画 その5(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「よし、ロン。箒は持っているね?」
「モチのロンさ。エンゴージオ!っと…よし、オーケーだ」
「エンゴージオ!…ハーマイオニーは僕の後ろへ」
「ええ、お願いね」
「……」
「ロン!ファイアボルトの方が早いんだからこれが妥当だって話をしたじゃないか!」
「わかってるさっ!マーリンの髭!!!」
「……それなりの時間、金庫の中に居たと思うのだけど追手がまだ来ていないのね」
「うん。それに、かすかに遠くで騒ぎが聞こえるような……誰かが、戦ってる…?」
●グリンゴッツ破り計画 その6(ハリー、ロン、ハーマイオニー、レジスタンスの一員)
「やっぱり、ロビーが戦場になってる。…仮面をしているけど、『死喰い人』とは違うみたいだけど…どこにこんな戦力が居たんだろう?」
「ええ。『死喰い人』と戦っているもの。…あっ、ハリー!見て!あの格好、道の隅で座り込んでた人よ!きっと、そうした人たちに擬態していたのよ!」
「……でも、味方とも限らないよ。今は、逃げることを優先しよう」
「えー?でもさ、『死喰い人』の連中に呪いの一発くらい—」
「ロンっ!後ろだっ!?」
「プロテゴ!…無事か?ハリー・ポッターのご友人?」
「……庇ってくれた?」
「ハリー・ポッター、我々は君の味方だ。早く脱出したまえ。君が行き次第、我々も離脱する」
「っ……あなた達は、何なの?」
「言えない。然るべき時まで、我々は名乗りを許可されていない。…さあ、ハリー・ポッター、脱出を」
「……っどうか、ご無事で!」
「ああ、君もな」
「……ハリー、何か心当たりはある?」
「わからない。…けど、あの声をどこかで聞いたような気がする」
「…あまり、元気そうな方ではなかったわね。お葬式にでも行くような声だったわ」
「……うん。僕もそう思う」
●グリンゴッツ破り計画 リザルト(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス、クリーチャー)
「ハリー、ハリー!!無事なのか!?」
「うわあっ!?…シリウス、どうしたのさ?そんなに慌てて」
「慌てもするさ!グリンゴッツに行くとは聞いていたが、まさか銀行破りをするとは思わないだろう!?」
「流石に情報が早いなあ…」
「あれだけの騒ぎですもの。脱出も箒だったし、そりゃ目立つわよね…」
「どれほど危険な行為だったか、わかっているのか!?グリンゴッツを破るなんて、過去に―」
「ご主人様!お坊ちゃまはお疲れでございます!!まずは、怪我の治療と休息、それから温かいご飯が先でございます!!」
「む。…確かに、お前の言う通りだ」
「お言葉ですがご主人様はお坊ちゃまを幼子か何かと勘違いしていらっしゃいます!お坊ちゃまは既に成人してなさっています!成されたご功績を褒めこそすれど、叱るなどと―」
「私は保護者だ!心配するのは当然だろう!?そもそもお前は、ハリーを引き合いに出せば私が従うと―」
「いいえ!行き過ぎだとクリーチャーめは諫言を―」
「……あれ?なんか、知らない間に仲が改善されてる?」
「相変わらず言い合いしてるけどな」
「嫁姑論争みたいだわ…」
●グリンゴッツ破り計画 リザルト その2(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス)
「痛っ…傷が……」
「ハリー?どうしたの?」
「グリンゴッツの騒ぎで…ヴォ…『例のあの人』が気づいた。僕らが『分霊箱』を探してるって。…『分霊箱』の無事を心配してる…残る『分霊箱』は、ホグワーツだっ!!」
「ホグワーツだって?そんな…それじゃあ、ダンブルドアは自分のお膝元にある『分霊箱』を見つけられなかったってことかい?」
「ダンブルドアも知らないどこかに、きっとあるんだ。レイブンクローに関係する何かが…行こう。『例のあの人』より先に、それを見つけ出さなくちゃいけない」
「待つんだ、ハリー。…悪いが、聞かせてもらった。君はこれからホグワーツに向かい、そして『あの人』もホグワーツに行く…ならば、ホグワーツは決戦の場になる」
「違うよ!僕らは、戦うために行くんじゃない!」
「同じことだ!『あの人』は君と会えば必ず君を殺そうとするだろう。そうなれば、その場に居るホグワーツの教授たちをはじめとした君の仲間は、命がけで君を守ろうとするだろう!ハリー、今君の命にはそれだけの希望が集まっている。潜伏している仲間たちが、君の号令を待ち望んでいるんだ。君がホグワーツに戻ったという情報は、彼らにとってその号令に他ならない。そして、それは誤りではない。君と『例のあの人』がホグワーツで会敵する以上、その場は否応なく決戦の場になってしまうんだ!!」
「……わかった。どっちにしろバジリスクの牙が必要だったし、ホグワーツの探し物が終われば、あとは『例のあの人』の元へ行く必要があった。…シリウス。騎士団のみんなに伝えて。僕はホグワーツに行く。そこで、探し物をしなければならない。その間、『例のあの人』…ヴォルデモートを抑える戦力が必要だ。その探し物が終わり次第、僕もあいつと戦うよ」
「……本当ならば、君に危険な真似はして欲しくなかった。しかし、それが君の選択ならば、わかった。私が連絡役を引き受ける。ホグワーツにいるミネルバにも、連絡を入れておこう。君は、ホグズミードにある『ホッグズヘッド』へ行くんだ。…そこの店主が、きっと君の力になってくれる」
「……うん、わかった」
●ホッグズヘッドからホグワーツへの道中の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル)
「……必要の部屋?」
「そっか。ハリー達は知らなかったんだっけ?ホグワーツの7階にあって、中に入った人にとって本当に必要なモノが揃っているんだ。僕らはそこをダンブルドア軍団の拠点にしていて、最近ではずっとそこに隠れて過ごしているんだ」
「……ダンブルドア軍団?」
「なんか、知らない単語が当たり前のようにずらずら出てくると、ホグワーツから離れてたことを実感するよな」
「それだけ、ホグワーツでの生活も過酷だったのよ…ごめんなさい、話を続けて」
「一昨年、君が主導して自習教室を開いただろう?あの時のメンバーに呼び掛けて、奴らに対抗するグループを作ったんだ。元々が『闇の魔術に対する防衛術』のグループだから防衛協会、略してDA。そこから転じてダンブルドア軍団って名乗ってるんだ。いい名前だろう?」
「ああ、最高さ」
「連絡用に、ルーナが絵柄が変化するコインを作ってくれたんだ。卒業しちゃった関係者にも、それぞれの伝手でコインを届けてある。ハリー、僕らはみんな、君を助ける為の準備は出来ているよ」
「……うん。ありがとう、ネビル。君たちの力を当てにさせてもらうよ」
●必要の部屋での一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル)
「失われたレイブンクローの髪飾り…消えたのは数百年前…」
「それじゃ『例のあの人』も見つけようが無いよ。別の物なんじゃないのかい?」
「いいや、ほぼ間違いなくこれだよ。レイブンクローにまつわる物と聞いて、真っ先に出てくる、それも『失われた』なんて伝説がついている物をあいつが欲しがらない訳が無いんだ。そして、あいつがそれを『分霊箱』にした以上、そのヒントがホグワーツにはあったんだ」
「ヒントなんて言われても…確かに、創始者にまつわる物ならホグワーツにあるでしょうけれど、それこそ当時を知っている人でもないと知りようが無いわよ」
「いいや、それはもう必要が無いんだ。今必要なのは、『何らかの方法で手に入れた髪飾りの隠し場所』だよ。あいつは『自分しか知らないホグワーツの最も深い秘密』だと言っていた。だから誰も知らない……知らなかった、場所?」
「どうしたんだい、ハリー?」
「ネビル!…この部屋は、中に入った人にとって一番必要なモノが揃った部屋、になるんだよね?」
「そうだよ。それがどうか―」
「なら、『絶対に見つからない隠し場所』を求めていたら…部屋は、どうなるんだろう?」
「そうかっ…でも、部屋の内容を変えるには、一回全員が外に出なきゃいけないんだ。カロー兄妹に捕まるリスクを考えたら、全員を外には出せないよ」
「わかった。なら、僕が先生たちに話をしに行くよ。学校内の安全を確保した後で、この部屋を解放しよう。ついでに、欲しいものがあるから取ってくるよ」
「欲しい物って…どこに行くんだい?」
「3階の女子トイレさ」
●ホグワーツ決戦 序幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「ハリーっ!戻ってきたのね。分霊箱は?」
「この通り、ちゃんと壊してきたよ」
「良かった。スネイプは逃げたみたいだけど、カロー兄妹はマクゴナガル先生が縛って吊るしちゃったわ。今は、大広間に生徒を集めて、避難の準備を始めているところ」
「わかった。必要の部屋にはもう誰も居ないのかい?」
「ええ。みんな散らばっていったわ。そうそう、シリウスがリーマスから伝言を預かったんですって」
「リーマスから?」
「そうよ。『トンクスが産気づいている。守る為に君の元へは駆け付けられない。だけど必ず生き残って欲しい、君にはこの子の後見人になってもらうつもりだからね』…ですって」
「最高だね。…よし、分霊箱を探そう」
「おーい。…ネビルから、やり方を聞いてきたっ!この廊下の前で、必要な条件を考えながら何度も往復するんだってさ!」
「わかった。今必要なのは、『誰にも見つからない隠し場所』だ」
「よし、やってみよう!」
●必要の部屋の探索(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「うへえっ…どんだけ広い部屋なんだよ、この中から髪飾りを探すって言うのかい?」
「物もごちゃごちゃ沢山あるわ。…これ、全部誰かが隠そうとしたものなのかしら?」
「この様を見て『自分しかこの部屋の存在に気づいてない』とか思える神経はいっそ羨ましいね」
「この部屋が出入り口でさえなければ部屋ごと燃やすとか、やりようがあるんだけどなあ…」
「駄目よ、ハリー。『分霊箱』は燃えないもの」
「……片っ端からレダクト掛けて、壊れなかったモノが分霊箱ってこと?」
「どっかの独裁者じゃないんだから…手分けして探しましょう?」
「それしかないかあ…」
●必要の部屋の探索 その2(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ)
「まさかここまできて物量戦になるとは思わなかった…せめて、もう少し時間があれば」
「ええ。…『これ』を探すのは、確かにずいぶんと時間が掛かったわね」
「この声っ……ドラコっ!?」
「ええ。ハリー、久しぶりね」
「どうしてここに、君が居るんだい?」
「あら、『屋敷しもべ妖精』であればホグワーツ内でも『姿現わし』出来るのよ。それに、昨年はこの部屋でほとんどの時間を過ごしたもの」
「……このガラクタの山の中でかい?」
「ええ。でも、ただのガラクタの山ではないの。こんな風に、あなたのお探しの『お宝』も紛れ込んでいるのよ」
「あっ…それ!?」
「『レイブンクローの髪飾り』よ。…流石に、この広さの中を『共犯者』にもバレないように探すのは骨が折れたわ……実は見つけたのも、つい先ほどなの」
「えっと…渡してくれる、よね?」
「ええ、もちろん。…けれど、苦労には相応の対価が必要ではないかしら?」
「……何をすればいいんだい?」
「決まっているでしょう。…勝ちなさい」
「……え?」
「闇の帝王に勝ちなさい。…これを渡す対価に、わたくしに勝利を捧げなさい」
「……うん、わかった」
●叫びの屋敷へ向かう途中の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、フレッド、ドビー)
「あとは大蛇を倒せば全部終わりだ」
「『例のあの人』は気づいているのかしら?…あっ、あそこでパーシーとフレッドが戦っているわ!」
「援護に―」
「待ちなさい。…ドビー!」
「はい!お嬢様!!」
「あいつらの杖を『呼びよせ』なさい」
「かしこまりました!お嬢様!!」
「うわあっ…すごい。杖に呼び寄せ呪文を使ったんだ」
「ハリー、言っておきますけれど、普通は出来ないのよ!杖は製作段階でいくつもの保護呪文が掛けられているの。通常の『呼び寄せ呪文』では相手の杖を奪うことは出来ないわ!」
「あー…屋敷しもべ妖精がホグワーツで『姿現わし』出来るのとおなじようなもんか」
「ハリー。わたくしは、ドビーと一緒にホグワーツを『お散歩』しているわ」
「……うん、わかった。こっちは任せたよ」
「ええ。もちろん…プロテゴッ!!」
「うわあぉ!?…助かったぜ、雇い主様!!」
「ええ。うちの出資会社の大事な従業員だもの、当然よ」
「すげえや…頼もしいなあ」
「さあ、ハリー。私たちは何処へ行くの?」
「『叫びの屋敷』だ、行こう!」
●叫びの屋敷での一幕(ハリー、スネイプ、ヴォルデモート)
「我が君、抵抗勢力は少しずつですが崩れつつあります」
「油断はできぬぞ、セブルス。…ポッターの知略は、時に俺様の想像を上回る」
「小僧を連れてくるようお命じ下さい。我が君、私めが必ず、ポッターをここに連れて参りましょう」
「油断は出来ぬといっておるのだ、セブルス。…俺様は、万全の姿勢でポッターを待ち構えなければならぬ。その為に、問題があるのだ」
「……我が君?」
「この杖はなぜ、俺様の思い通りにならぬのだ?この杖は、約束された威力を発揮しておらぬ」
「わ、私めにはわかりかねます、我が君っ…しかし、私めを戦場にお戻し頂ければ、必ずやポッターを捕縛し、お連れして参ります。どうか、お許しを」
「そうして行った作戦の結果を忘れたわけではあるまい。セブルス…必要なのは、木っ端な策を正面から打ち破る圧倒的な力なのだ」
「はっ、我が君。しかし、我が君は既に圧倒的な力を持っております」
「その通りだ。しかし、足りぬ。…そこで考えた。杖の、忠誠が足りぬのではないか、とな」
「我が君―」
「俺様は答えを得た。ニワトコの杖は、最後の所有者を殺した者に所属する。…アルバス・ダンブルドアを殺したのはお前だ。お前が生きている限り、この杖は真に俺様のものになることは無い。―ナギニ、殺せ」
「……スネイプ」
「これを……こ、れをっ…取れ」
「……うん」
「……こっちを……みろ…」
「……うん」
「…………り、りー……」
●スネイプの記憶の一幕(ダンブルドア、スネイプ)
「セブルス。ハリーと、ドラコ・マルフォイが近頃友誼を交わしておることは、知っておるな?…君が、彼らを見る時、いたく眩しいものを見る目をしていることを、自覚しておるかの?」
「……そのような戯言を伝える為に、私を呼び出したのですか?」
「違うとも。…少なくとも、君にとってはな」
「セブルス。…閉心術の個人授業が、君にとっても実りあるものであることを、わしは嬉しく思っておる」
「何を馬鹿なことを…」
「君とハリー、そしてドラコの止まることなく意見を交わしながら試行錯誤する様は、まるで在りし日の魔法薬学のようだと、そう感じておるのはわしだけであったかの?」
「……」
「ハリーは、まことにリリーの子だったじゃろう」
「……それでも、私は…」
「ダンブルドア。なぜ、あの子をこの作戦に巻き込んだのです?」
「おお、セブルス。それはおぬしの勘違いじゃ。暗殺計画の相談を持ち掛けてきたのはあの子じゃよ」
「元々あなたは私に殺されるつもりだった!…ポッターはあなたを慕っている。そのあなたの死に、あの子を関わらせることで何が起こるか、わからないあなたではないはずだ!」
「なぜ、おぬしがそれを気に掛ける?君にとって、それは取るに足らぬことであったはずじゃ」
「我々が共犯であったことがポッターに露見すれば、闇の帝王に私の立場が露見する危険がある!」
「そのようなことが起こりえぬことは、君が一番よく知っているはずじゃ。我々の共犯は、ドラコの記憶と共にハリーの中へと刻まれる。他者からは決して覗き見れぬ、硬き岩としての」
「……あのようなもの、閉心術とは呼べはしません」
「それでも、守るべきものは守られる。…実に、あの子らしい術じゃ」
「……」
「あの子は…死なねばならぬと?」
「しかも、ヴォルデモート自身がそれを成さねばならぬ。それが重要じゃ」
「……ドラコ・マルフォイはどうなるのです。ハリーの身を助けると信じ、我らに協力しているあの子の心は?」
「なんと、セブルス。感動的なことを言うの。…まさか、あの2人に情が移ったと言うのか?」
「情?…エクスペクト・パトローナム。…私が見ているのは、ただの影法師ですよ」
「……これほどの時が流れても、か?」
「永遠に」
「あなたの策は、ポッターに看破されたようですな」
「……そうかの」
「……フィニアスの報告によると、順調に計画は進んでいるようじゃ」
「……そうですか」
「……」
「……」
「手助けすべきところが見当たらぬ」
「そうじゃの」
●覚悟の時間(ハリー)
「僕は、死ななければならない、か…」
「……薄々、そんな気はしてた、気がする。『私は終わるときに開く』だなんて、ダンブルドアがしそうな言い回しだもの」
「仕方ない、よなあ…」
「……嫌だなあ。……また、泣かせてしまうんだろうな」
「……あいつは、ドラコの身柄を、きっとまだ狙ってるんだろうな」
「……約束、破ってしまうなあ。いや…死んでも、勝てばいいのかな?」
「……うん。それで君の未来が守れるなら……死んでみるのも、悪くないかもしれない」
「なんだ。『目的』は明白じゃないか。…ならあとは、実行に移すだけだ」
●最期の一手(ハリー、ネビル)
「…ネビル」
「うわあっ!?びっくりした、ハリー。心臓が止まるかと思ったよ。…1人で、どこに行くんだい?」
「ちょっと、作戦の為にね」
「そっか。うん、ハリーが作戦を立ててくれるなら安心だよ。僕にできることがあれば、何でも言ってくれよ」
「うん。そう言ってくれると思って、1つ大きな頼みごとをしにきたんだ」
「なんだい?」
「ネビル。ヴォルデモートは、ナギニと呼ばれる大きな蛇を飼っているんだ。…そいつを、殺さなくちゃいけない。ロンとハーマイオニーにも伝えてあるけれど、僕は一番可能性があるのは君だと思っているんだ」
「……どうしてだい?」
「君は、誰よりも勇敢だ。魔法が使えなくたって、立ち向かえる力を持っている。諦めないという事は、目的達成の為に次の手段を探せるということだ。だから、君なら―」
「違うよ!…どうして、君がやらないんだい?」
「っ……言っただろう。作戦の為に、少し行かなきゃいけないんだ。…そして、ナギニを殺せたら、スラグホーン先生に伝えてほしい『全部壊した』って。きっと、それで分かってくれる」
「……うん、わかった。君を信じるよ」
「ああ、ネビル。ありがとう」
●禁じられた森へ(ハリー、死喰い人)
「……吸魂鬼が居るのか。エクスペクト・パトローナム!」
「最後まで、道中を頼むよ、相棒。…あれ、君。尾が…ははっ、こりゃ良いや」
「貴様っ!?ポッター!!のこのこと姿を見せやがったっ!!」
「君たちの主は、僕が無傷で来ることをお望みのはずだ。…僕は、君たちに杖を向ける必要はない。僕が自傷して、その状態で君の主の元へ行けば…君の主はとてもお喜びになるだろうね?」
「……ぐっ…」
「さあ、通してもらう。…道を空けるんだ」
「……イカレてんのか、こいつ!?」
●最期の時(ハリー、ハグリッド、ヴォルデモート、ベラトリックス)
「堂々とした…まるで凱旋のような登場だ。ポッター」
「ああ。わざわざ来てあげたんだ。感謝してくれよ?」
「やめろっ!ハリー!!…お願いだっやめてくれえ!!」
「黙れっ!!」
「っ…!?…っ……」
「ハリー・ポッター…生き残った男の子…」
「アバダ・ケダブラ」
●最期のその先(ハリー、ヴォルデモート、ナルシッサ)
「あいつは…死んだか…?おまえ、あいつを調べろ。死んだかどうか、俺様に伝えるのだ」
「……ハリー君。マルフォイ家に入り婿してくれるわよね?」
「っ!?」
「動かないで。バレてしまうわ……家に、来てくれるわよね?」
「……っ」
「言質貰ったわね。……死んでいます!!」
「ハリー・ポッターは俺様の手に掛かって死んだ!城に行くのだ。そして、英雄がどんな様になったか、見せつけてやるのだ!!」
●ホグワーツ決戦(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、ヴォルデモート、ネビル、死喰い人等)
「ハリー・ポッターは死んだ!惑わされた者どもよ!ハリー・ポッターは最初から、何者でもなかったのだ!」
「ハリーはお前を破った!」
「あなたの作戦で、ハリーを上回れたことなんて一度もなかった!」
「……ハリー……?」
「っ……」
「こやつは、自分だけ助かろうとこっそり逃げ出したところを—」
「黙れっ!!!…ハリーをそれ以上侮辱することを、僕が許さない」
「……誰だ、貴様は」
「我が君。ネビル・ロングボトムです。例の闇払い夫婦の息子です」
「ああ、覚えている。…お前は純血だ。そして、勇気と気概のあるところを見せた。貴重な死喰い人になれる」
「地獄の釜の火が凍ったら考えてやる!ダンブルドア軍団!!ヴォルデモートは良い!あの蛇を狙え!!!」
「なっ、貴様っ!?」
「良い啖呵だ、少年。…我らも見習うとしよう」
「……なんだ?貴様らは」
「今こそ、名乗りを上げるとしよう。…我らは『反死喰い人連合』!私は代表のバーテミウス・クラウチだ!あの時の借り、返させてもらうぞ!ヴォルデモートよ!!」
●ホグワーツ決戦 その2(ネビル、スラグホーン、ヴォルデモート、クリーチャー、他混戦模様)
「戦え!戦え!戦え!我がお坊ちゃまの為に!!闇の帝王と戦え!レギュラス様の名の元、戦え!」
「ハリー!…ハリー、ハリーはどこだ?ハリー!!」
「私の娘に何をする!女狐!!!」
「っ…スラグホーン先生っ!」
「君は…ネビルだね。今は話している場合では—」
「ハリーから!あなたに伝言です!…『全部壊した』と。それで伝わるはずだって!」
「っ!?……ハリー、君という子はっ…」
「先生!僕は、何をすればいいですか!」
「ほかの先生たちに伝えなさい!いや、この方が早い!…ソノーラス!」
「ヴォルデモートは、既に不死身ではない!!!」
「何っ!?…まさかっ…」
「そう。良い事を聞いたわ。……死になさい。アバダケダブラ」
「っ!?……お前は、ルシウスの娘の…っ」
「そう。…やっぱり、簡単には当たってくれないのね」
「ドラコっ!逃げなさい!」
「いいえ、お母様……絶対に、この男だけは…」
「……仕方がない。ドラコ、気持ちは同じだ」
「……お父様」
「貴様っ!!ルシウス、この俺様を裏切るのか!?」
「我が君。それは心外ですな。……忠義は尽くしましたが、味方であると申し上げたことはありませぬ」
「貴様ら…一家揃っての心中が望みのようだ」
「ええ。…それで、あなたの命が奪えるならば、本望よ」
「ストップ、ドラコ。それは困る…それじゃ、僕がなんのために死んだかわからない」
「……ハリー?」
「うん。…ただいま」
●ホグワーツ決戦 その3(ハリー、ドラコ、ヴォルデモート)
「ハリー、あなた、どうして—」
「ごめんよ、後でね。……誰も手を出さないでくれ!こいつの相手は、僕だ」
「……何を企んでいる?貴様のやり方など俺様にはお見通しだ。いったいどんな掠め手を—」
「嘘はよくないな、トム。…君では、僕の策略は見抜けない」
「僕の『蛇の流儀』は、いつだってドラコの思い出と共にある。…君には、ただの岩でしかないだろう?」
「それがどうした?この俺様の力に、貴様程度の力で何ができる?」
「さあ?何かできると思っているから、君は警戒しているんだろう?…逆に、聞かせておくれよ。君は、僕に何ができるんだい?」
「何…?」
「君は通算3度、僕に死の呪文を撃った。けれどこの通り、僕は生きている。さあ、どうするんだい?4度目なら効くかもしれないと希望にすがってみるかい?」
「低次元な挑発だ!」
「そうかい?なら、少し次元を上げてみようか。…ヴォルデモート。君は、サラザール・スリザリンの末裔だ。そのことに、誇りを抱いている。そうだろう?」
「ふん。何を言い出すかと思えば—」
「しかし、『スリザリンの継承者』ではありえないんだ」
「……何を言っている?」
「知ってのとおり、スリザリンはホグワーツの創始者の1人だ。しかし、純血主義を掲げて他の3人と対立した」
「そうだ。俺様と同じだ!」
「当時、魔法使いは迫害を受けていた。そして、若い魔法使いを守るためにホグワーツは創設されたんだ。その状況における純血主義とは何か、だよ」
「決まっている。マグルを滅ぼし、魔法使いの為の—」
「いいや。それが可能なら、そもそも魔法使いは迫害されていないはずだよ。マグルは魔法を超えられない以上、マグルの脅威は一見去ったように見える。でも、魔法使いを滅ぼし得る存在は残っていた。『マグルの価値観を持ち、魔法使いの術理を知る存在』。つまり、マグル出身の魔法使いだ。…結論として、純血主義とは同胞がマグルに殺されることにたいする『恐怖』の表れなのさ」
「馬鹿なことを言うな!実際の歴史が、そうはならなかったことを証明している!」
「その通りだ。しかし、当時のサラザールが知る余地はないだろう?きっとサラザールからは、他の3人がさぞ楽観的に見えただろうね。だから、きっとサラザールは同胞を守るための避難場所として『秘密の部屋』を作り、同胞を守る守護者として化け物を置いた。…そう、せざるを得なかったんだ。わかるかい?純血主義も、秘密の部屋も、彼にとっては同胞を守る手段に過ぎなかったんだ」
「それがどうした!俺様はそのすべてを従えられる!」
「全て?本当にすべてかい?サラザールは勇気も、知恵も、勤勉さも、あらゆる全てを『目的』達成の手段と扱った。扱うことが出来た。だからこそ、『狡猾』と恐れられたんだ」
「いい加減にしろ、ポッター。昔話はもうたくさんだ!」
「ああ、もう終わりだよ。…つまりさ。愛を理解できず、下らないモノとして捨てた君は、自らの手段を減らしているのさ。…それが『スリザリンの継承者』だなんて、お笑い種だろう?」
「それでも俺様は、サラザール・スリザリンの血を引いている!」
「そうだね。でも、血を引いているだけだ。…さて、君の目の前に居るのは『目的』の為に自分の死すら利用しようとした存在だ。ついでに、君と同じ半純血で蛇語まで扱える。…『スリザリンの継承者』は君よりも、僕の方がふさわしいんじゃないかな?」
「黙れ!!アバダケダブラっ!!」
「エクスペリアームス!……ほら、この程度の挑発に乗るから、訳も分からずに死んじゃうんだよ」
●戦いの終わりにて(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、ルシウス、ナルシッサ)
「……ハリー」
「……ドラコ、勝ったよ」
「ええ。……ねえ、ハリー」
「なんだい?」
「……正座なさい」
「……え?」
「正座よ、正座。もしかして、したことないかしら?」
「いや、あるけどさ…」
「なら早くしなさい」
「……はい」
「……」
「……」
「……本気で、死ぬ気だったの?」
「うっ……はい」
「……どうして?」
「えっと……そうしないと、ヴォルデモートを倒せなかったから、です」
「……他の手段は考えなかったの?」
「……考えませんでした」
「そう。……怖くは、なかったの?」
「うん。思ったよりはね」
「……どうして?」
「それで、君の未来が少しでも明るくなるなら、それでもいいかなって」
「……っお馬鹿!!…明るくなる訳、ないじゃないのっ…」
「あはは…やっぱり、泣かせちゃったな…」
「お馬鹿……」
「うん。ごめんよ」
「……許さないわ」
「うん。……ねえ、ドラコ」
「……なによ」
「君を、愛しているよ」
「なっ……なっ!?」
「おや、勝負あったな」
「あらあら…お熱いわね」
「お父様!お母様!!見世物じゃありません!!」
「あら、見世物のようなものじゃない…こんな、衆人環視の中で」
「あっ……」
「やれやれ…ミッション・コンプリートだな。ハーマイオニー」
「ええ、あなたもお疲れ様。ロン。…日常が、ようやく帰って来たわね」
お読みいただきありがとうございます。
後書きです。
死の秘宝編はもうちょっとだけ続きますが、切りが良いので一旦投稿しました。
それでは、解説していきます。
●本話における原作との乖離点(本編記載内容省略)
・グリモールド・プレイスの守り維持により旅の野宿パート無し。
・ゴドリックの谷に行っていない為、ハリーの杖が折れていない。
・死の秘宝周りの情報を集めていない。
・グリフィンドールの剣はホグワーツに置きっぱなし。
・グリンゴッツ破りの手段変更によりドラゴン放置。
・ダンブルドアの過去関連はアバーフォースと死後の空間でダンブルドアから聞いていますが、原作と変更が無いため全カット。
・旅の短縮によりホグワーツ決戦がテッドの出産時期と重なった為、トンクスとルーピン生存。
・ドラコの介入によりフレッド生存。
・なぜか出番が訪れなかった為、ピーター生存。
・ニワトコの杖の法則をハリーが解説することなくヴォルデモート死亡。
●ドラコについて
『きみがゆく みちのながてを くりたたね やきほろぼさむ あめのひもがも』という万葉集の句があり、これをドラコの行動原理として想定しています。
不死鳥の騎士団編でそれっぽいことを言っているので、文学に詳しい方なら気づかれたかもしれません。
もっとも『蛇の流儀』に則って本気で焼き滅ぼしに掛かっていますので、一途と言うにはいささか物騒です。
ハリーの歩む長く険しい道を少しでも短く、平坦な道にする為に奮闘していました。
その末に、『道』自体が消えてしまった為に、その『原因』を自分もろとも燃やし尽くす行動に走ったのでしょう。
無論、あのまま戦えば死んでいました。
実はヴォルデモート関連において、単独でヴォルデモートの上を行けたことは無かったりします。
当初、ホグワーツへの合流は『姿を晦ますキャビネット』を使えばいいと軽率に考えていたのですが、謎のプリンス編で物理的に壊したことを思い出して泣く泣くドビーと共に合流する方向に決まりました。
副産物的に、フレッド生存の説得力が増したので、結果オーライです。
●サラザール・スリザリンについて
『スリザリンらしさ』とは何だろうか、という問いに対する本作の答えです。
マルフォイ家との交流を通じてハリーが疑問を抱き、『ホグワーツの歴史』を読んだ上での答えを、ここで出しました。
当時の魔法使いの迫害が正確に、どれほどの脅威だったかはわかりません。
しかし、ホグワーツの創設が必要になる程度には酷かったと考えれば、マグル生まれ融和派は『砦の中に敵を迎え入れる』ような思想とも受け取れてしまいます。
まるで逆の解釈のようでいながらも、実はこっちの方が筋が通っているのではないかと、自負しております。
その上で、原作でロンが発言したように「純血しか居なかったら魔法族はとっくに滅んでいる」位に数が少なかったことを考慮すれば、『マグル生まれの魔法族』の思想次第では、魔法族は詰んでいたのかもしれませんね。
ところが、現在の時間軸でマグル融和派の急先鋒であるウィーズリー家ですら、うっすらとしたマグルへの『見下し』が伺えますので、『マグルによる魔法族の迫害』とは名ばかりで、実態としては可愛がっていた野良猫に嚙みつかれてびっくりした、程度の物だったのかもしれません。その場合だと、私の解釈は全くの見当はずれだったことになりますね。歴史解釈の醍醐味だと思います。
これらを踏まえたうえで、ハリーは『挑発』の為だけにこの話をしました。
そういう意味では、ヴォルデモートが言った『掠め手』も『挑発』も、全部大当たりではあったんです。
当たった上で、挑発に乗って負けちゃっただけですね。
●諸々の生存者について
当初のプロットでは、フレッドは死亡。ルーピンは聖マンゴで意識不明の予定でした。
原作におけるルーピンとトンクスの死を、作者は孤軍奮闘していたルーピンが死亡してそれに動揺した隙にトンクスも死んだのだろうと考察しています。
すると、シリウスの介入によってルーピンがギリギリ生存。また、動揺するトンクスへのサポート位なら行えるだろうという認識でプロットを組んでいたのですが…どう考えても、原作よりも旅路が短いんですよね。
その結果、決戦の時期がどう考えてもテッドの出生前、遅くとも直後位のタイミングになるので、親としての責任を自覚されられたルーピンがトンクスの傍を離れるとも思えず、そもそも決戦に参加しないという流れになりました。
すると、今度は決戦のメインの死者がフレッドだけになってしまいました。
流石にそれは後味が悪すぎたので、読後感を優先したいけど生き残る動機が見つからなくて悩んでいたら、ドラコが何とかしてくれました。流石です。
●スネイプの過去について
ハリーとドラコの在り方に、在りし日を重ねて見ているような描写になっています。
原作において、スネイプは『半純血のプリンス』を名乗る魔法薬学の達人でした。そして一方、幼馴染のリリーもまた、スラグホーンから魔法薬学を高く評価されていました。
この2つは独立した偶然ではなく、誰も見ていないところで誰も知らない小さな自習教室があったのではないか、という考察からこのような形になりました。
●『反死喰い人連合』について
炎のゴブレット編で、なぜか生き残ってしまったクラウチ・シニアが作った勢力です。
主な人員は、聖マンゴからの復帰者や不死鳥の騎士団編でファッジから排除されてしまった魔法省の役人たち、そして人攫いに襲われているところを救ったマグル生まれの魔法使いたちです。
原作において、騎士団以外のまともな反魔法省的な組織が出てこなかった原因として、そうした組織を指導できる人員が居なかったことだろうと認識しています。
ダンブルドアを始め、クラウチ、スクリムジョール、アメリア・ボーンズと、作中に登場した有力者が死の秘宝の冒頭時点で全滅していました。
その中で、本作においては、ヴォルデモート全盛期の闇の時代に徹底抗戦の構えを取って指揮を執っていた為に闇の勢力のやり方を熟知していたクラウチが、闇の勢力が本格的に動き出す前に真実を知り備えることが出来ていたならば、このような行動に出たのではないでしょうか。
基本的な組織統制としては開心術、および服従の呪文対策のための情報統制の徹底です。
その上で、あえて『禁句』であるヴォルデモートの名を呼ぶことで、人攫いをおびき寄せて殲滅したり、そうして手に入れた人攫いの杖を、杖を奪われた魔法使いに与えることで戦力を更に増やしていました。
クラウチ・シニアらしい、非常に攻撃的な組織です。
また、スクリムジョールを救ったのも、この組織です。グリンゴッツでの戦いにおいて、スクリムジョールもどこかで仮面をつけて戦っていたのではないでしょうか。
ハリーが話した人物についてはまた次話にて。
●死の秘宝について
ハリーは名前を知ることすら無く旅を終えました。
なんなら、『蘇りの石』についてはスニッチから出してすらいないかもしれません。
仮に出していたとしても、ハリーはその正体も、使い方も全く知らないのですが。
原因は大体ドラコです。
ハリーの旅路を全力で折り畳んだ結果、とんとん拍子で分霊箱を発見してしまい、そのままホグワーツ決戦にもつれ込んでしまいました。
ゴドリックの谷に行く必要も、余裕も無かった為にハーマイオニーが死の秘宝の印に気づくこともありませんでした。
一方で、『蛇の流儀』の悪影響から自身の命までも『手段』として扱える思考を持ってしまったハリーには、『蘇りの石』は無用の長物でしたので、ちょっとしたタイトル詐欺に終わりました。
●ニワトコの杖について
原作において杖の所有権についてオリバンダーが語っていますが、本作において重要視したのは『複雑で神秘的』の部分です。
原作で当初ダンブルドアが狙っていた通り、打ち合わせ済みの敗北を杖は認めません。
それに則り、本作でもドラコにわざと武装解除術を撃っても、形だけ力づくで奪わせても杖の忠誠は移りませんでした。
一方で、「『もう一度あなたを惚れさせてみせる』と決意しながら『うっかりときめいてしまった』のは敗北では?」という言葉遊びじみた解釈ですが、その決意が本物であればこそ敗北として杖も解釈の余地があるのではないかと考察した次第です。
おそらくは原作において過去にハリーが何度か武装解除術を受けている為に、矛盾を避ける為としての『複雑で神秘的』だと思うのですが、せっかくなので拡大解釈させていただきました。
その上で…原作のように、その杖の忠誠の動きをハリーが一切説明しなかった意図については、次話にて出てくるでしょう。
●ヴォルデモートについて
原作の死の秘宝において、度々ハリーと精神が繋がって何をしているかが描写されていましたが、結構慌ただしく動き回っているんですよね。
そして、それは本作においても同様です。ハリーが行っていないゴドリックの谷と、本拠地ではなくなったマルフォイ邸が省略された程度です。
その上で、ハリーの旅路が短縮されているので、ニワトコの杖の入手がかなりギリギリだったりします。
また、ハリーに策略で上回られるし、開心術でそっと覗き見ても岩ばっかりで重要な情報は何もない。一方で、マグル生まれの排除は(アンブリッジの妨害で)遅々として進まないし、『レジスタンス』とかいう訳分からん勢力にも邪魔されるし…
体面上、余裕ぶってはいましたが、実はかなりギリギリな闇の帝王でした。
以上、後書きでした。
あとは戦後編と、エピローグで本作はおよそ完結予定です。
気長にお待ちくださいませ。
感想を頂きまして、ありがとうございます。
執筆の励みになっております。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。