●マダム・マルキンの店にて(ハリー、ドラコ、マダム・マルキン)
「あら、あなたもホグワーツ?」
「うん」
「そう。今、お父様は参考書を選んで下さってるの。お母様は杖を。この後お父様が箒を買って下さるって言うけれど、箒はあまり好きじゃないの。あなたは、箒を持ってるの?」
「ううん…」
「ではクィディッチは?」
「ううん…」
「そう。あなたは、どの寮に入るかもう知ってる?」
「ううん」
「そう。わたくしも、お父様が教えて下さらないのよ。それでも、スリザリンに入るのだと思うわ。お父様も、お母様もスリザリンなの。…もし、ハッフルパフなんかに入ったら、お父様に失望されてしまうわ…」
「ふーん」
「…あら?珍しい。窓の外にホグワーツの…召使だったかしら?」
「森の番人だよ」
「そう。お父様は、野蛮人だから関わるなって仰ってたわ」
「そんなことないよ、彼って最高さ」
「あら、そうなの?…あなたが知らないだけではなくて?」
「君のお父さんの方こそ間違っているかもよ?」
「そんなことないわ。お父様が仰るのですもの。あなたより、お父様の方がずっとよくご存知よ!」
「あー…うん。そうなんだ」
「そういえば――」
「さあ、終わりましたよ。お嬢さん」
「あら、ありがとう。…それじゃ、またホグワーツで会いましょう?ごきげんよう」
●ホグワーツ特急内での出会い(ハリー、ロン、ドラコ)
「あら。このコンパートメントにハリー・ポッターが居ると聞いたのだけれど…ということは、あなたがハリー・ポッター?」
「そうだよ」
「そう。わたくしはドラコ・マルフォイよ」
「……綺麗な子だ」
「ロン?どうしたのさ?」
「いや、なんでもない!…素敵だ」
「あら。…赤毛にそばかす。のっぽ。そしてボロボロの、おさがりのローブ。お父様が確か仰ってたわね。ウィーズリーの子は貧乏で、みんな同じ特徴があるとか…ポッターさん。あなた、友達は選んだほうが良いわよ?わたくしが、選び方を教えて差し上げましょうか?」
「…友達くらい、自分で選べるよ」
「そうだ!出ていけ!座ってお菓子でも食べていきなよ!!」
「……ロン?」
「パパが言ってたんだ!マルフォイは『例のあの人』に味方してたって!座ってお茶でも飲んでいきなよ!!」
「お父様を侮辱する気…?」
「そんなことないさ!マーリンの髭!!!」
「……ロン。言ってることが支離滅裂だよ」
「そんなことないさ!マーリンの髭!!!」
「……ロンがおかしくなった」
「……あの、本当に。お友達は選んだ方が良いわよ?」
「いや、あー。ううん。…本当に、ロンは良い奴なんだ。良い奴のはずなんだ!」
「そ…そう。…あくまで間違ったお友達を選ぶのね。…だったら、後悔させてあげる。覚悟しておくことね」
●初めての飛行訓練。ネビルの落下後(ハリー、ドラコ、パーバティ)
「すごかったわね。ロングボトムの落下劇…見世物としては面白かったけど、やはり箒は野蛮で好きになれないわ」
「ちょっと、そんな言い方やめてよ!」
「あら、先生の言いつけを守らずに勝手に飛んで、勝手に落ちたのはロングボトムの方よ?わたくしは、公然の事実に対して当たり前のことを言ってるだけよ」
「っ……」
「…こんなところにロングボトムの思い出し玉が落ちてるじゃないの。見つけやすい場所に置いておきましょう…木の上とか、良さそうね?」
「マルフォイ。それは、僕の方からネビルに返しておく。…こっちに渡してくれないか?」
「ポッター。人にものを頼む態度を知らないようね?…予定通り木の上に置くから、あなたが取りに来れば良いのよ。…ほら、いらっしゃい。怖くないならね?」
●真夜中の決闘前(ハリー、ロン、ドラコ)
「ポッター。それが最後の晩餐?帰りの列車の時刻を教えてくれれば見送るわ」
「マルフォイ。地上ではよく舌が回るね。地に足付けたって訳かい?」
「……そう。あくまで、楯突くって訳ね?だったら、魔法使いの決闘よ。使えるのは杖だけ、相手には触れない。…ああ、言っている意味わかるかしら?」
「わかるとも!介添え人は僕だ!君の介添え人は?」
「必要ないわ。勝つのはわたくしだもの」
「だったら君の介添え人も僕だ!文句あるか?」
「文句しかないわよ」
「ロン。お願いだから黙っててくれ」
●罰則にて禁じられた森へ(ハリー、ドラコ、ハグリッド)
「ちょっと待ちなさいよ!危険だから夜に出歩いた処罰があるのでしょう!?その処罰が夜の森に入る事っておかしいわよ!?!?」
「ハグリッドが居るから大丈夫だよ」
「この男、自ら
「あー…」
「わたくしは森に入らないわ!」
「……」
「そもそも処罰ってもっと、書き取りとか、掃除とかそういうものじゃないの!?こんな、こんな危険なこと…お父様が知ったら――」
「それがホグワーツのやり方だ!え?罰則を受けなけりゃお前さんは退学だ。お前の親父さんが退学した方がマシだって言うならすぐに戻って荷物をまとめろ!」
「このっ…不正にドラゴンを所持してたあなたが諸悪の根源じゃないの…っ」
「あー、ウン。…ごめんハグリッド。擁護できないや」
●ハリーとドラコとファングになった後の一幕(ハリー、ドラコ)
「……っ……」
「……えーっと。君、大丈夫かい?」
「は?何を言っているのかしら。…ああ、話して、怖さを紛らわそうって…っ…こと?」
「……ずっと身体が震えてる。怖がり過ぎてて見てられないだけだ」
「お黙りなさい!あなたごときに心配されるだなんて、屈辱でしかないわ!!」
「…大きな声を出すなよ」
「どいつもこいつも、ハリー・ポッター!ハリー・ポッター!!英雄だと言われてちやほやされて、さぞ気持ち良いでしょう!わたくしは…わたくしはっ、特別なの!あなたなんかに見下される存在じゃないのよ!!」
「大きな声を出すなよ!!」
「……あなたこそ、でしょう?先に行くわ。こんなもの、さっさと終わらせるの」
まずは、お読みいただきありがとうございます。
後書きでは、各話における原作との違いを解説していきたいと考えています。
●ドラコ・マルフォイについて
一人称は「わたくし」。基本的にお父様にのみ尊敬語を使う、お父様大好きっ子です。
ルシウスもそんな娘を溺愛しており、原作よりも対応が甘くなっています。
今の範囲で言えば、マダム・マルキンの店で原作では「箒をねだる」だったのが「箒を買って下さる」に変わっていたりします。
なお、その箒については関心があまりないようです。
彼女の関心は「お父様からの評価」に向いています。
その為、原作の「自分を高く見せるために他者を貶す」方向ではなく「自分の能力を高める」方向に意識が向いているので、思考が論理的になっており(お父様の真似、という解釈もアリ)原作よりちょっとだけ成績が良いです。
悪童っぷりは、父の受け売りを自身の手柄のように話す原作と違い、むしろ「お父様がこう言っていた」ということ自体に重きを置く幼さへと変換しました。
このあたりの設定には、クィディッチや「悪童」を描写する技量が作者に足りていないことが一因ですが、風聞で耳にするような「女の子の方が早熟だから」という前向きな解釈でお願いします。
まとめると、現時点でのここでのドラコ・マルフォイは原作通り自尊心が高く、ひねくれていますが、お父様が大好きで、価値観の基準をお父様に置いている、そんな子になっています。
●クラッブ、ゴイルについて
どう考えてもノイズにしかならない為、一切描写しないことにしました。
娘を溺愛するルシウスが、見るからに乱暴者の、大柄な男の子を2人も近くに置かせるとは思えない、というのもあります。
よって、存在はしていますが、ドラコの取り巻きはしていません。
今後も一切描写する予定がない為、もしかしたら最終章でこっそりクラッブ生存ルートが存在している可能性がありますが、そのあたりは読者の皆様のご想像にお任せします。
●ハリーたちとの関係
諸々の事情により、原作ほど険悪にはなっていません。
・ドラコ自身の価値観の主軸が「お父様からの評価」に変わっていること。
・ドラコ自身が論理的思考をしている為ハリーが言いくるめられてしまうこと。
・同性同士ではない為、ハリーが原作ほどムキにならない。
・ロンのバグ。
主に上記4点によるものです。
また禁じられた森の罰則描写にある通り、原作からして善性の強いハリーならば怯え切った女の子が隣にいれば、つい話しかけてしまうのではないか、と作者は思っております。
その所為で拗れる辺りはドラコクオリティです。
●ロンのバグ
なぜか作者の脳に「ロンは美人に弱い」という印象がこびり付いていたが故の描写です。
ヴィーラに深く魅了され、フラーに玉砕し、ダンパティでハーマイオニーを見て嫉妬して…あと、映画での愛の妙薬にやられていたロンの印象が強すぎたのかもしれません。
作品としてコミカルさに欠けるため、丁度いいので補ってもらいました。
●賢者の石について
原作的にも、ドラコの扱いってどこまで行っても「同級生の嫌な奴」の域を出ず、事件の本筋にほぼ関わらないんですよね。
本作においても、賢者の石は本作の形式やドラコのキャラクター性の紹介のみに焦点を絞りました。
あらすじに書いた通り、描写していない場面はおおむね原作通り進んでいます。読者の皆様の脳内補完にてお願いします。
後書きは以上です。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。