●様子のおかしい屋敷しもべ妖精(ハリー、ドビー)
「ハリー・ポッター!」
「……誰?」
「『屋敷しもべ妖精』のドビーと申します。ドビーと呼び捨ててください」
「えっと…何か、用事があってきたの?」
「はい。ドビーめは申し上げたいことがあって参りました。しかし、何から話せばよいやら…」
「とりあえず、座ったら?」
「す…座ってだなんてっ!?ドビーはこれまで一度も、魔法使いから言われたことがありません!むしろ座られたい!!」
「……ん?」
「ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」
「やめて!…急にどうしたの?」
「ドビーめは自分でお仕置きをしなければならないのです。…家族へのやましい考えが漏れてしまったのです」
「うん。その家族は君がここにいることを知ってるの?」
「めっそうもない…この件でドビーは自分の両耳をオーブンにばっちんしなければならないのです」
「……家族、嫌がらない?」
「ドビーめはそうは思いません。ご主人様は、ドビーめにお仕置きさせておくのでございます。というよりも、ドビーに関心がないのです。そのご主人様の…お嬢様の冷たいまなざしが、だんだん気持ちよくなってきて」
「なんだこいつ」
「ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」
「……誰だか知らないけどお嬢様が可哀想だからそのまま脳挫傷でもしたら良いと思うよ」
「ああっ…っ!」
●空飛ぶ車の中(ハリー、フレッド、ジョージ)
「そりゃ、怪しいな。ドビーの奴、君がホグワーツに戻ってこないようにする為に誰かから送り込まれたんじゃないか?誰か、学校で君に恨みを持つ奴、思いつかないかい?」
「…僕に恨みを持つとすれば、ドラコ・マルフォイだろうけど」
「……?何か含みがあるな」
「嫌な奴ではあるんだけど…アレのご主人様は流石に可哀そうと言うか…」
「そんなに酷い屋敷しもべ妖精だったのか?」
「他を知らないけど、間違いないよ」
●ボージン・アンド・バークスにて(ドラコ、ルシウス)
「ドラコ、一切触ってはだめだ」
「はい、お父様。…参考書を、選んで下さると聞いていたのに」
「それは用事の後だ」
「はぁい。…持ち歩ける本を持ってくればよかった」
「勉強熱心になったのは良い事だ。あとは、それが成績に反映されれば文句はないな」
「わかってますわ。…なんとしてもハリー・ポッターに、一泡吹かせなければなりませんもの」
「……良い変化だ。しかし、ハリー・ポッターを好きではない素振りを見せることは賢明ではないぞ。多くの人が彼を闇の帝王を倒したヒーローと扱っているのだからな」
「……お父様まで、そんなことを」
「彼が大衆から英雄視されているのは事実だ」
「……わかってるわよ、そんなことっ」
●フローリシュ・アンド・ブロッツ書店にて(ドラコ、ルシウス、アーサー)
「これはこれは…アーサー・ウィーズリー」
「ルシウス」
「……末の娘が入学するのか。それは…めでたいことだ」
「……ああ、ありがとう」
「しかし…買うのがこのようなボロボロの教科書では、ろくに入学祝も買えていないのではないか?その程度の給料も貰えないとは…魔法省で散々残業している甲斐がないですな?」
「ああ。私たちは、汚れた金には興味が無いのでね」
「ふん。…お嬢さん。お返ししよう。君の父親の精一杯のプレゼント――」
「あら?お父様!お父様のノートが紛れてしまっているわ」
「……む。そうか。…うっかりしていたようだ。すまないな、ドラコ」
「この程度、なんでもないわ。お父様」
「それでは諸君。ごきげんよう」
●日常の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「なあ、なんか。今年に入ってマルフォイの様子がおかしくないか?」
「うん。…何と言ったらいいんだろう。僕ら、あの様子をとてもよく知っている気がする」
「あら?嫌な人だったとしても、勉強熱心になったのはとても良い事だわ!正しい知識が身につくって事だもの!」
「そうか!ハーマイオニー化したんだ!!」
「失礼ね!ちゃんと勉強するようになったってだけじゃないの!」
「今じゃ『スリザリンの姫君』とか呼ばれてるって!どうしてマルフォイがそんなに勉強熱心になったんだろう?ハリー、心当たりあるかい?」
「……ううん、わからないや。さて、僕も勉強しなきゃ」
「……ハリーまでハーマイオニー化した」
「ロン。あなたも勉強しなさい」
●コリンとの出会い(ハリー、ロン、ドラコ、コリン)
「ハリー。あの、僕。コリン・クリービーって言います。…あの、写真撮っても良いですか?」
「写真?」
「うん。出来たら、ツーショットで。サイン入りで」
「サイン入り写真?…あなた、サイン入り写真なんて配ってるの?…みんな、並びなさい!ハリー・ポッターがサイン入り写真を配るそうよ」
「黙れマルフォイ!僕はそんなことしてないぞ!」
「君、ハリーが人気だからって嫉妬してるんだ!」
「嫉妬ですって!?…わたくしには、額にマーキングされてまで人気を稼ぐ趣味は無いのよ。ごめんなさいね」
「ナメクジ食らう前にどっかいけ!君のサイン入り写真なら欲しいけどさ!!!」
「……あいかわらず狂ってるのね、ウィーズリー。近づかないでくれる?」
「治ったと思ってたよ…」
●ニンバス2001お披露目(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、ウッド、フリント、アリシア)
「フリント!このピッチは今日1日僕が予約したんだ!今すぐ立ち去ってもらおう」
「はっ、これを見ろ。スネイプ先生のサインだ!『本日、新しい備品の確認の為クィディッチ・ピッチに於いて練習を許可する』」
「……新たな備品?」
「そうだ!聞いて驚け!ニンバス2001だ!!」
「そんな…最新の箒じゃないか。誰がそんな…」
「わたくしよ」
「マルフォイ!…君、箒は好きじゃないって言ってただろ!」
「ええ。ただ、クィディッチを観るのは好きよ?…それに、スリザリン・チームが強くなれば寮対抗杯で有利になる。結果的に、卒業後の進路に有利に働くというお父様のお考えよ。だから、お父様はスリザリン・チームに箒を寄付されたの」
「道具の力に頼って勝ったからって、その人が優秀だということにはならないわ!」
「ええ。グレンジャー、穢れた血のあなたには魔法族の貴族の在り方は理解が及ばないでしょうね」
「穢れた血だと!?」
「マルフォイ!いくら君が素敵でも言っていい事と悪いことがあるぞ!!」
「ロン。自分が何を言ってるか分かってないなら黙っててくれ」
●嘆きのマートル遭遇後(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「では問題です。僕らの知る限り、ホグワーツでスクイブやマグル出身者を排斥したいと考えているのは誰だ?」
「……マルフォイだって言いたいの?」
「確かに『穢れた血』なんて言ってたし、嫌な奴だけど…そこまでするかな?」
「ウーン。でも、マルフォイ家ってずっとスリザリンの家系だぜ?何か知っていてもおかしくないんじゃないか?」
「……探ってみる価値はあるかもしれないけど、どうやって?」
「方法は、あることにはあるわ。ポリジュース薬よ」
「ポリ…なんだって?」
「ポリジュース薬。一定時間、誰かに変身できる魔法薬なの。それを使ってスリザリン生に変身すれば、マルフォイも何でも話して……?」
「話してくれると思うかい?」
「おとなしく透明マントでスリザリンに忍び込むのが良いんじゃないか?」
「……それもそうね」
●クィディッチ後、医務室での一幕(ハリー、ドビー)
「ハリー・ポッターがホグワーツに来てしまった!」
「ドビー!」
「ドビーめが、何度も警告したのに!ハリー・ポッターは聞いて下さらない!気持ちいい!!なぜ、汽車に乗り遅れた時諦めてくださらなかったのですか?」
「なんか変なの混ざらなかった?…まって、どうして汽車に乗り遅れたことを知ってるんだい?…まさかっ」
「ドビーめが、入り口を封鎖したのでございます。ハリー・ポッターがホグワーツに戻ったと聞いたとき、ドビーめは驚いて夕食を焦がしてしまいました!ご主人様の鞭打ちは欠片も気持ちよくありません!」
「……ドビー。僕の腕が治る前にここから出ていくんだ。さもないと、君を絞め殺してしまうかもしれない」
「殺すだなんて脅しはドビーは慣れっこでございます」
「……」
「その冷たい眼差しにはドビーは慣れることが出来ません!気持ちいいっ!!」
「なんだこいつ」
●決闘クラブにて(ハリー、ドラコ、スネイプ、ロックハート)
「模範演技はこれで十分!さあ、2人1組になって!スネイプ先生。お手伝い願えますか?」
「ウィーズリー。君はフィネガン君とだ。ポッターは…マルフォイ。君がかのポッターをどう捌くのか、拝見しよう」
「はい…先生」
「……」
「……」
「黙り込むなんてらしくないな、マルフォイ。いったいどうしたっていうんだい?」
「黙りなさい!…今は決闘中よ」
「授業中だろうが食事中だろうが手を出してきた君の言葉とは思えないな」
「うるさい!わたくしは…わたくしはっ、誰よりも、強くならなければならないのよ!」
「……なんなんだよ、いったい」
●校長室にて、様子のおかしい組み分け帽子(ハリー、組み分け帽子)
「ハリー・ポッター。君は、わたしの組み分けが間違っていたのではないかと気にしているね」
「…はい」
「わたしの意見は変わらない。君はスリザリンでもうまくやれる可能性がある」
「…あなたは間違っている」
「いいや。君がスリザリンに入っていた場合、君は今頃女王様に踏まれて悦ぶブタに――」
「あなたは間違っている!!」
●クリスマス前の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「クリスマス休暇で、スリザリン生はほとんど残っていないらしいよ」
「ああ。みんな浮かれ切ってるから、多少『勝手に扉が動いた』ところで誰も気にしやしないさ」
「うん。…ロン、ハーマイオニー。スリザリンに忍び込むなら今日しかないよ」
「モチのロンさ!」
「ええ、やりましょう」
●スリザリン寮にて(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、スリザリン女子2名)
「スリザリン生の後を付けて、無事、寮には入れたけど…マルフォイは何処だ?」
「誰かに聞くわけにもいかないし…しばらく様子をみましょう?」
「そうするしかないか…」
「マルフォイさん、まだ部屋から出て来ないの?」
「うん。せめて、お食事だけでも摂って欲しいのだけど…」
「マルフォイが引きこもってる!?」
「しっ、声が大きい」
「あっ。食事を持って移動した…マルフォイの部屋はあそこだっ」
「マルフォイさん。起きてる?ここを開けて。せめてお食事だけでも――」
「嫌!そこを開けないで!!わたくしは、わたくしは――スリザリンの継承者なんかじゃない!!!」
「マルフォイさん!落ち着いて…」
「……おい。聞いたかよ?」
「あのマルフォイが…怯えて、錯乱してる?」
「とても、あんな事件を起こすようには見えないわね」
「……少なくとも、マルフォイはスリザリンの継承者じゃ、ない?」
「そうね。…でも、ただならぬ様子だわ。何かを知っているのかもしれない」
「だとしても、あの様子じゃ誰にもはなしてくれやしないよ!…談話室に戻ろう」
「そうだね。そうしよう」
●ハーマイオニー石化後、授業での一幕(ハリー、ロン)
「マルフォイの奴、やっぱりおかしいな」
「うん。…授業には出てきてるけど、誰とも一言も話してないよ」
「誰かに脅されてるのか…?それこそ、スリザリンの継承者とか?」
「いや、それはないよ。だったら『スリザリンの継承者じゃない』なんて叫ばないはずだ」
「……ウーン。わからん!…ちくしょう、こういう時にハーマイオニーが居れば」
「うん。…ハーマイオニーの為にも、犯人を見つけなきゃいけない」
「モチのロンだ!!」
●秘密の部屋へ連れ去られた生徒(ハリー、ロン、マクゴナガル、スネイプ)
「とうとう生徒が1人、秘密の部屋に連れ去られました」
「どうして断言できるのですかな?」
「『スリザリンの継承者』が書き残しました。最初の文字の下にです。『彼女の白骨化した遺体は、秘密の部屋に永遠に横たわるだろう』と」
「…連れ去られた、生徒の名は?」
「ドラコ・マルフォイです。…全校生徒を、帰宅させなければなりません」
「馬鹿なっ…いや、だから。あんなに怯えていたのか?」
「……どうするんだい、ハリー?」
「……僕は。僕は、マルフォイが嫌いだ」
「うん。僕だってそうさ」
「…それは疑問だけどさ。退学になってしまえって、いつも思ってた。けど、死んでほしいと思った事なんて、1度だってない!!ロン。ロックハートに協力して、マルフォイを助けよう!!」
「よし来た!モチのロンさ!!」
●トム・リドルとの対決(ハリー、リドル)
「僕はずっと待っていたんだ。ハリー・ポッター、君と話すのをね」
「リドル、君は一体何を言っているんだ?マルフォイは、どうしてこんなことになってるの?」
「それはいい質問だ。ドラコ・マルフォイがそうなった原因は、闇の呪物とわかっていたにも関わらず、そこに封印されていた人物に自分の秘密を洗いざらい話してしまった事だ」
「……どういうことだい?」
「あの日記に、ドラコは宣戦布告したのさ。『あなたを調伏する。そして、お父様にわたくしこそハリー・ポッターよりも格上なのだと認めさせる』とね。とても馬鹿な小娘だった。口八丁に誘導して、僕を信用させるのは作業としては容易くも、心情的に容易い事では無かったよ。ああ、とても…辛抱を必要としたとも。僕は、長い事彼女の家庭教師をする羽目になったんだ」
「……」
「彼女は僕に本心を打ち明けるようになった。『早く大人になって、お父様のお役に立ちたい』『有名で、慕われて、優秀なハリー・ポッターが羨ましい。わたくしも、あんな友達が欲しい』。そうした小娘の心の深層の感情…魂を餌にして、僕はどんどん強くなった。そして十分に時が満ちた時、僕の魂を小娘に少しだけ注ぎ込んだ」
「……どういうこと?」
「まだ気づかないのかい?…秘密の部屋を開けたのは、ドラコ・マルフォイだ。『穢れた血』にスリザリンの蛇をけしかけたのも、壁の文字も、全てだ」
「まさか」
「そのまさかだ。ドラコ・マルフォイは初めの内、ホグワーツで起きた事件の犯人が自分であることを全く自覚していなかった。自分が犯人であると気づくまで、しばしの時間が必要だった。ところが彼女は、僕の仕業であると気づくと、『わたくしがすぐに力を付けて、あなたを調伏する』と息巻いた。心はとっくに折れているにも関わらず、だ。もっとも、その虚勢すら…長くは持たなかったけどね。心が完全に折れた彼女は、日記を捨てた。そしてそれを拾ったのが…僕がどうしても会いたいと思っていた、君だ。」
「どうして僕に会いたかったんだ?」
「ドラコが敵愾心ましましに君のことを教えてくれた。僕は君の、その素晴らしい経歴にこそ興味があった。ところが…君が日記を持っていたことに気づいたドラコは、果敢にも合言葉を言う生徒の後をつけてグリフィンドールの寮に忍び込み、日記をとり戻してしまった」
「どうして、ドラコはそんなことを…?」
「事態が露見するのを恐れたんだ。…そして何より、君が僕を調伏してしまうことを、恐れていた。君ならばそれが出来ると、彼女は確信を持っていた」
「……」
「ドラコとのやり取りから、君は謎を解き明かすだろうとわかっていた。…仲良しの1人がやられたなら、尚更だ。そこで僕は、ドラコの身体を操って壁に遺書を書かせ、ここに連れてきた。わめき散らかして、最後には『お父様』しか言わなくなってしまってね。とても退屈だったよ」
●リドル討伐後(ハリー、ドラコ)
「マルフォイ!起きろ!…生きてるだろ、マルフォイ!!」
「……ん。……ポッター?」
「あ!!!…良かった!ちゃんと生きてた」
「……っ!?ポッター!早く逃げなさい!!ここにはバジリスクがっ」
「大丈夫だよ、マルフォイ。もう全部終わったんだ。…ほら、日記もこの通り」
「……っ……」
「…リドルから全部聞いた。お父さんの役に立ちたかっただけだって。それを利用してやったって、得意げに話してたよ」
「……笑いなさいよ。こんなっ…屈辱…お父様がなんとおっしゃるか…」
「うーん…でも、きっと大丈夫だよ。ヴォルデ…こほん。『例のあの人』には誰も敵わなかったんだろ?だから、大丈夫だ」
「…わたくし、きっと退学になるわ。よかったわね、わたくしがいなくなって…清々するでしょう?」
「……うーん。それは確かに魅力的だけど、さ。でも、折角助けたのに、それじゃ助けた甲斐がないじゃない?」
「は?…あなた、何を言っているの?」
「日記はここにある。バジリスクの死体だってある。リドルが言ってたことを僕が証言したっていい。すべては君の意思じゃなかったんだって。…優秀なスリザリンの姫君なら、これだけあれば十分じゃないの?」
「っ……そう。…いいわ。その安い挑発、乗ってあげる。せいぜい、わたくしを追い出さなかったことを後悔することね。…ハリー!」
「……そうこなくっちゃ。やってみせろよ、ドラコ!」
●ロン合流(ハリー、ロン、ドラコ)
「ロン!ドラコは無事だ!」
「流石だっ!ハリー!!おい、マルフォイ!ちゃんと足はついてるだろうなっ!?」
「ウィーズリー、ハリーだけじゃなく、あなたまで居たのね…」
「モチのロンさ!お前と違ってこちとら命の価値ってやつを…ん?今、ハリーって言ったかい?そういえばハリー、君も、さっきドラコって言った???」
「あー、ウン。それも含めて、全部後で説明するよ!」
「マーリンの髭!!奥で何があったのか、あとできっちり聞かせてもらうからね!!!」
● 帰還後の校長室(ハリー、ドラコ、ダンブルドア、ルシウス、ナルシッサ)
「ドラコっ!!」
「お父様っ…お母様っ…!!」
「ハリー・ポッターっ!!まさか…まさか、君が…?」
「ありがとうっ…ありがとう…。でも、いったいどうやって?」
「全部この日記の仕業でした。この日記が、ドラコを操って秘密の部屋を開けさせて、秘密の部屋の怪物…バジリスクを解き放ったんです」
「わたくしが…お父様の机に置いてあったこれを勝手に持ち出したの」
「っ……なんと。なんという愚かなことをっ!これには触れてはならんと、あれほど言い含めていただろう!」
「……お父様のお役に立ちたかったの。…これを、わたくしがどうにかできれば、お父様に認めてもらえると思って」
「なんと…愚かなっ…」
「ごめんなさい…ごめんなさい、お父様。どうかわたくしを、見損なわないでっ…」
「……ドラコ。私が、お前を見損なうなど、そんなことがあるはずがないだろう。…無事でよかった」
「ミス・マルフォイはすぐに医務室に行きなさい。危険な代物とわかっていながら学校に持ち込んだ罰則は受けてもらわねばならんが、内容は寮監のスネイプ先生にお任せしよう。…2年生の魔法使い見習いに、これほどの被害を想定することは不可能じゃろうて。…医務室で、熱いホットチョコレートを1杯飲むのじゃ。大抵の場合、わしはそれで元気が出る」
「はい。ありがとうございます。では、失礼します。…ハリー、ごきげんよう」
「うん。ばいばい、ドラコ」
●事件後処理(ハリー、ダンブルドア、ルシウス)
「さて…ルシウスよ。今回の事件、君の娘が被害者であったのは事実じゃ。しかし、同時にその原因もまた君の家にあった代物だということじゃ。…ハリー、君はこの書物が、何であるか分かっているかね?」
「はい、先生。…トム・リドルの日記です。この日記には、16歳の…ヴォルデモートの記憶が宿っていました」
「……ルシウス。君の手元に、ヴォルデモートの作った闇の呪物があった。そのことについて、問いただす必要があるようだ」
「あのっ、先生!…ドラコはお父さんを、ルシウス…さんをとても慕っていました。だから…その…」
「……ドラコは、よき友を得たようじゃな」
「いいえ、先生。まだ友達じゃありません」
「ほっほ…良いとも。安心しなさい、ハリー。ルシウスを悪いようにはせんよ…もっとも、ルシウスにその気があれば、じゃがな。君にも、今は休息が必要じゃ。聞きたいことも山ほどあるだろうが、また後日にさせてもらいたい。…よろしいかな?」
「……はい、先生。大丈夫です」
「あー。…ハリー・ポッター…くん」
「……なんでしょうか?」
「君には……とても、世話になった。……感謝している。礼は、後日……必ず」
「……わかりました。では、失礼します」
●帰りのホグワーツ特急にて(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、フレッド、ジョージ、ジニー)
「ハリー!残念だったな、まさかスナップの瞬間に爆発するなんて」
「ああ!君は爆発スナップゲームの寵愛を受けているに違いないぜ!」
「……失礼するわ」
「ドラコ・マルフォイ?…スリザリンの姫君が何か用かい?残念ながら、ここのコンパートメントは埋まってるぞ」
「僕の膝の上が空いてるよ!!」
「ロン。黙ってなさい」
「問題ないわ、長居する気はないの。…その。ハリー?」
「なんだい?ドラコ」
「っ!……その、えっと…」
「……?」
「……」
「……」
「……助けてくれてありがとう」
「…どういたしまして?」
「っ……改めて、それだけ言いに来たの。…失礼するわ」
「……行っちゃった」
「思わず黙っちゃったわ…」
「ああ、とんでもないラブコメの波動を感じたな」
「強烈なライバル出現だぞ、ジニー」
「うるさいわよ!!ハリーの前で言わないでっ!」
お読みいただきありがとうございます。
秘密の部屋編、後書きです。
大きく改変しましたので解説していきます。
●ルシウスの企みの失敗
この物語の一番大きな改変点です。
お父様大好きなドラコが、ジニーの教科書に紛れた父の『ノート』に気付いてしまいました。
ルシウスはまさか「それが作戦だ」だなんて話せない為、仕方なく日記を持ち帰ります。
再び隠し部屋の奥底に仕舞う為に一旦置いたのか、はたまた次の計画をすぐに練って実行する為だったのかは定かでありませんが、机の上に放置してあった日記をドラコが勝手に持ち出してしまいます。
ドラコが日記を持ち出した動機はリドルが説明していた為省略しますが、何も知らないルシウスは家中を探し回っていたことでしょう。
そんな折、ホグワーツからの連絡で日記のありかを確信こそするでしょうが、ルシウスは「日記がどのような過程を経て秘密の部屋を開けるのか」を知らないのではないかと私は推測しています。
よってドラコが攫われたという連絡が来るまでは、「狙われるのはマグル生まれで、純血の娘は安全のはずだ」と、ルシウスは原作と同様にダンブルドアを追い出しに掛かっています。
その際の脅しが原因で、この物語でもホグワーツ理事はクビになっています。
●ドラコの動きの変化
ほぼリドルが語った通りです。それぞれの時系列は場面を読み返せばなんとなく把握できるようにしてあります。
ヒロイン化にあたり、原作の終盤にあったような心境の変化…もとい、「価値観が変わるほどの強いストレス」を早々に与えなければならないと考えた結果、ここしかないだろうと判断しました。
●ハリー側の変化
原作ほど致命的な決裂になっていなかったことに加え、ドラコの捻くれた態度の内側をリドルに全部説明されてしまった為、態度が軟化しました。
実際のところのハリーの内心は読者の皆様のご想像にお任せします。
実は最初からかわいいと思っていたから喜んでいてもいいですし、自分の行動を「どうしてこんなことを言ってしまったのかわからない」と混乱していても味がありますよね。
そのあたりをどう解釈していただいても良いようにする為の、心理描写を含む地の文を撤去した理由だったりします。
●ルシウスとダンブルドアの交渉
ルシウスはヴォルデモートがらみの闇の呪物を所持していた弱みをダンブルドアに握られてしまいました。
また、ハリーに娘の命を助けられたばかりか、自身の酌量までダンブルドアに願われてしまいます。
これらを踏まえたうえで、ルシウスの立場や立ち回りが変化していきますが…それは、以降の話の中で明らかにしていこうと考えています。
なお、配役が変わった関係でダンブルドアがハリーの不安を解消する会話を挟むタイミングが消滅してしまいました。
今回の改変における最大のしわ寄せです。
後日、改めてハリーを校長室に呼び出し、原作と同様の話があった、という流れを想定しています。
●様子のおかしいドビー&組み分け帽子
最後の校長室のシーンの改変により、ドビー関連の話を入れるタイミングが消えてしまいました。
いろいろ考えた結果、プロット的にもドビーにはマルフォイ家に残っていてもらった方が都合が良かった為、いっそのこと「マルフォイ家からの解放」自体を無くす方向に落ち着きました。
さりとて、マルフォイ家がドビーに優しくなってはやはり流れが崩壊します。
よって、ご主人様(ルシウス)には叛意を持ちつつも、お嬢様(ドラコ)には好意的という形を、あくまでドラコには雑な態度を取らせた上で成立させようとした結果…様子がおかしくなりました。
ドビーファンの方々、申し訳ございません。
組み分け帽子は深い意味はありません。
ただ、スリザリンに入って最初からドラコと仲良かったらハリーの癖が狂ってもおかしくないよねっていうコメディです。ドビーがあの有様ですし。
●今後の流れについて
ハリーとドラコの仲が「嫌い同士」から「友達未満」に変化しました。
今後は原作ではまったくドラコの出番がなかった箇所でも、ちょくちょくハリーに絡みに行く予定です。
ある意味では、ここからがメインヒロイン化計画の本編と言えるかもしれません。
現在、プロットからまとめ直しつつ執筆中です。
気長にお待ちいただければ幸いです。
●本作の狙い
本作を投稿しようと考えた動機でもあります。
SNSなどで多くのドラコちゃん作品を拝見していますが、ハリーとの仲が改善するきっかけについての考察はほとんど見掛けないのです。
皆様の素晴らしい作品の「下地」の解釈の1つとして提供できれば良いと考えて、本作の投稿を決めました。
本作はまだまだ続きますが、ここまでだけでも、解釈の一助になれれば幸いです。
以上、後書きでした。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。