何かあったら、下巻を読んだ後の私が何とかしてくれるでしょう。
●グリモールド・プレイス十二番地にて(ハリー、シリウス、ルーピン)
「OKだハリー、何が知りたい?」
「ヴォルデモートは何をしているの?…マグルのニュースをずっと見ていたけど、なにもおかしな事件は起きてなかった」
「それはまだ奴らが何もしていないからだ。奴らは、自分たちに注意が向くことを警戒している」
「どうして?」
「奴らは『ダンブルドアはヴォルデモートの復活に半信半疑』だと、信じているからさ。…そう信じさせることに成功したと、少なくともダンブルドアは確信している。なにしろ、未だヴォルデモートの復活による犠牲は『出ていない』んだ。よって我々の根拠は、ハリーの証言のみだと、奴らは思っている。もちろん実際には、去年クラウチに真実薬を飲ませて、裏付けは取れている。…けれど、奴らそのことを知らないのさ」
「だから我々も、『半信半疑で行動している』ように見えるように装っている。それでもハリー。君が生き残ったことで、ダンブルドアにその復活を知らせてしまったことを想像できないほど奴らも馬鹿じゃない。だから今は、どちらも水面下で相手を刺激しないように準備を進めている状態なんだ」
「準備って?」
「奴らの仲間集めを阻止すること、そしてひとりでも多くの魔法使いに『例のあの人』の復活を信じさせることさ。…しかし、それがなかなか厄介でね」
「どうして?」
「魔法省の阿呆どもだとも!ハリー、君もヴォルデモート復活を知らされたファッジの態度を見ただろう?魔法省は完全に『ついにダンブルドアが魔法省掌握に乗り出した』と本気で信じているんだ。魔法省にとって、今の我々の活動は単なる『政争』に過ぎないんだ」
「……それがまた、別の意味でも厄介でね。ハリー、これまた君のおかげで昨年、クラウチ氏―ややこしいな。クラウチ・シニアを保護できた。今は順調に回復してきているんだ。そして我々にとって重要なのは、彼は『監禁中にワームテールに世話をされていた』と証言していることだ。その信ぴょう性を認めさせられれば、ここに居るシリウスの冤罪を晴らすことが出来る。ところが、魔法省は『クラウチは未だに錯乱している』と言い張って聖マンゴに詰めてしまった。クラウチ・シニアが私たちの味方となってくれれば、その影響力は絶大だ。今の私たちにとって、一番大きな仕事は、彼を護衛しつつ、聖マンゴから引っ張り出すことと言っても過言ではないよ」
●タペストリーを見ているときの一幕(ハリー、シリウス)
「マルフォイ家と親戚なんだ!」
「純血家族は皆縁戚関係だ。…ああ、君はマルフォイ家の娘と親しいのだったか?」
「親しいというか…その……」
「……ハリー。その娘の父のルシウス・マルフォイは『死喰い人』だった。今もまた、ヴォルデモートに恭順を誓っている可能性が高い。昨年も言ったが、その娘が父親に命令された時、君を害する可能性が―」
「ドラコはそんなことしない!!…ルシウスさんは、敵か味方かわからないけど。でも、ドラコは味方だ!シリウスは、ドラコを知らないからわからないんだよ!!」
「……リリー?」
「シリウス?どうしたのさ?」
「……昔。スネイプと親しくしているリリー…君のお母さんに、良かれと思って忠告した時に同じようなことを言われたよ。―ああ、そうか。モリーの言うことも一理あったのだろう。…君は、ジェームズではないのにな」
「……母さんは、スネイプと親しかったの?」
「ああ。…低学年の時はそうだった。しかし学年が上がるにつれ、私やジェームズと一緒にいる時間が多くなった」
「そうなんだ…あ。ここ、レストレンジって―」
●ウィゼンガモット法廷にて(ハリー、ダンブルドア、ルシウス、ファッジ)
「ダンブルドア。…あー、あなたは、その。伝言を受け取ったのかな?時間と、場所が変更になったという」
「受け取り損ねたようだのう。しかし幸運にも早めに来ておりましてな」
「そうか、いや。もう1つ椅子が必要なようだ。私が…いや、ウィーズリー君、君が―」
「それならば、さらにもう1つ、ご用意頂いても構いませんかな?」
「き、君はっ…ルシウス。今は裁判中だ。部外者の入廷は認められて―」
「急遽、法廷を変更し、弁護人・証人共に不在のまま裁判を開始しようとした、などと不名誉な噂を耳にしましてな。そのような『不手際』は魔法省の威厳に関わるであろうと、代わりに弁護人を務めようと駆け付けたのです…幸い、そのための認可を頂く相手は、この裁判所に居られるとのことでしたのでね」
「あー…いや、しかし。ルシウス。そのだな―」
「まさか、魔法大臣ともあろうものが、ご自身が尋問官を務める裁判において不手際を無視して進める、などということは、なされないでしょう?」
「……うむ。その通りだ。君の気遣いに感謝する。…ルシウス・マルフォイを弁護人として認めよう」
●ウィゼンガモット法廷にて その2(ダンブルドア、ルシウス、ファッジ)
「この少年が学校外で魔法を不正使用して、何度話をでっちあげたか、覚えているかね?三年前の浮遊術事件もそうだった―」
「それはおかしいですな、魔法大臣。その件については、既に我がマルフォイ家の屋敷しもべ妖精が主人に許可なく行った事件であったと報告を差し上げたはず」
「そ、そうだったかな」
「お忘れとあらば、当の屋敷しもべ妖精を出廷させましょう。お仕置きの為、喜んで証言することでしょう」
「ん?…まあ、良い。その必要はない!他にも、この少年は叔母を膨らませた!」
「その件は、魔法大臣自ら追求しないことを決断なさりましたな。…さて、つまり吸魂鬼が不在であった場合でも、被告人への対応は『厳重注意』が法の認めるところではございませんかな?」
「法律は変えられる!」
「……魔法大臣。私は先ほども申し上げた。魔法省の威厳に関わる不手際を見逃せませぬ。それは、魔法省への支援をしている我がマルフォイ家の威厳に直結する。…この場は、書記官のいる法廷。発言には、くれぐれも気を付けていただきたい。あなたは今、一人の少年を社会的に追い詰める為だけに、権力を乱用していると捉えられかねない発言を繰り返している」
「ぐ…ぬぅ…」
●ウィゼンガモット法廷にて その3(ハリー、アーサー、ルシウス)
「ハリー。ダンブルドアは何も言わずに―」
「無罪だよ、無罪放免!」
「そりゃ良かった!もちろん、君を有罪に出来るはずはなかった!しかし、私としては―」
「ハリー君。無罪放免、おめでとう」
「ルシウスさん!…その、ありがとうございました」
「礼には及ばない。…法廷で言ったとおりだ。魔法省の理不尽な行動を止めることは、私の利益にも繋がる」
「……ルシウス・マルフォイ?なぜ、お前がここに」
「通りすがりだ。…失礼」
「デタラメなことを!?ハリー、いったい、中で何が起こったんだ?」
「……たぶん、助けに来てくれたんだ」
●法廷から帰宅後(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス、ルーピン)
「法廷にルシウス・マルフォイが!?それも、君の弁護を?」
「うん。魔法省の不手際を見逃せない、とか何とか言ってたけど…」
「そりゃあ、親子揃って言い訳の作り方が同じだ。君を助けに来たに違いないよ!」
「そうとしか考えられないけれど…でも、あの人は墓場に居た『死喰い人』の一員でしょう?ハリーを助ける理由がわからないわ」
「うん…でも、なんとなく、墓場でも僕を逃がしてくれた、ような気がするんだ」
「……」
「……めずらしいね、シリウス。いつもの君なら、あんな奴を信用するなと食って掛かってただろう?」
「いや…保護者として、今度会ったときに礼を言うべきか、悩んでいた。その…娘にも、ハリーはずいぶんと助けられたようだしな」
「はは、そうか。…まあ、君はまだしばらく出られないから、ずいぶんと先の話だね」
「黙れリーマス!!」
●法廷から帰宅後 その2(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス、ルーピン)
「ルシウス・マルフォイの善悪はともかくとして、だ。魔法省がヴォルデモートの復活を認めておらず、情報操作を続けている以上、ホグワーツでもハリーは針の筵になることは間違いない。そんな中で、騎士団以外でハリーの味方をしてくれる存在が居ることは喜ばしいことだ。…その上で、ハリー。君には元教師として忠告しておくよ」
「はい。先生!」
「良い返事だ。今のところ、マルフォイは君の味方のように見える。しかし『死喰い人』の一員として動いているのは間違いないんだ。頼っても良いが、決して信用し過ぎなようにしなければならないよ。…わかるね?」
「あー…うん。えっと、わかりました。先生」
「…打って変わって、歯切れの悪い返事だね。本当に分かっているかい?」
「いえ。その…学校に行ったら、ドラコ本人からも同じことを言われる気がして」
「「あー…ありそう」」
「……本当に、世話になっているみたいだな」
●ホグワーツ特急、ホームにて(ハリー、ドラコ、シリウス)
「ハリー。ごきげんよう。…今年は大所帯ね?」
「やあ、ドラコ。…えーっと、去年もだけど、今年もロンのところでお世話になってたんだ。大所帯だけど、ちゃんと時間に余裕を持ってこられて良かったよ」
「そう。そういうことにしておいてあげるわ。…そんなに家に居たくないなら、来年はうちに来る?」
「えっ!?」
「冗談よ。……あら、大きい犬ね。もしかして…スナッフルズ?」
「よく覚えていたね」
「当然よ。…いつも、ハリーにはお世話になっているわ。これからよろしくね、スナッフルズ」
「……わんっ」
「ふふっ…失礼するわね、ハリー。先に乗っているわ」
「うん。ばいばい」
●ホグワーツ特急内(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「やっと戻ってこれた!腹減って死にそうだ!!」
「ハリー、ただいま。…あのね、監督生って各寮2人ずついるのよ。スリザリンの監督生、誰だと思う?」
「ドラコでしょ」
「大当たり。あいつ、君が予想した通りのことを言ってきたぜ?」
「予想した通りのこと…?」
「『お互いの立場は、わかっているでしょう?ハリーに、わたくしを信用しすぎるなと、あなた方からも伝えなさい』…ですって」
「あの様子だと、きっと後で君の方にも言いに行くぜ」
「本当に警戒させるつもりあるのかしら?」
「あるんじゃないかな…たぶん」
●魔法薬学後、昼食後の一幕(ハリー、ドラコ)
「ハリー!…ハリーっ!!」
「……ドラコ?」
「ごきげんよう…とは、言えなさそうね。魔法薬学の後に話そうと思ってたのよ?おかげで、昼食を食べ損ねてしまったわ」
「それは申し訳なかったね。それで?何の用だい?」
「落ち着きなさい。…これを渡したかっただけよ」
「…紙きれ?」
「きっと、闇の魔術に対する防衛術の時に役に立つわ。あの女に何か言いたくなったら、その前に読みなさい」
「……君は、君たちは魔法省の味方をした方が良いんじゃないのか?」
「お馬鹿。なりふり構わず『奴らは狂ってる』って主張することは、『真実を隠しているのではないか』という疑惑を強くしてしまうのよ。……どちらにしても、悪手でしかないの」
「それで、わざわざこんな回りくどい真似して暗躍してるわけだ?」
「そうね。それもあるけれど…権力に振り回されてることに気づかない愚か者が嫌いなの。だから、本当の権力の使い方を身をもって教えて差し上げるだけよ」
「ああ、なんか…既に、相手が気の毒になってきたよ」
「そう。あなたは毒気が抜けたようで良かったわ」
「……ごめん」
「いいのよ。…では、失礼するわ」
●闇の魔術に対する防衛術の一幕(ハリー、ハーマイオニー、アンブリッジ)
「先生。『闇の魔術に対する防衛術』の真の狙いは、防衛魔術の練習をすることではありませんか?」
「グレンジャー。あなたより年上の賢い魔法使いたちが新しい指導要領を決めたのです」
「先生。1つよろしいですか」
「挙手。ミスター・ポッター。なんでしょう?」
「えっと…先生は挨拶の時に……『変化には改善もあれば判断の誤りと認められるものもある』という、内容を、おっしゃいました?」
「ええ、その通りです」
「……えーと。であれば…その指導要領が『誤り』ではない保証は、どこにあるのでしょうか?」
「っ…ポッター。それは、あなたが決める事ではありません」
「えっと…はい、先生。その通りです。……その上で……重ねて、質問があります」
「……なんでしょう?」
「『闇の魔術に対する防衛術』の狙いが防衛魔術の習得に無いならば、『闇の魔術に対する防衛術』の『目的』とは何なのですか?」
「もう一度言いましょう、ミスター・ポッター。…この教室で襲われると思っているのですか?」
「えーっと。…いいえ、先生。この教室外で襲われた時の為に、学びたいのです」
「あなた方のような子供を、誰が襲うというの?」
「……ふふっくくっ……すみません、先生。僕らは若く、見目麗しく、魅力的な学生なのです。闇の魔法使いに関係なく、いつ暴漢に襲われてもおかしくない魅力があり、実際に身を守る術が必要なのです。…それとも、先生にはお分かりになられませんか?」
「なんっ……」
「えっと……先生。僕らは、実技を学びたいと考えています。それが出来ないならば、保護者を通してホグワーツ理事へ訴えることも検討します。…それだけ、です」
●闇の魔術に対する防衛術の後の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「凄いわ!ハリー!!あんなに見事な論戦が出来るだなんて、知らなかったわ!」
「ああ!君ってば、最高だ!あんなの見せられたら、狂ってるなんて言えないよ!きっとシェーマスも後悔しているぜ?」
「いや、違うんだ…ドラコにメモを貰って、それを読み上げただけなんだよ。……でも、そっか。その為に、ドラコはこれをくれたんだ」
「いいえ、違うわよ!マルフォイの狙いはそれだけじゃないわ!…ハリー、ヘドウィグを貸してくれる?両親に手紙を書かなくちゃいけないわ!」
「ドラコの狙いが、どうして君の両親への手紙に繋がるんだい?」
「あのね、ハリー。あなたのやったことは『この授業が気に食わないならば、親を通して理事に訴えろ』ってみんなに反抗の仕方を教えたのよ!あなたたちがふくろうを持っていてよかったわ!絶対に今はふくろう小屋は人でいっぱいだもの!」
「おったまげー、マルフォイの奴そんなことまで考えてたのかよ!?」
「あら?でも一番の狙いはきっとそれじゃないわよ?」
「そうなの?」
「ええ。…ハリー、すっきりしたでしょ?」
「……うん!とっても!!」
●魔法生物飼育学にて(ハリー、ドラコ、プランク)
「ハグリッドはどこですか?」
「気にするでない」
「……おそらく、仲間を集めに行ってるのよ」
「ドラコ?…何か、知ってるの?」
「ただの推測よ。…去年、ダンブルドアが大臣に言っていたでしょう?『巨人に使者を送れ』って」
「それが、ハグリッドと何の関係があるのさ?」
「巨人は大きく、力が強く、乱暴よ。…感情の問題じゃなく、彼らが『撫でただけ』で、わたくしたちは死んでしまうの。彼らの一挙手一投足をわたくしたちは『暴力』と言わざるを得ないわ。半分だけ同類の血が流れる、ハグリッド以外はね」
「……ダンブルドアは、巨人への使者としてハグリッドを送り出した?」
「そう考えるのが自然じゃないかしら?」
「そっか。……どうせ君は、ハグリッドよりプランクの方が良いって言うんだろ?」
「当然。…授業の度に、死の危険と隣り合わせだなんてやってられないわよ」
「……そうだけど、さ」
「彼があなたの良き友人であることと、教師として優れていることは別の話よ。ちゃんと切り分けなさい」
「うん……」
●クィディッチキーパー選抜(ハリー、フレッド、ジョージ)
「おいおい、見ろよフレッド!我らが監督生たるロニー坊やが選抜に参加してるぞ?」
「ジョージ、いたずらスナックには幻覚が見えるような成分は入ってないはずだぜ?」
「ロンはここのところずっと練習してたんだって」
「ハリー!知っていたならどうして教えてくれなかったんだ!」
「そうとも!知っていたならば俺たち、全力で―応援したってのに!!」
「…ロンって、キーパー上手なの?」
「悪くはないさ。ウッドには遠く及ばないけれど、及第点はくれてやれる」
「けど、今日は悪いだろうな。間違いない」
「どうして?」
「ロニー坊やはあがり症なんだ。知らなかったのか?」
「知らなかった。…けど、なんかわかる気がするよ」
●シリウスの暖炉通信(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス)
「それで、アンブリッジの授業はどんな様子だ?半獣を皆殺しにする準備でもしているかい?」
「ううん。魔法を一切使わせないんだ。僕ら、ずっと教科書を読んでいるだけさ!」
「なるほど。魔法省内の様子と辻褄が合う。…ファッジは、君たちに闘う訓練をさせたくないらしい」
「なんだそれ?ファッジは、ダンブルドアが戦士集団でも作ってると思ってるのかい?」
「おそらく、思っているのだろう。…しかし、ファッジの思惑は上手いこと進んでいない。ホグワーツ理事や、保護者から苦情のふくろうが止まないらしい」
「ハリーのおかげだわ!ハリーがアンブリッジと論戦したのよ!その時に実践が学べないなら理事に訴えることをみんなに知らせたの!」
「そんなことをしていたのか!ハリー!!素晴らしい。皆が帰ってきたら自慢してやろう。私も鼻が高いよ」
「ドラコのメモを読んだだけなんだけどね…」
「……なるほど。実際、それらの苦情への対応がやけに遅いのは気になっていた。君に指示したのがマルフォイならば、ルシウス・マルフォイが魔法省へ圧力をかけている可能性があるな」
「…おじさん。ルシウスさんって、味方でいいのかな?」
「それは分からない。ハリー、たとえルシウスが敵だったとしても、あちらにも利がある行為なんだ。なにしろダンブルドアを社会的に追い詰め過ぎれば隠遁し、奴らはダンブルドアによる奇襲に常に怯えなければならなくなる」
「えっと…つまり、ヴォルデモートも魔法省がダンブルドアを追い詰めることに反対している?」
「そういうことになる。奴らはダンブルドアは『半信半疑』だと信じている。ならば、ダンブルドアを追い詰めれば、疑いを捨て、本気で対ヴォルデモートに舵を切りかねないと考えるはずだ。…もっとも、仮説であることを忘れてはいけない」
「うん、わかってる」
「えっと…つまり、アンブリッジの授業がマシになることを期待しても良いのかな?」
「それは分からない。しかし、これ以上強引な手段には出にくいことは確かだ。…さて、長居し過ぎた。次に火に現れる時間をまた手紙で伝える」
「うん。ありがとう。ばいばい」
●魔法薬学での一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、スネイプ)
「諸君のレポートが、OWLであればどの程度であるかに基づいて採点した。全体的に、今回のレポートの結果は惨憺たるものだ。今週の宿題については何倍もの努力を期待する。その上で『D』を取るような劣等生には罰則を科さなければなるまい」
「ふうん…ハリー、あなたD評価だったのね」
「なっ…そんな訳な―」
「はい、隙あり。…ふうん。なるほど…これは仕方ないわね」
「ちょっと!勝手に見るなよ!?」
「惚れ薬の材料にもなるって部分が全部抜けてるわ。授業が『安らぎの水薬』だったから、そちらに気を取られたのね」
「……そうだよ」
「他には大きな抜けは見当たらないから、注意さえしていれば『A』は取れるんじゃない?前回の授業の時もそうだけど、ちゃんと注意深く……むくれないで、聞きなさい」
「……」
「もう……何がそんなに不満なの?」
「……君に」
「わたくしが、どうしたの?」
「……君に、みっともないところを見せたくなかった」
「あら、今更?わたくし、あなたのみっともない所ならいくつも知ってるわ」
「……」
「それなら、わたくしに愛の妙薬でも飲ませてみる?みっともないところなんて、分からなくなるかもしれないわ」
「なっ…!?」
「冗談よ。…どうせ、飲んでも効かないもの」
「はあ!?…それって、どういう―」
「これも冗談よ。…いつもの調子に戻ったわね?ほら、注意深く、よ。黒板を3回は読み返しなさい」
「……スネイプ先生、すっごい表情してるわ。話してる相手がマルフォイだから、口を挟みづらいのね…」
「眉間の皺で薬を煎じれるんじゃないか?ネビル、ちょっと試してこいよ」
「うるさいぞウィーズリー!グリフィンドール5点減点!!」
「マーリンの髭!!」
●魔法薬学後の一幕(ハリー、ドラコ)
「なんだって?ホグワーツこ、口頭問診官?」
「ホグワーツ高等尋問官、よ。授業を監視して基準に満たないと判断された教師を失職させる権限を持つ役職、だそうよ」
「……何人か、むしろ進んで差し出したい先生は居るけどさ」
「ええ。今はホグワーツに居ないあなたのご友人とかね?目的は、ダンブルドアの信奉者を1人でも削る事、といったところかしらね」
「そんなの滅茶苦茶だ!」
「ええ。もちろん立ち消えたみたい。今の状況で魔法省がホグワーツに手を出すことは自分の首を絞める事だもの」
「その立ち消えた話を、どうして君が?」
「知り合いのコガネムシが嬉々として教えてくれたわ。掲載誌が決まり次第、一連の話が出回るんじゃないかしら?」
「ああ、和解したんだね?」
「ええ。性根はともかく、腕の良い記者なのは間違いないもの。魔法省に行けば面白いものがみられるって教えてあげたら、喜んで飛んで行ったわ」
「……君だけは敵に回したくないなあ」
「ええ。良い心掛けね」
●闇の魔術に対する防衛術の授業前の一幕(ハリー、ロン、ドラコ、アンブリッジ)
「ん?誰かいるぞ?」
「あれは…ドラコと、アンブリッジ?」
「ミス・マルフォイ。あなたとは是非、お話ししたかったのよ。あなたのお父様には大変お世話になっているの」
「ええ、先生。先生の事も、お父様から伺ったことがありますわ」
「ええ。そうでしょう?そうでしょうとも。ところで、あなたのお父様はなんて―」
「ただ、1つ、訂正させて下さい」
「……はて、なんでしょう?」
「お父様が支援しているのは『魔法省』です。あなたを支援しているわけでも、お世話をしているわけでもありません。どうぞ、勘違いなきようお願いします…では、次の授業がありますので」
「すっごいな。アンブリッジのやつ、完全に固まってるよ」
「そのままあと1時間くらい固まっててくれないかな…?」
●ある日の一幕(ハリー、ドラコ)
「ハリー。ごきげんよう。…はい、これ」
「えっ…?教室使用許可申請書ってなにこれ?」
「読んだ字の通りよ。使っていない教室を使うための申請書よ」
「……勝手に借りれば良くないかい?」
「ええ。少人数ならそれで良いのでしょうけど、大所帯ではそうはいかないでしょう?」
「大所帯?君は何の話をしているんだい?」
「『闇の魔術に対する防衛術』のことよ。…計画通り、理事も動いて魔法省は大混乱。だけど、肝心の授業は相変わらずでしょう?」
「うん。なんか、パーシーが女性になって数十年経ったらああなるんだろうなって」
「……ハリー。覚えておきなさい。女性に年齢の話はしてはいけないの。たとえ、あの女であってもよ」
「え?う、うん。…わかった」
「なら良いわ。…話を戻すわね。わたくしたちは実技を学ばなければいけないわ。その実技が、授業で学べない以上、行うべきは独学…つまり自習よ」
「うん…言いたいことわかった。けど、なんで大所帯になるのさ?」
「希望者を集めて集団で行えば、引率として先生に見てもらえるでしょう?ホグワーツの教師陣は皆優秀な魔法使いだもの。闇の魔術に対する防衛術の担当でなくても、わたくしたちが学ぶべきことはたくさんあるわ」
「なるほど…それで、なんで僕にこれを?」
「あら、あなたが生徒代表になるからよ」
「なんでさ!?」
「逆に闇の魔術に対して、あなたより詳しい生徒が居るとでも?」
「……君、とか?」
「……どういう意味かは聞かないであげるけど、知識はあっても実戦経験ではあなたには劣るのよ。…認めるのはとても癪だけど」
「……そっか。うん、わかった。やろう、集団自習。手伝ってくれるでしょ?」
「おあいにくさま。わたくしはスリザリンの方の集団自習を手配しなければならないの。せいぜいウィーズリーやグレンジャーに頼りなさい」
「…そっか」
「あと、噂を聞けばハッフルパフやレイブンクローからも希望者が来ると思うから、よろしくね」
「……来るかなあ?今の僕、嘘つき扱いだよ?」
「来るわよ。間違いなく。既に『魔法省はあてにならない』という印象がついているもの。…あるいは、ディゴリーあたりが主導して行うかもしれないけどね」
「……うん、わかった。向こうが、来たらね」
「ええ、それで良いわ。あと、申請書はマクゴナガル副校長にお渡しなさい。その上で…そうね。引率としてハグリッドを希望するのが良いかしらね」
「ハグリッドはまだ帰ってきてないけど…?」
「間もなく帰ってくるんじゃないかって噂があるのよ。…帰ってこないなら、あなたが引率役を申し出なさい」
「僕が引率役を?」
「理由はさっき言ったわ。…大丈夫よ、あなたなら出来るわ」
「……そっか。うん、わかった。やってみるよ」
「ええ。…頑張りなさい、ハリー」
●ある日の一幕 その2(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「素晴らしいわ、ハリー!ああ、どうして私、そんな簡単なことを思いつかなかったのかしら!さっそく記入しましょう!一日でも早く始めるべきよ!」
「君が主導で、引率がハグリッドか…最高じゃないか!やろう!」
「うん。でも、ドラコはハグリッドの事、教師としては信用できないってずっと言ってたんだけどなあ…?」
「プランク婆さんの授業を受けて、ハグリッドの素晴らしさを思い知ったのさ!」
「うーん…そうなのかなあ?」
「なんだっていいわ!ハリー!一刻も早く書いて、提出するのよ!!」
「ハーマイオニー、待って!まだ、メンバーが決まってないよ。先生に申請しても結局僕らしかいませんでしたーとか、笑えないよ」
「そうね!わかったわ。私と、ロンに任せて!ハリー、あなたは申請書の記入と、何から始めるかを考えておいて!」
「よしきた!やろう!」
「すごい。ハーマイオニーが今年に入って1番生き生きとしてるよ」
「そりゃそうさ。自習なんて、ハーマイオニーの一番好きなことじゃないか」
●ある日の一幕 その3(ハリー、マクゴナガル)
「ポッター。あなたが入学してから、今日ほど嬉しいと思った日はありません。素晴らしい試みです」
「それでは、許可を頂けるんですね?」
「勿論ですとも!あなたがあの授業について、不満を抱いていたのは風の噂で聞きました。あなたのことですから、また校則を破るような試みをするのではないかと肝の冷える日々を送っていたのです。念のため、内容を確認します。…引率の先生が必要、と書かれていますね?」
「はい。専門の先生でなくとも、ホグワーツの先生ならば学べることは多いと思いました」
「ええ、そうですとも!実に賢明な判断です。…そして、希望教諭は…ルビウス・ハグリッド?」
「はい。もうすぐ帰ってくると聞きました。それまでは…その、僕が代わりに引率をしようかと思って、います」
「……ふむ」
「あの、先生…?」
「……ポッター。確かにハグリッドならば、引率として、十全に役割を果たすでしょう」
「ええ、先生。ですから―」
「しかし、それではあなたたちの『学び』の意欲に対して、充分とは言えません。……良いでしょう。引率は、私が務めます」
「ええっ!?…でも、先生はお忙しいでしょう?」
「忙しいですとも!!しかし、教師として学ぶ意欲を持つ生徒の指導以上に優先すべきことなどありません!場所は、変身術の教室を提供しましょう。なんとしてでも!週に1度、時間を設けます。それ以上の頻度で行いたい時はポッター、引率を頼みましたよ」
「……はい。わかりました、先生」
●ある日の一幕 その4(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ)
「マーリンの髭!!なんで引率がマクゴナガルになってるのさ!君は引率はハグリッドに頼むって言ってただろう!?」
「言ったし、申請書にもそう書いたさ!!でも、ハグリッドに頼むって言った途端に先生の顔が険しくなって…突然、やる気満々になっちゃったんだよ」
「いいじゃないの!マクゴナガル先生は偉大な魔女だわ!!変身術のプロだから闇の魔術に対する防衛術の教師をしていないだけで、学べることはたくさんあるはずよ!」
「まあ、目的を考えればその通りだし、マクゴナガルなら信用できるけどさ…でもマクゴナガルかぁー」
「文句を言わない!!」
「……ドラコに一杯食わされた気がする」
「あら。特に何かをごちそうした記憶はないけれど?」
「あっ!ドラコ!!」
「ごきげんよう、ハリー。…その様子だと、ちゃんと申請は通ったようね?」
「マルフォイ!!君、ハグリッドの名前を出せばこうなるって分かってただろう!?」
「当然じゃない」
「このっ……ミス・スリザリン!!」
「あら、光栄ね」
●ホグズミードにて(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「そういえば、肝心の補習メンバーってどうなったんだい?」
「数人に声をかけたわ。ほとんどグリフィンドールだけど、他の寮の人も少しは来ると思うわ」
「借りられる部屋の大きさもわからなかったからさ。ある程度、知っている人を中心に声をかけたんだ」
「良いね。あんまりにも多かったらどうしようかと思ってたよ」
「大丈夫よ。それよりハリーこそ、最初の補習で何をするかは決めたの?」
「うん。とりあえずやっぱり武装解除術から始めようかなって」
「本当かい!?僕、初めて優等生になれる気がするぞ!」
「ハリー。もう少し、難しいところから始めても良いと思うわ」
「うーん…それは、思ったんだけどさ。なんていうか…僕らの感覚がマヒしてる気がしてるんだ」
「どういうことだい?」
「つまりさ…武装解除術なんて、普通に過ごしてたら使う機会なんて無いんじゃない?」
「あー…。確かに、使ったのって、秘密の部屋に行った時と、おととしの叫びの屋敷くらいだったか?」
「すごいわハリー!やっぱりあなたが代表で適任だったのよ!!」
「そうかな。…あと、失神呪文とか。追い払い呪文も便利かなって」
「……追い払い呪文?」
「ハリー。もしかして、去年開発したアレを使うつもりじゃないよな?」
「使わないよ!?あんなの、水中以外で使ったらミンチになるって!」
「ええ、成りかけてたものね。練習中に…」
●シリウス2度目の暖炉通信(ハリー、ロン、ハーマイオニー、シリウス)
「やあ、ハリー。調子はどうだね?」
「んー…悪くはない、かな」
「そうか。魔法省は事実上、ホグワーツから手を引いたようだ。本来は、そちらに送り込んだ教師を伝手にしてホグワーツを掌握する予定だったようだが…」
「ああ、ドラコから聞いた。ホグワーツ高等なんちゃらって」
「そうだ。『日刊預言者新聞』は相変わらずだが、ホグワーツにこれ以上手を入れれば手痛い反撃を食らいかねないと気付いたらしい。ハリー、君の功績だと騎士団内でも評判だよ」
「ああ。シリウスがこれでもかって喧伝してる姿が目に浮かぶよ」
「あっ!?…ストップ。シリウス、先に伝えなくちゃ。ヘドウィグが…シリウスからの返事を持ったふくろうが、怪我をしてたんだ。もしかしたら、暖炉を見張られているかもしれない」
「そうか。わかった、気を付けよう。…それならば、要件を早々に伝えておこう。君たちの『補習』にも、騎士団から絶賛の声が上がっている。特に、モリーの喜びようは凄かった」
「どうしてシリウスが、補習のことを知っているの?」
「見張りが居たのさ。マンダンガスが、それとなく君たちの近くを歩いていた」
「全く気付かなかった…」
「いや、むしろ全く警戒する必要が無い合法的なやり方で、この上なく的確な反撃をしていることを評価しているんだ。私やジェームズではそうは行かなかったろうな。むしろ、やり口はリリーに近い」
「これも発案はドラコなんだけどね…」
「あの礼儀正しいお嬢さんが、ルシウス・マルフォイの娘というのが信じがたいな。…少ないヒントで私の正体にも気づいていたようだし、撫で方も上手かった。…む、暖炉に違和感がある。すまない、これにて失礼するよ」
「……撫で方?」
「ハリー、ハリー。目が怖いわ。相手はシリウス…っていうか、犬よ」
●初めての集団自習(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル)
「えっと…変身術の教室、だよね?」
「そうよ。間違いなくこの場所。机も椅子も撤去されてるし、道具もいろいろ揃ってる。マクゴナガル先生の本気が伺えるわ!」
「クッションに、ゴムボール、読み古されてるけど呪文の専門書もある。このクッションがあれば失神呪文も練習できるぞ!」
「うん。必要になったらフリットウィック先生に去年使ったクッションを借りに行こうと思ってたけど、これならいつでも出来るぞ」
「あ。みんな来たみたい!」
「やあ、ハリー。参加しやすい補習をしてくれて助かるよ」
「ネビル、来てくれたのかい?」
「もちろんだよ!」
「続々と来てるぞ…全部で、25人かな?」
「……ハーマイオニー、数人って言ってなかったかい?」
「みんな、あなたに教わりたくて来たのよ」
「……そうだと良いけどね」
●初めての集団自習 その2(ハリー、ハーマイオニー、フレッド、ジョージ、セドリック、チョウ、パーバティ、ラベンダー、ザカリアス)
「ハリー、まずは私が話すわ」
「うん…よろしく」
「えっと、みなさん。こんにちは。…ここは、『闇の魔術に対する防衛術』の集団補習の教室です。今年の『闇の魔術に対する防衛術』では、実技の練習が全くできないので…ここで、練習したいという、集まり、です」
「待ってくれ。その前に、だ。僕は知りたいことがあってここに来た。きっと、みんなもそのはずだ」
「そうよ!」
「ほらな。なあ、ポッター。『例のあの人』は―」
「ドラコ・マルフォイとはどういう関係なの!?」
「え!?…え???そっちなの!?」
「いや、違―」
「当たり前でしょ!ハリー。私、去年のダンスパーティで近くで踊ってたから何を話してたか知ってるんだから!」
「えっと…チョウ?」
「その癖に、一緒にいるところを見かけないし、かと思ったら密会してるって噂はあるし!どういう関係なのかしらっ。わたし、それが聞きたくて!!」
「あー…すまない。ハリー。ちゃんと、防衛術の自習目的でもあるんだ。…ただ、ちょっと。チョウを止められなくて…」
「セドリック。来てくれたんだね」
「ああ、久しぶりだ。ハリー。…もちろん、君に負けた身として、教わりたいことが山ほどあるんだ」
「ちょっとセドリック!私が今、ハリーとお話してるの!」
「そうよ!今ホグワーツで一番熱いネタなんだからっ!」
「ちょっとだけでいいの!ちょっとだけ、ね!」
「あー、パーバティにラベンダーまで…」
「ハリー。ちょっとだけ、何か言ってあげたら?…でないとたぶん、収拾つかないわよ?」
「うん。…えっと、この集団補習は、ドラコのアイデアで決まったんだ。…というか、そもそも、去年の対抗試合も、ほとんどドラコのおかげで勝てたようなもので…」
「「「きゃーっ!!」」」
「へい、ザカリー。元気出しなよ」
「そもそも、ここは『授業で実技が出来ないから実技が得意なハリーが主導で自習する教室』だぜ?『例のあの人』を持ち出したお前がナンセンスだよ」
「……そうかよ」
●初めての集団自習 その3(ハリー、マクゴナガル、ザカリアス、他)
「ああ、既に集まっていたようですね。ポッター、私なりに必要そうなものを集めておきました」
「マクゴナガル先生。その、ありがとうございます!こんなに、いろいろ準備していただけるとは、思ってませんでした」
「意欲ある生徒を手助けするのは当然のことです!さあ、あなたにはこのホイッスルを差し上げます。指導に慣れていないうちは、あると便利です」
「はい、ありがとうございます。…さあ、みんな2人1組になって。…まず、最初にやるのは武装解除術だ」
「勘弁してくれよ。『例のあの人』に対して、武装解除術が守ってくれるのかい?」
「守ってくれるさ。考えてみてくれ。どんなに強力な呪文を使えても、杖がなくちゃ使えないんだ。どんな状況でも、相手より早く、正確に魔法を当てられるなら、これほど簡単で頼もしい呪文は無い」
「なるほど…そうか」
「あとそれから単純な話…最後に使ったの、いつか覚えているかい?」
「……なるほど、納得した」
「良かった。まずはお互い向き合った状態でやってみて。確実に当てられるようになったら、相手にゴムボールを投げてもらって、避けながら当てる練習だ。それじゃ、始めてくれ」
「「「「「エクスペリアームス!!」」」」」
「ポッター、実に良い指導者ぶりですよ」
「ありがとうございます、先生。先生も見て回りながら、アドバイスしていただけますか?」
「ええ、もちろんですとも」
●初めての集団自習 その4(ハリー、フレッド、ジョージ、ジョーダン、マクゴナガル、セドリック、チョウ、アンブリッジ)
「あら?あらあらあら、なにをしていらっしゃるのかしら?」
「……自習です。アンブリッジ先生」
「自習ですって?見たところ、武装解除術を使っているようだけれど、誰の許可を得て―」
「私の許可です。アンブリッジ先生」
「……マクゴナガル先生」
「ポッター。私が相手をします。あなたは、あなたの役割を果たしなさい」
「はい、先生」
「マクゴナガル先生?わたくしは、ミスター・ポッターと話を―」
「いいえ。アンブリッジ先生。確かにポッターはこの自習教室の代表生徒ですが、私が引率を務めています。お話なら、私が承りましょう」
「……そう。ならば、マクゴナガル先生。みたところ、この自習では武装解除術の練習をしているように見えます。ならば、その担当教諭であるわたくしに、話を通すのが筋ではなくて?」
「ええ。ですから、既に話は通っているでしょう。最初の授業の時にポッター自身から。その後、ホグワーツ理事からも、です。しかし、あなたは授業では『理論のみ』を扱うと決めたのでしょう。それ自体、担当教諭であるあなたのやり方に口出しは致しませんとも。しかし、意欲的な生徒が、自主的に学びたいと言うならば、それを手助けするのがホグワーツのやり方です」
「それは魔法省の―」
「いいえ。ホグワーツの手続き上、ポッターは一切の問題なく、必要な書類を提出しています。外部から余計な口を挟んでいるのはあなたです。アンブリッジ先生」
「すげーな。普段叱られてばっかりだから気付かなかったけど、味方になるとこんなに頼もしいのか」
「いたずらグッズのポップにつけてみたらどうだい?『マクゴナガル教諭、お墨付き』ってさ」
「ああ、最高のアイデアだ。きっと、誰一人として買わなくなるぜ」
「……ドラコがマクゴナガル先生を誘導したのは、この為だったんだ」
「ん?どうしたハリー。俺たちのやり方、何か間違ってたかい?」
「いや、大丈夫だよ。ただもうちょっと杖の振り方を―」
「…ん?なんか今、私の恋バナセンサーが反応したんだけど、気のせいかな?」
「気のせいさ。気のせいだから、続きをやろう。チョウ」
●初めての集団自習 その5(ハリー、ロン、ハーマイオニー、マクゴナガル、セドリック、チョウ、ディーン)
「うん。やっぱりセドリックが頭一つ飛び抜けて上手だね。…君も指導側に回る気はないかい?」
「やめてくれよ。僕は君ほどうまく教えられる気がしない」
「うーん、だいたい受け売りなんだけどね」
「それってやっぱり!?噂のドラコ・マルフォイなの?」
「ああ、捕まっちゃった…」
「ポッター、もうすぐ21時です。解散の時間ですよ」
「え?もうそんな時間?…えっと、みんな!止めて!!……よし。今日はここまでにしよう。最後に1つだけ言わせてほしい。実戦では今日みたいに相手が1人とは限らないってこと、そして練習みたいに簡単にはいかないってことだ。怖くて、体は動かないし、口も乾く。それでも、動いて、魔法を使わなくちゃ、生き残れないんだ。それだけ、覚えて帰ってほしい。…よし、では解散!」
「次回はいつ?」
「えっと、基本的には週1回のつもりだったんだけど―」
「待ちきれないよ!もっと早く!」
「―ってことなので、先生。水曜日にまた、お借りしても?」
「ええ。もちろんですとも。…私は引率できませんが、問題ないでしょう。ポッター、今日のあなたの指導ぶりは素晴らしいものでした。グリフィンドールに2点、差し上げましょう」
「ありがとうございます。…そういう訳で、また水曜日に!改めて、解散!!」
「ハリー!先生も仰ってたけれど、あなた、ほんっとうに素晴らしかったわ!」
「ああ、ありがとう。…ほとんど、受け売りに近かったんだけど」
「私だって知ってることの大半は本の受け売りだわ!」
「そうだぜ、ハリー。ほんとうに、君って最高さ!」
「そっか。…うん、ありがとう」
●初めての集団自習後の日常の一幕(ハリー、ロン、ハーマイオニー)
「なーんかさ。今年って『例のあの人』は復活するし、魔法省は敵に回るし、ハグリッドは居ないし、アンブリッジは居るし…どうなることかと思ってたんだけどさあ」
「ロン。口より手を動かすのよ」
「口を止めても手は動かないよ。…なんか、拍子抜けって言うかさ。アンブリッジも結局、『嫌な教師の1人』に落ち着いちゃったしさ」
「……もしかして、今年って初めてちゃんと学生らしい生活してる?」
「ははっ、ハリー!そんな訳ない……のか?」
「賢者の石は奪われず、秘密の部屋もあかず、吸魂鬼も殺人鬼も居ないし、対抗試合もない。…あるとすれば、集団自習くらいかしら?」
「学生生活の範囲内だし、校則も全く破ってない…平和だなあ」
「いいえ、去年までが異常だったのよ」
「異常に慣れちまえばそれが正常になっちまうんだよ、ハーマイオニー」
「……哲学ね」
お読みいただきありがとうございました。
後書きです。
●本話における原作との乖離点(本編記載事項省略)
・クラウチ生存により、シリウスの冤罪を晴らす芽がある為、原作程シリウスが病んでいない。
・クラウチ入院により、聖マンゴの警備強化
・ハリーの『蛇の流儀』習得により、シリウスからの印象が変化。何かに目覚める。
・スタージス・ポドモアが服従の呪文に掛かっていないことにより、ホグワーツ特急への到着時間が変化。
・セドリック生存により、ハリーにはセストラルが見えないまま。
・双陣営の争いの水面下化により、魔法省が針の筵へ。
・ドラコの献身によるハリーのストレス緩和。癇癪減少へ。
・『蛇の流儀』によりアンブリッジ封殺。ハリーの罰則無し。DA合法化。クィディッチ継続。他。
・チョウが恋人生存により滅茶苦茶良い空気吸ってる。
●ヴォルデモート復活に対する各陣営の扱いについて
セドリック生存により、ハリーの証言の根拠が弱体化しました。
それにより魔法省…ファッジが、原作のようなセドリックの死体という証拠を見た上での『見て見ぬふり』ではなく、『クラウチ・ジュニアの単独犯』そして『ハリー・ポッターの虚言』と断定。魔法省はダンブルドアとの『政争』体制に移行しました。
立ち回りとしては、原作と変わりありません。
一方、それを受けたダンブルドアはその根拠の弱さを逆手に取ります。
クラウチ・ジュニアに真実薬を飲ませたことをヴォルデモートは知り得ません。
それを利用して、『ダンブルドアはハリーの証言に対して半信半疑』であるという情報を流します。
闇の陣営が自身を最大限警戒すると分かっているからこそ取れる情報戦です。
この戦略により、双陣営の動きが表面上は沈静化。水面下での争いとなります。
ところが、マスメディアを使った情報戦でダンブルドアを排除しようとする魔法省がいます。
本文にも記載した通り、ダンブルドアを下手に刺激するこのやり方は、闇の陣営にとっても邪魔になります。
結果として、本話の構図が『光・闇の陣営 vs 魔法省』という形になりました。
●アンブリッジについて
原作を読み返して、権威主義の権化という印象を受けました。
しかし、『蛇の流儀』は『その権威は目的に即しているのか?』『その権威の成立条件は?』と問う思考術の為、相性が最悪です。
原作でも早々にハーマイオニーが見抜いたように、彼女が派遣されてきた目的は明白です。
ドラコは、彼女の目的から、やりそうな行動を逆算してハリーにメモを渡しました。
なお、実際に起きた内容としては、ファッジに対する不安の煽りです。
ホグワーツ理事や保護者を巻き込み、苦情を魔法省へ差し向けて、さらにルシウスからも言及させることによって、『実際の支持率』は別として、ファッジには『支持率が激減しているように認識』させることに成功しました。
自身の権威を守るためにダンブルドアと決別したファッジには、こうなった以上、ホグワーツへの干渉から手を引かざるを得ません。
ホグワーツに取り残されたアンブリッジに残されたのは『1人の教師としての権力』のみです。
原作のような権力による暴威を振るうことは叶わず、ハリーからの印象はせいぜい『トレローニー以下、スネイプ以上』と言ったところではないでしょうか。
ちなみに、この設定の完成時に「アンブリッジ改心ルートがワンチャン…?」と頭をもたげましたが、あまりにも想像がつかなかったため断念しました。
●集団自習教室について
アンブリッジ封殺により、本編のダンブルドア軍団が合法化しました。
密告リスクも無く、結束を強める必要もない為『ダンブルドア軍団』という名前自体が消失。
ただの『集団自習教室』となりました。
メンバーはほぼ原作通りですが、セドリック生存により、セドリックが入り、逆に原作ではチョウに無理やり連れてこられていたマリエッタが抜けました。
そして、合法化により引率としてマクゴナガル先生がつきました。
情に厚く教育熱心な彼女ならば、ちょっと危機感を煽れば時間をひねり出してくれるだろうと思います。
ちゃんとした教師の指導がつくことで、全体的に原作よりも少し強化されそうです。
●チョウ・チャンについて
恋人が生きていることでハリーにちょっかいを掛けることは無くなる…かと思いきや、まさかの恋バナモンスターへ。
この年頃の女の子なら実在が怪しいヴォルデモートよりも、実態があるはずなのに姿が見えない恋人たちの方が大事でしょう。
結果として、ハリーの恋に興味津々な、可愛い先輩になりました。
セドリックは諫めつつ幸せそうに見守っています。
●シリウスの変化について
グリフィンドール生とスリザリン生の友情?という、学生時代の記憶を思い出さずにはいられない構図に身を置くハリーの姿に、リリーの影を見ます。
今まではハリーに『ジェームズの面影』だけを見ていましたが、『リリーの面影』を見つけてしまったことで、ようやくハリーを『ジェームズとリリーの息子』なのだと実感した形です。
暖炉通信の後は、毎回モリーと意気投合して、ハリーの自慢話をしていることでしょう。
●魔法薬学について
ドラコが堂々といちゃつき始めました。
スネイプは色々な意味で心中穏やかではないでしょうね。
的確に、ハリーの手助けをする為、ハリーの成績も遺憾ながら上がっていくことでしょう。
全く関係のない話題ですが、そういえばスネイプがリリーと決別したのも5年生でしたね?
後書きは以上です。
続きは下巻を読み終えてからになります。
感想を頂きまして、ありがとうございます。
執筆の励みになっております。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。