●プリベット通り4番地の非日常(ハリー、ドラコ)
「ハリー…ハリー!起きなさい!」
「うーん……ん…」
「ハリー!もう皆さま起きてるわ!」
「うーん…ん??え?……なっ、なんでドラコがここに居るのさ!?」
「あら。寝ぼけているようね。あなたが、わたくしを誘拐したんじゃないの」
「あ……そういえば、そうだっけ…」
「朝ごはんの用意は出来てるから、顔を洗ってから食べに来なさい」
「ああ……うん。わかったよ」
「そう。では、わたくしは先に行くわね」
「うん。……僕の朝ごはん、あるんだ……?」
●プリベット通り4番地の非日常 その2(ハリー、ドラコ、バーノン、ペチュニア)
「ぇっと……おはよう」
「おはよう、ハリー」
「………おはよう」
「っ!?……返事が返ってきた…」
「お馬鹿な事を言ってないで、席につきなさい」
「う、うん……ホントに朝ごはんがある」
「食べ終わったら流しに持ってきて下さいな。…おばさま。洗い物はわたくしがやりますわ」
「まあ!…ドラコちゃんは本当にいい子ね」
「居候させて頂いてる身ですから、当然ですわ」
「滅茶苦茶馴染んでる…」
●プリベット通り4番地の非日常 その3(ハリー、ドラコ、バーノン)
「ドラコ、家事できたんだね」
「何年か前からお母様に仕込まれたのよ。花嫁修行って言われて…まさか、こんなにも早く役に立つとは思わなかったけれど」
「素晴らしいご母堂だ……本当に、この小僧にはもったいない。うちのダドリーに乗り換える気はないか?」
「おじさまをお父様とお呼びできるのは魅力的ですが…申し訳ありません。わたくしが、ハリーでなくては駄目なのです」
「………」
「顔が真っ赤だぞ、小僧。一丁前に照れおって」
「うるさいなあ!!」
●プリベット通り4番地の非日常 その4(ハリー、ドラコ、バーノン)
「その…なんだ。……そっちの連中ってのは…常識はずれの、とんでもない輩しかいないかと思っていたが、ドラコ嬢ちゃんのような、まともな子もちゃんとおったのだな」
「いいえ。おじさまの認識で概ね間違いありませんわ。我が家は、古くからマグル…非魔法界の貴族と金融や不動産の面で繋がりがありましたのよ。だから、非魔法界の常識にも精通しているのです」
「き…ふ……お貴族様?」
「あー……おじさん。ドラコは、魔法界の貴族のお嬢様なんだ」
「ひ、ひええ……し、失礼しましたあ!!」
「……すっ飛んで行っちゃった」
「脅かしてどうするのよ、ハリー」
「そんなつもりなかったんだけどなあ」
●プリベット通り4番地の非日常 その5(ハリー、ドラコ)
「知らなかったなあ。マルフォイ家がマグルと繋がってただなんて…」
「当然よ。それを知られない為に、わたくしたちは代々マグル排斥を謳っていたのだもの」
「全部フリってこと?」
「一応、そうなるかしら。そもそも、時代の流れによって派閥なんて簡単に変わってしまうのに、特定の主義主張に全力を尽くすだなんて愚かでしかないわよ」
「こうして話すようになる前のも、演技?」
「……子供に本当のことを話すだなんて、リスクでしかないって、分かっていて聞いているわよね?」
「アレで演技だったら凄いなって思ってさ」
「リスク回避の為にマグル嫌いになるように教育を受けているのよ!」
「まあ、そういうことだよね…本当のことを聞いたのって、もしかして2年生の終わりかな?」
「その通りよ。…あの時、色々あったもの」
「うん。3年生の…クリスマスらへんだったかな?ハーマイオニーからさ、君に謝罪されたって聞いたんだよ。『だから、マルフォイと仲良くしてあげなさいね』なんて言われちゃってさ」
「……っ…余計なことを…」
「その時からちょっとだけ、気になってたんだよね。……ところで、今の僕に話しちゃまずいんじゃないの?」
「あら、公言する予定でもあるのかしら?わたくし達を敵に回し、あるいは没落することがデメリットになる程度には、あなたに尽くしているつもりなのだけれど」
「……おっしゃる通りです」
●プリベット通り4番地の非日常 その6(ハリー、ドラコ)
「ああ、そういえば…ダンブルドアから、あなたへ手紙が届いていたわ」
「手紙…?えっと……あ。来週、ダンブルドアが迎えに来るってさ。寄り道して、その後は隠れ穴に泊まりなさいって」
「そう。…それでは、おじ様たちに報告と、準備もしなくてはいけないわね」
「え?ドラコも行くの?」
「当たり前でしょう。あなたが居ないのにここに置いてもらうのは筋が通らないわ」
「……ここに居た方が安全なのに」
「それはお互い様よ。…それに、ダンブルドアなら追跡を許すような真似はしないでしょう」
「……それもそっか」
●プリベット通り4番地の非日常 その7(ハリー、ドラコ)
「ハリー。支度は出来てる?もう数時間でダンブルドア先生がいらっしゃるはずよ」
「うん、大丈夫。一応、透明マントだけは出してあるけど、他は全部仕舞ってあるよ」
「そう。それならいいの…なんだか、あっという間だったわね」
「うん。あっという間だった…こんなの、初めてだ」
「あら、そうなの?…どうしてかしら、なんて―」
「きっと、初めて…優しく起こされたから。初めて、ちゃんとした朝食を食べられたんだ。バーノンおじさんが僕をからかうなんて、初めてだった。…ここを離れるのが惜しいだなんて、初めて思ったよ」
「……ハリー」
「ドラコ、ありがとう。…君のおかげだ。君のおかげで、僕は初めてここを『家』だと思えたんだよ」
「……そう。では、また帰ってこなければならないわね。家は、帰るべき場所だもの」
「……うん。そうだね」
●プリベット通り4番地の非日常 その8(ハリー、ドラコ、ダンブルドア、バーノン)
「…少し遅れてしまったかの。…おお、ハリー。そしてドラコ。こんばんは」
「こんばんは、ダンブルドア先生」
「ごきげんよう、ダンブルドア先生」
「うむ。荷物の準備は出来ておるな?…荷物は先に隠れ穴へ送っておく。それでは2人とも、姿現しをするからわしの手に…杖腕はご覧の通り、少し脆くなっておるから、左腕にしてくれるかの。」
「ダンブルドア先生。それは…何かの呪いでは?」
「ほっほ。ドラコ、それは後ほどじゃ…よし、捕まったかの。では―」
「まて!!!ひげじじい!!」
「……バーノンおじさん」
「何の用かな?まさかお主が、わしの前に姿を見せるとは、思わなかったものでの」
「フン。私もお前と話したくなどないわい!それでも、それでもだ!…ドラコ嬢ちゃんを、頼む。…とても、良い娘なんだ」
「…ふむ。約束しよう」
「おじさま…」
「小僧…ハリー!!男ならば、惚れた女は絶対に守り抜け!!!」
「…うん。わかった」
「……今度こそ、準備は良いかの?それでは、参ろうか」
●バドリー・ババートンでの一幕(ハリー、ドラコ、ダンブルドア)
「先生、ここには何をしに来たのですか?」
「おっと、説明しておらんかったの。今年もまた、先生が1人足りなくての。わしの古い同僚を隠居生活から引っ張り出しに来たのじゃ」
「……なるほど。その方は、どのような方なんですの?」
「目的地はすぐそこじゃ。今に分かるじゃろうて」
「いいえ、先生。わざわざわたくし達を連れてきたということは、一筋縄ではいかない方なのでしょう?それならば、事前の情報は必要ですわ」
「でもドラコ。僕らが連れてこられたって事は、僕らを『魅力』と感じる人って事だよ。つまり…有名人マニア?」
「あり得るわね。逆に、このような形の説得が必要ということは―」
「ほっほ…頼もしい限りじゃ」
●バドリー・ババートンでの一幕 その2(ハリー、ドラコ、ダンブルドア、スラグホーン)
「ほほう…ほっほう!」
「紹介しよう。こちらはハリー・ポッターとドラコ・マルフォイ。ハリー、ドラコ。こちらがわしの古い友人のホラス・スラグホーンじゃ」
「なるほど。そういう手でわたしを説得しようと考えたのだな?しかし無駄だ。答えはノーだよ」
「あら、理由をお聞かせ願えませんこと?」
「今の時期にホグワーツに行くということは、不死鳥の騎士団に入るとみなされるということだ!騎士団員は皆勇敢であっぱれだが、あの死亡率の高さは頂けない…」
「ホグワーツに来ても、不死鳥の騎士団に入る必要はありません!…逆に、周りが騎士団員だらけで、近くにはダンブルドア先生も居ます。今の環境より、よほど安全なのでは?」
「む……」
「ホラス。『日刊予言者新聞』は読んでおることじゃろう。なんと、昨年の神秘部での大捕り物を主導したのはこのハリーじゃよ」
「なんと!?…いや待て、マルフォイ?マルフォイだと!?馬鹿なっ!?」
「ほう、ホラス。いったい何がおかしいのかね?」
「そんっ…いや、騙されんぞアルバス!突っ込んだ情報を握らせて後戻りさせないつもりだなっ」
「馬鹿も何も、事実ですもの」
「ほとんどドラコが単独で立案したようなものだけどね…」
「とまあ、ホラス。今のホグワーツに来れば、この子らの指導が出来る。…いかがじゃろうか?」
「むむ…」
「先ほど言った通り、ホグワーツには騎士団の他、ダンブルドア先生がいます。ここよりも安全なはずです!」
「むむむ…」
「それよりも、孤独に闇の帝王から逃げ続ける暮らしがお好みとあれば…仕方ありませんわ。引き下がるしかありませんわね」
「むむむむ…」
「……そうか。残念じゃ。2人共、お暇しよう」
「わかった!わかった!!引き受けるとも!!」
●隠れ穴到着(ハリー、ドラコ、ダンブルドア)
「さて…ハリー、そしてドラコ。しばし、ここで話に付き合ってもらう必要がある」
「どうなさったんですか、先生?」
「昨年から『日刊予言者新聞』で話題になっておる『予言』に関してのことじゃ。…その真実を、わしとハリーは知っておる。むろん、君が話していなければ、じゃが」
「いいえ。先生、誰にも話していません。ドラコにもです」
「それは賢明な判断じゃ。しかし、それを緩めるべきじゃと、わしは考えておる。すなわち、君の友人の、ロナルド・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーには打ち明けるべきじゃろう。そして同様に…ここにいる、ドラコにも、と思うのじゃが―」
「ええ、ダンブルドア先生。わたくしが『知らぬべき』情報が存在することは存じておりますわ」
「でも、先生。ドラコは信用できます!」
「そうとも。わしも、ドラコの愛を疑っておらぬ。疑っておらぬからこそ、危惧しているのじゃ。君らは、互いの為ならばその勇気を以てとんでもない偉業を成し遂げる。しかし、今のドラコの立場は薄氷の上に成り立っておる。君らが手を取る為に踏み出した一歩が、薄氷を砕いてしまうことを、わしは懸念しておるのじゃ」
「……でも、先生。知らなければ、何もできません」
「ハリー。逆に知らないからこそ『なにもしない』ことが出来るとも言えるわ」
「ほっほ…どちらも、正鵠を射ておる。だからこそ、わしはその判断を君たちに委ねようと思う。それからハリー。話は変わるが、今年は君にわしの個人授業を受けて欲しい」
「先生の、個人授業を?…何を、教えて下さるのですか?」
「あっちをちょこちょこ、こっちをちょこちょこ、じゃよ」
●隠れ穴到着 その2(ハリー、ドラコ、ダンブルドア、モリー)
「誰?名を名乗りなさい!」
「わしじゃよ。ダンブルドアじゃ。ハリーとドラコを連れておる」
「まあ、ハリー!ドラコも!もう、アルバスったら、驚いたわ!もっと遅くなると思ってたのに!」
「ほっほ、スラグホーンが思いのほかあっさりと説得できたのでな。もちろん、2人のお手柄じゃ」
「そうでしょうとも!あんな作戦を思いつく子たちに、ホラス・スラグホーンと言えども―トンクス?もう帰ってしまうの?」
「ええ。わたし、帰らなければならないの。ハリー、ドラコ、ばいばい」
「ばいばい、トンクス」
「ごきげんよう、トンクス」
「さて、ではわしも…ホグワーツで会おうぞ、ハリー。ドラコ」
●隠れ穴到着 その3(ハリー、ドラコ、モリー)
「さあ、2人とも。お座りなさい。お腹が空いているでしょう。有り合わせで何か作るわ」
「……なんか、ドラコへの態度が軟化してる?」
「そりゃあ、貴方が選んだ娘ですもの!ロン達から話は聞いていますよ!あんなに嫌っていたおじさんに頭を下げて!!これで変な意地を張ったら、母親代わりすら名乗れなくなっちゃうわ!」
「改めて言われると恥ずかしいなあ…」
「大丈夫よ。わたくしが一生言い続けるもの」
「勘弁してくれよ…」
●隠れ穴到着 その4(ハリー、ドラコ、モリー)
「さあ、もう寝なくちゃね。フレッドとジョージの部屋をハリーが―大変!ドラコのベッドを女の子の部屋に運んでないわ!来るのは朝だと思っていたから!…どうしましょう。チャーリーの部屋は『どっかの誰かさん』が使っているし…」
「どっかの誰かさん…?」
「気にしなくて良いのよ。どうせ、朝には分かることだから」
「フレッドとジョージは?」
「あの子達はダイアゴン横丁。悪戯専門店の上にあるアパートで暮らしているの。とっても忙しいのでね。―それより、ドラコの寝る場所を考えなければいけないわ!」
「モリーおばさま。ご心配には及びませんわ。ダーズリー家では、わたくしたち同じ部屋で寝泊まりしていましたもの」
「はぁっ!?そんな事―もがっ」
「もちろん、清い関係を保っておりますわ。…今までの状態が、あと1日増えるだけですもの。おばさまの手を煩わせる必要はありませんわ」
●隠れ穴到着 その5(ハリー、ドラコ)
「なんだってあんな嘘をついたのさ!?」
「良いじゃない。ベッドは2つあるのだから。それとも、添い寝の方がお好みかしら?」
「……流石に、もう君のやり方は分かるさ。冗談だって言うんだろう?」
「あら、本気よ。あなたが望むなら、だけれど」
「っ!?……別のベッドで、お願いします」
「……意気地なし」
「最近君のが容赦なさすぎるんだよ!」
「それはそうよ。今生の別れのつもりで全部言ってしまったから、意地を張る理由がないもの」
「……」
「これから先が楽しみね?」
「っ…これから先が思いやられるよ!」
●隠れ穴到着翌朝のカオス(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、ジニー、フラー)
「起きろ!ハリー!!君がもう来てるなんて、僕たち知らなか―うわあああああっ!!」
「ちょっと、ロン!ドラコも同じ部屋なんだから勝手に入っちゃ―貴方達何してるの!?」
「なんなんだよ、朝からうるさい…何でドラコが僕のベッドにいるのさっ!?」
「おはよう、ハリー。ちょっと早く目が覚めたから寝顔を見ていただけよ。ほら、服も着替えてるでしょう?」
「……それなら良いか」
「マーリンの髭!!君はまだ寝惚けてるのか!?それとも惚気てるのか!?」
「ロン、韻が踏めてるようで踏めてないわ」
「気づいているよ!!とりあえず離れてくれ!こんな所もしジニーが見たら―」
「ロン、何か呼んだ?あ、おっはよ。ハリー…ああ、あ…脳が…」
「言わんこっちゃない!あの人のことで最近機嫌が悪いんだ!!」
「あの人?そういえば昨日、モリーおばさんも言ってたっけ?一体誰が―」
「アリー!おいさしぶーりね!!」
「……フラー??」
「……朝から賑やかね」
●隠れ穴到着翌朝のカオス その2(ハリー、ハーマイオニー、ドラコ、ジニー、フラー)
「アリー、会いたかったでーす。あなたの朝食をもってきまーした―っ!?」
「お待ちなさい。たとえ挨拶でも、唇でハリーに触れたいなら所有者のわたくしに許可を取りなさい」
「いつから僕は君の所有物になったんだい?」
「あら、違ったの?では…占有物のわたくしに許可をとりなさい、でいいかしら?」
「良くないよ!?そもそも、占有物って何さ!?」
「わたくしは貴方に貰われた身なのだから―」
「おーう。なんとなく、理解しましーた。わたしとビルはまわーりから、こんなふうに見えているのですか?」
「ええ。まぁ、そうよ」
「オーケーオーケー、反省しまーす。これはいたたまれませーん」
「そう。こっちは問題が解決したやら増えたやらって感じよ」
「うう…脳がぁ…」
「……増えてませーんか?」
「言わないでちょうだい」
●隠れ穴到着翌朝のカオス その3(ハリー、ロン、ハーマイオニー、ドラコ、ジニー)
「えっと…?ビルとフラーが来年結婚するから、フラーがここに居て…嫌われてるの?」
「あの女、私に三歳児に話すような口の利き方をするのよ!」
「顔が良いだけの高慢な馬鹿女が遠慮なく家をうろついていたら、それはそれは反感を抱くでしょうよ」
「おいおい、仮にも一昨年の対抗試合の代表選手だぜ?馬鹿ではないはずさ」
「こんな感じで、男共が骨抜きになってるのよ。ハリーはそんなこと無いわよね?」
「待てよ。ハリーの好みのタイプを考えてみろって」
「ええ。顔が良くて、プライドが高く、有能なわたくしね」
「……ハリーもそっち側ね」
「いや僕何も言ってな―」
「良いわ。モリーおばさまに同類扱いされてしまっては業腹だもの。わたくしが、あの女を矯正するわ」
●隠れ穴到着翌朝のカオス その4(ハリー、ロン)
「何やら自信満々に下りて行っちまったけど、大丈夫かと思うかい?」
「うーん…どうだろう?」
「おいおい。問題人物が増えてママの頭がいつ爆発しても良い様に、君は荷ほどきしない方が良いんじゃないか?」
「フラーの矯正はともかく、そっちは大丈夫だと思う。モリーおばさんの態度は軟化してたし、なによりドラコはあのバーノンおじさん達を懐柔したんだよ?」
「えっと、あの君を閉じ込めて、部屋に鉄格子迄嵌めたあのおじさんをかい?」
「うん。…なんと、今年の夏休みに僕は朝食を欠かした事が無いんだよ?それも、ちゃんとした朝食さ!」
「……あー、ウン。ハリー。僕と話すより先に食べなよ。足りなければ僕がママに言ってもらってくるからさ」
「?…うん、ありがとう」
●隠れ穴到着翌々朝のカオス その5(ハリー、ロン、ドラコ、フラー)
「いいこと?祖国や母校に誇りを抱くのは結構だけれど、そもそもの目的を忘れてはいけないわ」
「私がここに居るのは、えいーごの為。そして彼の家族のいと(ひと)を知るためでーす」
「違うわ。重要なのはなぜ、彼の家族を知る必要があるのか、ということよ。あなたの振る舞いは、その彼の家族に自身や祖国の素晴らしさを伝える為の行動にしかなっていないわ。…それでいいのかしら?」
「……なるほど」
「目的を以て、そこに至る行動を考えなさい。…その上で、わたくしはおばさまの1日の仕事を拝見させて頂けるようにお願いしに行くけれど、あなたも来るかしら?」
「はーい、よろこーんでお供しまーす」
「ええ、よろしくね」
「……とりあえず爆発は回避したっぽいね」
「すげえや、アレを言いくるめられるなんて…」
●隠れ穴到着翌々朝のカオス その6(ハリー、ドラコ、フラー)
「さて。おばさまの仕事を知って、ついでに険もとれたところで、次は、家庭の味を教わりに行くのよ」
「家庭の味…デスか?わたしの料理もおいしーですよ?」
「ええ、そうでしょうね。けれども、また目的を見失っているわ。あなたの目的は何?モリーおばさまよりもおいしい料理を彼に提供すること?」
「……違いまーす。ビルとの仲を認めてもらうことでーす」
「そうでしょう。…なればこそ、教えを乞うのよ。ビルの好きな味を知りたいという姿勢で以て、あなたは『すでに負けている』という立場を示すことで相手の敵意を根本から挫くの」
「なんか、慣れてまーすね?…もしかしーて、既に経験済みですか?」
「…なんのことかしら?」
「あ。やあ、ドラコ。フラー」
「あら、ハリー。どうしたの?」
「ロンたちと一緒に、庭小人の駆除をするんだよ」
「おーう、アリー。…ご愁傷様でーす」
「!?」
「残念なーがら、あなたのソトボリは崩壊してまーす。プロの犯行でーす」
「ちょっと!?」
「……何の話?」
「蛇に巻かれた子獅子の話でーすよ?」
「???」
●隠れ穴到着翌々朝のカオス その7(ハリー、ロン、ドラコ)
「占い学と魔法史を落として7ふくろうだ。あんなもの落ちて、誰か気にするか?」
「僕もだ。…魔法薬学で優に届かなかったのは、ちょっとくやしいけど。こんなもんじゃないかな。ドラコ、君は?」
「8ふくろうよ。落とした単位は無いわ」
「ハーマイオニーは10ふくろうだってさ。『グリフィンドールの才女』様も、『スリザリンの姫君』も、さすがでございますね?」
「あら、もっと遜ってくれても結構よ?」
「それは失礼しました。…そういえば、ふくろうをパスしたのは良いとして、マルフォイって新学期どうするんだい?ハリーに誘拐されたことになってるだろう?」
「うん。いろいろ話し合ったんだけどさ。結局、ホグワーツに戻るのが一番安全かなって」
「そりゃあ、ダンブルドアのお膝元なら安全だろうけどさ。グリモールド・プレイスって手もあった訳だろう?」
「それは…その…さ」
「歯切れが悪いな。いったい何が問題なんだい?」
「……あそこだと、シリウスと二人きりになっちゃうじゃない?」
「……ああ、ハリー。今の君、最高の男してるぜ」
「やめろよ!!」
●ダイアゴン横丁での一幕(ハリー、ドラコ、ハグリッド、ナルシッサ、マルキン)
「それじゃあ、俺はマダム・マルキンの店の外で見張っとる。ええか?」
「うん。ありがとう、ハグリッド」
「これも仕事だ」
「……あれ?あそこに居るのってもしかして―?」
「ああっ!ハリー君、お久しぶりね。ここで待っていて大正解だったわ!」
「ああ、やっぱり。お久しぶりです、ナルシ―」
「シっ。…ここで私の名前を呼ばないで。娘の名前もね。主人とダイアゴン横丁に用があって来たのよ。でも、主人は閉心術が使えないからあなたと会うわけにはいかなくて、私だけダメ元でここで待っていたの。けれど、本当に会えるだなんて!」
「……お母様。まずは、実の娘との再会を喜ぶ方が先ではなくて?」
「あら、…あなたも、元気そうで良かったわ。だって、学期末のハリー君とても格好良かったじゃない?でも主人に対してこの興奮を語る訳にはいかないし、ずっとモヤモヤしてたのよ?」
「あの―お客様?立ち話は外でしていただいても?」
「あら、ごめんなさい。…あなたに、この手紙だけ、渡したかったのよ。後の動きは、あなたに任せるわ」
「…ええ、わかりましたわ」
「あの…僕にも、何かお手伝いできることはありますか?」
「ええ、もちろん。とても大事なお願いがあるのよ」
「はい。何でも言ってください」
「……この娘を信じて、この娘の力になろうとしないでもらえる?」
「力になろうとしない?」
「ええ。…この件については、ハリー君が何も知らない方が都合がいいの。…わかってくれるかしら?」
「……わかりました」
「ありがとう。それでは、私はこれで失礼するわね」
●ダイアゴン横丁へ行った後の一幕(ハリー、ドラコ)
「……」
「……何が書いてあったのか、聞いてもいいかい?」
「ええ。…お父様に、闇の帝王から指令が下ったわ。その手伝いをして貰いたいって書いてあるの」
「……ホグワーツには、行けるのかい?」
「ええ。それは問題ないわ。…流石、お母様ね。あなたに『力になろうとするな』と伝えたことで、思い浮かんだ問題の半分が解決したわ」
「……ん?それって問題の半分が僕って事!?」
「ええ。それに、相当に無茶苦茶な指令だわ。だからこそ、この計画にわたくしを巻き込むことで、わたくしの身の安全が確保されるのだけど」
「……あー。『娘は計画の準備中だから献上できない』ってこと?」
「そういうことね」
「そっか。…ドラコ」
「なんです?」
「応援してる。がんばれ」
「……ええ。もちろん」
お読みいただきありがとうございます。
後書きです。
一番書きたかったシーンを書き終えてしまった所為か、モチベが消失しておりました。
少ないですが、解説していきます。
●本話における原作との乖離点(本編記載内容省略)
・ドラコが『闇の印』を受けていない。
・スネイプとナルシッサが『破れぬ誓い』を結んでいない。
・マルフォイ家の成り立ちの変化(後述。独自設定)
・双子の悪戯専門店はマルフォイ家がスポンサーとしてオープンした。
・ウィーズリー家とフラーの関係改善?
●ダーズリー家について
まさかの和解フラグが立ちました。
魔法嫌いな方々ですが、ハリーが『真っ当に』頭を下げてお願いして連れてきたのが、今まで出会った魔法使いとは違い、ちゃんと礼儀作法がしっかりした明らかに良家の娘で、かつ器量良しで立ち回りも上手いとなったら、それこそ『真っ当に』絆されそうだなと考えました。
ドラコに当たりが優しくなる以上、自動的にハリーへの当たりもマシにならざるを得ないので、バーノンの動きが結果的に『思春期の息子をからかう父親』っぽくなりました。
ダドリーがドラコに惚れてもおかしくなさそうだなとは思ったものの、描写すると収拾がつかなくなりそうだったのでバーノンに軽く言わせる程度にとどめました。
●マルフォイ家について
本作における最大の独自設定です。
元々、マルフォイ家はマグルの王族へと魔法的サービスを提供した見返りに土地等を得て大きくなったという公式設定があります。その後、『国際魔法使い機密保持法』の制定以来、今の純血主義にコロっと鞍替えしたということです。
そして、ここからが作者の疑問に基づく独自設定。すなわち『今までの富の源を、そう簡単に手放すだろうか?』というものです。つまり、マルフォイ家はこっそりと今でもマグルとの付き合いを維持していて、徹底した純血主義はそのカモフラージュなのではないか、という読みですね。
そして、そうした『嘘』に綻びを出さない為に、代々マルフォイ家では幼少期から純血主義としての教育『のみ』を施し、分別の付く年齢になってから『真実』を明かす。という設定にしました。
本作のドラコにおいて、秘密の部屋の一連の出来事は今までの価値観を粉砕し得る出来事でした。
よって、ルシウスの方向転換もあり、その時点でドラコに『真実』を告げた、という流れです。
だって、この方がスリザリンらしくない?っていう作者のエゴですね。
ドラコをヒロイン化するにあたり熱量が上がり過ぎた原因でもあります。
●ハリーとドラコの関係について
基本的にハリーがやられっぱなしでタジタジになっていますが、原作でのハリーも不死鳥の騎士団でのチョウとのやり取りを見ても基本的にやられっぱなしで、自分からスキンシップを図ることも好意を伝えることも出来てないので(あるいはイギリス文化的な関係もあるかもしれませんが)本作でもこんな感じになっています。
ちなみに、『意地を張る理由』を失って色々とドラコが大胆になっていますが、ハリーとドラコは『好き合っている自覚はあるが、付き合ってはいない』という自認のつもりで書いています。ハリーが明確な言葉を何も言えていないのが原因ですね。
だから頑張れジニー、負けるなジニー!付け入る隙は…無いかもしれないけれど。チャンス…も無いかもしれないけれど。まだ勝負はついていないぞ!たぶん!
●謎のプリンスの流れについて
まさかの最序盤からドラコが出てくるので、ホグワーツに向かってすらいないのにこの文量になりました。
一方で、原作において大部分を占めた『ドラコの暗躍への疑惑』が丸々カットされる上、ダンブルドアとの個人授業も改変のしようがない為、あまり書くことが無い気がしています。
予想が外れていれば、次回は中編。予想通りならば色々とスキップして後編になると思います。
以上、後書きでした。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。