ルシウス・マルフォイ(Lucius Malfoy)とナルシッサ・マルフォイ(Narcissa Malfoy)の間に生まれた女の子は、ドラセラ・ルシア・マルフォイ(Dracella Lucia Malfoy)という名を与えられた。
厳しくも優しい両親の愛情と教育を一身に受けて育ったその女の子は、後に魔法界を揺るがすある男の子と出会う事で、自らも波乱に巻き込まれていくことになる。
1980年7月31日、イギリス・イングランド西部地方のゴドリックの谷のとある家に一つの新しい命が生まれた。
ジェームス・ポッター(James Potter)とリリー・ポッター(Lily Potter)の間に生まれた男の子は、ハリー・ジェームス・ポッター(Harry James Potter)という名を与えられた。 厳しくも生後間もなく悲劇に見舞われるその男の子は、皮肉にもその悲劇によって魔法界の英雄となり、様々な責任や重圧をその身に宿すことになる。
これはそんな悲劇にまみれた2人の運命の物語である。
グリンゴッツから下したお金をバッグいつばいに積めて、まず最初にどこに行こうかとハリーは迷った。ホンドに換算したらいくらになるかなんて考えなくとも、ハリーはこれまでの人生で持ったことがないほどたくさんのお金を持っている……ダドリーでさえ持ったことがないほどの額だ。
「制服を買ったほうがいいな」
ハグリッドは、マダムマルキンの洋装店~普段着から式服まで~の看板を顎で指した。
「なぁ、ハリー。『漏れ鍋』でちょっとだけ元気薬をひっかけてきてもいいか?グリンゴッツのトロッコにはまいった…」
ハグリッドは、まだ青い顔をしていた。ハグリッドと一旦そこで別れ、ハリーはどぎまぎしながらマダム・マルキンの魅せに1人で入って行った。
マダム・マルキンは、藤色ずくめの服を着た愛想の良いずんぐりとした魔女だった。
「坊ちゃん。ホグワーツなの?」
ハリーが口を開きかけた途端、声をかけてきた。
「全部ここで揃いますよ……もう1人お若い方が丈を合わせているところよ」
店の奥ではプラチナブロンドの長い髪の少女が踏台の上に立ち、もう1人の魔女が長い黒いローブをピンで留めていた。マダム・マルキンはハリーをその隣の踏台に立たせ、頭から長いローブを着せかけ、丈を合わせてピンで留めはじめた。
すると、隣の少女が声をかけてきた。
「ごきげんよう。あなたもホグワーツですか?」
「う、うん」
「私の父は隣で教科書を買っているし、母はどこかその先で杖を見てる」
少女はどこか困ったような様子で、でもどこか嬉しそうに話している。
「これが終わったら、2人を引っ張って新しい呪文書を見に行くの。1年生用の教科書の内容なんてつまらないから。あなたはどんな呪文が使えるの?」
「僕はまだ何も使えないよ…」
「あらそう?……あなたはどの寮に入るかもう知ってるの?」
少女は少し気まずそうな表情をし、気を利かせてくれたのか話題を変えてくれた。
「ううん」
「まぁ、ほんとのところは、行ってみないと分からないけれど。そうでしょう?だけど私はスリザリンに決まってるよ。私の家族は皆そうだったんだから」
「そうなんだ」
もうちょっとマシな答えが出来たらいいのに、とハリーは思った。
「あら?あの男の人は…?」
急に少女は窓を目線で示した。そこにはハグリッドが店の外に立っていた。ハリーを見てにっこりしながら、手に持った2本の大きなアイスクリームを指さし、これがあるから店の中には入れないよ、と手振りで示していた。
「あれ、ハグリッドだよ。ホグワーツで働いてるんだ」
「あぁ、聞いたことがあります。なんでも森の番人だとか?どうしてあなたと一緒なんですか?ご両親は?」
「……死んだよ」
「あら……それは、申し訳ありません」
躊躇ったようにハリーが言うと、少女ははっとした表情で謝ってくれた。
「「…………」」
気まずい沈黙が2人を包み空気が重くなってきた所でマダム・マルキンの声が聞こえた。
「さぁ、終わりましたよ。坊ちゃん」
その声と共にハリーは踏台からピョンと飛び降りた。この少女との気まずい空気から抜け出す口実ができて好都合だ。
「それでは、またホグワーツで会いましょう!」
店を出る前に少女は声をかけてくれた。ハリーも振り返ってうなずいてみせた。
店を出て、ハグリッドが持ってきたアイスクリームを食べながらハリーは先ほどの少女について考えていた。
「そういえば、名前聞いてなかったな…まぁ、ホグワーツでまた会えるか」
「どうした?」
「ううん。何でもない」
独り言を聞かれていたのかハグリッドが聞いてきた。それに対しハリーは首を振って答え、次の買い物へと歩みを進めた。
ホグワーツ特急の中で友達になったロンと一緒に汽車を降りる。知ってはいたがかなりの人数が降りてきて人混みに流されそうになる。
ロンと2人でキョロキョロと辺りを見回していると、見覚えがある大男が駅のホームに立っていた。
「よく来た!イッチ年生!こっちだぞ!ほらほら、グズグズせんと!急いだ急いだ!」
「うわぁ……」
ロンはハグリッドを見て驚きの声を上げる。ハグリッドの声につられて、近くに寄って来ていた他の新入生たちも大なり小なり同じような反応だ。
「ハグリット!」
「よう、ハリー。さぁさぁ、あっちでボートに乗るぞ。ついて来い!」
ボート船団は一斉に動き出し、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みな黙って、そびえ立つ巨大な城を見上げていた。向こう岸に近づくにつれて、城が頭上にのしかかってきた。
その後、ボートは船着き場に到着し石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。ハグリッドは大きな握り拳を振り上げ、城の扉を3回たたいた。
扉がパッと開くと、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。とても厳格な顔つきをしている。この人には逆らってはいけない、とハリーは直観した。
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
マクゴナガル先生は扉を大きく開けた。玄関ホールはダーズリーの家がまるまる入りそうなほど広かった。石壁がグリンゴッツと同じ様な松明の炎に照らされ、天井はどこまで続くか分からないほど高い。壮大な大理石の階段が正面から上へと続いている。
マクゴナガル先生に従って生徒たちは石畳のホールを横切っていた。入口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえた。全校生徒がもうそこに集まっているに違いない。しかし、マクゴナガル先生はホールの脇にある小さな空き部屋に1年生を案内した。
生徒たち窮屈な部屋に詰め込まれ、不安そうにキョロキョロしながら互いに寄り添って立っていた。
「ようこそホグワーツへ。さて、今からこのドアをくぐり上級生と合流しますが、その前にまず皆さんがどの寮に入るか組み分けをします。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン」
マクゴナガルはなぜか少し含みのある言い方でスリザリンの名を挙げた。不思議に思いロンを見ると、彼は別に何とも思ってなさそうなので、自分の気のせいかと正面に向き直る。
「学校にいる間は寮が貴方方の家です。良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば原点されます。学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます」
「トレバー!」
マクゴナガル以外は話さない静かな部屋に誰かの大きな声が響く。その声の主は人混みの中から飛び出して、マクゴナガルの足元に居るヒキガエルに手を伸ばす。
「……ごめんなさい」
流石にこの凍り付いた空気に気付いたのか、ヒキガエルの飼い主であろう男の子はバツの悪そうな表情で人混みに戻って行った。
「まもなく組み分けの儀式を始めます。学校側の準備が出来たら戻ってきますから、静かに待っていてください」
そう言うと、マクゴナガル先生は部屋を出ていった。
みんながどうしようか?とひそひそ話を始めた頃にとある少女がみんなに聞こえるように話し始めた。
「本当だったのですね。汽車で耳にした話、ハリー・ポッターがホグワーツに来るという…」
周りの人たちがざわつき始める中、名前を出されたハリーも何事かと声の主に目を向ける。するとそこには見覚えのあるプラチナブロンドの髪の少女がいた。
「こちらはビンセント・クラッブとグレゴリー・ゴイル。私はマルフォイ、ドラセラ・マルフォイです」
ドラセラの自己紹介?を聞き少し吹き出すロンに困惑しながらも、思ったよりも早い再開に驚くハリー。
「…私の名前は可笑しいですか?貴方は……聞くまでもありませんね?」
ドラセラはロンを上から下までさっと値踏みするように見て鼻で笑う。その態度にハリーは少しムッとしてしまう。
「その赤毛に…いえ……失礼。ウィーズリー家の者でしょう?魔法族にも家柄の上下があります。友達選びは慎重になされた方が良いと思いますよ。……何なら私が教えてあげても良いですよ?」
ドラセラは自信ありげに手を差し伸べて握手を求めたが、ハリーは応じなかった。別にそれほど嫌な奴という訳ではないが、友達のロンを馬鹿にされて応じる気は無かった。
「悪いけど、友達は自分で選べる」
ドラセラも制服の採寸をした時にハリーに会っていた事をさすがに理解していたため断られるとは思っていなかった。
予想外の事態に少し顔を赤らめて固まってしまったドラセラだったが、マクゴナガルによってある意味では助け舟がだされた。
「準備が出来ました。さぁ、一列になって。ついてきてください」
足が鉛になったようだ。妙に重い。ハリーは黄土色の髪の少年の後ろに並び、その後にロンが続いた。1年生は部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。
そこには、ハリーが夢にも見たことのない、不思議で素晴らしい光景が広がっていた。何千というろうそくが空中に浮かび、四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色の皿とゴブレットが置いてあった。広間の上座にはもう一つの長テーブルがあって、教師たちが座っていた。
マクゴナガル先生は上座のテーブルのところまで1年生を引率し上級生の方に顔を向け、教師たちに背を向ける格好で一列に並ばせた。
「はい、そこでお待ちなさい。儀式を始める前にダンブルドア校長からお言葉があります」
「まず初めに注意事項を言っておこうかの。1年生の諸君…暗黒の森は立ち入り禁止じゃ。生徒は決して入ってはならんぞ。」
校長はそこで一旦話を区切り、大広間の扉の方に注目させる。そこには少々くたびれた服装の初老の男が立っていた。
「それから管理人のMrフィルチからも注意事項がある。右側の3階の廊下には近寄らぬこと。そこには恐ろしい苦しみと死が待っておる。以上だ」
「名前を呼ばれた生徒は、前に出て来なさい。この組み分け帽子を頭に乗せます。帽子が寮を決めてくれます」
マクゴナガル先生は早々に1人目の名前を呼んで椅子に座らせては帽子をかぶせていた。どの様にして帽子が組み分けをするのかと疑問に思っていたハリーはすぐに答えが分かった。
帽子を頭に乗せた途端に帽子が話し出したのだ。最初の子はハッフルパフに組み分けされ、右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、その子はハッフルパフのテーブルに着いた。
しばらく知らない名前の子が次々と組み分けされていき、ようやく知っている名前が呼ばれた。
「ハーマイオニー・グレンジャー」
汽車の中で知り合った少女。ハーマイオニーは走るようにして前に出て、待ちきれないといった様子で椅子に座った。
椅子に座ったハーマイオニーにマクゴナガルが組み分け帽子をかぶせる。
「あ~…。そうだな…う~ん。よろしい、決まった。グリフィンドール!!」
組み分けがハーマイオニーをグリフィンドールに組み分けすると、グリフィンドールの列から歓声が上がる。ハーマイオニーも嬉しそうな表情でグリフィンドールの列に加わり、上級生たちから歓迎されている。
その後また何人かがそれぞれの寮へ組み分けされ、また知っている名前が呼ばれた。
「ドラセラ・マルフォイ」
名前を呼ばれたドラセラは、美しい髪をなびかせながら堂々と帽子の前まで出てきた。椅子に座りマクゴナガルが帽子をかぶせようとするとすぐさま帽子は声を発した。
「スリザリン!!」
例に漏れずスリザリンの列から歓声が上がり、ドラセラも列に合流する。その様子を眺めているハリーにロンが声をかける。
「悪の道に堕ちた魔法使いは皆スリザリンなんだ」
「悪の道……?」
ロンに言われたことを反芻しながらドラセラを思い出す。確かにちょっと嫌な感じだったが悪の道に堕ちたと言われるほどには感じなかった。
適当に聞き流しながら組み分けを見ていると今度はロンの名前が呼ばれた。恐る恐るといった様子で帽子に近づくロンを見ながら、出来れば一緒の寮が良いなと考える。
「ハッ!またウィーズリー家の子だな?君はもう決まっておる。グリフィンドール!!」
グリフィンドールに組み分けされると、ロンはあからさまに安堵した表情で列に加わりに行った。
親しげに迎えられているロンを見ながら、駅で見かけた人も何人かいることに気が付いた。きっとあれがロンの言っていた兄たちだろう。
「ハリー・ポッター」
その名前が呼ばれた途端少し騒がしかった大広間が静まり返る。誰もが名前を呼ばれたハリーに注目している。
そのプレッシャーに少し気圧されながらも、ハリーは帽子の元へ歩み寄る。椅子に座って帽子を被せられると、帽子は唸るような声と共に話し始めた。
「う~ん…。難しい、こいつは難しい。勇気にあふれておる。頭も悪くない。才能もある。そして、自分の力を発揮したいと考えておる…」
「スリザリンはだめ。スリザリンはだめ」
「おぉ!スリザリンは嫌か?いいのかね?君は偉大になれる。その素質が十分に備わっておる。スリザリンに入れば間違いなく偉大なる者への道が開けるのだが…。嫌かね?」
「スリザリンだけは。スリザリンは嫌だ」
「そうかそうか!……それならば…グリフィンドール!!」
ハリーは帽子が最後の言葉を広間全体に向かって叫ぶのを聞いた。帽子を脱ぎ、ハリーはふらふらとグリフィンドールのテーブルに向かった。選んでもらえた。しかもスリザリンでは無かった。その安堵感でハリーの頭はいっぱいになり、最高の割れるような歓声に迎えられていることにも、全く気付かなかった。
残りの生徒も組み分けが終わりそれぞれがそれぞれの寮のテーブルに着いてから、ダンブルドア校長が立ち上がり手をたたく。するとテーブルに大量にあったお皿に一瞬で様々な料理が現れた。
ダンブルドア校長が満足げに椅子に着席すると、上級生たちは一斉に料理に手を伸ばし始めた。それを見て他の1年生たちも料理に手を付け始める。
全校生徒が料理に夢中になっている中、スリザリンのテーブルのとある一角では1人の少女がグリフィンドールのテーブルを忌々し気に見ていた。
「スリザリンは嫌だって何よ…せっかくポッターを私の仲間に引き入れようと思ってたのに……」
ドラセラとてあのハリー・ポッターの伝説は知っている。最悪の時代の元凶たる『例のあの人』を赤子の時に倒したという伝説。
大の大人の魔法使いが束になっても敵わなかったというその人を、赤子の状態でどうやって倒したのか興味のあったドラセラは、ハリー・ポッターを自分の仲間に引き入れてその秘密を探ろう。あわよくば自分の力にしようと考えていた。
どこかで対応を間違えたんだろうと考えたドラセラは、ハリーと初めて会った洋装店での出来事を思い出していた。あの時にもう少しイメージを良くしとくべきだった?と考えたが、あの時はあの少年がハリー・ポッターだなんて知らなかったのだ。さすがに無理もないと首を振った。
ドラセラの様子に疑問を持ったのか、隣で料理を大量に平らげているクラップが両手にチキンを持って話しかけてきた。クラッブの方もドラセラの方を見て首を傾げている。
「ドラセラは食べないの?すごくおいしいよ!」
「……はぁ。あなたたちは楽しそうで良かったわね。私の事は気にしないで存分に食べなさい」
「「はい!」」
そのまままたチキンにかぶりつく2人を見て、私の仲間がコレだけではちょっと威厳とかは無理かもしれない。と考えてしまうドラセラだった。