るるかは話を終え、みなを見回した。
くれあ、あんな、みくる。
彼女たちがどう思うか。るるかの話から、なにを感じ取るのか。
感受性の高いあんなは、ぽろぽろと涙を流していた。みくるは、ひどく複雑な表情を浮かべている。もしかしたら、と思い、るるかは言葉を足した。
「ちなみに、計画者は見つからなかった。すべての工作は、おじいさんが独自で行っていた、ということが警察の捜査でも確認がとれている」
「でも、だとしたら――」
「ひとは緊急事態や極限状態になったときに、普段では考えられないほどの力や能力を発揮することもある。そう、いうことなのかもしれない」
そう言って、ふとくれあに目を向けると、少し怒っているように見えた。いや、あれは、戸惑っているのかもしれない。
「るるか……」
なにか言いたげに口を開きかけ、そして結局言葉は続かなかった。
るるかは残っていたアイスの最後のひとさじをぱくりと口に放り込んで、後輩たちに向き直る。
「最初の最初、私がパーティ会場でおじいさんを見つけたときに、もしもおじいさんを改心させることができれば、その後の事件は起こらなかったかもしれない。でも、私にそれは不可能だった」
るるかは目を閉じる。あの当時から何度か頭の中でシミュレーションを行った。でも、一度としておじいさんを説得できるビジョンを思い浮かべることはできなかった。
「でも、みくる、あんな。あなたたちなら、まことみらい市キュアット探偵事務所の名探偵のあなたたちなら、きっと、できていたんだと思う」
「そんなこと――」
あんながるるかの言葉を否定しようとする。その唇を、るるかは優しく指で抑えた。
「ううん、謙遜する必要はない。あの当時の私も、今の私も、正直、そんなあなたたちの行動を非効率的だ、と思っている部分があるから。だから、私にはできない。そして、あなたたちはできる。そうであって欲しい」
だからね――。
るるかは小さく息を吸って、静かに言葉を吐いた。
「私なんかに憧れを抱くのを、止めてほしい。あなたたちは、あなたたちだけの名探偵を目指して欲しい」
えっ、と口ごもる後輩たちに、るるかは微笑んだ。
「あなたたちには、まだ時間があるから。ゆっくり考えて、自分だけの答えを出して」
疲れたから休む、と自室に引きこもろうとしたところで、案の定、くれあがついてくる。
くれあはるるかの背中に向けて、悲し気に聞いた。
「私がずっと探偵になれなかったのは……そして、るるかが私を私的な助手に留めていた理由は、あの事件のせいなの? そんなに最初から?」
「……うん」
くれあは、るるかが語らなかったことまで、理解しているようだった。
次回公開予定:11/3 18:00
ハッピー・バースデイ!
感想や、展開予想など、お聞かせいただけると嬉しいです。