森亜るるかの事件簿   作:ものぽり

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その依頼受けないが吉(3)はなれわざ

「おぉっ! この依頼、受けてくれるかっ!」

ゴウエモンがぱんっと大きく膝を打つ。

「感謝するぜ、元弟子っ! この借りはいつか必ず返すっ!」

そう言って、さっそくとばかりにホテルへと駆けだそうとする。

「るるかさんっ、私たちも一緒に行きます!」

みくるが目を見開いて、訴えかけるようにるるかを見つめた。

「そうですよ、依頼を受けるならみんなで一緒に。それがキュアット探偵事務所ですよね?」

あんなが伸ばす手を、るるかはそっと抑えた。

「この依頼は、ゴウエモンが元弟子のキュアアルカナにしたもの。なにかあったとしても、あなたたちに害が及ばないようにすべき」

そう言って、くれあに向き直る。

「くれあ、ふたりが余計なことをしないようによろしく。終わったら連絡する」

ロンドンにいたころ。るるかが探偵として働き、くれあはその個人的な助手として彼女をサポートしてくれた。何度、彼女に後を託し、事件現場に向かったか分からない。

あの頃と同じ、るるかの決意を汲んだくれあは、忠実な探偵助手としての顔を見せてこくりと頷いた。

るるかは懐かしさを感じながら、小さく微笑む。そしてマシュタンを抱えて、ゴウエモンを追って走り出した。

追いかけようとする後輩二人の気配と、それを制止するくれあの声を背で聞きながら、るるかは今日の半日にもならないピクニックの楽しかった時間を思い出して目を細めた。

「しかし、実際、どうやってニジーを助け出すんだ?」

走りながらゴウエモンが問いかける。

「まずはニジーと私が入れ替わる。あなたのフィールドを展開して、その隙に私がニジーの変装した姿に変装して入れ替わる」

「あまり時間をかけると不自然になるが、大丈夫か?」

「そこはニジーの変装内容次第。入れ替わったら、後は私は偽の身分で誤魔化しつつ、事件を解決する。それで終わり」

「事件の解決まで、目途が立ってんのか?」

驚くゴウエモンに、るるかは小さく首を振った。

「そこは出たとこ勝負。でも解けないアイスと謎はない。私は自分を信じている」

そう言って、るるかは素早くキュアアルカナに変身する。急激に上がったプリキュアとしての身体能力を活かし、ホテルの壁を駆け上った。その後をゴウエモンが続く。セキュリティに見つからず、なるべくニジーの近くでフィールドを展開させ、最短の時間で入れ替わる必要がある。

最上階のレストランにたどり着き、窓からのぞき込むと、そこには西欧風の若い男の姿と、それを詰問しているホテルの制服に身を包んだ男の姿が見える。詰問しているのが支配人、外国人風の若い男が、ニジーの変装した姿なのだろう。

部屋の奥に目を向けると、十人ほどの男女の家族が立ったり座ったりしている。あれが、今回死んだ年寄りとその家族の一団ということだろう。他にも数名の客がいるようだが、みな一様に、黙秘している男を胡散臭げに眺めている。

「他の客のイライラも限界みたいね」

「ニジーもだいぶやばい。準備は良いか?」

ゴウエモンの問いかけに、るるかはこくりと頷いた。

「むんっ!」

という掛け声とともに、ゴウエモンの周りから不可視なフィールドが展開される。このフィールドに覆われた空間は、外界の一般人を隔絶する。一方、ファントムの怪盗やプリキュアは、その空間で行動ができるうえ、内部でいくら破壊行為をしても、フィールドが解除されるとそれらはなかったことになる。

すなわち、このフィールドを通じれば――ホテルの窓を壊しても後でなかったことにできる。

ガシャン!!

るるかは強引にホテルの窓を蹴り破ると、レストラン内へと飛び込んだ。異界と化したレストラン内部には、ニジーの変装した外国人風の男だけがぽつんと立っている。先ほどまでのざわざわとしたレストランの室内が、しんっと静まり返り異界感を助長する。

「おぉっ、キュアアルカナ!」

警備員に詰められていい加減限界に来ていたニジーは、新たな登場人物に救世主を見たかのように喜びの声をあげた。

「黙って。顔を良く見せて」

るるかは変身を解除すると、プリキットグロスを取り出し、一瞬のうちに目の前の男の姿をコピーする。キュアット探偵事務所の妖精が作るツールの技術は現代技術を軽く凌駕する。るるかの技能と合わされば、目の前の男に変装することも瞬きの間だった。

「入れ替わる。あなたは早くここから出ていって」

現実世界では、ニジーの変装した若い男の姿が突如消え去ったかのように見えているはずだ。時間はかけられない。それを察したニジーもまた、余計な口を聞くことなく窓へと走る。

「癪だけど、恩に着るよ、ベイビー!」

ニジーが窓から飛び出すと同時にフィールドが解除される。そして、るるかの目の前には困り顔の支配人が立っていた。

「あれ? 今、あなた、消えたりしませんでした?」

あまりにも不可思議な現象に、支配人は状況が理解できていないようだった。

るるかは落ち着いた声で静かに言った。

「夢でも、みたのでしょう」

 




次回公開予定:10/16 18:00

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