「見事な活躍だったぞ、キュアアルカナ」
ホテルを出ると、木陰から現れたゴウエモンが声をかけてきた。
「……いつも通りのことをしただけ」
変身を解除したるるかは、なんでもないかのようなすまし顔で答えた。
「ふん、人間とは醜いものだね」
ゴウエモンと並んで現れたニジーが吐き捨てる。彼らの能力で、レストランの中での出来事はすべて覗き見ていたのだろう。
「だけど、キュアアルカナ。キミには感謝を述べておくよ。礼儀として、ね」
「おう、礼は明日にでも届けるからよ。まぁ、期待しといてくれや」
そう言って、ふたりの人間に扮した妖精たちは姿を消した。
「るるか、今日も頑張ったわね」
胸元にいつの間にか収まったマシュタンが、るるかをねぎらう。
「ありがとう」
るるかはそのぬくもりをぎゅっと抱きしめてから、仲間たちの待つキュアット探偵事務所へと歩いていく。その歩みは力なく、とぼとぼとしたものではあったけれど。
「るるかさんっ!」
「無事でよかったよっ!」
事務所にたどり着き、ドアを開けるまでもなく、待ち構えていた後輩たちが飛び出してきた。
「ふたりとも、るるかを心配して、ずっと外を見張ってたのよ」
ふたりの少女に抱き着かれて困惑しているるるかに、くれあが微笑みながら説明する。
「事件は、解決したんですか?」
「危ないことはなかったんですか?」
みくるとあんながるるかを見上げながら、心配そうに問いかける。るるかは、その必死な様子に苦笑しながらも、心が温かくなるのを感じた。
「大丈夫。ニジーは無事に助けたし、問題も、なかった」
「じゃあ、マシュタンの占いは?」
みくるの質問に対しては、るるかの胸元で潰されかけていたマシュタンが答える。
「ワタシの占いも万能じゃないってこと。るるかには、ケガも病気も、なにもなかったわ」
その言葉を聞いて、あんなとみくるはほっと胸をなでおろす。ただ、くれあだけは、るるかの横顔をじっと見つめていた。
そして夜。
そろそろ布団に入ろうか、というときになって、くれあが自身のベッドに座り、るるかに言った。
「今日、なにがあったのか、聞いてもいい?」
るるかは自身もベッドに座り、くれあに向き直る。そして、うん、と小さく頷いた。
るるかが今日の事件の顛末を話している間、くれあはただ聞いていた。口をはさむこともなく、ただ小さく何度か頷いた。
すべてを話し終えたとき、くれあは立ち上がり、るるかに近づき、その横に座った。
「ねぇ、るるか。今日は一緒に寝ていい?」
くれあのしっとりと濡れた瞳に見つめられることに、るるかは弱かった。
「あ……うん……」
そっと絡められた手を、るるかはぎゅっと握り返した。
その日、るるかは悪夢を見ることはなかった。
そして次の日の朝。
「るるか、起きなさい」
いつも通り、マシュタンがるるかを起こす。薄目を開けて隣を見る。くれあの寝顔を見ることができるのでは、と期待したけれど、もちろんそんなことはなかった。
くれあはいつもの通り、先に起きて、朝食の準備をしてくれているのだろう。
「あら、今日はちゃんと起きたのね」
マシュタンは二度寝せずに起き上がろうとするるるかを称賛するように呟いて、毎朝の日課となっている占いをすべく水晶玉を机に置いた。
「今日はどんな結果かしらね」
マシュマシュ……と呪文を唱える声を聴きながら、るるかはパジャマを脱ぎ捨てる。
「マシューッ!」という掛け声に続き、「あら?」という気の抜けたような声。
るるかがマシュタンに目を向けると、彼女はにっこりと笑って言った。
「今日は朝から良いことがあるそうよ」
果たして、身支度を整え、朝の食事場に向かうと、そこには大量のバラが飾られていた。
「ふふっ、良い香りね」
くれあが嬉しそうにるるかに囁く。
そしてお昼前には、ゴウエモンがたくさんのどら焼きを抱えて、探偵事務所に乗り込んでくるのだった。
その依頼受けないが吉【完】
【あとがき】
いかがだったでしょうか?
事件のトリック自体は作中でも記述されているとおり児戯にも等しく本題ではありません。
どうして『依頼を受けないが吉』だったのか、について想定を外せていれば嬉しいです。
今回の事件、あんなやみくるなら、どう対応するのか? くれあなら?
そういったことを考えていただけたらなぁ、と思います。
そして可能であれば、ご意見お知らせいただけると喜びます。
なお、ChatGPTさんに聞いてみると、次のような結果をもらいました。
あんな:母親を感情的に責める
みくる:子供の罪を軽くできないか周りに働きかけ
くれあ:まずは子供を抱きしめ、慰める