語彙力がある人は、パパっと書けるんだろうな〜
同じ単語を何回も使ってしまう(*・ω・)ウラヤマシィ…
「もう、無理。ちぬ……」
彼女が地球に行って早2ヶ月。デスマーチを超えてデッドマーチな仕事量に俺は限界を通り越していた。
そんな状態を無視して「じゃ、これもやってくださいね」と言うかのように追加の巻物を適当に置いて去っていく月人。
まあ、いくら丁寧に置いたところで意味がないのは分かるけど如何せん雑じゃないかい?
俺、一応君達の上司ね。
少しは手伝ってくれてもいいんじゃない?
ん?仕事が増えたのは自業自得だって……
……おっしゃる通りです。腹の減った猛獣に餌を見せびらかしたらそりゃ、飛び込んで行くよね。
俺は甘んじて
そうして、追加で来た巻物を手に取ろうとすると、突然手元から消えた。まるで意思を持っているかのように、部屋中に散乱した巻物が宙に浮かび、綺麗に積み上げられていく。
異様な光景に固まっていると廊下の奥から、2人の人影がこちらにやってきているのに気付いた。
動き回ってたリョウサン型の月人達が、一斉に道を開き、深く頭を垂れた。
部屋に入ってきたのは2ヶ月前に地球に向かった少女と、菩薩の顔をした月人だった。
「あ、帰ってたんだ」
久しぶりに見た少女の姿に驚いた。
再会を喜ぶと同時にとある考えが脳を過った。
刺激で溢れた地球でさぞ楽しんだのだろう。
そう考えると怒りがフツフツと湧き上がった俺は、彼女のいない2ヶ月でどれだけ苦労したか文句と一緒に言ってやろう。
「おーい!君がいなくなってどんだけ大変だったか分かってるの──」
そう思って、一歩踏み出して近づいて見た彼女の姿に言葉を失った。
「……え」
いつもなら「ごめんごめん!」と軽口で謝罪してくるはずなのに、なにも返ってこなかった。
それもその筈、いまの彼女は初めて会った日のように無表情だった。地球へ行く前に見せていた笑顔も、駄々をこねる姿も、そこには欠片も残っていない。
恐らく肩にかけられた羽衣が原因なのだろう。
そして、その羽衣をかけたのは彼女の背後にいる菩薩型の月人。
菩薩型の月人は彼女を仕事に戻るよう促すと、今度は俺の前まで歩み寄ってきた。
思念を通じて「通常業務に戻る」ことを告げると、静かに踵を返し、リョウサン型を引き連れて部屋を後にした。
部屋には、俺と少女だけが残される。
以前は彼女が思念で騒ぎ立てていたせいで忘れていたが、この世界は本来、どこまでも静かな場所だった。
あれほどうるさいと思っていたのに、いざ聞こえなくなると寂しく感じた。
彼女は俺を見ることもなく、自分の机で何事もなかったかのように筆を走らせ始める。
その姿になんとも言えずに、俺はその場で立ち止まったままだった。
一人では到底終わらなかった仕事の量も、彼女が戻ってきたことで以前の量へ戻っている。駄々をこねることもなくなり、円滑にプロジェクトも終わらせることができるだろう。
ただ、リセットすれば悩みの種も解決できる。そう考えれば菩薩型の月人が羽衣をかけたのも理解できた。
だけど。
俺の知っている彼女は、もうどこにもいなかった。
数百年間一緒にいた時間そのものが、羽衣1つでなかったことにされた。そう考えると、どこかやるせない気持ちになった。
───
そんな日々が、一週間ほど続いた。
その日も俺はいつも通り仕事に取り掛かっていると、不思議な感覚に襲われた。
なんだ……これは?
微かにだが、誰かの思念が流れ込んでくる。
いつもの業務連絡とは違い、微弱で途切れ途切れ。
まるで、誰かが必死にこちらに呼び掛けているようだった。
誰だ?
形だけの耳を傾け、思念の発生源を探っていると、その流れは隣から届いていることに気付いた。
地球から戻ってきたばかりの少女。
……いや、彼女は一度リセットされたから業務連絡以外だと思念を使うこともないはず
そう思って訝しげに彼女を見ているとある違和感に気付いた。
「あれ?」
腕輪がない。
あれ?おかしいな……
月人同士の通信はもちろん、移動にまで使える万能腕輪。 上位の月人しか支給されない代物で、重要な役職に就く彼女が身に着けていないなんてあり得ない
じゃあ、一体どこへ──
頭を悩ませていると、先程まで仕事をしていた彼女の筆が止まり、自然と目の前にある惑星に視線を向けた。
なるほど……地球か
確かに、彼女ならば月に戻っても話せるようにと、地球で出来た友達に渡してもおかしくない。
だからと言って、ポンっと渡せるほど安いものじゃないけどね。
まあ、彼女のことだから驚きはしない。 今更だけど、できるなら大事に使ってほしいってだけ。 あとで上の人にこの事を伝えるのが嫌ってわけじゃなくてね……本当だよ?
それにしても、地球にいる人は何を伝えようとしているんだろう。 なんとなく届く思念は強くなったり弱くなったりを繰り返している。 泣きながら怒ってるのか、それとも何かを必死に訴えているのか。
そんな適当なことを考えていると、彼女の肩が小さく震えた。
「……あ」
無表情だった瞳が揺らぐ。
凍り付いていた感情に、小さな亀裂が走る。
そして、その亀裂は一気に広がった。
「彩……葉……?」
瞳に光が宿る。
すると、少女は勢いよく立ち上がった。
さっきまで無表情だったとは思えないほど大きな思念で、その名を叫んだ。
「彩葉!」
「……ッ!」
すぐ横にいたせいで思念を通じて、感情が一気に流れ込んでくる。 喜び、驚き、寂しさ、懐かしさ。 そして、地球で過ごした二ヶ月間の記憶まで。突如溢れ出した彩葉という少女との記憶が頭をショート寸前に追い込んだ。
彼女は青い星だけを見つめていた。
その瞳には、かつてあった輝きが戻っている。
「そんならかぐや、もう一回!」
「……………んぴ」
追加で押し込まれた情報に耐えきれず、俺はその場へ崩れ落ちた。
地球産月人
少女(上司)はサボるし駄々をこねる問題児だったが、一緒にいて楽しかったので大体のことは許していた。
2ヶ月分の記憶を直接流し込まれて頭が処理落ちした。なお、記憶の中にいた酒寄彩葉という女子高生が8000年分の情報量を生身で耐え抜いたと知った時は、人の形をしたバケモノだと本気で思った。